白という脅威
「うおおお!」
雄叫びが轟き、集まった能力者が動き出し、同時に青い騎士巨人も一斉に衝撃波を撃ち出していく。耳を突くのは何よりも青い騎士巨人達が響かせる轟音や地響きで、何百メートルも離れているのに、ここにいても戦場にいると思ってしまうように胸の中で緊迫感が地響きと共鳴していく。でもウルフやジョアンはまるで落ち着いていて、ナディアに関しては動画を撮っていて、何だかそれだけでみんなが逞しく思えた。
やっぱり、勝てないのかな・・・。こんなにも能力者がいるのに。何となく絶対的な勝機が確信出来ない・・・。
キャニオンの上の方を見てみれば見物人も沢山いて、中には普通にメディアの人間と思われる、大きなカメラを担いだグループもいた。
もっと世界中から能力者が来るのかな。でも能力者の中にも戦争に反対する人達だっているはずだし。
「ただいま」
「あぁ」
「マサの言う通りだったよ。紅蓮会と対話しようとしてるのは、武器を売買してる事を知られたくない幹部の計画みたい」
「な、武器を売買してるのか?」
そう驚きながら無日は心の中で売買先は勝手に海外のマフィアだと思い込む。
「悪い組織じゃないよ?オーストラリアとかシンガポールとか、神王会みたいな自警団に」
「そうなのか」
その瞬間、表情には全く出てないが、“マサの引き金”である悪を断罪する気持ちが覚醒したのが見て分かった。
「何か、単純にマスコミに情報を売るだけじゃない方法とかあるかな」
「匿名で、杉内に渡したらどうだ」
「マジか」
「あー、いいね。でも大丈夫かな。何か、紅蓮会だけじゃ結局組織力で負けちゃうし。だからって自分達が助けたって分かったら・・・生活費が貰えなくなっちゃう」
「はは、そこかよ」
「んー、うん」
「まぁ神王会という看板も力があるからな」
「そしたらあれがいいんじゃないか?何てったか、デュラン──」
「デュナンズ・ナイツだって。赤十字の設立者の1人のアンリ・デュナンが由来なんだよ」
「ああ!へー、なるほど、そうだったのか。意外とシンプルだったんだな」
まぁアンリ・デュナン自体知らない人いるし。
「で、デュナンズ・ナイツがなんだ」
「だから、デュナンズ・ナイツに協力して貰えばいいんじゃないか?組織力だったらデュナンズ・ナイツが上だろ。前に紅蓮会はデュナンズ・ナイツと組んでたんだから、不自然じゃない」
すると言葉を発する前に、政晴は自分の意見を聞きたそうに目を向けてくる。
「良いと思うけど、デュナンズ・ナイツと神王会は有事の際は連携するっていう関係じゃなかったっけ」
「別に、なんつうか停戦っていうだけで仲間じゃない。それにデュナンズ・ナイツは悪事を暴く方だろ?デュナンズ・ナイツが神王会よりデカイとこだって事は本部も分かってるし、本部も出方を考えざるを得ない」
「そっか。でも自分達が関わってる事を知られない為には、ちゃんとした物的証拠とか必要なんじゃないの?」
「ああ、そうだな。ただのリークだけじゃさすがに杉内も動かないか」
「いや、例えば、デュナンズ・ナイツが主動で情報収集した事にして、情報源は秘匿にして貰えば、疑いの目がこっちに及ぶ事はないんじゃないのか?」
「でも本部は東京防衛チームとデュナンズ・ナイツが顔見知りだと分かってるよな?」
「デュナンズ・ナイツが言わなければ分からないはずだ」
「まぁ、確かにな。そしたら、先ずはデュナンズ・ナイツにどうバレないようにコンタクトを取るかだよな?密会してる事もバレたらマズイし」
「それなら自分がセッティングするよ」
なるべく神王会本部とは遠い東京の、とある倉庫で待っていると、少ししてブリュンヒルデが1人でやって来た。
「あら、随分と隠れて話すのね」
「急に呼びつけて済まない。東京防衛チームの隊長をやってる政晴だ。こっちは無日」
「うん。でも本当にいいの?メールで大体は分かったけど。自分達の本部なんでしょ?」
「俺は誰だろうと悪は許さない。それが俺の理念だからな。お前達だって、自分達の組織を浄化する為に戦ったんだろ?」
「そうよ。でもそれなら、自分達の活動がバレないようにするのは、ずるいんじゃないかしら」
えっ、確かに・・・。
政晴を見ると、もっともな事を言われたからか言葉に詰まっていた。
