幻の砂漠
究の自信が溢れるような笑みに思わず僕もニヤついてしまい、すると究が柳菜達を見れば柳菜達も頷く。
「じゃあレッドライトニングで1回挑戦してみようか」
「あぁ。今日はアマカゼ居ないけど」
鳥井さんは、翼の力を強化するだけなのかな。ミントさん達どこかな。・・・・・あ、いた。
「ミントさん、ライムさん」
「どうしたの?」
「僕達レッドライトニングで、1回最前線に挑戦しようかと思うんですけど」
「うん、分かった」
「ミントさん達、凉蘭見なかった?」
「えっと、あそこだよ」
ん、居た。普通におしゃべりしてるし。しかも外人さんと。もう打ち解けたのかな。
「鳥井さん。レッドライトニングで最前線行くから」
「任務で?」
「いや、暇だからっていうか、挑戦?」
「ウケる。暇だから最前線行くって。じゃあちょっと行ってくるね」
「気を付けて」
ふう、何か、ダンジョン攻略っぽい雰囲気だな。
「凉蘭、もう外人の友達出来たのか」
「え、あぁ、違うよシェリアンは能力者になる前から友達だよ。グランドキャニオンに居るって言ったらシェリアンも居るよって」
あぁ、例のパリの友達か。日本語上手かったな。
「お前ら、行くのか?」
ノブさん・・・。
「うん。何もしないのも何だし、究達が行きたいって」
「ほう。ならオレ達も行ってみっかな」
ノブさん達も来たらもう勝てるんじゃないかな。シンジ君のあの大きな右腕とか。動画で見てるからショウタ君もセイシロウ君もどんな戦い方かは分かってるし。
「あれノブさん、ヒロヤさんとシキさんは」
「あいつらは日本に残るってよ」
「そうですか。・・・あのチエヒメさん、さすがに最前線は危険なので、待っててくれますか?」
「嫌じゃ。聖の戦いを見たい」
んー、頑固だな。
相変わらずチエヒメは真っ直ぐな眼差しで、強く言う事など出来ないので仕方なくチエヒメも連れていく。少し歩けば木々は可哀想なほど薙ぎ倒されていて、青い騎士巨人と複数の赤い巨人との戦闘が繰り広げられていて、赤い巨人のあの重低音が放たれたので全てのDNA情報を発動して黒炎の壁を作る。
うお、何か、何ていうか、黒炎の質が高いのが自分でも分かる気がする。
能力者の誰かが同じような重低音を流し、赤い巨人の重低音を相殺している中、更に森を進んでいくとその向こうには別の青い騎士巨人が見えてくる。周りに居る能力者達は相手の出方を伺うような静けさを醸しているが、同時に何となくビビっているかのような雰囲気を感じると、そこにシンジが飛び出していき、瞬時に右腕を切り離し、右腕をレベル4の形態に変化させた。
やっぱりでかい・・・。
拳から肘までで10メートルくらいあるのに、シンジはまるで普通にパンチするような速度で拳を振るい、しかし実際にその巨大な物体は凄まじく空気を押し出し、辺りには爆発音が轟いた。すると7メートル級の青い騎士巨人が簡単に吹き飛ばされた状況に周りの能力者は歓喜の声を上げる。
やっぱりすごいな。
地面に降り立つと同時にシンジは右腕を初期レベルの形に戻し、声をかけたショウタにドヤ顔を見せる。それから進んでいくと今度は10人を超える赤い巨人が待ち構えていて、すると今度はショウタとセイシロウが前に出ていった。直後にショウタが右手から炎を溢れさせ、同時にセイシロウが上空に手をかざす。
「ドラゴンファイア」
出た、ショウタ君の鉄板技・・・。
燃え上がる炎が渦を巻き、渦を巻いた炎がそして日本らしい龍になると、同時に赤い巨人達は何やらゆっくりと宙に浮き始める。赤い巨人達が手足をバタバタさせるもまるで無重力かのように為す術もない中、炎の龍は轟音を響かせ、容赦なく赤い巨人達を突き抜けていく。炎の龍が抜けていくと赤い巨人達はすでにボロボロだが宙に浮いたままで、それから炎の龍は天に昇り、距離を取ってから急降下した。そして天から下った炎の龍が地面にぶつかり、爆炎となって消えていくと、10人の赤い巨人達はもう見る影もなかった。
凄まじい・・・。森が燃えちゃうかと思ったけど、そうならないように炎を操れるんだよな。
「げっ中に人居たんだ。ノブさん言ってよ」
「そういや言わなかったな」
