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イブ・オブ・リベンジ

会議も終わってみんながバラけていくので飲み物でも飲もうかと歩き出そうとした瞬間、チエヒメが立ちはだかるように顔を寄せてきた。

「何故力を使わなかったのじゃ」

え、ちょっと怒ってる・・・。

「力って、何だっけ」

「体の芯を燃やせと言ったじゃろ」

「ああ、何かその、タイミング逃しちゃった感じでしたし」

「そうすればあの赤い巨人など容易く倒せたはずじゃ」

「あの、チエヒメさん、僕に何かしたんですか?どういう力なんですか?」

「それは、秘密じゃ」

えぇー。

拗ねたような表情を見せるとチエヒメはドリンクサーバーの方に歩き出していったので、ついていってチエヒメの後にコーヒーをマグカップに注ぐ。

体の芯を燃やすって、どういう意味なんだろう。でもミントさん達の合体の方が、結局強いんじゃないかな。

「聖、修業するぞ」

そう言って究がやって来ると隣にはミント達が居て、頷いてからチエヒメを見ると、一瞬だけ寂しそうな表情を見せたチエヒメは凉蘭とテーブルに着いていった。

コーヒー、入れたばっかりなのに・・・。

「あの、ミントさん達が合体した人、ライミっていうんですか?」

「うん。鉱石を使って得た力でね、今のところ、ライミは指定自警団の中じゃ1番強いの」

すごい。異世界の力だからレベルは無いし、やっぱり合体って、すごいんだな。

ミント達、究と4人で闘技場に入り、そして改めてミント達が合体した姿、ライミを眺める。

人格って、どういう感じなんだろ。

「ライミさんの名前って誰が考えたんですか?」

「ユウコだよ?」

ミントさんと同じ笑顔だ。そりゃそうか。

すでに究が戦闘魔晶たち、ゼロニアを召喚したので、僕もすべてのDNA情報を発動して更にリインフォースする。

あの赤い巨人を倒したのを見てるしな、本気で行かないと。

「行きます」

「うん」

翼に黒炎を溜めて吹き出し、拳に黒炎を溜めて全力のパンチを繰り出す。しかしそれは洗練されたガントレットを着けた手で簡単に叩き払われ、更にはそのまま素早く蹴り飛ばされてしまう。その衝撃、風圧は自分が変身している事を忘れさせるほどで、自分の体が転がる最中、もうすでに敗北感を抱いてしまう。

・・・強い。でもレベルを上げれば。あ、まだストック余ってるんだ。レベルじゃなく、もっと戦力も増強出来る。

戦闘魔晶たち3体を装着したゼロニアが突撃していく間にライミの背後に回り込み、ライミに抱きついて体から黒炎を爆発させる。自分でも黒炎で周りが見えないが、腕を掴まれるとすぐに引き離されて腹にパンチを叩き込まれてしまう。

ぐは・・・っ。

「聖、冷静になって。闇雲な攻撃は良くないよ?」

「・・・はい」

くう、衝撃が内臓に響く。

ミント達は人気みたいで、僕と究が戦ってるところに何人か乱入してきて、それでもライミは誰にも負ける事なくみんなの修業に付き合っていて、それから少ししてホールに戻ると、真っ直ぐチエヒメが見てきたのでチエヒメの隣に座る。

