2つの万能
「どうして日本に?」
「たまたま、異次元のホールが開いた先が日本だっただけじゃ」
大きな音が聞こえたので思わず顔を向けてしまうと、ショウと呼ばれる人が盛大に倒れ込んでいて、すぐに立ち上がってまた向かっていくものの、黒光りする恐竜を模した人間は強敵らしく、戦い方を見ると何となくショウ達が不利に見えた。
さっきだって緑の恐竜と人間が合体したし、あれも同じなのかな。でも緑のより格段に強い。
「テレサ!」
カミーユが逃げるようにやって来る瞬間にも負っている怪我が目に付いたのですぐに治療の光を当てる中、私達の方に1人の黒光りする人間がやって来て、十数メートルの距離から衝撃波を放ってきた。
うわ・・・。
とっさに異世界の女性の手を引いて離れると、衝撃波は1軒の住宅を破壊した。
そんな、こんな時にウルフが居てくれたら。あれ、私の恐竜達は。
「ん?あれ」
黒光りする人間にカミーユが指を差した直後、その向こうからリングが飛んできて黒光りする人間の背中に当たった。しかし黒光りする人間は倒れる事はなく、まるで小石でも当たってきたかのように振り返った。
まさか、ウルフの力じゃ・・・倒せないの?
リングに乗ったウルフが黒光りする人間を通り過ぎ、私達の方にやって来る最中、衝撃波に直撃してしまい、盛大に転がってきた。
「ウルフ!」
「問題無い」
「あっちはどうだ」
「セシル達が来て異次元のホールの封鎖を始めた。もう終わるだろう。戦況も、楽勝ではないが、何とか持ちこたえてる。その人は?」
「日本の人達と一緒に来たんだって。異次元のホールから来たって」
「目的は?」
「妾は逃げてきただけじゃ」
「そうか。カミーユ、行くぞ」
「あぁ」
衝撃波をかわし、上昇したウルフがリングから光の弾を飛ばしていき、カミーユも盾剣を飛ばして斬りかかっていく中、大きな足音に振り返るとそこには白い大型恐竜が黒光りする鱗を纏った姿でやって来た。
「行けそう?」
そう聞くと白い大型恐竜は自信を取り戻した気持ちで頷き、ウルフ達に加勢していった。すると思った通り、白い小型恐竜たちもみんな黒光りする鱗を纏っていて、触ってみるとそれは金属みたいに硬かった。
「マイセルを操れるそなたの力は貴重じゃな」
「操ってる訳じゃなくて、心で通じ合ってるの」
「そうか」
「あら、あなたは戦わないのね」
そんな時にやって来たのは30歳前後に見える美しい女性で、1番の印象はこんな状況でも全く落ち着いている態度だった。
「私は治療専門だから」
「そう」
するとその女性は傍観するようにウルフ達に顔を向ける。
「あなたも治療専門なの?」
「ううん、あたしは戦わないだけよ。気が向いたら戦うわ」
気が向いたら・・・すごく自信があるのかな。それよりウルフ、また飛ばされた。私の恐竜なら防御力も上がったみたいだし大丈夫そうだけど。あ、カミーユ。
直撃はしなかったものの勢いよく転がったカミーユに駆け寄り、治療の光を当てる。
「くそ、強い、オレじゃ、無理かも知れない」
そんな・・・ん。
「あ、居た。プロメテウスー」
「あら坊や。早かったわね」
日本の人達、本当みんな私より若そう。うわ、ペガサス連れてる。
しかも純白のペガサスだけじゃなく、その少年は色んな銃器を体中に合体させた恐竜と、泳ぐように宙に浮くイルカのような尻尾とヨーロピアンな外装、星形の6角形の盾を持ったペンギンも連れていた。
「そのペンギン何?すごい可愛い」
まさか私と似たような能力かな。
「俺の召喚獣やけど」
「へー。私もペガサス連れてるの」
すると少年が私のペガサスを見るとどこか嬉しそうにニヤつき、少年のペガサスも興味を持ったのか、私のペガサスに歩み寄って来た。
動物好きに悪い人居ないよね。
「お揃いだね。私テレサ。あなたは?」
「・・・シノミヤ、アマカゼ」
「え、あなたが万能の超能力のオリジナル?」
「うんまぁそうやけど、そう言えば何で知ってるの?デュナンズ・ナイツってそういう情報収集がすごいの?」
「ううん。私達は神王会のリリコに教えて貰ったの、リリコはオオモリユキトから万能の超能力をコピーしたんだって」
「マジで!?リュウナみたいな人が神王会にも居るなんて」
「ウルフ!」
カミーユの声に振り向くとまたウルフが吹き飛ばされてしまったみたいで、思わずウルフに駆け寄った時、背後からアマカゼのペンギンが颯爽と通り過ぎ、黒光りする人間に向かっていく。するとアマカゼのペンギンは盾から強烈な冷気を吹き掛け、瞬く間に黒光りする人間の動きを封じた。
すごい・・・ただ召喚する私とは、きっと違うんだ。
それからアマカゼの恐竜が追い打ちをかけるようにロケット弾を3連射し、その爆発でもう黒光りする人間はぐったりと倒れ込んだ。
ウルフとカミーユが倒せなかったのに、こんなに簡単に・・・。
