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谷を這う竜

ん、何だろう。この人達も、ファンかな。

「自分はヤマザキリクジ。こっちはリリコ。自分達、神王会だよ」

「え」

神王会・・・。会ったこと事あるのかな。会ったとしてもみんな白いし、顔分かんないしな。

「一応、デュナンズ・ナイツのガブルエルが野球場に来た時、ちょっと話した事あるけど」

ガブルエル・・・。何かグレンカイとか、オオモリユキトが来た、乱闘っぽくなったあの時か。

すると2人に近くにあったベンチに連れられ、4人並んで座る。

「実はね、リリコ、チエヒメさんと同じ世界から来たんだよ」

「えっ同じ世界。いつから?」

「かなり前かな。デュナンズ・ナイツの動乱が始まる結構前くらいかなぁ」

動乱・・・。

「それで事情もちょっと似てる仲間って感じだしさ。話してみたいなって思って」

ふとチエヒメを見ると、同じ世界から来て、しかもあの軍隊の仲間じゃないという事もあってか、変に敵意を向けたり警戒したりせず、ただキョトンとしていた。

「どこの国の者じゃ」

「私はトランバースだよ」

「そうか。名は聞いた事ある。そなたはどうやってこの世界に来たのじゃ」

何となく感じたのは、何やらヤマザキリクジという男性の、まるで面白いものを見るような、でも僕達に対して純粋に興味を持っているような、子供のような眼差し。そして同時に、すでに僕の事を知ってるかのような距離感の近さ。

「私、向こうで異次元のホールを研究してて、その時は安定されてない実験段階だったんだけど、半ば強引に」

「強引。何故じゃ」

「逃げる為だよ。国の王子からね。無理矢理結婚させられそうになっちゃったから」

無理矢理・・・王子だから権力すごいのかな。

「断ったら死刑なんだって」

するとそう言ってヤマザキリクジが落ち着いた顔を見せる。

えー、急に恐いな。

「それって、まさか、あの軍隊って、リリコさんを追いかけて来たの?」

「ううん、リリコが居たのはトランバースっていう国で、あの軍隊はダコステイダって国のものだから。でも2つの国は同盟国だから、多分いつかはトランバースも来ると思う」

すごい、情報だ。

「その、あの軍隊の事、詳しく知ってたら、教えて欲しいんだけど」

「別にいいよ」

やった。

「やっぱり、侵略目的で来たのかな」

「そうみたいね。チエヒメさんの力を使いたいみたい。今は世界の情報を収集してるみたい」

「何で分かるの?」

「マナライザーだからね。リリコの世界には、見ただけでその人や物の情報を解析出来る超能力があるんだ。で、自分はリリコにマナライズの力を使えるようにして貰ったんだよ」

ノブさんの事言ってた軍隊の人の事か。

「見ただけって、どれくらい?」

「全部だよ。名前とか能力とか感情とか記憶とか遺伝子情報とか。実はね、神王会はデュナンズ・ナイツと協力するようになったんだよ」

「え、そう、なんだ」

独立組織同士だからなのかな。

「それでデュナンズ・ナイツの人にも言ったけど、マナライズはインターネットの世界も自由に見れて、マナライズは人体から発する電磁波でやってるから、触らなくても機械が操作出来るんだ。つまり、マナライズを使えば、このネットで繋がる世界を支配出来るんだよ」