「・・・確かにそうだが。神王会のすべての支部は、本部から生活資金を貰っている。それが無ければ活動がままならない。単に目立つような事はするべきじゃない。敵は本部の幹部だからな」
「だったら、あなたが幹部になれば?先ずは同じ権力を持つ事よ」
「それは・・・」
やっぱりアメリカ人は発想が違うなぁ。
「そういえば、幹部にはどうやってなるんだ?」
「それは神王と、実質ナンバー2の聖騎士隊長が決めてるらしい。周りの取り巻きが厳しいからな、直談判は出来ない」
「味方に出来る幹部はいるのかしら?」
「一応いる事はいる。東京防衛チームを作った男だ。だがまともな人間だからこそ、神王会のルールには厳しい。腐った幹部を炙り出そうとすれば、きっと止められる」
「何言ってるのよ。それを説得するのがあなたの使命でしょ?人の心を動かすのは心よ。なるべく小さな動きで楽をしようとしたって何も変わらないわ?」
またもやもっともな事を言われ、政晴は言葉を失うが、表情からはむしろ覚悟が伺えた。
「その通りだな。俺が甘かった。先ずは東京防衛チームを作った幹部の井浦さんに話してみる。デュナンズ・ナイツの方は、メールの通りに頼む。神王会側からも外からも圧力をかければ、腐った幹部もただでは済まない」
どうなるんだろうなぁ。神王会の闇が、世間に暴かれたら。
うわあ、すごい・・・。
見渡す限り360度全部草原で、その中でいつものホテルのテーブルとソファーがポツンと“現れる”。
匂いも草原だし、そよ風も吹いてる・・・。
チエヒメと一緒にソファーに座ると、誰にも邪魔されない2人きりだからか、チエヒメはすぐに密着してきて僕の肩に頭を乗せてくる。
「ずっとこのままでいいのう」
「本当に幻だと思えないですね。これなら毎日ホテルの部屋を変え放題ですよ」
「そうじゃな」
でも、今頃アメリカじゃ能力者達が戦ってるんだよな。平和な世界なら、純粋にチエヒメさんと一緒に居られるのに。
「なら、さっさと滅ぼせばよい」
「でも戦いが終わればそれでいいですから」
「何が違う。共生でもするのか?」
「だって、戦争って終わらないものですから。唯一戦争を終わらせる方法は戦う事じゃなくて、戦いを止める事ですから」
「そうかも知れぬ。だが道程は遠いぞ」
「はい」
「それならばいっその事、誰にも邪魔出来ぬ牢でも作って、永遠にくっついて過ごすかのう?」
「え」
永遠にくっついて・・・。
その瞬間に何だか変に照れてしまい、その気持ちがチエヒメにも移ったのか、するとチエヒメはキスしてきた。
「・・・でも、それじゃ、新婚生活とかも、狭いですよ?やっぱり普通の生活が出来なきゃ意味ないですよ」
「そうじゃな」
ふと沈黙が流れたが、そのままチエヒメと見つめ合っているとスマホが鳴ったので仕方なくスマホを取り出す。
「もしもし」
「聖、何してんだよ」
「えっと、寛いでる」
「え?だってチエヒメさんが用があるからって2人で部屋に戻ったんじゃないの?」
「2人で寛ぎたかったんだよ」
「何だ。今アメリカ、1番激しいぞ。紫の巨人も出てきたし、見ようぜ?」
「うん、すぐ行く」
スマホをしまうとチエヒメは真っ直ぐ見つめてきたが、心の中では甘えてるので優しく抱きしめる。
「行きましょう」
「何か飲みたいのじゃ」
ホールに入るとみんなは普通に落ち着いていて、アメリカでの戦いが映されているテレビの前に集まった人達も、まるで映画でも観るように賑やかだった。しかしすぐさまチエヒメに手を引かれ、とりあえず2人でドリンクサーバーの前にやって来る。
「聖、何飲むのじゃ」
「カフェオレにします」
「・・・これは何じゃ」
「オレンジジュースです」
「これにしてみるかの」
飲み物を持って究達が居る場所の椅子に座り、カフェオレを飲みながら、紫の機械巨人が能力者達を圧倒する状況を眺めていく。
さすがに紫の巨人は、臨界覚醒じゃないとダメかな。
「何故、ノブはあの戦いの参加を見送ったのじゃ?」
「・・・ん?ああ、まぁ、何だな、そりゃあ勝機が薄いのは目に見えてるからな、仲間に無理をさせないのもオレの仕事の内なんでな」
「そうか」
