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シークレット・ダイアログ

激しい風が吹き、土煙が流れていったが同時に炎が巻き上がったのでまた状況がよく見えなくなってしまう中、間もなくして炎の中から赤い竜人が抜け出してきて、周りの能力者達が歓声を上げる。まるで生きてるように、そして津波のように蔦が溢れて押し寄せていくが、やっぱり炎だからか、絡み付いていく瞬間から蔦は燃え上がり、蔦の白いマイセルは炎の能力者から逃げるように距離をとっていく。

蔦の奴は、時間の問題かな・・・。でもそろそろ日本は夜だし、究達は離脱しないと。でもそうなったら、やっぱり、膠着か。うん、やっぱり人間だしな、ずっと戦えないし。こういうところでも、地味に差があるんだな。

案の定この戦いの決着はつかず、それから究達が帰ってくると真っ先に伺えたのは落胆の表情だった。

「覚醒出来なかった」

そう僕に告げると究はドリンクサーバーに向かっていく。

「うん」

テレビを見ると当然のように戦場は全く停まっていないが、究が居ない事によって戦況は変わるかと思いきや、別の能力者がまるで椅子が空いたかのように代わりに戦っていて、特に戦況は変わっていなかった。

「あれ?あの究と一緒に戦ってた女の人もいない」

「ん?」

テンションは低いが、不安のないような表情で座っている究が柳菜に顔を向けると、直後に柳菜は手をかざし、すぐ隣に翼の女性を出現させた。

「私のガルジャン」

「そう、だったんだ」

「楽しかったね、究ちゃん」

えっ。

そう言いながら女性はおもむろにこめかみに指を置き、フルフェイスのアーマーを、額を囲むリングを残して消し去った。同時に4枚の翼を小さくし、そしてさらっとミディアムの茶髪を軽く払い、満足げに笑顔を見せた。

「は、はい」

「あはは、究、何で敬語。えっと、設定は25歳で名前はテラ・エクスカリバー。テラちゃんでいいよ」

名前・・・・・すごいな。長身でスタイル抜群で、芸能人みたいに可愛い顔。柳菜の趣味か。

「柳菜ちゃん、早くご飯食べたいなぁ。食事ってどんな感じかなぁ」

んー、性格は子供っぽいのかな。

それから料理をオーダーし、ステーキを豪快に食べてるテラを横目にしながら、ふと隣のテーブルのシンジを見る。

シンジ君達も臨界覚醒は出来なかったみたいだしな。

食事中でもアメリカと中国のマイセルの要塞の状況は映し出されていて、ときどき振り返りながらチエヒメと一緒に頼んだ豚カツ定食を食べていく。

「柳花はガルジャン作らないの?」

凉蘭がそう聞くが、パスタを食べている柳花はもぐもぐしながら特に関心ないように首を傾げる。

「はー、美味しかったぁーっ。お肉ってサイコぉーっ」

んー、プロメさんとは全然印象が違うなぁ。当たり前だけど。テラちゃんは生まれたてだからかな。

部屋に戻り、テレビを点けると当然のようにニュースでやっているのはマイセルの要塞の事で、チエヒメと一緒にソファーに座りながら何となく過ごしていく。

「続いてのニュースです。宮崎県に本拠地を置いた、日本最大級の能力者組織である神王会が、集めた武器を海外の自警団組織に違法売買しているとの告発の件について、世界中に拠点を置いている能力者組織であるデュナンズ・ナイツから、日本支部を主導として捜査に当たるとの発表がありました。デュナンズ・ナイツは神王会との友好的な関係を築いているとしていますが、告発を行った反神王会組織である紅蓮会とも関わりを持っていて、デュナンズ・ナイツの動きに注目が集まっています」

神王会の武器違法売買・・・。



「ニュース出た」

テレビを観ていたハイミとプラーハが、神王会のニュースが出ると振り返ってきたので頷き返し、ソファーから2匹越しにテレビを観る。ふとパソコンの方を見ると、画面にはマイセル要塞の状況が映し出されている。

「もう要塞には興味無いの?」

「だって変わらないし、終わらないし」

「まあね」

「続いてのニュースはこちら。中国にも現れた要塞から飛び立った1機の飛行物体、南方面に向かい停泊か。・・・人工衛星からの観測によりますと、中国の新疆ウイグル自治区に作られた要塞から飛び立った1機の飛行物体が、南に約1000キロ離れたチベット自治区、ヒマラヤ山脈付近に停まった事が分かりました。専門家の見解ですと、定住する為の拠点を設営したのではないかという事で、現在数名の取材陣が向かっています」

うわ、まさか、本格的な移住希望?