「聖の力はもっと強くなるのか?」

「あ、はい。DNA情報をストック出来る空きがあるので、またラーニングすれば強くなれます」

「すぐに出来るのか?」

「まぁ、ラーニングしたいって思う生き物が居れば、すぐ出来ますけど」

「居ないのか?」

「んー、探せば、見つかるんでしょうけど」

「そんなんでどうするのじゃ。妾を守れないぞ?」

え、何で、チエヒメさんが焦ってるんだろ。

「はい」

強そうな動物、か。野生より誰かの召喚の方がいいのかな。

冷めたコーヒーを一口飲む中、チエヒメはまだ僕の事を真っ直ぐ見てきて、恥ずかしくなってしまう。すると僕がニヤつくとチエヒメも表情が綻び、僕はもっと照れてしまう。

もっと強くならないと。

「あ、アマカゼ君」

近くを通ってきたのですかさず声をかけると、キョトンとした顔を見せながらもプロメテウスと共に歩み寄ってくる。

「ちょっと頼みがあるんだけど」

「うん」

「すごいガルジャン、作ってくれない?」

「え?どういうの?」

「何か、すごい強そうな動物。ラーニングしたいんだ」

「そっか、けど悪いけど、俺はもう新しいガルジャンは作れないんや。ガルジャンカード作った時から。何か、脳内メモリみたいなのが、いっぱいなんかな」

「えー、そんな。じゃあ」

「あたしは嫌よ。面倒臭そう」

プロメさんって言う前から・・・仕方ない。

「そっか分かった」

柳菜どこかな。

「柳菜に頼むの?」

「うん」

「俺もそれがいいと思う」

指定自警団専用ホールなのにすごい賑やかで、見渡すだけでは究や柳菜は見えないので、電話をかけようかポケットに手を入れた時、声をかけられたので振り返る。

「お前、格闘系だよな?さっき見てたけど、オレもそうなんだけど、格闘系だけでバトルロイヤル形式で修業してて、ちょっと入ってくれないかな」

バトルロイヤル・・・。

「あ、はい」

「おう。サンキュー」

ショウジさんも言ってたな。こういう交流は積極的にやった方がいいって。まあいっか。

見つめてきたチエヒメと微笑みあってからその男性についていくと、そこにはショウジが居て、しかしそれよりも何となく僕への視線が多い気がした。

「よっ、噂のバグモンスター」

「あ、どうも」

知らない人だけどとりあえず返事をして、それから集まった5人で闘技場に入って自己紹介も済ませてから各々変身していく。

あ、そうだった。僕まだ鉱石2つしか使ってないんだ。ラーニングと合成じゃなく、まだ力が持てる・・・。そろそろ考えなきゃだめかな。

“黄色い炎と紫の電気を纏う忍者”だったり、“直線だけど光速で移動したり拳と飛ばしてくる人”だったり、“動きは重たいけど驚異的な防御力を誇る戦車風甲冑”という能力の人達、そしてショウジとバトルロイヤルで戦っている中、何となく赤い巨人への敗北感が頭から離れず、今この場では上手く動ける事に逆に無力感を抱いてしまう。

みんなすごいな、全力の僕でも、普通に戦って、いや、僕が普通なのか。シンジ君と互角だって思ってたけど、何か、違うのかな。・・・そっか、僕は、まだ普通なんだ。強いのに負けたんじゃない。僕はまだ、全然強くない。

光速で飛んでくるムネヒロの拳を黒炎のバリアで防ぎ、自分の周囲一帯の地面に黒炎を這わせる。みんなが警戒して離れていく中、向かってきたショウジを地面から立ち上らせた黒炎で捕獲し、更にその黒炎を爆発させる。

「くっそぉ・・・ふう、意識が戻った。トラップか、やるな」

ショウジに気を取られていると背中に衝撃が響き、思わず倒れ込んでしまう。振り返ってもそこには誰も居ない事からきっとムネヒロなので、下手に動き回るより黒炎のバリアを張る事で攻撃に備えていた時、戦車風甲冑のキヨシが極太のビームを放ってきて、それを体で受け止める為にむしろ動けなくなってしまう。

強い・・・。

黒炎のバリアを最大限に分厚くし、ビームを止められた瞬間に横に飛んで逃げていくが、なんとその先には炎と雷の忍者のマルゴが居て、直後に僕の胸元には雷の速度で飛ぶクナイが刺さった。

く・・・。

体が痺れてきたが何とか黒炎で吹き飛ばす中、すでにマルゴは背後に居て、振り返った瞬間にも炎の脇差しで斬られてしまい、黒炎の中に黄色い炎が音を立てて吹き上がる。その直後にも蹴られてしまって後ずさってしまうが、マルゴが追い打ちをかけてきた時に全身から黒炎を大爆発させて逆に吹き飛ばす。しかし吹き飛んで黒炎に燃えるマルゴは霧になって消えていき、直後に背中に雷のクナイが刺さってきた。

うああ・・・くっ。

背中に刺さったクナイを黒炎で吹き飛ばし、マルゴを見ると、マルゴは強敵を嬉しがるように微笑み、まるでかかってこいと言わんばかりに炎の脇差し片手に構えてみせた。

ふう・・・。

黒炎を両手に燃やし、同時に黒炎を鎧みたいに全身に這わし、マルゴに飛び掛かる。先制パンチを繰り出したがそれはかわされてしまい、直後に炎の脇差しが振られてきたのでそれを腕で受け止める。

「なっ」

黄色い炎を纏う刃物が、鈍い音を残して“炎に当たって止まった”状況にマルゴは素早く後退すると、また素早く雷のクナイを投げてきたので“硬くした炎”を振り撒き、クナイを叩き落とす。

