フォルス・ダイアログ
え・・・えっと。
「あ、あの」
「そなた、何故にそんな体をしておるのじゃ」
なにゆえ・・・って。
「僕の力は、動物のDNA情報をラーニングする能力だから」
「でぃー、えぬ、何じゃそれは」
そんな時に中型の二足歩行タイプが3体やってきて囲まれてしまったので、すぐにすべてのDNA情報を発動し、1体に向かって黒炎を噴射させていく。その最中にも別の1体が女性に向かって飛びかかって来たので首を掴むが、また別の1体も反対側から飛び掛かってくる。
くっ・・・。
するとその瞬間、どこからともなく一閃の稲光が落ちてきて、その1体は地面に叩きつけられた。
鳥井さん・・・。柳菜が歪みを閉じるまで持ちこたえなきゃ。・・・・・ふう、とりあえずやっつけた。
「このままじゃ埒が明かぬぞ?マイセルはいくらでも造れる」
「え、マイセルって、それの事ですか?」
「そうじゃ、妾を捕らえる為に放たれた獣じゃ」
捕らえる為・・・。
「あの、じゃあ、あなたも、あの歪みから来たんですか」
「そうじゃ。しかしもう彼奴らの所には戻りたくない」
捕らえる、追いかけられてる。恐竜たちは、この人を捕まえる為に放たれた・・・。
「大丈夫です、今仲間があの歪みを閉じに行ってます」
「そうか。しかしあれは人の手で簡単に開けられる。閉じたとて、再び開けられてしまう」
そんな・・・。異世界の技術・・・あっちに取っては簡単な事。じゃあどうすれば。
「どうして、追いかけられてるんですか?」
「妾の、力を求めているのじゃ」
力・・・。
あ、また来た。
やって来たティラノサウルスにタックルし、バラバラにして黒炎を投げつける。必死に戻っていこうという場所に高温の黒炎があり、キューブたちが溶けていくその情景に何となく可哀想に思えてしまう中、僕を呼ぶ凉蘭の声が聞こえてきて顔を上げると、空高く見える空間の歪みが小さくなり始めた。
柳菜・・・やったんだ。でも恐竜たちはまだ居るし、歪みはまた開かれるし、ていうか変な飛行物体、2つ来ちゃった。ん、あれは。
それからやって来たのは恐竜ではなく、空飛ぶ水上バイクに乗っている戦闘スーツの人だった。
「こちらAファイブ、目標を発見」
うわ、明らかに仲間呼んでる。
「聖、妾を守るのじゃ」
え・・・どうしよう。と、とりあえず・・・。
人間に戻って女性の手を引き、路地に逃げ込む。そして壁にシールキーを貼り、組織へ繋がる扉を開けた。
「入って」
女性を先に入れ、そして自分も入りながらふと追いかけてきた戦闘スーツの人を見上げる。狭い路地に空飛ぶ水上バイクは入れないようで、バイクを降りてきたところで扉を閉めてシールキーを剥がす。
ふう。
「ここは何じゃ」
「僕達の活動拠点です」
「それは何じゃ、壁から扉が」
「これはシールキーって言って、どこでも扉を作れるんです」
「しかしここも彼奴らに攻め込まれたら」
「多分、大丈夫だと思います。ここは異空間なので」
「ほう。何と不可思議な」
ふと見つめ合ったその女性の容姿はやっぱり美しく、見とれてしまったので思わず目を逸らし、窓から小さくなっていく歪みを目に留める。
「聖」
ん・・・・・。
「おう聖」
ノブさん。
「誰だよそれ」
「僕もよくまだ分からないんですけど、あの異世界から来た軍隊に追いかけられてるみたいで、助けたんです」
「追いかけられてる。そうか、まさか、あんたが逃げたからあいつらも来たって事なのか?」
「・・・あの歪みが作られたのは、妾のせいではない」
「え、わら」
「歪みが作られたのを見て、飛び込んできたのじゃ」
「お、おう。つまり、あの歪みは、もともと別の目的があってやったのか?どんな目的なんだ」
「それは知らん」
別の、目的。
「ノブさんまさか本当に、侵略で来たんじゃ」
「侵略・・・。まあ、あり得ない事じゃないが。とりあえずあの恐竜は特に脅威ってほどじゃないみたいだしな。問題は人間の方だ。対話のし方によっては、戦争になるかも知れない」
戦争・・・。
「とりあえずそうだな、聖はその人を頼む。オレは対話出来るかどうか試してみる」
「はい」