世界を支配・・・。マナライズ。それが、異世界の力。

「それ、すごくヤバくない?」

「うんヤバイね」

そんな、顔がヤバそうじゃない。

するとヤマザキリクジは何やら勝手に微笑んだ。

「きっともう、情報だけならあの軍隊に掌握されてるんじゃないかなぁ」

そんな、急に恐いな。もう支配されてる・・・。

「ど、どうしたらいいのかな」

「うーん。でも能力者が集まれば、まぁ不利にはならないし、大丈夫だと思うけど」

「そう、だよね。ありがとう、沢山教えてくれて」

「うん」

ヤマザキリクジがリリコを見ると、まるで通じ合った夫婦みたいにリリコは頷いた。

「良かったね。きっとこれが運命なんだよ」

リリコがそう聞く瞬間、その優しい眼差しでも感情や記憶を見透かしてると思うと少し恐くなってしまう。

「でも何でそんなに結婚したいの?」

え、聞いてもない事を。これがマナライズか。

「妾が何故人間の女なのかは分からぬ。しかしそれを考えるより、女の幸せを考えた方がいいと、そう言われたのじゃ。妾の世話役に」

「そうだね、それでも女に生まれたんだもんね。それなら私も女の幸せ、色々教えてあげるよ」

「そうか、礼を言うぞ」

「あの、やっぱり神王会って組織としては指定自警団と協力は出来ないんだよね?」

「まあね。でも自分はそういうのあんまり考えてないから、情報提供くらいはいいんじゃないかなぁって。そのお陰で結局デュナンズ・ナイツと仲良く出来たし」



「大丈夫なのか?出席日数」

「大丈夫。私も覚悟したの、例え留年しても、勉強は諦めないって」

「そうか。・・・テレサ、新しく鉱石使う気あるか?」

ウルフと2人で公園を歩きながらペガサスの首筋を撫でているとウルフがそう聞いてきて、顔を向けるとその表情は真剣なものだった。

「今のところは考えてないけど、何?ウルフ考えてるの?」

「あぁ。あと1つ力を持てるんだ。この前の戦いで、俺は自分の力がまだまだだと思い知った。それからずっと考えていたんだ。ブリュンヒルデやクリスティーナに相手をして貰ったが、やはりレベルを上げるだけじゃなく、新しく力を付けた方がいいと思ってな」

「ウルフも使うなら私も使うよ」

「まさか戦闘用か?」

「ううん。サポート用」

「そうか、ならいい」

「何?私がどんな力を付けようが勝手じゃない?」

何となく強気にそう返してしまうと、ウルフは何故か戸惑ったような顔色を伺わせた後、同意を見せるように落ち着いた。

「そうだな。それに治療の力のレベルも上げた方がいいんじゃないか?」

「うん。攻撃タイプじゃない力のレベルアップ方法って基本的に瞑想なんだけど、ちょっと苦手なんだよね。だから鉱石を使ってレベルを上げたんだけど、また鉱石使おうかな。それで、新しい力はどういうものにするの?」

「リングの力と相乗効果が出るようなものがいい」

そんな時にウルフの携帯電話が鳴り、ウルフは携帯電話を耳に当てながら近くのベンチに座った。

「何だカミーユ。あぁまだ日本だ。あぁ終わった。俺とテレサは近くの公園に。何だって・・・そうか。俺達も向かう」

ん、急にどうしたんだろう。

「テレサ。アメリカのグランドキャニオンに、日本で出現したものと同じ異次元のゲートが出現した。しかも緑の恐竜もだ」

「いよいよ動き出したって事?」

「だろうな。ヨハン達にはセシルが連絡した。・・・ヨハン、あぁ、分かった。・・・テレサ、ロサンゼルス支部で一旦落ち合う事になった。行こう」

「うん。ウルフ、落ち着いて。戦う前に鉱石持っていった方がいいよ」

「あぁそうだな。ていうか落ち着いてるよ」

ロサンゼルス支部に向かうとそこにはすでにヨハン、ブリュンヒルデ、セシル、カミーユが居て、ふと見たブリュンヒルデの手にはテイクアウトしてきたのかコーヒーが握られていた。

「ブリュンヒルデ」

「これはあれよ、買った途端に呼び出しがかかったから、捨てる訳にはいかなくて」

ウルフにすかさず説明する間にも、他のデュナンズ・ナイツの人達は各々のシールキーの扉でこの場を去っていき、その時にジャックが扉を開けながらヨハンを呼んだ。

「あぁ、では私達も行こう」

グランドキャニオンビレッジの適当な建物の壁に作った扉を抜けると、空港の方面の上空には例の異次元のホールがあり、すでに3機の飛行物体が出現していて、更には緑の恐竜もグランドキャニオンビレッジを侵略しようというように我が物顔で走っていた。しかしすぐに感じた違和感は、そこは夜の10時頃にも拘わらず、すごく明るいという事だった。

何、これ。まるでこの辺りだけ昼間みたい。誰かの能力かな。

「どうなってる」

「恐らく異世界の軍隊の仕業だろう。ロサンゼルス支部の中にこういう能力者が居るとは聞いてないからね」

「夜中の間に侵略しようとでも考えたんだろうが、これほど明るいとこっちに取っても好都合だな」

カミーユの呟きにヨハンが応えている間にもペガサスを出して背中に乗り、ライフルの銃声が聞こえる方へ向かっていく。するとそこにはライフル1本で緑の恐竜と戦う1人の初老の男性がいた。しかし直後に男性はティラノサウルスの尻尾に叩かれて飛ばされてしまう。

「逃げて!」

「家に、子供が居るんだ・・・」

「私達デュナンズ・ナイツに任せて」

「ガアアア」

その瞬間にもティラノサウルスが私の方に向かってきて、戦える力は無いのでただ恐怖に体がすくんでしまったが、直後にウルフのリングが飛んできてティラノサウルスの首を落とした。

