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竜達は食らう2

「そいつも変化出来たんだな」

「うん。それでヨハンは」

「特に交渉は行われてないそうだ」

「そっか。今聞いたんだけど、そこに集まってる能力者達、これから要塞を攻撃するって、ヨハンに報告しに行こう」

「そうか、分かった」

モート、食べたいの決まった?

んー、まだかなぁ、どうしようかなぁ。

じゃあアルバは?

・・・考えた事なかった。

え・・・。

能力者拠点の司令室ではヨハンが高級な椅子に座り、ブリュンヒルデが秘書のように立って話をしていて、何だかこんな時でもリラックスしている心の強靭さに逆に安心した。

「ヨハン、大変、一部の能力者が集まって要塞に攻撃するって。さっき30分後って言ってたから、あと20分くらいだと思う。それで、作戦の責任は自分達で負うから、デュナンズ・ナイツは関係ないって」

「そうか。そういう者達が居て当然だろう。デュナンズ・ナイツの指揮権はそこまで強くない。あくまで臨時のリーダーだからね」

「勝てるのかしら」

「恐らく、無理だろうね。ただ牽制にはなるだろう。常に見張っているというメッセージは必要だ」

拠点を出ると外で待っていたアルバの背中にはクレイたちが乗っていて、ふと見上げれば色とりどりの姿に何だか少し楽しく思えてくる。

テレサ、ぼく、考えたよぉ、食べたいもの。

飛び降りてきたモートを受け止めて撫でてると、他の恐竜たちも飛び降りてきて早く出掛けたそうにそわそわし始める。

「何食べたいの?」

こういうの。

「ん?・・・・・どういう、それって、太陽?」

違うよぉ。これこれ。

「・・・光と影・・・・・ってこと?」

何かねぇ、もわあってしてるのと、ふぅってしてるの。食べたいかなぁ。

「光と影・・・」

「どうやって食うんだ?」

「うーん」

「いや、日光浴でいいんじゃないのか?」

「でもそしたら、もう変化してるはず。体の中に入れないとだめなのかも」

「難問だな、まぁむしろ能力者に手伝って貰わないと出来ないだろうが」

「そうだね。どういう風にしたらいいんだろう。光と影を、体の中に入れるって」

「食えるものに変えればいいんじゃないか?例えば、形のないものを形にする能力者とか」

「そっか。そうだね。じゃあ、捜そっか、出来る人」

「あぁ」

「よお2人とも」

あ、ジョアンとナディア。

ふと気になったのは、2人が手を繋いでいる事だった。

「何だ、その恐竜、テレサってペガサスを出すんじゃなかったのか?」

「ペガサスが異世界の恐竜に食べられちゃって、そしたらこうなった」

「まるでペット」

そう言ってナディアは笑みを浮かべてジョアンを見る。

「ペットじゃないって、ペガサスもこの子達も、仲間だから。ていうか2人って、付き合ってたの?」

「あぁ、言ってなかったから知らないのも当然だ。2人だってそういう関係だろ?」

「え!?」

思わずウルフと顔を見合わせてしまうと、むしろもっと恥ずかしくなってしまってとっさに目を逸らしてしまう。

「いや、俺達は、付き合ってない」

その瞬間に目が留まったのはナディアの妙にニヤついた顔。

「それより2人は何しに来たんだ」

「様子見。ドレイクが見てこいって。ニュースでやってるし情報は豊かだけど、実際に見てはなかったから」

「じゃあ一応ヨハンに会ったら?」

「それは最後でいい」

デュナンズ・ナイツの中には、形のないものを形にする能力者は居ないかな。

「2人は前線に立ってたんだろ?簡単に、能力者という存在で勝てるかどうか、どうなんだ?」

「・・・勝てる可能性はゼロではないと思う。俺達には覚醒という状態がある。だがこれからは慎重に事を進めないといけないだろう。相手は順応性が極めて高いからな」

「力だけで押し切れる相手じゃないって事か」

「あぁ」

「そういえば、他の支部のデュナンズ・ナイツは来てないの?私達だけ?」

「最初は居たよ。ジャックのチームが。でもジャックが死んで撤退した後は、世界中から能力者が来るから、ジャックのチームもロスに帰ったし。でもここはアメリカだから、ロス支部はロスに居ても問題ないけど」

