そして彼女たちは出会った
セシルとカミーユと戦っていた緑の人間達も逃げていったので、空に飛び上がって高い位置からブリュンヒルデを捜して降りていく。
「わあ、可愛いわね。どうなってるのよ」
「小さく再生して襲って来た恐竜たちにペガサスが食べられちゃって」
「ふーん、それに大きい方のは味方として心強そうだし、テレサの力も役に立ってるわね」
「うん」
「第3波が来る前にヨハン達がどうにかしてくれるといいんだけど。ちょっと様子見に行ってみようかしら。みんなは待機しててね」
異次元のホールは・・・まだあるんだ。結局、あれをどうにかしないといけないんだよね。
「ウルフ、日本の時って、どうやって異次元のホールが消えたのかな」
「そりゃあ、あいつらが消したんだろ」
「でも自由に消せるなら、どうしてこの前のはすぐに消しちゃったのかな。侵略ならたった2機って少なくない?」
「テレサ、能力者の誰かが強制的に閉じたって考えてるの?」
セシルが聞いてきたので頷く。
「けどそもそも異次元のホールを閉じれる能力ってなんだよ。来るかどうかも分からない異次元のホールの為に能力者になる奴なんて居ないだろ」
んー。確かに。
「恐らく前のは偵察に来ただけなんじゃないか?」
カミーユがそう言うとセシルも同意するような雰囲気を見せてくるが、ふとウルフを見ると、その表情は何かを考えているようなものだった。何となく目を留めていたが白い小型恐竜が1体すり寄って来たので抱き上げる。
「もしかしたら、リリコならどうにか出来るんじゃないか?」
「まぁ、確かにリリコは万能系の能力者だし。また協力して貰っちゃう?」
「そもそも、異次元のホールを閉じたのリリコなんじゃないか?」
カミーユ、さっきまで否定的だったのに。
セシルがリリコに連絡してる間に再びペガサスに乗って飛び上がり、この距離ではすごく小さい異次元のホールを眺める。すると直後に異次元のホールからはこれまでの飛行物体とは違うようなものが出てきた。
遠くて分からないけど、うわっ。速い。アメリカの戦闘機のミサイル、簡単にかわした。
「みんな、新しい形の飛行物体が出てきたよ」
「どんなのだよ」
すぐにカミーユがそう応えたので再び顔を向けた時、アメリカの戦闘機が煙を立ち上らせながらこちらの方に墜落してきたので、考えるより向かっていき、爆炎を吹かした戦闘機に近付く。
「テレサ!」
どうしよう。とりあえず治療を。
「俺が行く」
カーボンアーマーを身に纏ったウルフが私の横を素早く通り過ぎて行く最中にも治療の光を飛ばしていき、そしてキャノピーを力ずくで取り外し、ウルフがパイロットを助け出したところで戦闘機がまた小さく爆発する。もう回復して走って逃げて来ながら、パイロットはヘルメットを脱ぐ。
「悪い。助かったよ」
「デュナンズ・ナイツとして当然だ」
えっ。
「カミーユは何もしてないでしょ」
セシルも冗談だと分かって笑っているカミーユに言葉を返す中、ウルフから自分達は街を守ってると言われるとパイロット男性は味方を心強く思うように頷き、異次元のホールの方面へと駆けていった。
怪我を治したけど、また別の戦闘機に乗って戦うんだよね。
「リリコと話したけど、異次元のホールを閉じたのはリリコじゃないって。それからあの異世界はリリコの出身で、素性をバラされたくなかったら下手な真似はするなって言われてるみたいで、大人しくしたいって」
じゃあ、仕方ないのかな。
「けどそもそも、リリコは元々居た人の能力をマナライズして、それを能力で自分にコピーしたから、そのオリジナルを捜したらどうかって」
オリジナル・・・。
「名前はオオモリユキト、シノミヤアマカゼ。この2人はまた別の異世界から来て、生まれつき万能の超能力の持った人間だって。で、後はリリコと同じようにその超能力を自分にコピーしたナリタニリュウナっていう女の子も居て、シノミヤアマカゼとナリタニリュウナは指定自警団だって」
「おいおいちょっと待てよ。万能の超能力?しかもそれが日本に4人も居るって」
「しかもオオモリユキトって、前に日本でドレイク達と戦ったヒーローキラーだって。じゃあ、やっぱり指定自警団かなぁ」
「おいおい、何でそんな冷静なんだよ」
「カミーユが慌ててるだけでしょ」
「え?」
