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ダウン・サイド・アップ

沸き上がってきたアイデアを胸に留め、すかさず鉱石を握り締めて目を閉じる。

「何を願ったのじゃ」

「DNA情報のレベルアップです」

しかしチエヒメが小さく頷くと、そのまま黙って飲み物を一口飲んだ。

本当に分かってるのかな。

「1回だけ?」

「ううん。レベルアップメモリにも1つの能力としてレベルがあって、レベルアップメモリのレベル分だけ、DNA情報のレベルが上がるんだよ」

「ふーん、オトナリと同じか」

「え?」

ヒカルコはそう言って至って普通な表情で飲み物を一口飲む。

「オトナリ君も、能力をレベルアップさせる能力?」

「まあね」

「へぇ。そうなんだ」

もしかして、意外とそういうの流行ってるのかな。結構革新的だと思ったのに。それより、次はDNA情報の整理だな。

何となく少しだけ上を向けば、頭の中だけでディスプレイ画面が広がり、ストックされているDNA情報の名前が浮かび上がる。

「何を見ておるのじゃ」

「自分の頭の中です。これからDNA情報を整理するんです」

するとチエヒメは手を繋いできて、急に恥ずかしくなってしまう。

「ワシゴリラとは何じゃ」

え・・・。

「何で、分かるん、ですか」

「聖の頭の中を見ておるからじゃ」

そういう、力が・・・。あれもしかしてあの時も?最初の──。

「ワシゴリラぁ?」

そう言ってヒカルコが笑うと凉蘭もニヤつき、何だか自分のネーミングセンスが晒された気がしてまた恥ずかしくなる。

「だって能力者でもない普通のワシとゴリラのDNAだし。でもワシゴリラもレベルアップするし、この際新しく名前考えようかな」

「ワシとゴリラかぁ。何か、ゲームだったらガーゴイルって感じじゃない?」

「あぁ、うん、そうだね」

うわ、鳥井さんとネーミングセンス被った。うん、やっぱりガーゴイル、鉄板だな。あとは野良猫のシロロンにカメレオンを合わせたやつ。

「それには名前は無いのか?」

「あ、はい。普通にカメレオンシロロンです」

「長くない?」

「うん、長い」

「じゃあ、カメロンとか?」

鳥井さん、グイグイ来るな。

「うん、そうだね」

カメロンもレベル2か。それからオッシーはレベル3。黒炎の怪鳥はレベル無いけど、もう1段階リインフォースした感じなのかな。でもレベル3相当だったし、4になるのかな。って事は、合計レベル11・・・考えただけですごい。本当に出来るかな。それこそラーニングのレベルを上げないとキャパオーバーなんじゃないかな。

「問題無いぞ。聖なら」

「え」

「未だに眠ったままの力を呼び起こせば上手くいくのじゃ」

体の芯を燃やす・・・か。

「早速試してきます」

しかしチエヒメはすぐに手を放してくれず、拗ねたように真っ直ぐ見つめてくる。しかしそうかと思いきやその後には手を放してくれたものの、僕の胸の底には変に後ろめたい気持ちだけがペンキのように付いてしまった。

「究、闘技場付き合ってくれない?」

「またか」

「鉱石使って、3つ目の力手に入れたからさ」

「まじか」

「でもまた頭の中でやる事でさ、能力をレベルアップさせる能力」

すると究は目を丸くして隣の柳菜に顔を向ける。

「シノダさんが、オトナリ君もそうなんだって」

「そうか。いや、俺の力じゃ、暴走を止められないし。俺もちょっと秘密の特訓したいから」

えぇー。

「秘密の特訓って」

「秘密だろ。強くなったら話す」

「そっかぁ」

じゃあ、またミントさん達に頼むか。でも究、もう3つの力持っちゃってるし、まさか万渉術絡みの特訓かな。いや柳菜の万渉術で究も万渉術を・・・。なるほど。でも何で秘密なんだろ、まぁいいか。

