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戦場の女神

白いマイセルが、2人も・・・。

雷光の白いマイセルには究が向かっていく間、砲撃の白いマイセルには赤い竜人が向かっていき、能力者への砲撃は止み、能力者達はとりあえず難を逃れていく。

究や赤い竜人の他にも居るけど、何だか、ちょっと不安だな。臨界覚醒って、本当にすごいんだな。

究と一緒に戦っていた、3メートル級の鉄巨人が雷光の大剣で斬られてしまって戦線を離脱すると、白いマイセルはすぐさま究に向かっていき、雷光の大剣を豪快に振り回した。剣と剣がぶつかるその瞬間、雷光はまるで爆発するように激しく迸り、究が仰け反ってしまう姿にその衝撃が見てとれる。更に反撃を許さないように雷光の大剣は振るわれ、直後に究は叩き飛ばされる。真鎧ジグラーグの蒼い炎で辛うじて身は守ったが、やはり力に差があるのは見て分かる中、その後も究は連続に振り回される雷光の大剣に防戦一方を強いられていく。

柳菜、見てるだけか、そりゃそうだよな。・・・あっ、また倒れ込んじゃった。

そんな究に助けが入り、追撃される直前で究が体勢を立て直した時、究はゼロニアを召喚し、すぐに進化させる。

ゼロニアか、戦力としては微妙かもなぁ。

しかしそう思った矢先、ゼロニアは光になり、なんと究に重なっていく。

おおっ・・・何だっけ。リインフォースじゃなくて。でも、強そうだ。

真鎧ジグラーグの赤い全身鎧の上に、白い軽鎧が重ねられ、更には翼と尻尾まで付くというカッコイイ変化に、何だか僕までワクワクしてきて、一緒に戦いたくなる。それから雷光の白いマイセルが究に向かっていき、雷光の大剣を豪快に振り回すが、究は光を帯びた劫楯アンセリバーで僅かにそれを弾き返した。

うお、これは行けそうだ。

更に光を帯びた天槍レゼンバーから同じように光を帯びた氷の槍を放つと、白いマイセルは先程よりも強く吹き飛ぶ。そしてトドメを刺すように、劫楯アンセリバーから光を帯びた超高出力の電撃光線を放つと、白いマイセルはそのままマイセルの要塞まで飛んでいき、声は聞こえないが何となく歓声が上がってるのが分かった。

レベル4なのに、沢山力を重ねたから、臨界覚醒にも勝てるんだ。これなら、やっぱり勝てそうだ。

雷光の白いマイセルは電撃のような速度で戻ってきて、しかも傷も大きくない事で再びそこに緊張感が漂い始める。しかし雷光の白いマイセルは究に向かっていかず、何やら砲撃の白いマイセルに近付き、密着した。

まさか・・・。

一瞬の内に2人の白いマイセルが1つになり、2メートルの身長が少しだけ大きくなると、その白いマイセルは辺りに雷光を散らせながら右腕を機械で覆い、手を砲身に変化させた。

合体した・・・。つまり合計レベルが10・・・。いや、単にレベルで測っちゃいけないんだっけ。でも・・・。

すると白いマイセルが動く前に赤い竜人が斬りかかり、白いマイセルは右腕で攻撃を受け止める。隙が出来たように見え、究も天槍レゼンバーで突撃していくが直後、白いマイセルは左手に雷光の大剣を作り、それを振り回して赤い竜人も究もまとめて薙ぎ倒す。そして更に右手の砲身に光と電気の2つが蠢くエネルギー弾を作り、赤い竜人に向かって撃ち放った。激しい光と電気の爆発に赤い竜人は地面を転がってしまうと、そのまま人間に戻って気絶してしまう。

うわ、やられちゃった。究、大丈夫かな。

明らかに強くなった白いマイセルという存在感に集まった能力者達の動きが鈍くなったように見える中、究だけが逃げ腰を見せず、白いマイセルと向かい合う。するとそこでようやく柳菜が前に出て究と並んで立ち、究と何かを話し始める。そして白いマイセルがエネルギー弾を究に向かって連射し、瞬く間に究が爆風に包まれてしまうが、爆風の中から光を帯びた蒼い炎が見えてくるとそれはバリアのようにエネルギー弾を少しずつ阻んでいく。

