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あめつち  作者: きまぐれ猫


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「聞く」「聴く」

家を離れて都会のホテルに泊まると感じるのは、日中は賑やかな喧騒にあっても、夜は街中の方が静かだということ。

もちろん繁華街であればまた別なのかもしれないし、道路を走る車両のエンジン音が全く無いわけではない。

それでも、ホテルで過ごす夜は、エアコンの音が耳に付いて落ち着かないくらい静かだ。


では我が家の夜はどうなのかと言えば、虫やらカエルの声でとても賑やかだ。静かな夜とは程遠い。

水田が家のすぐ裏手にあるというだけでなく、我が家の庭もそうだし、他にも隣近所の空き地には藪や雑木林があるなど、多くの生き物が棲む環境が揃っている。

そうした生き物の声は、人の生活音とは違い、昼間よりも夜の方が一際賑やかに聞こえてくる。


時にはそうした生き物の声が聞こえないことがある。

そういう日は大抵、代わりに地面や水田、家の屋根に打ち付ける雨音が響いている。

どちらにしても賑やかな自然の音だ。


自然の音を賑やかだという感覚は、あまり一般的ではないかもしれない。

多くの場合、自然豊かな場所を選んで出掛けるのは都会の喧騒から離れるためだろう。

ただ、実際に周囲に人工物の無い自然の中に行けば、その環境に棲んでいる様々な生き物たちの声が聞こえてくるのが普通だ。

我が家の周囲の環境がそれを証明している。

自然の中に身を置くことに静けさを求めている人にとっては予想外のことだろう。


楽器に代表されるように、人工の音でも心地良さを与えるものはある。

それでも自然に求める癒しはまた別のもので、そこで聞こえてくる音もまた特別な意味を持つ。

最近では、野鳥のさえずりが人間に良い影響を与えていることが科学的に実証されているらしい。

さえずりを聞くことでストレスが緩和し、不安やうつ状態に対しても軽減する効果があるという。

その音自体が癒しになるというのだから、どれだけ文明が発達しても人間にとって自然との関係は切っても切れないものなのだろう。


こうして自身を振り返るようになって思うのは、きちんと意識を向ければ、自然の音は元々身近にもあるということ。

今と同じような環境に住んでいたはずなのに、引っ越してくるまでそれらの音に気付くことが出来なかった。

日々の生活に追われて過ごしていた当時の私は、周囲の音が聞こえていながら、きっと聴いていないだけだったのだと思う。

それを考えると、ただ自然に近い場所に身を置けばいいというわけではないのかもしれない。


時間を作って自然を満喫しに行くのと、日頃から身近な自然を感じ取ること。

そのどちらにおいても、自分の意識次第という点では同じ。

今の私はきっと、以前の私よりも余裕を持てているからこそ、日々周りに意識を向けられているのだろう。

自然から聞こえてくる音やその変化を感じられる今のこの生活が、何にも代え難い平穏だと、そう実感している。


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