「アマカゼの召喚は、普通のとは違うの?」
「召喚は召喚やけど、バンショウジュツは想像を具現化させるものやから」
想像を具現化・・・。
「何でも、想像した通りになるの?」
「まあね。でも人間の想像なんて言うほどやないし」
すごい、想像した事を何でも現実に。それが万能の超能力。
治療の光を当てたウルフとカミーユが立ち上がる頃にはもうすでに黒光りする人間は倒れていて、そんな状況になのか2人はアマカゼに顔を向けると固まった。
「はあ!」
黒炎を力いっぱい溜め込んだ拳を黒光りする人間の顔に叩きつけるが、数歩後ずさっただけで倒れる事はなくすぐに衝撃波を放ってきて、体に纏った黒炎で何とか堪える。
強い・・・。僕の全力でも、互角なのか。だったら。
「究、ベーグ貸して」
「いや、全部着けた方が良い」
ゼロニアにくっついていた3体の戦闘魔晶たちが離れて僕にくっつき、究はゼロニアに乗って下がっていったので、体に電気を纏い、右手から赤黒の炎の剣を出し、左手から4本の吹雪を作り出す。
ふう・・・。
黒光りする人間が先に衝撃波を放ってきたのでガードせず、シバーの特性である“カウンタートラップ”を使って跳ね返し、すかさず4本の吹雪を撃ち放っていく。そして動きを止めている間に炎の剣を振り下ろすが、炎の剣は重たく鈍い音と共に腕で受け止められた。
くっ・・・。黒炎とベーグの炎を混ぜて火力をアップさせているのに。
それでもパンチや衝撃波も相手の攻撃は跳ね返し、僕の体にはほとんどダメージは残らないので、赤黒の炎剣で何度も斬りかかっていき、そして隙が出来た時にスランバーのナックルブリザードを放つと、その強い冷気になのか黒光りする人間は少し動きを鈍らせた。
ん・・・やっぱり、機械だから炎より氷なのかな。
放たれた衝撃波を堪え、すぐさま4本の吹雪を放ち、続けて横殴りの吹雪を放ち、そして最後に全力で蹴り飛ばすと、ようやく黒光りする人間は倒れ込んだ。
やった・・・。
「聖、サンダーフィールド」
「うん。サンダーフィールド!」
周囲の地面から放出する電撃を放つと、体を丸ごと覆った広範囲の電撃に黒光りする人間は痙攣するようにもがき出した。
そっか、機械なら電気も効果的か。んー、ていうかやっぱりすごいな、戦闘魔晶って。
それでも黒光りする人間は程なくして立ち上がるが、僕を真っ直ぐ見てきても体が重たいのか、肩で息をする黒光りする人間は攻撃して来ず、そのまま変な時間が流れる。その瞬間、僕の背後からロケット弾が数発飛んでいき、黒光りする人間を襲っていった。
え?・・・。
振り返るとそこには体中を銃器で強化した、サイボーグのラプトル系恐竜が居て、直後にそのラプトルは頭を下げ、背中にある2本の何かを前に倒し、そして2本の何かの間から電気をちらつかせてから強烈なエネルギー弾を放った。
おっこれは、レールガン。
するとそれに直撃した黒光りする人間は僕の攻撃よりも勢いよく倒れ込んだ。
小さいのに強いな。でも味方なら、もしかしてアマカゼ君のガルジャンかな。
「ヘビー」
そう呼ばれて振り返ったそのラプトルの目線の先にはやっぱりアマカゼが居て、ラプトルが駆け寄ると、黒光りする人間が倒れてる状況にアマカゼは安心したような表情を浮かべた。
「アマカゼ君の方はもう倒したの?」
「うん」
やっぱり、万渉術、最強か。
「ミントさん達は?」
「分かんない、まだやってるのかな」
「あっ」
するとラプトルが走り出していき、まるで楽しそうだと思ったら勝手に行っちゃう犬みたいなラプトルにアマカゼは少し困ったように歩いて追いかけていく。ふと目を向けると倒れている黒光りする人間の体が溶けていき、やがてそれは普通の戦闘スーツの人間となった。
死んじゃったのかな・・・。
戦闘魔晶たちが離れていったので究に振り返ると、安心したような表情の中にも、どこか落胆したような雰囲気を感じさせた。
「何か、まだまだだな、俺達」
「まだレベル3だしさ」
「そうだな」
アマカゼが小走りになってアマカゼの恐竜を追いかけたのをついていくと、翼と鎧の3人の女性達が戦ってるところにアマカゼの恐竜が加勢し、そして黒光りする人間は間もなくして戦闘不能になった。
あの恐竜もすごい。ならアマカゼのペガサスも、すごいのかな。
「お前のレベルは?」
ウルフがアマカゼにそう聞くがアマカゼが人見知りなのか、カーボンアーマーでウルフの顔が見えないからか、少しだけアマカゼの表情が緊張したように見えた。
「一応レベルで言ったら2やけど」
「ウルフ、この子はシノミヤアマカゼだよ」
「何だと。むしろ何でレベルがあるんだ、生まれつきの超能力なんだろ?」
「召喚獣たちは鉱石を使って作ったから、半分はレベルはあるけど」
「半分とは」
ウルフ、そんなに興味あるの。ウルフより強いから?