大丈夫かな・・・。



「ていう感じで、これから神王会の闇を暴くんだよ」

「や~み~」

「大丈夫だよ、お金が貰えなくなったって、私、神だから」

「あは、うん、まぁそうだね」

「闇って、なーにー?」

メイルがそう聞いて自分の膝の上に飛び乗ってくる。

「組織には、大概裏の顔ってのがあるんだよ。隠れて悪いことしてる人もいるからさ」

「隠れてご飯食べちゃうとか?」

「あー、うん、そんな感じ。隠れて私腹を肥やしちゃうの。井浦さんって人、協力してくれるといいけど」

「神王って会ったことないよね?どんな人かな」

「高校生だって」

「えっそうだったんだ」

ハイミとプラーハが相変わらずパソコンでアメリカでの戦いを観ている中、マナライズを使って世界中の情報を何となく眺めていると、やがてドアがノックされ、政晴が戻ってきた。

「どうだった?」

「井浦さんは、協力してくれない」

「え」

「けど邪魔も密告もしない。とは言え、状況が変わればサポート出来る事があると言った」

「まぁ、結局ビビってるだけだろうけどな。で、オレ達はどうする。今さっき紅蓮会がマスコミにリークして、小さなニュースになってる。異世界の事で埋もれてるが、まぁ目標はマスコミというより神王会だし、神王会に伝わればそれでいい」

「あぁ」

「こっちが動くタイミングは?」

「デュナンズ・ナイツが動いてから、或いは本部から通告があったら、少なくとも、本部より先には動けない」

「本部待ちか」



究がピンチだからか、そんな時に4枚の白い翼を生やしたフルアーマーの女性が颯爽と現れ、翼から羽をロケットのように撃ち放って白いマイセルを牽制した。

さっきまで居なかった人だ。別の部隊から来たのかな。新しく来たのかな。

究への攻撃が止んだ代わりに白いマイセルは翼の女性にエネルギー弾を撃ち放ったが、女性は再び羽を撃ち出してエネルギー弾を迎撃し、更には戦闘機のようなスピードで飛び回っていく。

速い・・・。

しかもそのスピードの中、その女性は水色の光を纏うと水色のエネルギー弾を作り出し、彗星の如く白いマイセルに撃ち落とした。水色の爆発は白いマイセルに纏う雷光をも丸ごと呑み込み、突き上がるような土煙は画面越しでも威力の高さを感じさせた。

すごいな、あの女の人も、臨界覚醒の力と戦えるんだ。

白いマイセルの姿が見えてくると、特に見た目では大きなダメージが伺えないが、その女性の存在だけでその場の士気が何だかまた上がったように思えた。

「何だあいつ」

ノブもそんな状況に呟く中、翼の女性は地面に降り立つと地響きを唸らせ、白いマイセルのエネルギー弾を片手で弾きながら突撃して殴り、白いマイセルを大きく仰け反らせた。するとすぐに白いマイセルも殴り返すが、そこからはまるで普通の格闘のように殴り合っていく。しかしそこで究も参戦して2対1になり、白いマイセルはやがて追い詰められ、究の攻撃によって倒れ込んだ。ホールの中でさえ喜ぶような驚きが上がる中、キャニオンでも周りのギャラリーから歓声のようなものが上がる。

