イカル
一つ知識が増えると、まだ知識に無いものの輪郭がはっきりと見えるようになる。
それを生活の中で実際に体感する日々。
何気なく聞き流している身近な鳥の鳴き声の中にはまだまだ知らないものが沢山あって、それでも少しずつ聞き分けられる種類は増えている。
そうしてまた、気付かずにいた声に気が付くのだ。
最近分かるようになったのはイカルの声。
口笛のように澄んでいて良く通るさえずりは、今まで聞き逃していたとは思えないくらい目立つ。
それを踏まえると、もしかしたら聞き分けられるようになったのではなく、今年になって初めて家の近くに来たという可能性も高いように思う。
例えそうであっても、聞き慣れない声だと分かることだって知識が増えた結果に違いない。
イカルの姿を見たことはまだ無い。
近くの木々の中で、早朝から夕方まで、時間を問わず気が付くとさえずりが響いている。
それも後を追うように鳴く声が離れた場所から聞こえてくるから、きっと何羽かの群れでいるのだろう。
太く短い黄色のくちばしが特徴らしい。いつか見つけられたらと思う。
声は身近なのに、姿を目にしたことが無い鳥は他にも沢山いる。
ウグイスはその代表だ。
鳴き声からすると近くの藪の中に棲んでいるらしいことは分かる。でも、なかなか姿を見る機会はない。
一度だけ見た時も、葉が茂る前の木に飛んで来たところを見かけたくらいだ。
有名なさえずりとは対照的に、姿形は目立つ特徴が無く、一見してウグイスとは気が付かない容姿をしているのも理由なのかもしれない。
ホトトギスもそう。
夕方頃になると鳴き始める鳥で、名前だけでなく大きな声と聞きなしが有名だから、知っている人も多いだろう。
ホトトギスはカッコウの仲間で、ウグイスに托卵するというから、ウグイスがいる我が家の近くに棲んでいるのも習性からすると不思議ではない。
鳴き始めるのが暗くなってからというのも見かけない理由だろう。鳴き声を聞く割には姿を見たことは無い鳥だ。
他には、ヒバリもきちんと姿を見たことが無い。
田んぼの上を飛び上がりながらさえずる様子は「揚雲雀」という春の季語になるくらい有名らしい。
そのさえずり飛翔を、家のすぐ傍の田んぼでよく見かける。
ただ、声が聞こえてきてから探すから、見付けた時には上空の遠い所を飛んでいるのが常。
ほとんど点のようなもので、どんな姿形なのか実際に目にしたことがあるとは言えない。
有名で、身近にいることが分かっているにも関わらず姿を見たことが無い鳥がこれだけいるのだから、まだまだ気が付いてすらいない鳥が沢山いるのだろう。
そう考えると、少しずつであっても知識を得ていくことを続けていれば、身近にいる野鳥を知る機会がまだ沢山あって、更には、日常が楽しくなる機会もまだまだあるのだということ。
それはとても素敵なことで、楽しみの多い人生に違いない。




