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そして彼らは出会った2

「ヨハン、アメリカが戦闘機を飛ばしたみたいよ」

ブリュンヒルデがスイーツだけ食べたいと入ったお店で、オーダーしたものを待ってる中、携帯電話を見ながらブリュンヒルデがそう口を開く。

「領空に入ったのか。アメリカの事だ、攻撃を仕掛ける可能性は高いだろうな」

「ミサイル撃ったら、そのまま戦争になっちゃうの?」

そう聞くと私を見たヨハンはそれだけでも答えになるような、深刻そうな顔で固まった。

「・・・恐らく。だが、能力者ではない軍隊では、歯が立たないだろうな。マナライズは、機械系統を見るだけじゃなく、操作する事も出来るとリクジは言っていた。つまりそれは、マナライズで核ミサイルを操れるという事だ」

核ミサイル・・・そんな。

「じゃあアメリカ政府がミサイルを撃って飛行物体を攻撃したとして、戦争になったら、あいつらはマナライズで核ミサイルを操ってアメリカを攻撃するのか?」

ウルフの顔にも深刻さが伝染するが、するとヨハン自身は何かを思い巡らせるようにむしろ他人事のような余裕さを伺わせた。

「例え核が撃たれても、能力者が居れば何とかなるだろう。問題は、そうなったらアメリカは世界からバッシングを受けるという事だな。念の為、ジャックに言っておくか」

「お待たせしましたぁー」

まるでパンケーキ自身が写真を撮ってくれと言ってるくらい華やかに盛り付けられたパンケーキが運ばれてきて、思わずブリュンヒルデと微笑み合う。それからヨハンが電話をしている中、ヨハンとウルフには軽食としてちょうどいいサンドイッチが運ばれてきた。

そっちも美味しそうだなぁ。



「電話だ」

マサからか。

「はいはい」

「今どこだ」

「リリコ達と大阪に遊びに来てる」

「じゃあむしろ近いか。別に出動はしなくていいぞ、紅蓮会の動きが怪しいってだけ広島支部から通達があった」

「何かしたの?また仲間集め?」

「恐らくな。杉内は今や単体能力がレベル4だしな。本部も動きに少し敏感になってるだけだろう。それより、個人的には異世界の飛行物体に、アメリカが戦闘機を向かわせたってニュースが気になる」

「へー、戦争になるのかな」

「さあな。じゃあ」

「うん」

戦争かぁ。マナライズだけじゃなく、エイバーって人達もやって来たら、どうなっちゃうんだろう。でもナウレトさんには会ってみたいな。

「りっくん」

朗らかな微笑みで安心感を頭に流し込んでくると、それがまるで心を撫でられるように心地がよく、それから食べ終わったたこ焼きの容器をゴミ箱に捨て、何とものんびりと歩いていく。



ん、何か騒がしいな。

ニフレルを出るとすぐに緊張感を乗せた風が吹いてきたような気がして胸が騒ぐが、ここからでは逃げるというより離れてきたといったように歩いてくる人達が見えるだけなので、何となく万博記念公園の総合案内所の方に歩いていく。