単なる調査じゃない?

そうかなぁ。

翌朝になって先ずパソコンを見るが、映されているアメリカのマイセル要塞の状況は相変わらずで、いつも通り朝食を食べているとドアがノックされた。

無日だ。

「よお、政晴、朝から本部だってよ。多分デュナンズ・ナイツの事とか聞かれるんじゃないか?」

「そっか。でもチャンスかもよ?幹部になる交渉が出来るかも」

「ああ、いや、それはデュナンズ・ナイツが紅蓮会側に行くって発表するまでは抑えた方がよくないか?」

「んー、そうかも」

「りっくん」

ん?

リリコが手招きしているので歩み寄ると、心ではテレビに指を差してるのでふと振り返る。

「デュナンズ・ナイツ、紅蓮会を支持。・・・世界的な能力者組織デュナンズ・ナイツは、独自の調査の結果、神王会が告発された内容に間違いはないと発表しました。並びにデュナンズ・ナイツは紅蓮会の告発を支持し、神王会の裏の顔を追及するという方向性だという事です」

おお、ニュース出た。あ、そっか、マスコミに出る前に政晴呼ばれたって事か。でもこれで、自分達の出番か。

「りっくん達っていうか政晴の出番でしょ?本部で幹部の密告しちゃえばそれで終わりなんじゃない?」

「そう、だね。もう言いに行っちゃったのか」



「じゃあ、行ってきます」

「あぁ」

ホテルの部屋に持ってきた制服を着て支度を済ませ、チエヒメと強めのキスをしてから、高校の少し手前にシールキーのドアを作っていく。学校の敷地に入り、校舎に向かう中、あまり人目につかない物陰から究と柳菜が出てきたのがふと見えた。

「直で来たの?」

「うん。え、まさか普通に来たのか?」

「僕はちょっと手前の橋の壁から」

「あは。別にいいんじゃないか?むしろ学校のトイレとかでも」

「じゃあ、明日からそうしよ」

「どうなるんだろうな。要塞」

「ね。今日も行くの?」

「そうだなぁ。臨界覚醒した人も出たしさ、あそこで戦ってれば覚醒出来るって分かったし。聖は?」

「うん。僕も1回は行ってみようかな。僕のはメインの力より、サブの力が覚醒すればそれでいいし。それにまだストックの空きが残ってるから新しくラーニングする事も出来るし」

「まじか。あ、レベルアップさせる能力だっけ。可能性すごいじゃん」

「まあね」

「俺もそうするかな」

「もう3つでしょ?力」

「それがさ、柳菜の万渉術なら、3つの力を1つのものとしてまとめる事も出来るみたいだし。本当はそれと迷ったんだよ。能力をアップグレードするか、魔王っていう1つの能力にまとめて、また鉱石使うか」

「へー」

「でもまだ可能性はあるよ」

「何の?」

「ゼロニアだよ。ゼロニアに鉱石使って強化するってのもあるし」

「使えるの?」

「だってもう、生物的に確立してるから」

「強くなったゼロニアと合体するって、もうセラファン以上だね」

「はは、そうだな」

教室に入ると何やらすぐにクラスメイトの男子達が究に駆け寄ってきて、アメリカの砂漠の事を話し始めた。

「すごすぎだろお前」

「あの中で1番強いんじゃないか?」

「いやあ、それはどうかな。俺は近接タイプだし、防御系のスキルはあんまりないから」

あれだけ活躍してたら、相当有名人になるよなぁ。



「行ってみようよ。神様だから挨拶した方がいいんじゃないのー?」

ハイミがそう言った矢先からリリコはハイミの首筋を撫で、ハイミは気持ち良さそうに顔を上げていく。

「挨拶って。神っていうのはねぇ、自分から人里には降りないものなんだよ?」

「んー。気にならないの?」

「ましてやトランバースだしねぇ。知らない異世界の人達なら行くかもだけど」

「ナウレト居るかもよ?」

するとまるで自分を味方にしたいようにそう言って歩み寄ってきたので、可愛くて思わず撫でてしまう。

「そうだよね。自分が見れる距離でもいいんじゃないかな」

「そう?んー、しょうがないなぁ」

自分の顔を見ると渋々ではあるが了承してくれ、テレポートデバイスを作ってくれたのでみんなでテレポートしていく。

おお、チベットかぁ。景色すごい・・・。ここら辺なら自然に囲まれてるし、湖が多くて水の確保も簡単だし、原始的な移住生活には向いてるのかな。

りっくん、きっと星キレイだよ。

うん。

「こんな場所があるんだー」

「すごーい。ちょっと散歩していい?」

「ちょっとだけね」

ハイミとプラーハが飛び立っていく中、メイルは何やら驚いたように遠くを見渡して固まっているので、腰を落としてメイルの背中を撫でる。自分を見上げるとメイルは少し不安がっているので抱き上げ、それからゴッドスコープの力で視点を広げていく。