「ここまで大きな問題になっても、あくまでアメリカの問題はロス支部の管轄だってヨハンも言ってたから、他の支部の奴が来る事はないんじゃないか?」

「そっか」

まるで観光に来たかのように緊張感のない表情でナディアは携帯電話を取り出すと、遠くに見える異世界の要塞を写真に撮り始めた。

「気抜きすぎじゃない?」

「レポートの為の写真。趣味で撮ってる訳ないでしょ」

「だよね」

テレサ、早く食べたいよぉ。

「そうだね」

「え」

「あの、2人の知り合いで、形のないものを形にする能力者って居ないかな?」

「何?急に」

「今、この子達成長期で、色々なものを食べてそれぞれ違う形に成長してるの。それぞれ食べたいものが違くて、このモートは光と影を食べたいって言ってて。でもそれは普通には食べられないものだから」

「だから形のないものを形にする能力者?」

「そう」

「ジョアン、居る?」

「いや、居ない。だが、その力、俺が欲しいくらいだ。いいアイデアだ」

「え・・・・・じゃあ、鉱石で能力、ジョアンが持ってくれるの?」

するとジョアンとナディアが見つめ合い、ナディアが微笑むとジョアンは頷いた。そんな2人を見ていると、何となく私もウルフの横顔を見てしまいそうになる。

「あぁ。いいだろう、ちょうど自分の力の余白の事を考えていたところだ」

「そうだったのか、という事はまだ3つ目の力は持ってないのか」

「そういうウルフは、もう済ませたのか」

「あぁ。でも本当に良いのか?テレサの為に」

「問題ない。俺が決めた事だ」

そう言うとジョアンはポケットに手を入れ、そのまま目を瞑った。ほんのりと体が光るのを目の当たりにはしたが、ポケットからも手を出さず、まるで表情を変えないジョアンを前に、何だか鉱石というものも特別感が薄れている事を実感した。

「ナディアは考えてないの?」

「具体的には決めてない」

「そっか。じゃあ、光と影、お願いしていい?」

そう言ってもジョアンはポケットから手を出さず、もう片方の手もナディアの手を繋いでいるのでどうするのかと思っていると、直後にジョアンは表情を綻ばせながら、何やらキレイな漆黒の球体をポケットから取り出した。ベースボールのボールくらいの大きさのそれをジョアンから受け取ると、私の腕の中でモートは食べたそうに首を伸ばす。

早くぅ。

「待って、じゃあ光を」

次にジョアンはただ掌を上に向けていると、直後にまるで空気中の光が集まるように掌に向かっていき、そしてそこには電球のように光る球体が出来上がった。

「ありがとう」

あーん。

可愛らしくそう言って口を大きく開けたモートの口に、先ずは影の球体を入れてあげる。噛まずに飲み込むとすぐにまた口を開けたので、すぐに光の球体を食べさせるとモートはまた噛まずに飲み込んだ。するとモートの全身から光と影が溢れ出し、思わず目を瞑ってしまう。少しすると光と影が収まるが、モートの体は常に淡く光と影が洩れるようになった。

何か眩しくなったね。

クレイがそう言ってモートに近付き、じゃれるように体を擦り寄せていく。

最後はアルバだねっ。アルバ、何食べるのっ?