「何なのじゃ」

「分かりません、けど見るだけ見ましょう」

「デートの途中じゃ」

「そうですけど、でも僕、指定自警団だし」

ちょっと残念がるような表情で拗ねるチエヒメの手を引き、やがて総合案内所の前の広場が見えてくると、見えてきたのは人だかり、そして戦っている人達だった。

あれは、シキさん。ていうか、ウシク・・・。

シキとウシクが戦っていて、やじ馬も何だか観客のような雰囲気がしている中、更に近付いていくとやじ馬の中にはオオモリユキトの姿、そしてなんとアマカゼの姿があった。

「アマカゼ君!どうしたの」

「あぁ聖。ちょっと複雑なんやけど、シキさんとテロ鎮圧に行ったら、先にオオモリ君とウシクがやっつけてて、そしたらシキさんとウシクがケンカしちゃったんだ」

ケンカ・・・。

「そっか」

「聖もテロ鎮圧?」

「ううん。あの・・・」

「デートの途中じゃ」

「え」

うわ、何故か親に見られるくらい恥ずかしい。

するとアマカゼも思春期の男子らしく変に戸惑い、その表情にもっと気まずくなってしまう。

「へ、へー、か、彼女?」

「まあね。異世界から来たんだ。ってアマカゼ君シキさんから聞いてる?異世界の軍隊」

「あぁうんさっきちょっと聞いた。東京に陣取ってるって。俺今来たばっかりやから」

「チエヒメさんはその軍隊に命を狙われててこの世界に逃げて来たんだ」

「そうなんや。じゃあ何で彼女に?」

「えっと・・・」

「妾が惚れたのじゃ」

「へ、へー」

「プロメさんは?あれ」

アマカゼの後ろに居たふと目が合った女性はよく見るとプロメテウスで、真っ先に理解したのは露出度の高い精霊系ファッションじゃなくなっているという事だった。

「着替えたのよ」

「そう、なんだ」

普通の髪色、普通の服、全く分からなかった。それじゃあもう、普通の母親みたい。

「その、オオモリユキトは、今もテロ活動してるの?最近見ないけど」

そんな時にもシキを纏う風がバリアみたいに3頭の雷光ヘビが吐き出す雷光を阻み、シキが放つまとまった強風にウシクは尻餅を着く。

「オオモリ君は、元々テロリストやないし、根はいい奴やから。誤解されやすい人ってだけで」

「そっか」

でもウシクはどうなんだろ。実際シキさんと戦ってるし。

「そんなもんか、まだまだやな」

すごいなシキさん、全然動かないのに、ウシクが為す術もない。でもケンカっていうより、何か特訓っぽい気もする。

「聖、もう見飽きたのじゃ」

え、まあ、いいか。

「じゃまた」

「うん」

何でも無かったって事か。

ようやく万博記念公園に入り、太陽の塔を右手にして進んでいき、そして自然豊かで静かなエリアを散歩していく。

「ここは静かな場所じゃな」

「はい。こういうのは好きですか?」

「そうじゃな。悪くない。でもさっきの博物館とやらも悪くない」

じゃあ静かなところも人込みも苦手じゃないって事か。

「しかし肌寒いのう」

「あ、そうですね。今は冬ですから」

着物だけじゃ確かに寒いよな、服買ってあげたいけど、そんなにお金持ってないしな。でも1枚くらいなら。あの軽くて薄いのに暖かいやつ。

「チエヒメさん、服買いましょう。暖かくなるやつ」

「服、買ってくれるのか」

「はい。でもおこづかいはそんなに無いので、1枚だけですけど」

「1枚だけで、この寒さを凌げるのか」

「大丈夫です」



「長閑だねぇ」

「うん。東京が侵略されてるなんて嘘みたい」

ペット可の大きな公園とあってか、犬を散歩している人達も結構いて、しかし犬より黒いキツネの方が目立つのか、自分とリリコがベンチに座っている中、目の前に広がる広大な広場をメイルと一緒に2匹で散歩しているコロネはちらちらと注目されていく。

みんな犬ばっかりだな。

当たり前でしょ。

ハイミとプラーハも一緒に空を散歩し、コロネとメイルも200メートルくらい離れ、リリコとベンチで2人きりの中、ふとリリコに顔を引き寄せられると、リリコはそのまま自分にキスをした。

「早く結婚したい」

「うん、実は王子、リリコの事忘れてたりして」

「そうだねぇ、どうかなぁ、多分ないよ。異世界に行けないなら諦めるかも知れないけど、実際繋がったし」

「でも、リリコが結婚したいなら、いいよ?」

「・・・そう?」

「当て付けとかじゃなくて、したいからするって事でいいんじゃない?」

するとリリコは遠くに目を向け、自分に肩に寄りかかった。

「りっくんは、世界って1つだと思う?」

「え」

「異世界って言ってるけど、でもそれはただ壁があるだけ、もしかしたら、そもそも世界って1つなのかなって」

「すごいスケールだね。でもそう言われるとそうだね。繋がってるんじゃなく、そもそも世界は1つって事?」

「うん。聞いた事ない?人には必ず、運命の人がいるって」

「んー、ソウルメイトっていうものは聞いた事あるけど」

「世界の中に必ず運命の人がいるっていうけど、私にとってはりっくんが運命の人だし、世界の中にっていうのは異世界理論が前提の話じゃないんだなぁって」

「そっか。確かに異世界、普通に行き来出来ちゃうし。この広い世界でこうやって一緒に居られるって、やっぱり運命だね。でも結婚するなら、戸籍取らないと」

「うん。ねぇ、天体望遠鏡買おうかなって思ってるんだけど、どうかな」

「いいと思うよ、冬空は星がキレイだし。どうせなら星空がキレイな場所で見ようよ」

「じゃあキャンプセットも買う?」

「いいね」



博物館の目の前にあったショッピングモールに入ると、人の多さなのか、店の多さなのか、チエヒメは今までで1番大きく感心した。その驚いたような笑顔もまた可愛らしく、何となく見つめていると、僕を見たチエヒメはまた楽しそうに表情を緩ませた。