ドロドロになったマイセルから現れた、気絶しているように見える10人の軍人達に歩み寄ると、ショウタは息を確認していく。
「セイシロウ。頼む」
「いいけどさぁ」
ショウタに呼ばれて何やらセイシロウが近付いていくと、重力を操って10人を移動させて並べた後、小さな白い歪みを作り出し、それを10人のすぐ真上に留まらせた。
「それは?」
動画でも見たことない力に思わず究が聞くと、振り返ったセイシロウは呆れたような表情を伺わせた。
「オレの殺生石だよ。普通なら近くに居るだけで命が削られるけど、これは生命エネルギーを反重力で逆に撒き散らしてるから、近くに居ればゆっくりと回復するんだ」
「殺生石・・・ゲームみたいだ」
「まあね。いくら敵でも理由なく殺せないし、仕方ないか。さっさと行こう」
そんな時にどこからともなく悲鳴のようなものが聞こえたのでみんなでその方に向かってみると、そこには青い騎士巨人と戦っているグループが居て、すると僕達が着いた直後に同時に3人の能力者が覚醒し、召喚された鳥型モンスター、二刀流の剣と魔法の融合攻撃、そして怒濤の連続打撃で青い騎士巨人を押し退けていった。
すごいな、色んな人が覚醒してる。
「大丈夫そうだな、オレらは先に進むぞ」
まるで能力者という存在の底力を信じているかのように、至って落ち着いているノブがそう言って歩き出したので、青い騎士巨人と戦っているグループを後にして先に進んでいくと、そこには何やらコロネと同じような黒いキツネと般若のグリフォンが居た。
何してるんだろ。何かちょっとそわそわしてるように見えるけど・・・。
「聖、どうする?」
「え・・・でも、敵じゃないんだし、気にしなくてもいいんじゃないかな」
気にしないで通り過ぎようと歩き出した矢先、なんとチエヒメが2匹に歩み寄った。
「どうしたのじゃ」
「(見張ってるだけだよ)」
「そうか」
「あの」
声をかけると黒いキツネと般若のグリフォンが揃って顔を向けてきて、ふとあの時般若のグリフォンと戦った時を思い出すと変に緊張してしまう。
「向こうに行かないんですか?」
「(もう電波塔はすぐ近くだからね、けど1つ心配事があるんだ)」
心配事?・・・。
「それって・・・」
「(そりゃ、これ以上戦場が拡大しないで欲しいって事だよ。でも別にいいんだ。本当にやばくなったら自分達が何とかするからね。だからこれ以上戦場が広がらないように見張ってるんだ)」
「そうなんだ」
人間同士の、しかも能力者とかマイセルの大群とか、そんな戦争が心配って、何か心苦しいな。チエヒメさんをあっちの世界に帰す訳にはいかないし。そしたら異世界の軍隊はずっと付きまとってくるし。どうしたらいいんだろう。
「聖、行くぞ」
「うん」
僕達能力者が頑張ればいいんだよな。
少し先には4人組の能力者グループが居たがすぐに分かったのは4人共疲弊しているという感じで、見える範囲では異世界の軍隊は居ないので、とりあえず4人に近付いていく。すると1人が僕達に気が付き、英語で話しかけてきた。
ノブさん英語喋れるんだよな、良かった。
ノブが応対していくと、明らかに疲れている4人はまるで後は頼んだと言わんばかりにノブの肩を叩いて去っていった。
「すぐ先だと」
ふう・・・今の内に変身しとこう。
全てのDNA情報を発動すると究も“果ての姿”に変身し、何となくお互いの姿を眺める。
「聖、やっぱいいよな。キメラ感がすごい。何かそっちの方が魔王っぽいよな」
「そうかもね」
ゼロニアを進化させながら究が先頭を進んでいくと、間もなくして青い騎士巨人が2人やって来たが、その背後からはなんと10メートル級の、腕が6本ある紫の機械巨人が姿を現した。
お、出た出た、明らかに強そうなボスキャラだな。
最初に向かったのはシンジで、瞬時にレベル4の右腕を出現させて強烈なパンチを繰り出し、青い騎士巨人を吹き飛ばすが、その直後に何だか景色全体に違和感を抱いた。すると考える間もなく、今まで森だった景色が砂漠になった。
え・・・何だ・・・ここは。
「何だよ、幻って感じじゃないぞ、どうなってんだ?」
究が呟く間にも1人の青い騎士巨人は吹き飛んでいき、紫の機械巨人が6本の腕から衝撃波を連射してきたので黒炎の壁を作って凌いでいく。