カミーユがウルフと私を見てきても私達が冷静だからか、カミーユは戸惑いながらも落ち着いていく。
「いちいち異世界や超能力に驚いてられない。このまま異次元のホールを放置していたらキリが無い。早く手を打たないとだろ?」
「そうだけどさ。まぁ、いいか。じゃあ指定自警団にコンタクトを取るのをヨハンに報告しないと。いや、どうやって指定自警団にコンタクト取るんだよ」
あ・・・。そういえば。
「大丈夫。リリコに頼むから。知りたい人の電話番号教えてくれるって」
電話番号、何か、神様みたい。すべての人の電話番号教えてくれるって・・・。
「そうなのか。じゃあどうする。やっぱりオリジナルの、何だっけ。シノミヤか」
「うん、そうだね、私もそれでいいと思うけど」
セシルがウルフを見てウルフが同意すると、次に私を見てくる。
「私も賛成」
「なら俺がブリュンヒルデとヨハンに報告してくる。テレサ、セシル達と待っててくれ」
「うん」
ウルフがリングに乗って飛んでいく後ろ姿を何となく眺めていると、セシルが電話をかけたのでふと耳を澄ます。
「リリコ、シノミヤアマカゼとナリタニリュウナの番号、教えてくれる?うん念の為。ありがとう、今度何か奢るね」
何だ、さすがセシル。
「リリコが番号をメールしてくれるって」
「おいおい最初からそう言うならそう言ってくれよ」
「ううん。今考えたの」
・・・ん?えっと、あれ、小さいのが1体居ない。
「おーい。みんなー、集まってー」
しかしやって来たのは4体だけで、何となく心で感じる方へと歩いて行くと、最後の1体は何やら穴を掘っていた。
「何してるの?」
直径1メートルくらいの幅を足首くらいまで掘っていたその場所には、それが何か分からないほど眩しいものが埋められていて、一旦その上に乗っている白い小型恐竜を抱き上げる。
「ん、まだ掘りたいの?・・・分かった」
すると今度は5体全員が参加して穴を掘り出し、一気にそれの全貌が明らかになると、ちょうどそこにカミーユがやって来た。
「そいつら、犬か」
「遊んでるだけだよ。臭いとかじゃなくて、光ってるのが気になるから掘ってたって」
「ふーん。シノミヤアマカゼの番号は分からないってさ。異世界の人間だからだろうって。今ナリタニリュウナと話してる」
「そっか」
「それは?」
「異世界の照明装置、かな」
「そうだろうな。こんなもの、いつ埋めたんだ」
「今はここは夜だし、日が落ちてから目立たないようにやったのかな」
「そうだな。こんなでかい照明なのに、眩しくない。これが異世界の技術ねぇ」
「2人共っ・・・リュウナだった。日本の異次元のホール閉じたの。今から来てくれるって」
良かった。ウルフ達、大丈夫かな。
程なくして何の前触れもなく、そこに“宙に浮く楕円形の全身鏡”が出現し、水面のように揺らめくそこからなんと9人の人達がぞろぞろ出てきた。
何で?・・・。
「すごいな、ここだけ明るいなんて」
リュウナって女の子なんだよね。えっと。女性が6人で、女の子っていうような見た目は、2人かなぁ。
「あなたがリュウナ?」
「ううん」
セシルが声をかけるがどうやら違ったらしく、直後に自分がリュウナだと言って小さく手を上げた女の子を見る。
私より年下かな。
「リュウナだけでいいのに何でこんなに来たんだよ」
「僕達、チームで活動してるから」
カミーユのどこか顔見知りのような態度に、1人の男の子も同じような態度でそう応える。
「そういえば、セシルさん達の名前は聞いたけど、私以外は紹介してなかったよね?」
「あぁうん。でも今は、異次元のホールが先、リュウナ、お願いしていい?それで、私達は今この街を守ってるから、他はここに残って欲しいの。カミーユはテレサとここに、私はリュウナと行くから」
セシル達、顔見知りだったんだ。
「分かった」
その直後、異次元のホールからは緑じゃない巨大な恐竜っぽい生き物が出てきて、同時に速いタイプの飛行物体も1機こっちの方にやって来る。
出た・・・。でも。
「聖、緑じゃないぞ」
「新型かな。緑のじゃ能力者には勝てないって思ったのかな」
ベースはティラノサウルスだが、トリケラトプスみたいな角が生えてたり、何より鉄っぽい鱗に覆われて強そうなその生き物が数体やって来たので、とりあえずすべてのDNA情報を発動する。最初に向かっていったのは翼の生えた白いティラノサウルスで、しかし大きさは同じくらいなのに、直後白いティラノサウルスは簡単に角で突き上げられて激しく吹き飛ばされてしまった。
