啓蟄
今年もカエルが鳴き始めた。
三月の上旬に啓蟄を迎えてから、段々と虫の姿を見ることが増え、ここ最近になってカエルの声が聞かれるようになった。
近所の田んぼでは田起こしが始まったところで、しばらくすればそこに水が引かれるのだろう。
桜が咲くのと同様に、春が来たことを感じさせる光景だ。
家の近所で桜を咲かせている木と言えば、ソメイヨシノではなくヤマザクラだ。
背丈が高く、立派な樹形の桜が田んぼの横に並んで立っている。
その桜の花が満開になると、ソメイヨシノとはまた違った趣があって美しい。
目が覚めて朝一番に部屋の窓を開けるのが習慣なのだが、それと同時に満開の桜が目に映るこの時期は、寝起きが贅沢な時間になる。
暖かくなると、それまでどこかに隠れていた生き物が次々に姿を現し始める。
芝生には日向ぼっこをしているカナヘビがいるし、蝶々も飛び交っている。小さな羽虫やバッタも見かけるようになった。
そうした虫たちが出てきたことで、家の周辺に野鳥が姿を見せる回数も増えてきた。
冬の間ヒヨドリやホオジロがよく来ていたけれど、それに加えてキツツキにカラ類、エナガの混群が来るようになった。
まだ葉が無い状態の木々の間を大勢で飛び交っているから、この時期はその姿を簡単に見つけられる。
特にコゲラやアカゲラは幹を上に上にと移動していく様子や、ドラミングをしている姿も観察できる。
身近な鳥であるスズメも、頻繁に姿を見せるようになったのは暖かくなってからだ。
芝生にはツグミがやってくるし、ヒバリやウグイスの声も聞こえてくる。
それはもう春の恒例と言えるだろう。
今年になって初めて気が付いたのは、シメ、レンジャクが家の近くに来ていること。
シメは丸みのある体に短くて太いくちばしが特徴の小鳥だ。
庭木にスズメにしては大きい鳥が来ていることに気付いていたけれど、その鳥が目の前で窓に向かって飛んで来たのだから驚いた。
対策をしてから初めてのバードストライク。
窓の傍に動けずに居たところを保護したことで、シメという鳥だと分かった。
調べたら北海道で繁殖する鳥だそうで、きっと北に向かう途中に姿を現したのだろう。
脳震とうを起こしていたシメは、幸い翼に怪我が無かったらしく、しばらく見守っていると近くの木で鳴いていた相方とともに飛んで行った。
一方のレンジャクは「連雀」と書くくらいだから群れで生活している。
庭に現れたのも十五羽程度の群れだった。
存在自体もそうだけれど、種類によって尾羽の先の色が違うことも今回初めて知った鳥だ。
尾羽が黄色のものをキレンジャク、赤色のものをヒレンジャクという。
今回の群れがキレンジャクとヒレンジャクの混群だったことは後から写真を見返して気が付いた。
頭の立派な冠羽には初めから目がいったけれど、尾羽の先まで肉眼で見分けることは出来なかったし、そんな視点も無かったのだ。
知識があるか無いかは、どこを観察するかという視点にも影響してくる。
そもそもレンジャクは年によって渡来数が大きく変動する鳥だという。
だとすれば今回が初めて家の近くに来たタイミングだった可能性だってある。
見かける機会すら稀ならば、今回見つけられたことは幸運だったに違いない。
このところ毎年のように思うことだけれど、未だに新しく知る野鳥が近くにいる、それだけで幸せなことだ。
それと同時にこれだけ多種多様な生き物が身の回りにいる環境があること、そんな場所に暮らしていることの貴重さを実感する。
周囲の環境に目を向けて、たくさんの生き物を見つけることをこれからも楽しんでいこう。