元は万渉術の力だし、結構色々出来るんだな。

「流石だな、順応性」

「どうも」

「けど、忍者ってのはこんなもんじゃない」

そう言うと正に忍者のようにマルゴは人差し指だけ立てた形で両手を合わせ、足元に魔方陣っぽいものを出現させた。

あれだな、口寄せだっけ。

「口寄せ・氷天龍獅」

アニメで見るような口寄せという術と同じように、マルゴの背後には4メートル級の生き物が現れ、それはライオンと龍が混ざったような容姿で、全体的に毛並みとか鱗がどこか氷属性っぽい色合いだった。

「ヒテンリュウシ?」

「カッコイイだろ。行くぞ」

「キュオオオン!」

雄叫びを上げた直後、ヒテンリュウシの周囲の空気から群青色の霧が立ち込め、全方位に向かって群青色の氷柱が津波のように発生した。

炎と雷と氷か、魔法忍者だな。それに結構な広範囲攻撃。

地面を這って襲ってくる氷柱を飛び越え、開いて合わせた両手に黒炎を溜めて大きな球状にする。

えいやっ。

当たれば大爆発する黒炎の大玉を飛ばしていくとヒテンリュウシも口から群青色の冷気を吐き、大爆発は無惨にもヒテンリュウシに届く事はなかった。群青と黒の爆風が視界いっぱいに広がり、あっちもこっちが見えないのでまた更に黒炎の大玉を作ろうとした時、背中に雷のクナイが刺さってきた。

あっ・・・つ。

力が抜けて地面に落ちてしまい、溜めた黒炎も消えていき始めてしまったところで、まだ霧のように漂っている2色の爆風からヒテンリュウシが飛び出してくる。

うわあ!

全身から黒炎を爆発させ、雷のクナイは消し飛ばしたものの、同時にヒテンリュウシが冷気を吐いてきて、その瞬間から全身から燃え上がる黒炎と全身を襲ってくる冷気のせめぎ合いになる。

くうう・・・ピンチ。

出しても出してもすぐに黒炎が蒸発してしまうので、黒炎を鉄のように固めて壁を作り、何とか冷気を押さえていく。そしてまるで黒炎という名の宇宙服でも着ているかのように、硬い黒炎ですっぽり全身を覆い、冷気を完全にシャットアウトすると、ヒテンリュウシは冷気を吐くのを止めて周囲一帯に群青の霧を発生させた。

何だ・・・。

しかしその瞬間、ムネヒロの光速の拳がヒテンリュウシの顔に直撃する。

「あれはこっちにとっても厄介なんだよな」

マルゴがムネヒロに向かっていくと、ムネヒロは光速で後退し、更に光速の拳をマルゴに放つ。そのままマルゴとムネヒロが遠くに行ってしまい、僕とヒテンリュウシが2人きりになり、何となく見つめ合う。

マルゴさんにラーニングしていいか聞かないとだけど。

するとそこにキヨシがやって来て、ヒテンリュウシにミサイルを一斉に数発撃ち出していったので、ヒテンリュウシがキヨシに気を向かせてる間にマルゴを追いかける。

うわ。

しかしそこにショウジがやって来て、怒濤の攻撃を仕掛けてきたので仕方なく相手をしていく。

黒炎アーマー、結構重たいけど、すごい。ショウジさんの攻撃、全然痛くない。これも新しいスタイルだな。

防御力も攻撃力も上がった状態でショウジを殴ると音も結構重たくて鈍い感じで、更に数発の後にショウジはもうフラフラして片膝を着いた。

「・・・何だ、それ。強引、だな」

あ、意識戻った。

「僕の黒炎、自由自在系なんで、硬くしました」

「うん、いいじゃん」

結構疲れてきたので結局ヒテンリュウシをラーニングする事なくホールに戻り、でも気持ちの面での収穫があった気がしてチエヒメの隣に戻ってコーヒーを飲むと、チエヒメは僕に鉱石を差し出してきた。

「いつの間に?」

「これがあれば強くなれるんじゃろ?使うのじゃ」

ふと見たヒカルコと凉蘭はニヤついていたので、何となく想像がつきながら鉱石を受け取り、何となく能力の現状を思い描く。

「はい」

新しくラーニングしないで、強くなるアイデア・・・。まだまだ黒炎だけでも可能性がある。自分の中の何かを強く出来たら。

「さっきの青い龍のように変身したらどうじゃ」

単に巨大化か。

「単純に巨大化するのは、つまらないんであんまり」

「つまらない?そんな事考えておるのか」

「だって、一生のものだから」

「そうか。しかし変身と巨大化は違うぞ?変身は進化じゃ」

「進化」

ラーニング、合成・・・進化。能力じゃなく、DNA情報をレベルアップ・・・・・あっ。

聖の強さがどれくらいかっていうのが少し分かりづらいですが、まぁバトルロイヤルであんな感じっていうのが今の聖のレベルって感じですね。


ありがとうございました

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