うわっ。
僕の下に飛んできた白いティラノサウルスをとりあえず避け、黒炎を翼から噴射させながら“黒光りする恐竜”に体当たりする。
硬いっ。
吹き飛びはしたものの手応えは弱く、しかも細胞のようにバラバラにならないそいつはすぐに立ち上がり、口から衝撃波を放った。
くっ・・・。強いな。
直撃してしまい吹き飛ばされたので黒炎を吹き出して反動を相殺するが、すでにそいつは突撃してきて、黒炎を背中から吹き出し続けて体で受け止める。
うおおっ。強い。くっ。
リインフォースして何とか後退は防いだが、それでもそいつは足を踏ん張り、その力で地面を窪ませる。
あの人、すごいな。互角っぽい。
「みんな隠れて」
白い小型恐竜たちと共に少し下がり、傷を治した白い大型恐竜を再び前に出させるが、私に振り向いた白い大型恐竜は恐怖を訴えてくる。
うーん、どうしよう。
そんな時に黒光りする恐竜が1体、木々を薙ぎ倒しながら私の方に向かってきて、白い大型恐竜と対峙する。
「守るだけでいいから」
闘牛みたいに足で地面を掻き、黒光りする恐竜が向かって来ようという瞬間、どこからともなく一閃の稲光が落ちてきて黒光りする恐竜を襲った。
ん・・・。
倒れる事もなく、少し屈んだだけで一見効果が無いように見えたが、動き出した黒光りする恐竜の動きが鈍くなり、それはまるで故障したロボットのような印象を受けた。
鱗の隙間から電気が・・・。でも、チャンス。
そこですかさず白い大型恐竜が首に噛みつき、黒光りする恐竜を投げ倒した。暴れ出したもののその動きもまだ鈍くて、そしてそのまま白い大型恐竜が噛みつきの力を強めるが、黒光りする恐竜に蹴飛ばされてしまう。
わ、また。
首から血を流しながらもゆっくり立ち上がり、そして喉を鳴らすような呻き声を響かせたところで、白い翼を生やし白黒の鎧を纏った2人の女性達がやって来て黒光りする恐竜を殴った。
「聖、ちょっと離れて」
背後からゼロニアに乗っている究がそう言ってきたので、体で押さえつけている中で体から前面に向けて黒炎を爆発させて黒光りする恐竜を吹き飛ばす。
「ミニマム・バーン!」
戦闘魔晶たちがくっつき合って、黒光りする恐竜に向かって赤、青、黄の淡い光輪が一点に集中していき、そして3色の大爆発が引き起こされる。
ふう、やったかな。
爆風が収まると黒光りする恐竜はバラバラになっていて、ふと思ったのは細胞っぽさがないという事だった。
何だろう、機械と、生物が混ざったような感じ、なのかな。
「さすが魔王」
「まあね。お、違うのが来た。人間みたいだな」
やって来たのは3メートル級の、まるで黒光りする恐竜が人間の形をしたような奴で、十数メートルか離れてる位置から直後にそいつは右手から衝撃波を放ってきて、前面に黒炎を撒いてガードするが黒炎は消え、僕は少し吹き飛ばされる。
くっ・・・さっきの恐竜のより強いかも。
白い翼の女性達のパンチや黒い光のビームという攻撃で、体中が砕けてる黒光りする恐竜は倒れ、動かなくなる。
すごいな、日本の人達も。
「ミントさんライムさん。あっちからまた来た」
同じく白い翼を生やし白い鎧を纏った女性がやって来てそう言うと3人はその方向に向かったので、とりあえず怪我人が居ないかと歩き出していく。
ん、あの人は、一緒に来た人だけど、全然戦おうとしない。私みたいな治療役かな。
「あの」
1軒の住宅の近くで立っていた女性に近付くと、私を見た途端その女性は白い小型恐竜に目線を落とし、首を傾げる。
「何じゃそのマイセルは、そなたが操っておるのか?」
わぁ、初めて聞くような日本語。
「マイセル?」
「彼奴らの道具じゃ。いかようにも形を作れる。緑色の状態はベースで、あのように鉄や機械を取り込ませて強くする事も出来るのじゃ」
「何で知ってるの?もしかして、マナライズ?」
「いや。妾も彼奴らの世界から来たから知ってるだけじゃ」
え、この人。あの異次元のホールから?何で日本の能力者達と一緒に。
第二章では神王会とデュナンズ・ナイツの共闘を描いたので、第三章ではそこにいよいよ指定自警団も入っていきます。しかしその分、敵のスケールも大きくなっていきます。
ありがとうございました