・・・ふう。

「テレサ、その人を避難させてくれ」

「うん。でも家に子供が居るって。家で隠れてた方がいいんじゃないかな」

「家が壊されたら意味がないだろ」

「だったら家が壊れる前に、何とかしてくれ」

初老の男性が辛そうに立ち上がり、鋭い眼差しでそう言うとウルフは黙って頷き、私を見た。

「この人を家に避難させてくれ」

「うん」

ウルフはリングに乗って飛び上がったのでペガサスから降り、ライフルを拾った男性に癒しの光を施す。

「何だ、体が軽く」

「私、人の傷を癒せるの」

「そうか」

すると闘志まで立ち上がってしまったのか、男性はライフルのハンドルを引いた。

「逃げなきゃだめだよ」

「自分達の住み処だぞ。宇宙人の侵略になんか負けるか」

「でもライフルじゃ倒せないでしょ?子供の傍にいてあげてよ」

「あんたはどうやって戦うんだ」

「私は、治療専門だから」

すると男性は呆れたように溜め息を吐き、最早私には子供を見るような眼差しを向けてきた。

「能力者がいれば恐竜なんか問題じゃないから、ね?」

言葉は返して来ないが表情には納得が伺え、それから男性の家だという住宅に着くと、扉から出てきた家族の人と男性がハグをして、そんな状況に私自身も安心してしまう。

「ウルフ」

飛んでいるウルフに呼びかけ、ウルフが降りてくる最中にもティラノサウルスが数メートル先に姿を現すと、すかさずリングが飛んでいき、ティラノサウルスを斬り伏せた。

思わず飛び出しちゃったけど。

「ヨハン達は?」

「俺達ヨハン派はこの住宅地を守る事になった。ヨハンとブリュンヒルデ、セシルとカミーユがそれぞれコンビになって散らばってる」

「他のみんなは飛行物体と戦ってるの?」

「どうだかな。恐竜達を放った事自体を侵略だと思うなら、ジャックなら飛行物体にも手を出すんじゃないか?」

「そっか。あ、また来た」

指を差したトリケラトプスにリングが飛んでいく中、ペガサスが鳴いたので顔を向けると別の方からはティラノサウルスよりかは少し小さい背ビレの付いた恐竜が2体やって来たので、ペガサスに乗って一先ず上空に逃げる。しかし直後、1体の恐竜が私に向かってジャンプしてきた。

あっ!・・・。

「きゃあっ」

ペガサスの足でも噛み付かれてしまったのか、思わず宙に投げ出されてしまうが直後にウルフが手を掴んでくれて、ウルフの腕1本でぶら下がっている状況になったところでペガサスが鳴いたので振り返ると、なんとペガサスは恐竜に食べられてしまった。

そんな・・・。

ゴクッと恐竜が食べたものを飲み込む仕草が動物感を感じさせた直後、なんとその恐竜は白い体毛に覆われ、白い翼を生やした。

えっ・・・。

足場がリングだけなので、引き上げて貰ったウルフを思わず抱きしめながらも、白くなった恐竜がどこかに去っていくのを何となく眺めていく。

「大丈夫か」

「うん」

ウルフに顔を向けた直後、ウルフは顔だけカーボンアーマーを解く。

近い・・・わっわわ。

「おい動くな」

「うん」

強く抱き寄せられた事に自分でもドキドキしてしまうのを自覚した後、地面に降ろして貰ってからペガサスを出す。

「あの恐竜、ペガサスみたいになっちゃった」

「日本では細胞の塊だという見解になったよな。もしかしたら、食べたものを取り込む力があるのか。とりあえず取り逃がしたそいつを追いかけよう」

「うん」

家や木があっても空を飛べば障害物なんて関係ないので、ウルフと並んで空を飛び、白い恐竜が去っていった方に向かうと、白い恐竜が居たところにはブリュンヒルデが居た。

「ブリュンヒルデ」

「あら、どうしたの?」

「それ、私のペガサス食べちゃったの。そしたらそんな風になっちゃって」

「そうなのね」

「何で殺さないんだ?」

「だって、襲って来ないからよ」

・・・お腹いっぱいなのかな。

「いや、だからって恐竜だぞ。ていうかヨハンは」

「私達は1人ずつでも問題ないわ」

「ねえ」

ペガサスに乗りながら白い恐竜に話しかけると、まるでペガサスのように反応して振り返ってきた。

肌質も、瞳も、もう普通の恐竜みたい。でも食べたものを取り込むなら。

「回って」

すると白い恐竜は足音を響かせ、1回転した。

「あら、仲間になったって事かしら」

「私のペガサス、私と心で繋がってるから。食べたものを取り込むなら、きっと能力の特徴も取り込むのかなって」

「そうね。あり得るわね。じゃあ私は別の恐竜を倒しに行くから」

ブリュンヒルデが飛び去っていった後、足音が聞こえてきたので注目していると、1軒の家の向こうからやって来た恐竜はメタリックグリーンではなく、しかも普通の恐竜ではあり得ない、4本の長い腕があった。

・・・何あれ。

ただの移動手段、子供の心を和ませる為のもの、そんなペガサスがテレサにとって頼もしい仲間になっていきます。治療専門能力者でもひょんな事から活躍出来るようになる、そんな主人公属性ですね。


ありがとうございました

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