東京じゃ先ずこんな景色は見れないなぁ。すごいな。

りっくん、あんまりのんびりしないでよ。

うん。

100キロくらい進んでいくとようやくトランバースの飛空挺が見えてきて、するとトランバースの人達は思った通りこの世界の軍隊に囲まれていた。

でも戦闘にはなってないか。マイセルの恐竜も巨人も居ないけど、こっちの世界も下手に手が出せないって分かってるよな。でも見てるだけで緊張感がひしひしと伝わってくる。能力者もいるのかな?

飛空挺の中を見てみると、どこか緊張感がないように過ごしている人達が居て、その中には2人のナウレトが居た。

んー。ほんとにネコと人の間って感じだ。話してみたい。

わー。これが、ナウレト?

そうだよ。

ほんとにメイルみたいだね。メイルも話してみたいな。

「りっくん、トランバース人の思惑探って?」

でもマナライザーだったら、バレちゃうよ。

「機械の中を見れば分かるかも知れないでしょ?後はこっちの人間の中を見て会話内容を探る」

そっか。

ゴッドスコープをしながら飛空挺のモニターをマナライズしてみると、色々なファイルがあったので適当に1つを覗いてみる。

リリコ、自分じゃ文字が読めない。

あら、じゃあ私の記憶、りっくんの中に入れてあげる。

うん。

少しすると、今まで読めなかった文字が理解出来るようになり、不思議な感覚の中、色々なファイルを覗いていく。

偵察プロトコル・・・これかな。惑星の地形調査、世界人口調査、文明調査・・・この飛空挺のチームは本当に侵略する気はないっぽいな。次のファイルは、うわ、限定的拠点展開プロトコル。これはつまり、拠点を作る為の手順。本拠地を定めた後に、各地に展開して拠点を建設。ウイグル自治区が本拠地なら、じゃあここは第2フェーズの拠点展開。最終的には10の拠点か。こりゃ本格的な移住計画だ。

行動指針は分かったのでこの世界の人間の頭を覗き、会話を聞いてみる。しかしその直後、トランバースの人もその人をマナライズしている事に気付き、まるで肩がぶつかるように意識同士でぶつかってしまう。

ヤバイっ。

すぐにその人の頭から出たので自分がマナライズされる事は無かったが、とりあえずゴッドスコープを解除する。

「バレたかな」

「まぁ、バレたよね。でも敵意はないみたいだし、大丈夫なんじゃない?」

空を飛んでる2匹を呼び戻し、1回テレポートを挟んでから、肉眼で小さく見える場所まで近付いてみる。こっちの世界の軍隊はおろか、トランバースの人達もまだ自分達に気付いてない事がふと不思議に思った。

「壁張ってるから。マジックミラー」

「そうだったんだ。じゃあもうちょっと近付こう」

「ねー、それってどこからどこまで?」

「分かりやすく線引いてあげる」

メイルに応えたリリコがそう言って手をかざすと、直後に地面から頭上、周囲まで赤い線が浮き上がり、まるで自分達が赤い線の箱の中に入ったような感覚になった。

この中なら、あっちから見えないのか。でも自分がマナライズされたらバレちゃうな。気をつけないと。

「シュッ・・・シュッ」

翼の先を赤い線から一瞬だけ出して遊んでいるハイミとプラーハをリリコが宥める中、話し声が聞こえてくるところまでリリコに進んで貰う。

「もう交渉の余地は無いだろう。世界は誰のものでもない。国境なんてものは単なる身勝手でしかない」

「身勝手なのはお互いだ。協定や条約、それらは言わば国を作る上のでのステータスだ。世界が違えどそれは同じはずだ」

「なら、それ相応の人間を連れてこい」

うお、中国と、トランバースが、何だがすごい話をしてる・・・。

異世界の軍隊との戦争の傍らで、六事にも個人的な戦いがありましたね。


ありがとうございました

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