「えっと、召喚自体はバンショウジュツでも出来るんやけど、沢山は作れないから、鉱石を使って召喚出来る数を増やした。って感じ」
「万能の超能力にも限界はあるのか」
「そりゃあ人間の想像力なんて言うほどやないし」
「・・・なるほど、そういう事か」
・・・あ。
「ウルフ、あれ。異次元のホール、消えていくよ」
リュウナが行ってからちょっと時間経った気もするけど、やっと出来たんだ。
「様子見に行こう」
ウルフがそう言うとその場の雰囲気もそういう感じになり、もうホールから恐竜は出ないだろうからとみんなで向かっていくが、そこに黒光りする人間が2人立ちはだかってきた。すると戦う事が好きなのか、真っ先にアマカゼの恐竜が走っていき、小さなミサイルやロケット弾で黒光りする人間を攻撃していってすぐに黒光りする人間達を後退させていく。
何かもう、アマカゼだけでいいんじゃ・・・いや、私達だって負けてられないよね。
それぞれの能力で空を飛んだりしている中、ふとアマカゼも私も同じくペガサスに乗って飛んでいる姿を見ると、それだけで何となく嬉しくなる。
しかし今度は速いタイプの飛行物体がやって来て、アスファルトの道路に沿ってガトリング砲で射撃してきたので素早く両脇の木々の中へと逃げ込む。私自身は逃げる事しか出来なかったがすでにウルフのリングが飛行物体を襲っていて、それでも飛行物体はホバリングからの左右への急速発進で素早さを見せつけてくる。
飛行機があんなに機敏なんて、どんな技術なんだろう。
それでもこちらの方が数で勝っていて、アマカゼのペンギンが強烈な冷気を吹き掛け、アマカゼの恐竜がロケット弾を撃ち込み、ウルフがリングを叩きつけると飛行物体は墜落していった。
あ、住宅地に・・・墜ちてく。
「ウルフ、私あっちに行くから」
「ウルフ、オレがついてるから、行ってくれ。あとは、お前、来てくれるか」
「あ、うん」
アマカゼが来るとプロメテウスも来て、そしてカミーユと共に飛行物体が墜落した方へ向かっていく。幸いにも住宅に墜落する事はなく、地面を窪ませ、煙を吹かしている飛行物体を眺めているがそこから一向にパイロットが出てくる雰囲気はない。
出てきたら囲まれちゃうし、出てきたくないのは分かるけど。
ふとプロメテウスを見るとこんな状況なのにまるで飛行物体を気にする事なく遠くを見ていて、間もなくしてアマカゼの恐竜が飛行物体に近付いていき、爪で半透明なキャノピーをノックする。
「キャノピー、引き剥がすか」
「いや、そもそも誰も乗ってないみたい」
呟いたカミーユにアマカゼがそう応える中、アマカゼの恐竜は子供のようにそのまま飛行物体を登っていく。
「無人機って事か?」
「うん。あの緑の恐竜の細胞が機械に入り込んでるみたいだし、それで勝手に動いてるんやないかな」
そんな事も分かるんだ・・・。バンショウジュツって、マナライズも出来るって事か。
万渉術とマイセル、2つの万能の対決。今のところ天風達が優勢ですね。
ありがとうございました