パワーアップの事と暴走の事を説明し、再びミントさん達に闘技場に来て貰い、ライミになって貰う。

明日の戦争までには、力をマスターさせないと。

「行きます」

「うん」

先ずはガーゴイルだな。

ガーゴイルを発動しても、やっぱり元がワシゴリラだからか体には何も異変は感じないので、一呼吸置いてから黒炎の怪鳥を発動する。

うおっ体が重たい。急に来た。これだけで合計レベルは6だしな。

「大丈夫?」

「はい。体が重たいだけなので。すぐに治りますよ」

あれ、ちょっと意識が・・・・・・・はっ。

気が付けばライミに殴られていて、その衝撃で目が覚めたような感覚の中、ふと見上げた観客席には柳菜が居た。

ふう・・・。

「どうかした?」

「ただの見学だよ」

「そっか」

まさか、強くなった僕をスキャンしに来たとか。体が軽くなってきた、ダウンロード終わったかな。

「ライミさん。多分次からは本格的な暴走になると思います」

「うん分かった」

次はカメロンだな。・・・・・くっ。あれ、何だろ。この感覚。まるで夢の中みたい。何も見えない。何も感じない、いや微かに戦ってる自分の体を感じる。本当に体、コントロール出来ないのかな。本当に、ただ、副作用だからって諦めていいのかな。何か、自分に負けてるよな、これ。何か嫌だな。何とか出来ないかな。そうだ、チエヒメさんが言ってた。体の芯を、ていうか燃やすって何だろ。黒炎で?いや違うよな。気合いって事だよな。・・・・・ふううっ──。

まるで浅い眠りから覚めたような体の重たさがまだ意識を縛っていたが、その一瞬、地に足が着いている感覚が甦った。体の中心から何だか熱くなり、でもこびりついたような眠気がそれを阻んでいて、体は思うように動かない。

「大丈夫?」

動けない。でも動いてないって事は、本能に体が乗っ取られてないって事だよな。あ、体がちょっと軽くなってきた。そうか、ダウンロードが終わっただけか。結局体の芯を燃やすってよく分からなかった。

「どれくらい、戦って、ました?」

「んー、3分くらいかな」

「5分くらいじゃない?」

え、どっちだよ。

「そう?戦ってない柳菜の方が正確だろうし、5分くらいだと思うよ」

や、優しいな。

「そうですか。じゃああと1つなんで──」

ん。誰か来た。しかもスケートみたいに滑って。

「ライミさん。楽しそうじゃん、混ぜてよ」

「うん」

誰だろ。

「聖、この子はテルオ。異世界から来たんだって」

うおっ。

「僕の世界にもオーナー達が来てるから、異世界旅行してるんだよ。趣味なんだよね、能力コレクション」

「そうなんだ」

それは、能力者とは違う力の事かな。

すると直後、テルオは人を丸々隠せるほどの豪華な大盾を右手に出現させた。

「鉱石で手に入れた僕の力はね、アビリティ化なんだ。自然のものとか相手の能力とか、1つの要素をアビリティ化して取り込むんだ。ストック出来る数は無限だけど、今は同時に3つまで装備出来る」

僕と、丸被り・・・。でも僕は人間以外の生き物だけだし。テルオ君は柳菜みたいな感じか。でもストック無限って。

「コピーして取り込むって、何ともならない?」

「うん別に。だって装備してるだけだし。君みたいに、何かこう、一体化って感じじゃない」

「そうなんだ」

「だから、僕の力は戦闘スタイルが沢山作れるってとこがポイントなんだよ」

ん、柳菜も降りてきた。

「柳菜も戦ってくれるの?」

「うん、次が最後でしょ?それから私、名前変えたの」

「え」

「私は柳の花で柳花。力の共有はそのままだけど、感情の共有は止めたの」

リュウカ、か。

「そうなんだ」

「ほら、早く」

「あぁうん」

・・・ふう。このままただ暴走するんじゃ何だし、体の芯を燃やしながら・・・ふううっ。だめだ、何も見えなくなっちゃった。でも、どうせダウンロードが終われば・・・いやこんなんじゃだめだ。ちゃんと強くならなきゃ。ちゃんと、強くなりたい。体の芯でも覚醒でも何でもいい・・・強くなりたい!

「はぁ・・・・・はぁ」

ふと聞こえたのは自分の息づかいだった。次に理解したのは自分の体が膝を落としているという事で、顔を上げると1番近くに居たのは柳花で、ようやく大人しくなったと安堵するような表情をしていた。