テレビがある指定自警団のホールに向かい、メタリックグリーンの恐竜の事とか、飛行物体の事とか、やはり侵略だのニュースになっているのをテレビで見ていると、その女性は何やら黙って手を繋いできて、思わずまた見つめ合ってしまう。
んー、てことはつまり、リリコみたいな感じの人がまた来たって事かぁ。
ベランダから空飛ぶ軍隊をマナライズし、一通り情報を貰って部屋に戻る。
「リリコ、古代人らしいよ」
「ふぇ?」
「あの軍隊が追いかけてきた人。少なくともあの軍隊と恐竜は、リリコみたいに逃げてきた人を捕まえる為に来たみたい。同じ境遇だし、会ってみたら?」
「そっかぁ。確かにちょっと気になるね」
「(少なくともって?)」
「何か、歪みを作ってから逃げたって感じみたいだから、歪み自体は別の目的があったんじゃないかな」
「じゃあ、やっぱりリリコを追いかけてきたんだよー」
「ハイミ、何でちょっと楽しそうなの」
「(自分としては生態系のバランスが脅かされないか心配だけどね)」
「どう?ゴッドスコープ」
「今までは60キロまでだったけど、今は300キロまでズーム出来るよ」
するとリリコは満足げに微笑み、コーヒーを飲んだ。
「そういえば、あの人達があなたの力を求めてるって、どういう事ですか」
「妾はチエヒメじゃ」
「え」
「そういう名前じゃ」
姫・・・。何かほんと、江戸からタイムスリップでもしてきたみたいな人だなぁ。
「ていう事は、チエさんって事ですか」
「違う。チエヒメじゃ」
姫って、ただの敬称じゃ、いや異世界じゃ違うのかな。
「・・・妾は、生まれてからずっと、ロウにおった」
ロウ・・・まさか。
「牢屋、ですか」
「あぁ。しかしそれは妾がそう思ってるだけ。妾はずっと、人の目の下に置かれ、機械に囲まれていた」
機械・・・。ちょっとヒントがないな。でも寂しそうだ。要は窮屈だったって事か。
「彼奴らが求めているのは、妾が持つ『シンリュウセキ』の力じゃ」
神龍とか?うわ、ちょっとゲームっぽい。でも異世界にまで追いかけてくるなら、すごいものなのかな。
「だから妾は人間の生活がしたいのじゃ」
人間の生活・・・機械に囲まれてとか、何か急に可哀想。
「そう思って飛び出したら、聖が居たのじゃ」
僕が居た・・・・・え、だから、キス?
するとチエヒメは体を寄せてきて、何とも愛おしそうな眼差しで、そしてまた何とも凄まじい怪力で優しく抱き締めてきた。
あ、あの・・・。
「人間の生活が何かは知らないが、つまり子作りじゃろ?」
「うえ!?いや、それだけじゃないですから」
「そうなのか」
つう・・・力が強い。
「あ、そうか、先ずは夫婦になるのが先じゃな」
めおと・・・・・えぇ。
「そそ、それだけじゃないです、から」
その瞬間スマホが鳴り出し、チエヒメは頬と頬を密着させていた顔を放した。
「何じゃそれは」
「スマホです。これで遠くの仲間と連絡出来るんです。もしもし鳥井さん」
「聖今どこ?」
「組織だよ、チエヒメさんをとりあえず避難させてきたんだよ」
「・・・ああさっきの聖の彼女」
「違うって」
「今ノブさんが軍隊の人と話してるんだけど。軍隊の人が、怪物に変身する男が連れ去った女を引き渡せば、侵略は止めるって」
・・・げ、何だよ、それ。引き渡せば・・・。
「何かね、すごく危険だって」
危険・・・シンリュウセキの事か。でも・・・。
「ちょっとさ、一旦、戻ってきてくれない?みんな」
「え?何で」
「ヒーローとして、チエヒメさんは引き渡せないから」
それから究や凉蘭達が戻ってきて、ノブやシンジも色々と集まってきた中、チエヒメから聞いた事をそのままみんなに伝える。
「それだけじゃ判断しにくいな。もっと詳しく教えてくれ。あいつらがあんたを捕まえたいのは、シンリュウセキってのの力が欲しいからって、具体的にどういう力だ。そしてその力をどんな風に利用するんだ」
「シンリュウセキの力は、すべてを喰らう破滅の力として言い伝えられておるものじゃ。彼奴らはそれを使い、世界を支配する気じゃろう。悪用となれば、使い道などそれしか無かろう」
「支配か。で、シンリュウセキの力を利用する為に、あいつらはあんたにどんな事をしてきた」
「妾を、閉じ込めたのじゃ。妾を殺し、シンリュウセキを手に入れる為に」
ふと気になったのは、ノブの冷静な頷きだった。