・・・考えてみる。

「各隊準備オッケー?じゃあそろそろ位置につこう」

女性のはきはきとした号令が妙に響いてきて、すると何人かのグループに分かれて行進が始まったようなので何となくそれを眺めていく。

「何だよあいつら」

「要塞に攻撃する有志の集まりだ」

「有志?デュナンズ・ナイツは関わってないのか?」

「あぁ」

「ふーん」

表情は落ち着いてるが感心するような鼻声で相槌を打つジョアンの横で、ナディアは行進を何やらカメラで撮っていく。

「何で撮ってるの?」

「これもレポート」

「そっか。じゃあ結果も記録するの?」

「そうなるかな。終わったら私達でダブルデートしない?」

「え!?」

ダブルデート・・・。

ナディアは感情の起伏が小さい人だが、そんな彼女が真面目な顔でいきなりそう言ってきた事に、ふとウルフを見てしまう。

「遊んでる暇があるのか?」

「息抜き」

「あぁ、そう、だな。俺はいいけど」

え、いいんだ・・・そう言われたら、断れない・・・。

「うん、いいよ。どこか行きたいところがあるの?」

「サンドイッチでも買って、トレッキングは?」

ナディアってあまり笑わないけど、結構フレンドリーみたい。まぁいっか、息抜きは必要だし。

「うん、じゃあそうしよう」

しばらくして能力者の行進を異世界の軍隊も気が付いたのか、すぐさま要塞から青い騎士巨人が数人、まるでガードマンのように姿を現した。

・・・テレサ、食べたいもの、決めた。

「うん、どんなのがいいの?」

・・・ああいうの。

「え・・・」

「どうした」

するとすぐにウルフがそう聞いてくる。

「アルバがね、ああいうのが食べたいって」

「そうか」

・・・でも、あれが食べたいっていうか、ああいう機械の人間みたいなやつが食べたい。

「あいつらが倒した時に食わせればいいんじゃないか?」

「何か、あれじゃなくて、ロボットが食べたいみたい」

「ロボット?機械って事か?」

「ううん、人型の機械っていう限定的なもの」

「まさか、食ったら急にトランスフォームするのか?ハハッ」

「どうかな、そうなったら、驚きだけど。アルバ、ロボットだったら何でもいいの?」

・・・いいよ。

「そっか、逆に困っちゃうな」

「何?今度はその大きい恐竜のエサの時間なの?」

笑みは無いが、まるで微笑んでいるかのような態度でナディアがそう言ってくる。

「エサっていうか・・・エサなのかな。でもそしたら本当にペットになっちゃうから」

「何でもいいって言ったのか?」

「うん」

「ならあれでいんじゃないか?」

「でもせっかくだし、こっちの世界の何かがいい」

「でもロボットなら、また能力者頼みだろ?」

「うん」

「有志の集まりにそういう能力者が居るんじゃないか?」

「そうだね」

まだ行進しているだけなので戦闘は行われてないが、戦闘準備としてか、すでに変身している人や、武器を携えている人もいた。

「もうちょっと近付いてみない?」

「あぁ」

少しずつ能力を出して準備していく人も増えてきて、4つのグループが要塞を四方から取り囲む構図になり、いよいよ戦いが始まる一歩手前のような状態になった時、能力者の中に居る1体のロボットに目が留まった。

んー、何か私のタイプじゃないな。

・・・あっち。

「あれがいいの?」

・・・うん。

「どれだ」

「あの白くて、翼の生えた騎士」

「そうか、今行けば戦う前にコンタクトが取れるかも知れない」

「うん、行こう」

アルバの巨体が人目を引き、闘志が充満している雰囲気の中で沢山の眼差しが向けられてくる事に少し緊張してしまうが、自然と割れていく人混みを進んでいくと、やがて3メートル級の騎士風ロボットが目の前にやって来た。

「あんたらデュナンズ・ナイツだよな?何か用か?」

「私の個人的な用事。その白いロボットの能力者は?」

一瞬周りの人達が揃ってキョロキョロすると、すぐに白いロボットの能力者と思われる男性が、言葉は分からないが自分の事かというような態度で前に出た。

「オレの護衛に何か用か?」

日本人か。

「1つだけお願いを聞いて欲しいの」

「え?・・・何だよ」

「この恐竜はアルバっていうんだけど、私の恐竜たちは食べたものによって体が変化するの。それでアルバがあなたの白いロボットを食べたいって言ってて、どこでもいいから一口だけ食べさせてあげたいんだけど」

「食べる・・・。急にそんな事、つまり、力をコピーする能力なのか?」

「コピーじゃないと思う。例えばこのモートは光と影を食べて、光と影が体から溢れるような感じになったし」

「そろそろ始まるよ?」

女性がそう言うと、その男性は少し慌てるような素振りを見せる。

「もう始まるし、悪いんだけど終わってからでいいかな」

「ああ、うん、やっぱりそうだよね。ごめんね急に」

一先ず能力者の列から出ていき、少し離れて眺めているとすぐに能力者達が動き出し、同時にここからでは米粒ほどに見える青い騎士巨人も蠢き始める。

「遂に始まったか」

「多分勝てないだろうけどね」

ジョアンの呟きに、ナディアが応えながらカメラで撮っていると、クレイがまるで好奇心で動く犬のようにナディアに近寄っていく。

「ん、何?」

クレイは携帯電話に興味を持ったようで、臭いを嗅ぐように鼻先を近付けていくと、ナディアは嫌がりはしないが撫でようともせずにただクレイを眺める。

久し振りのジョアン達ですが、まるで他人事のようにリラックスしてますね。活躍出来る日は来るんでしょうか。


ありがとうございました

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