風物詩
春になって気温が上がってくると、沢山の生き物が姿を現す。
家の周りで動きが大きくて目立つのは野鳥だけれど、数と種類が一番多いのは虫だ。
冬の間は無かったクモの巣があちこちに張られるようになると、気付かず通った時に顔に掛かってがっかりするのと同時に、そんな時季になったのだなと実感する。
良く通る場所にあるものは払ってしまうけれど、人目に触れないような場所の巣はそのままにしてある。
害虫の駆除を担う存在として頼りにしているし、雨が降った時や夜露が出た後に水滴が付いてキラキラと光る様子は、レース編みのようでとても綺麗なことを知っている。
蝶も目に見えて増えた。
窓辺の植物の周りを飛び回っている時など、影が視界の隅で横切ると鳥が来たように見間違えてしまうことも多い。
今の時期に多いのはモンシロチョウにモンキチョウ、ナミアゲハといった身近な蝶。他にもシジミチョウにタテハチョウと様々な種類の蝶が、芝生や周囲の花壇を行き交う。
黒いアゲハチョウの場合はもう少し暑くなってから、ちょうど満開になったサンパチェンスに飛んでくる光景が毎年の恒例だ。
虫がいると、それを捕食する生き物も集まる。
鳥はもちろんカエルやカナヘビが見られるようになるのは、それだけ暖かくなった証。
我が家のウッドデッキ周辺は、彼らにとって良い隠れ場であり餌場なのだろう。
毎年沢山の生き物が集まってくる。
カエルは例年通り、夜になると大合唱をしている。
日中でもタイミングを合わせているかのように合唱になることがあるけれど、夜は人間の活動音も鳥の声も無い静けさも相まって、より響き渡って聞こえる。
そうした中に、家のすぐ傍にいるのだろう一際大きな声が一つか二つはあるものだ。
姿は見えなくても、近くにいることがすぐに分かる。
もう少し草花の背丈が伸びてくる頃になれば、ウッドデッキで姿を見る機会が増えるだろう。
霜の心配がなくなると、庭の菜園に少しずつ野菜の苗を植え始める。
毎年植えているのはピーマンにナス、ミニトマト、キュウリ。
ミニトマトに関しては、前年の夏に落ちた種がそのまま育っていて、改めて植える必要がないという状況がここ数年続いている。とても経済的だ。
日当たりのいい菜園では、日向ぼっこをしているカナヘビの姿がよく見られる。
苗が育って花が咲き始めれば、今より多くの生き物が集まるだろう。
庭木の中にはブルーベリーやリンゴといった果樹がある。
リンゴは植えたばかりだから、実が生るにはまだ時間が掛かりそうだ。
一方でブルーベリーはここ何年も豊作で、ジャムにするのに重宝している。
花の付き具合を見るに、今年も沢山の実が生るだろう。
その庭木の花にも虫や鳥がやってくる。
ミツバチやハナアブは、全身に花粉を付けて飛び回っている。
同じく花粉を纏って歩き回るハナムグリは、バラの花が好みらしい。
枝を伝い歩くアリたちに、花に集まる虫を狙うクモ。
久しぶりに見かけたナナホシテントウは、アブラムシを食べに来たのかもしれない。
沢山の虫と一緒に、時折ヒヨドリやメジロが花の蜜を求めてやってくる。
その光景を眺めながら、暖かい季節になったことを実感するのが我が家の風物詩だ。