「・・・そうだなぁ。亡命してきた人の安全を確保するって言っても、こりゃあ一筋縄じゃいかなそうだなぁ」
そりゃ困るよな。いきなりだし。
「戻りたくないなら、そう言ってるって伝えればいいんじゃないかな?」
ミントが落ち着いた口調でそう言うと、ミントだからかシンプルな提案だからか、ノブはすぐに悩み込むような態度を落ち着かせる。
「そうだな。とりあえずあいつらからも話を聞かないとな」
ノブが作ったシールキーの扉から外に出ていくみんなについていき、そして最後にチエヒメと共に出ていこうとした時、ふとチエヒメの緊張しているような横顔が気にかかった。組織の外に出るとそこは非常階段の中で、ノブやミント達が更に扉を開けて出ていくのについていくと、そこは適当な高層ビルの屋上だったが、すぐに目に留まった飛行物体と軍隊の姿に、風が強い事を気にする余裕など無くなってしまう。
おっきいな、飛行機。
高層ビルの屋上の側に滞空する飛行物体、屋上に居る数人の戦闘スーツの人達という、正に交渉の場のような雰囲気が強風と緊張感によってより強調される気がしてしまう中、ノブとミントが先頭になっていよいよ軍隊と対峙していく。
「あんたらが捜しているのはあの人か?」
フルフェイスの戦闘スーツで表情が見えないからか、外国人と会っているような妙な緊張感がお腹を締め付ける中、1人が1歩前に出た。
「確かにそうだ。さっさと引き渡せ」
「でもチエヒメさんは帰りたくないって」
「何を聞いたか知らないが、こちらの世界の事だ、お前達には何の関係も無い」
「関係あるよ。こうして関わってるし、それに逃げ出したいって思うような酷い事したんじゃないの?」
「もう1度言う、お前達には関係無い」
「関係は無くとも、逃げてきた人を放っておく訳にはいかない。それにあんたらはシンリュウセキを悪用しようとしてるんだろ?世界を支配しようとしてるとか、そう聞いたら誰だってあんたらに不信感を抱くだろ」
「ハッハッハ、シンリュウセキは我らダコスが発掘した物だ。悪用も何も無い、シンリュウセキを最大限利用するだけだ。それにな──」
するとその男性はチエヒメに指を差した。
「あれはそもそも人間じゃない。亡命者を庇うような真似は必要無い。お前達は何も知らないだろ、シンリュウセキがどんな物か」
「でも、チエヒメさんが嫌っていうなら酷い事しちゃだめだよ」
「じゃあ何か?お前達は、我らと戦うのか?そいつを引き渡さないなら、我らはお前達を盗賊と見なし、武力を行使する」
これって、交渉決裂っていうか・・・。
するとノブはこうなって欲しくなかったと困ったように腰に手を当て、ミントもケンカを売ってきた事に反発するように表情や雰囲気を引き締めていく。
「あなた達は、シンリュウセキを使って何をするの?どう危険かも教えてくれないと引き渡せないよ」
「それこそ関係無いだろ」
「危険な物ならあなた達も危険って事でしょ?なら渡せないよ」
「意味が分からない。危険だから手放せと言ってる。我らは扱い方を知ってる」
「じゃあどう危険なの?」
「くっ・・・シンリュウセキはな、膨大なエネルギーを溜め込む物だ。管理もせずに扱えば自滅する」
「膨大なエネルギーで、何をするの?」
「口外は軍法違反だ。これでいいだろ」
フルフェイスだが最後に強く鼻息を吐き下ろした態度に、ふと人間っぽさを感じた。
「1つ聞かせてくれ。何故この世界に来た」
「詳しくは知らないが、偶然だろう。たまたま異世界へのゲートを開いたらここだった、それだけだ」
「嘘じゃ」
ノブの問いに応えた直後、1番後ろに居たチエヒメがそう言い放ってノブ達の背後にまで近付いた。
「シンリュウセキの力を使って他の世界を支配出来るか、試そうとしているのじゃ。他の世界なら、シンリュウセキの力を上手く扱えなくとも自分達に被害が無いから」
「それはお前の見解に過ぎない。お前は黙ってろ」
その瞬間、ノブ達と話していた男性が素早く背中に手を回し、背中から見たこともないデザインの拳銃を取り、その銃口をノブに向けた。
突如異世界から侵略された地球。果たして聖達は地球を守れるのか。異世界からの侵略は実質2回目ですが。
ありがとうございました。