すごいな、究とあの人。

しかしそんな時、要塞からは新しく2人の白いマイセルがやって来て、1人は地面から削り上げた岩を操り、もう1人は背中から無数の蔦のようなもの生やした。

どんどん出てくる・・・。しかも全員臨界覚醒なんて。マイセル、本当に脅威だな。まるで鉱石そのものみたい。

するとまるで究達だけに戦わせられないといったように何人もの能力者が前に出てきて、再び極限の緊張がキャニオンを支配していく。



「本部から通達だ。本部は紅蓮会を敵として対処すると決めた。広島支部は実際に紅蓮会へ向かうが、その最中に俺達にはデュナンズ・ナイツとの連携を指示してきた」

「どういう事だ?」

「本部はデュナンズ・ナイツを味方にしたいって事だ」

すると直後に無日は吹き出すように笑った。

「本部だが、ちょっとマヌケだな。あ、つまり、オレ達はデュナンズ・ナイツと共に例の幹部の密告すりゃあいいのか?」

「そうだな。本部は恐らくデュナンズ・ナイツは紅蓮会を止めるものだと思ってる。だがデュナンズ・ナイツがそうするなら、それに協力するのが指示だからな」

「ハハッ。いいねえ。後はデュナンズ・ナイツも紅蓮会に便乗するとマスコミに発表して、本部に直接交渉した時に、内部告発としてオレらがデュナンズ・ナイツに味方すると」

「あぁ」

うん、これで完璧だ。

自分の部屋に戻ると、リリコも自分達の話を聞いていたかのように微笑んだ。



「ウルフ、何か戦争っていうか、みんな楽しんでるように見えるけど」

「いや、そうだろう。戦争というより、覚醒が目的で戦っている者の方が多いだろう」

ふと見たら戦線を離脱してきた人達は何やら満足げで、何だか間近で見ていると戦場の雰囲気全体が最初の時とは変わっているように思えた。

「ねえ、この戦い、終わるの?」

携帯電話で戦いを撮りながらも、早々と飽きたようにナディアがそう言う中、ふと恐竜たちを見ると各々遊んでいたり、退屈そうに寝転んでいたりしている。

「さあな。終らないんじゃないか?敵は無限だからな」

「やっぱりそうだよね。ねえ、そろそろ行かない?」

「え、ちょっと待ってよ。先にアルバにロボット食べさせてよ」

「でも、どこに居るの?もう居ないんじゃない?」

そういえば・・・。

「とっくに敗北して逃げたんじゃないか?」

ジョアンもそう言ってきて、何だか急に焦ってきてしまう。

あのロボットの人・・・どんな人だっけ、こんなに人が居たら、分からない。

・・・こっち。

「え?」

そう言ってゆっくりとアルバが歩き出すと寝ていたレオンやバームが起き上がり、そして他のみんなもアルバについていき始めたので、私の腕の中に飛び込んできたモートを抱きながら私もアルバについていく。

「あの人の匂い覚えてたの?」

・・・うん。

ギャラリーの中に入っていくとまたアルバという巨体に人々が道を空け、そして翼の生えた白いロボットを出していた男性の下に再びやって来ると、男性はアルバの事を覚えていたのか、私の事をまた来たのかという目で見てきた。

「もう戦わないの?」

「異世界の能力者が強すぎた。オレのガーディアンじゃ歯が立たなかった」

ガーディアン・・・?

「その、今時間あるなら、いいかな?」

「食うって言ってたよな?」

「一部だけだよ?」

私も快諾するとは思ってないが、それでも渋々といった顔で男性は白いロボットを召喚してくれたので、アルバと心の中で微笑み合う。アルバが動き出すと男性も緊張したように表情を強張らせる中、そしてアルバは白いロボットの肩にかぶりつき、重機で建物を壊すように機械の体を噛み砕いた。周りのアメリカ人が落ち着いた驚きの声を漏らす中、ロボットの腕は音を立てて地面に落ち、そしてアルバはバリバリと咀嚼した後にゴクッと飲み込んだ。

「もういいのか?」

「うん、ありがとう」

胸元が抉り取られ、腕が落ちたという無惨な姿のロボットを男性は溜め息混じりに消していった直後、アルバの全身の黒い鱗は白に変化し、白い翼の一部が機械に覆われた。

「その恐竜で、異世界の能力者に勝てるのか?」

「分からない。それならもっと色んなもの食べて強くならないと」

「吸収型か」

アルバ、よかったねっ。

・・・うん。

ウルフ達の下に戻るとナディアはすでに携帯電話をしまっていて、まるでもう出掛ける支度が出来てるような態度だった。

「多分、戻ってきても戦いは終わってないだろうから、行こう」

「サンドイッチはどこで買うの?」

「好きな店があるから」

微笑んでそう応えたナディアについていくと、ワープゲートを通ってやって来たのは日本で、それからナディアは迷う事なく渋谷の街を歩き、とあるお店にやって来た。

わあ、美味しそうなサンドイッチばっかり。ピクニックなんて、何年振りだろう。

サンドイッチを買うとまたすぐにアメリカのキャニオン地帯に戻ってきたが、全く戦いが見えないそこでは、戦いが続いてる事さえ夢なんじゃないかと思えるほど長閑な空気が流れていた。そして適当な岩に座り、サンドイッチにかぶりつく。

うん、美味しい。

「同じキャニオンなのに、雰囲気が全然違う」

「あぁ、そうだな」

ふとナディアを見るとその表情は笑顔はないが満足げで、しかし目が合うとナディアはモグモグしながら何を考えてるか分からないような顔でゆっくりと遠くを見ていった。

「異世界って、不思議だよな」

「ん?」

静かにジョアンが口を開くと、その神妙な態度にウルフが冷静に驚いたようにジョアンを見る。

「地球がどんなに小さいか、思い知らされる」

ジョアンって、結構詩的な事言うんだ・・・。

「もしあいつら以外にもまた侵略して来たら、どうなるんだろうな」

「そんな事が起こったらたまったもんじゃない」

「でも可能性はあるよね。もしかしたらその方が、今の侵略に変化をもたらすかも」

無表情でそう言うとナディアはサンドイッチにかぶりつく。

変化、か・・・。

世界全体から見れば、アメリカのグランドキャニオンでの戦いはまだ大きな事ではないのかも知れませんね。


ありがとうございました

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