森に居たのに・・・。
「もしかして、異世界の軍隊が鉱石で手に入れた能力かな」
「マジかよ。どういう力なんだ?幻覚を見せてるのか?」
柳菜がそう口を開き、ノブが応えている間にもとりあえず辺りを見渡し、何か変なところが無いか観察していく。
「2人、何とか出来る?」
究がそう言ってすぐさま青い騎士巨人に向かっていく中、周りを見渡した柳菜と柳花がアイコンタクトを取ると、直後に2人は揃ってどこかを眺めた。
「うん。森見える。電波塔は、こっから300メートルないくらい」
2人にだけ見えるのか。万渉術で能力をブロックでもしたのかな。
「2人共、案内頼んだぞ」
「うん」
ノブの指示に2人が歩き出すが、紫の機械巨人の怒濤の衝撃波が行く手を阻み、行くに行けずにいると、ショウタが炎の龍を作り出して紫の機械巨人を襲っていく。しかし何やらバリアのようなものが展開されると炎の龍は簡単に押し退けられ、紫の機械巨人は無傷を見せつけていく。
うわ、すごいな、さすがボス。
「ショウタ、炎貸して」
「あぁ」
ん、何だろう。
セイシロウが目の前に歪みを作り出すと同時に、ショウタがそれに炎を注ぐ。すると炎は内側へ内側へと集束していき、やがてまるで太陽を思わせるようなとても濃い炎球が出来上がった。
おお、やっぱり友達なら能力を合わせるのは鉄板だよな。
「右に気を逸らせる」
シンジが宙を蹴って飛び出していき、レベル4形態の右腕で豪快なパンチを繰り出す中、セイシロウが走り出しながら濃い炎球を更にまた少し大きくさせる。
「今だ!」
シンジのパンチでさえ紫の機械巨人のバリアに阻まれる中、そして濃い炎球が勢いよく発射され、見事に死角からそのとてつもない大爆発で紫の機械巨人を襲った。
やった・・・・・あ・・・そんな。
10メートルの巨体でさえ覆うような大爆発だったのに紫の機械巨人は無傷で、連続ではなく強力な1発の衝撃波でシンジを吹き飛ばすとそれからセイシロウやショウタの方にも衝撃波を発射してきて、みんなは再び守りに徹していく。
バリア・・・まさかあれも能力者に対抗した鉱石の能力。
「くそぉ、どうなってんだ。あのバリア、レベルいくつだよ」
「しょうがないなぁ、もう私達の出番しかないんじゃない?」
柳花が手をかざすと急に紫の機械巨人の動きが鈍くなり、直後にショウタが放った炎が紫の機械巨人の脚に当たる。
お、当たった!・・・。やっぱり万渉術すごい。
脚に攻撃が届いた事で紫の機械巨人がよろめき、そこにシンジが豪快に拳を叩きつけると、10メートルの巨体は簡単にバラバラになった。
でも、砂漠はこのままか。能力者が別にいるって事だよな。
「こっちだよ」
ようやく柳花と柳菜についていき始めたと思った矢先、砂漠の向こうではなく、まるで見えない入り口でもあるかのようにいきなり2メートル級の白いマイセルに覆われた人が姿を現した。
何だ、小さいな。いや2メートルは大きいけど、この流れで見たら、小さいな。
「気を付けろよ?大きさにとらわれるな」
「あ、はい」
さすがノブさん。
「ヘルプ!」
「え?何だあいつ」
白いマイセルに覆われていると思った矢先、まるでマイセルという檻に入れられているかのように苦しそうに顔だけ出てきた。
外人さんか。
「ヘルプ!アイ・ガット・カート!」
うわ、捕まっちゃったのかな。こりゃ手加減しないと。あ、うわ紫の奴また来た。
直後に出ていた顔は呑み込まれてしまうと、白いマイセルは周囲一帯に冷気や氷柱を発生させ、自身の頭上には“氷で出来た両腕だけ”を出現させた。
能力者を捕まえて、マイセルがその力を使ってるのかな。うわっと、すぐ近くまで氷柱が。範囲が広いな。
「相手が氷ならオレの出番だ。ドラゴンファイア」
作り出された炎の龍の迫力だけでもう氷のフィールドなんて消し飛ばしてくれるだろうと思ったが、炎の龍が白いマイセルに向かっていくと冷気と氷の壁が立ちはだかり、炎の龍自体の大きさがすぐに小さくなっていく。
そ、そんな・・・。
世界中の能力者が集まって、色んなところで覚醒していっても、それでもどれほど敵が大きなものか。というのを期待して貰えたらと。
ありがとうございました




