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出会いはキスから

「あれからデュナンズ・ナイツは紅蓮会との関係を断ち、独自に日本支部を作ったそうだ。場所は広島。しかも神王会への宣戦布告を取り消し、逆に有事の際に限っての連携を求めてきた」

「受けたの?」

「あぁ。まあ本部もデュナンズ・ナイツの事情は理解してるし、有事の際に限ってという事ならって事で了承した」

「敵が減るのは良い事だよね?」

ハイミがそう言うと、政晴はもう普通に仲間の問いかけに応えるように頷いていく。

「日本支部って誰が居るのかな、やっぱりドレイクさんかな」

「いや、ブリュンヒルデという女だ。丁寧に広島支部に挨拶しに来たんだと」

おじさんが好きすぎるあの人か。なら安心かな。

「デュナンズ・ナイツに関してはそんなとこだ。ただ紅蓮会は相変わらず広島を拠点にして、着々と増強しているらしい」

杉内の野望は神王会だって知ってるし、見張ってれば大丈夫だろうな。

天気も良いのでマンションの屋上に上がり、リリコとお菓子を食べながら東京の街を望んでいく。ハイミは空を散歩し、コロネは同じく屋上でのんびり過ごしているというそんな中、突如東京の空に、まるで空自体が歪んで出来たような透明なブラックホールが発生した。

ん、何だろあれ。リリコ。

え?空間の、歪み?誰かが作ったのかな。

赤坂の上空にある、多分直径10メートル前後はありそうなその歪みを何となく見ているがそれから特に何が起こる事もなく、そしてハイミが帰ってきた。

「ふう、千葉まで行ってきた。漁師に魚貰った」

「良かったね」

「何見てるの?」

「あれ。何か変な空間の歪み」

「へー。・・・あ、ほんとだ」



まるで皆既日食でも起こったのかというくらい、通行人やマスコミの人達が一様に空を見上げている状況に、僕達も組織からではなく実際に外に出て混ざっていく。

「能力者の仕業かなぁ」

「んー、だとしたら、何も起こらなすぎじゃないか?」

んー、上空、300メートルくらいかな。東京タワーくらい・・・・・あれ?

「究、大きくなってない?」

「おう、そうだな。ちょっとヤバそうだよな」

しかし原因も分からず、1時間くらい経った頃にはテレビでも大々的にニュースになっていて、マスコミのヘリが歪みに近付いていくのをビルの上から眺めていた時、突如歪みの中から数え切れないほどの何かが飛び出すように出現した。

・・・・・出た!何だ!

まるで打ち上げ花火の後半のように落ちてきたものの1つを見てみると、それはメタリックカラーの動物っぽい物体だった。それらが落ちてきた瞬間、人々はざわめき、逃げ始め、能力者達は戦い始め、そしてメタリックな動物達は見境なしに破壊活動を始めた。それはまるで、世界が変わった瞬間のように思えた。

「聖、とりあえず行くぞ」

「うん。でも数が多すぎる」

すべてのDNA情報を発動し、地面に降り立ち、こちらの方に歩いてくる“3メートル級のティラノサウルスっぽいやつ”にタックルを仕掛ける。すると倒れ込んだそれの体はまるでジェンガが倒れたように“メタリックグリーンのキューブ状のもの”となってバラバラに砕けた。

何なんだこりゃ。生き物じゃない・・・。

しかしその瞬間からキューブ状のものは集まり、成形されていき、元通りになった。

何なんだこりゃ・・・・・。

そしてティラノサウルスっぽいやつが吠えた時、別のやつが建物に突撃して悲鳴が上がった。

どうすれば、いや、何かやらなきゃ。

リインフォースして体を強化し、黒炎を拳に纏わせて再度突撃していく。直後に体をすっぽり噛み付かれてしまったが素早く投げ飛ばし、黒炎の拳を叩きつける。再びバラバラに砕け散ったので別のやつの方に向かい、尻尾を掴んで勢いよく投げ飛ばす。そいつもバラバラになったが、ティラノサウルスっぽいやつはもうすでに集まっていて、半分くらい成形されていた。

これは、一体・・・。

キューブ状のものを1つ拾い上げてみるとそれは集まりたいと言わんばかりに暴れるが、力強く掴み逃げられないようにする。すると1つ集まってないからか、他のキューブ状のものが全部集まってもそれはティラノサウルスにはならず、スライム状態のまま気持ち悪く蠢いている。