「ここはすごいのう」

ほんとはウィンドウショッピングが1番好きなのかな。それに涼しいし、良かったな。

それからやっぱり目的の服屋に行く間にも目移りしまくりで、でもそれもまたデートって感じもするので、チエヒメが興味を持つ度に立ち寄り、雑貨だったりアクセサリーだったりを沢山眺めていく。しばらくして2階に上がり、目的の服屋に入り、試着室で薄手なのに温かいダウンベストを羽織って貰う。

着物は赤系だし、ピンクのやつならそんなに違和感ないな。

「すごいのう、確かに1枚だけなのに温かい。奇妙な羽織りじゃ」

袖無しタイプだし、確かに羽織りだな。

「これを買ってくれるのか」

「はい」

着物っぽいものとドレスっぽい羽織りとの間にダウンベストを着た形になったチエヒメとまたショッピングモール内を歩いていく中、ふと擦れ違う人達からシキとウシクの戦いの話が聞こえてくる。

あれから1時間くらい経ってるけど。まさかもうやってないよな。

「聖、お腹空いたのじゃ」

「じゃあお昼ご飯にしましょう」



「お昼ご飯どうする?ハイミ達が散歩してる間に食べる?」

「そうね」

見つめてきたリリコはゴッドスコープを使って呼んであげてと心で言ってきたので、1キロくらい遠くの木の上で寛いでいたハイミとプラーハを捉え、マナライズで呼びかける。それからコロネとメイルにも呼びかけ、そして4匹がやって来る。

「自分達人間はお昼ご飯食べてくるから」

「プラーハと海まで行っていい?ハイミも魚食べる」

「うん分かった」

「メイルも行く」

「(じゃ自分も)」

「じゃあみんなで行くよ」

「うん」

コロネのテレポートの力でみんなが消えたところでスマホを見つめ、近くのレストランを検索する。

「ここ、レストランあるよ。ビュッフェ」

「こっちの万博記念公園のショッピングモールがいい。レストランをビュッフェしてるみたいなものだし」

「うん」

日本最大級の大型複合施設と言うだけあって、ショッピングモールに入る前から観覧車とか博物館に目移りしてしまうが、リリコに手を引かれてショッピングモールに入ると、これまた人気の多さが醸させる熱気と冷房の混ざった開放感に、そして無意識に入ってくる大勢の人間の情報に、ふと変にたじろいでしまう。

大丈夫?

「うん。ちょっと一気に情報がさ。リリコ大丈夫なの?」

「こういう時は深読みしないで、表面だけ見るようにするの。エコモードみたいな」

エコモード・・・。そういうのあるんだ。でも何か、ほとんどみんな楽しそうだ。でも仕事してる人達はちょっと疲れて──。

ほら深読みしない。

「エコモードも難しいね。みんなペンギンだったらいいのに」

「えへ、あはははっ」

看板を見るとお肉の写真が美味しそうなので焼肉屋に入り、肉を焼きながらスマホで何となく飛空挺の最新情報を調べてみる。

「アメリカ、ミサイル撃ってないみたい。代々木公園もまだ動きはないし、何してるのかな」

「そりゃあ情報収集だよ」

「あそっか。もしかしたら、もう世界が掌握されちゃってるのかな」

「んー、かもね」

「お待たせしました」

うわ、お肉、美味しそう。良い色だし。

「うん、質の良いお肉だね。マナライズ使えば1番美味しい焼き加減も分かるよ」

そう言ってリリコは1つのお肉を金網に乗せると、そのお肉をまじまじと見つめ始めたので、同じようにお肉を金網に乗せ、熱の入り方、脂の溶け方、お肉の温度、たんぱく質の変わり具合を眺めていく。そして固くなり始める前のちょうど良い頃合いで引き上げ、タレを付けて口に運ぶ。

うおぉ。・・・マナライザー、なって良かった。

今なの?

美味しいね。

うん。

お互いモグモグしているので流れているのは沈黙だが、心ではいつものようにお喋りしてそれからしばらくしてお店を出た時、ふと視界に入った何十人の中の1人に思わず足を止めてしまう。

リリコ。居たよ。仲間。

あ、本当。

あの人、人間というか、でも人間か。

「あの、赤荻聖君」

手を繋いで一緒に居る、指定自警団の赤荻聖とチエヒメに声をかける。すると2人は案の定、知らない人に話しかけられてキョトンとした。

1番美味しい状態のお肉が食べられる。いいですね。


ありがとうございました

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