ふと闘技場のモニターを見上げてみるとそこではシンジとショウタ、そしてセイシロウが特訓していて、何だか見てるだけでマイセルへの闘志が滲み出てるような感じがした。
「うわ出た、白い奴」
究が口走ると同時に要塞からは白いマイセルが現れ、全身から迸らせる雷光、そしてその雷光で作った大剣で能力者達を一気に薙ぎ倒して始めた。
「ヤバイぞ、あれじゃ、もう勝ち目がない」
全身の雷光はバリアみたいになって、同時に雷光の大剣で、攻撃と防御を両立させてるのか。シンプルだけど、やっぱり強い。
雷光の大剣をたった一振りするだけで何人もの能力者を吹き飛ばす白いマイセルに、それでも何人もの能力者が向かっていく中、倒れた能力者の中から1人の男性が立ち上がる。何となくその男性に目が留まっていると、直後に傷だらけの男性がほんのりと光った。
お・・・覚醒。
すると他にも立ち上がった瞬間から覚醒していく人が何人も確認出来て、そしてまた白いマイセルに立ち向かっていくその姿に思わず拳を握ってしまう。
相手が臨界覚醒の力でも、こんなに能力者が集まってるんだし、覚醒していく人達が何人もいるし、もしかしたらこれ、勝てるんじゃないかな。
蔦を絡めたり、土を操ったりする能力者達が白いマイセルの動きを止め、その隙に誰かが極太のレーザービームを放っていく。白いマイセルをまるごと焼き尽くすくらいのレーザービームでさえ、中から洩れ出した雷光によって裂かれていき、更に飛び出した白いマイセルが雷光の大剣を振りかぶり、レーザービームの能力者に危機が迫る。
うわあ。えっ。
正に危機一髪で横からやって来た、赤いフルアーマーの竜人が右腕の大剣で雷光の大剣を受け止めると、そのまま赤い竜人は素早く反撃し白いマイセルを吹き飛ばした。
おっ、あの人強い。
無事にレーザービームの能力者が離れていき、何だか赤い竜人が士気の中心になったような雰囲気になる。すると白いマイセルも赤い竜人にターゲットを絞ったように向かっていき、そしてそこには大剣同士の衝撃音が響いた。
「互角じゃない?赤い竜人みたいな人、まさか臨界覚醒したのかな」
「そうかも」
「すげえ」
「究、まさか、行きたいの?あそこなら格好の特訓が出来るとか思って」
「え・・・・・分かる?」
あは、図星なのか。
柳菜と話す究は僕から見ても戦いたそうな感じで、柳菜は呆れるかと思いきや、まさかの同意するような相槌を打った。
「ノブさん、行っていい?」
「まぁ・・・いいか」
うわ、ほんとに行くんだ。ていうか、柳菜が行ったらそこら中の能力者の力を取り込んで、それこそ最強になるんじゃ。だから柳菜も行きたいのかな。
柳菜の場合はシールキーは必要ないので、するとあっという間に究と柳菜はホールから居なくなった。そして少しすると戦場を映すテレビの中に究と柳菜が現れ、何だか僕まで変にワクワクしてしまう。早々に果ての魔王に変身した究が、後々から来た助っ人みたいで周りから注目される中、赤い竜人が勢いよく吹き飛ばされ、ふとした感じで究が白いマイセルに注目される。
柳菜、もうスキャンしたのかな・・・。
電気の反発力を使って飛び出していき、白いマイセルが剣を振り下ろし、それを究が劫楯アンセリバーで受け止めるが、見るからにその衝撃は強く、究はゆっくりと押されていく。
電気は相殺してるけど、力自体に差があるのか・・・。
しかし直後に究は真鎧ジグラーグから蒼い炎を背後に向かって吹き出し、その推進力で白いマイセルを完全に受け止める。そして更に天槍レゼンバーから氷の槍を発射し、その爆発で遂には白いマイセルを弾き飛ばした。
おっ行けそう。
そこに赤い竜人が飛び出していき、白いマイセルは右腕の大剣によって叩き飛ばされ、何だか雰囲気的に士気が上がったように見えてくる。
もうほとんどの能力者は戦線離脱してるし、今残ってる近接攻撃系能力者は少なくともみんなレベル4かな。何か、すごいな・・・世界中の、強者が揃ってる感じ。
するとそんな時、右腕を機械的な砲身へと変化させた白いマイセルが現れ、一瞬で光が蠢く巨大なエネルギー弾を作り、能力者達に撃ち放った。
遂に白いマイセルが増えてきて、臨界覚醒の能力VS能力者達というフェーズになりました。そんな戦いに究と柳菜が飛び込んでいくのですが果たして──。
ありがとうございました