「テルオ、大丈夫?」

「うん。むしろ僕も覚醒出来たし、いい戦いだった」

「柳花、僕、覚醒したの?」

「うん。光ったからそうなんじゃない?それに私もしちゃった」

「そっか」

「聖先輩、もう何か、凄まじかった。ラスボスだった」

「へへ、そっか」

あれ、体が、動かない。

急に力が抜けてきたと思ったら勝手に人間に戻り、しかもそのまま倒れてしまい、すると視界に入ってくるように柳花が僕の顔を覗き込んできた。

「ボロボロそうだね。回復する?」

「た・・・のむ」

少しして立ち上がるとライミは2人に戻っていて、何だかスッキリしたような表情をしている気がした。

「聖、大丈夫?」

「はい。何か急に力が抜けちゃって。でもミントさん達の方がすごいですよ。暴走した僕でも勝てないなんて」

「私達も覚醒したからかな」

「そうなんですか」

すごいな、僕が、みんなを覚醒させたのか。

ホールに戻ってチエヒメの隣に戻るとすぐにチエヒメは満足そうな笑みを見せた。

「いい体じゃ」

これなら、勝てるかな。あの人達に。

部屋に戻り、後は日本時間で明日に備えて寝るだけなので、着替えてチエヒメと一緒にベッドに入る。

究、先に帰っちゃうなんて。でも明日になれば戦うし、まあいっか。



「来るぞ!」

防衛も間に合わず、赤い巨人が地面を勢いよく殴ればそこにはまるで隕石でも落ちたかのような衝撃が響き渡り、その間は少なくとも身を守る事しか出来なくなる。薙ぎ倒された木々と、舞い上がる砂埃という、最早この地球の能力者戦争など大したことがないと思ってしまうような悲惨さが視界いっぱいに広がる中、右腕を振り下ろした直後の隙を狙って複数人の能力者達が赤い巨人に攻撃を仕掛けていく。その赤い巨人は戦闘不能になったが、また新しい赤い巨人がやって来て右腕から重低音を響かせると能力者達の方も気絶していく。気絶してしまった能力者達に次々と治療の光を飛ばしていき、何とかそれ以上の負傷を防いでいくが、飛行物体がミサイルを撃ってきたりしてしまうと被害の範囲も広く、目に付いた人に治療の光を飛ばしても、すでにその能力者は息を引き取っていた。

ふう・・・能力者達が集まってきてくれるのはいいけど、中途半端な能力者は犠牲が増える一方だ。実際に即戦力になる人なんて多くないんだよね。

そんな時、赤い巨人と同じくらいに巨大化した能力者がタックルを仕掛け、赤い巨人は倒れ込む。

「深追いはするな!ヴィレッジが最優先だ!」

「治療班!誰か!」

「うおおお!」

ん、あ、あの人、覚醒したのかな。

背中から噴射する光で空を飛び、大剣を持った男性が黒光りする人間を斬り倒すと、その周りの人達の士気も少し上がったような雰囲気になる。それから別の方では魔法攻撃をする女性が覚醒し、また一際強力な雷を操る魔法で黒光りする人間を圧倒していく。

すごい、どんどん能力者が覚醒していく。

ねえねえ!あそこ。

ん?・・・。

小型恐竜のレオンが顔を向けた先を見ると、そこには黒いキツネが独りで居て、近付いていくと小型恐竜のクレイが何やら一緒に居た。

すごい姿勢がいい。普通の動物じゃないのかな。

「テレサ」

「ウルフ」

「ん、そのキツネ、リリコの仲間だ」

「そうなの?」

「(まあね)」

「リリコ達も来てるのか?」

「(自分は独りで来たよ。リリコ達の代わりだし)」

「そうなのか。偵察か?」

「(偵察と、必要があれば戦うよ。自分は元々地球の動物たちを守る為に動いてるから)」

「戦えるの?」

「前に言ってた、アメリカ発祥の絶対に倒せない最強生物だって」

最強生物・・・。普通のキツネなのに。

「リリコの指示か?」

「(自分の意思)」

「こっちはようやく太陽が昇っても日本は夜中だしな。指定自警団を叩き起こすのも何だし、お前の力を貸してくれ」

「(まあいいよ。じゃあもう1人助っ人呼ぼうかな。ところで、あなた達はゲートを破壊したいの?)」

「当然だ。あれがある限りワープホールは消えない」

「(でもあなた達は街を守るので精一杯みたいだね)」

「いづれ勝てる」

「(何で分かるの?)」

「荒療治だが、この戦いで大勢が覚醒してる。つまりこっちの戦力は増大し続けてる」

「(でも緑の細胞だってそうなんじゃないの?)」

「能力者の可能性は無限だ。必ず勝つ」

「(可能性か。リリコも言ってたけど、電波塔があったらドアを開けっ放しみたいなもんだって。結局はそれはつまり、ただのドアって事だよ)」

「どういう事だ」

「(異世界の壁なんて、ただのドアに過ぎないって事。異世界が繋がる事なんて特別な事じゃない)」

「確かに、この世界での戦争の歴史も、異世界との戦争も、大した違いはないのかもな」

「お名前は?」

「(コロネ)」

意外と可愛い名前・・・。

テレサも六事と同じように、黒いキツネに気に入られたんでしょうかね。


ありがとうございました

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