ど、どうしよう。

そんな時、スライム状態のそれはなんと僕に向かってきて、最後の1つを迎えに来た。

げっ・・・。

とっさに飛び退くもののスライム状態のそれはカメレオンのベロみたいに伸びてきて、瞬時に僕の手を捕まえた。その瞬間から橋渡しされたみたいに、僕の手に気持ち悪い感触が這ってくる。

うわああ。

瞬く間に僕の腕がすっぽり覆われてしまい、このままじゃ呑み込まれてしまうので手から黒炎を噴き出していく。

くぅ・・・うおおりゃあ──。

次第にスライム状態のそれは赤く、そして白く色づいてきて、見た目からして熱を帯びてきたというその直後、それは破裂するようにマグマのように散り広がった。

ふう、おや・・・。

キューブ状ではなく、液体状に散らばったそれは見た目からして生気を失ったように動かなくなり、ほっとしたのも束の間、別のやつはすでにティラノサウルスに戻っていてすぐさま襲ってきたので、黒炎の拳で殴り飛ばす。



うわあ、何じゃありゃ。熱に弱い、形状記憶した細胞で出来た、生物兵器みたいな感じか。一体誰がこんなもの。しかもあのブラックホールみたいなやつ。もしかしてあれって・・・。

そんな時、空間の歪みから見た事もない、どこか軍仕様の輸送機を思わせるような飛行物体がゆっくりと姿を現した。

うわあ、何じゃありゃ。何か、出た・・・。やっぱりあれって、異世界のゲート・・・・・。

「そんな・・・」

「リリコ、どうかした?」

するとリリコは自分の腕にしがみつくように抱きついて来ながら、今までで見た事のない不安そうな顔色を見せた。

「あれ、私の世界の、飛空挺」

「えっ、じゃあそれって、あの、リリコの婚約者が迎えに来たって事?」

思わず生唾を飲み込んでしまいながら、飛空挺というにはSF映画の最先端技術みたいな飛行物体を見てみる。

「りっくん」

「ん?」

リリコと見つめ合うと、リリコはそのままキスするんじゃないかというほど真っ直ぐ見つめてきた。

「もし王子が迎えに来たら、王子と戦ってくれる?」

「戦う?って」

「私がりっくんと結婚するって言っても、王子はそれならりっくんと決闘するって言うはずだから」

け、決闘・・・。そういう世界なのか。

「けっとーって?」

「(人間の、生き様を賭けた戦いって感じかなぁ)」

「うん、分かった。強いの?王子って」

「マナライズとは別に、生まれつき身体能力が高い人は『エイバー』って言われてるんだけど、王子はどんなスポーツでも無敵なオールマイティーなエイバーなの」

「格闘技とかも無敵って事?」

「うん」

うわあ。

「でも能力者であるりっくんの方が断然有利だから、怖がらなくて大丈夫」

「うん」

決闘、かぁ。

「あれ?」

ん?

「りっくん、エンブレム、ズームして」

エンブレム、ああ国章みたいな、識別するやつ。5つの頭のヘビと、薔薇っぽい・・・。

「何だぁ、あのエンブレム、私の国の飛空挺じゃない。隣の国のだ」

「え・・・隣の国。じゃあ何でリリコの国の、もしかして同盟国とか?」

「うんまあ、それはそうだけど」

「どーめいって?」

「(仲間って事だよ)」

「じゃあ一緒に来るんじゃない?」

安心したのも束の間、ハイミが明るくそう言うとリリコは再び不安そうに自分を見つめてくる。

「大丈夫だよ。修行して能力のレベル上げるから」

「私がやってあげる。普通に戦ってたら時間かかるでしょ?」

「いいの?」

笑顔を返してきたリリコは黙って自分の目を見つめてきて、そして30秒くらい経つと黙って頷いた。

「ホワイトアーマー、インポートしたの?」

「ううん。外部メモリとしてはそのままだけど、レベルの壁を取っ払ったの。時間が経てばホワイトアーマーもゴッドスコープも最高レベルになってるよ」

「そっか、ありがとう」

笑顔で手を繋いできたリリコと共に再び飛空挺を眺めていくと、飛空挺はそのままどこかに飛んでいく。

「リリコ、あの変な生き物の事知らないの?」

「ダコステイダの事は、あ、隣の国ね、よく知らないの。6歳の時からずっとお城の中で働いて生きてたから。連れ去られたとかじゃなくて、マナライザーだからスカウトされたの。で、情報として知ってるのは、私が居たトランバースって国と同盟国で、異世界のホールを開く研究をトランバースと共同でやってるって事くらいかな。マナライザーの存在があるから、どの国も情報管理は厳しいの」

「そっか。あれ、やっぱり生物兵器ってところなのかな」

「そうかもね」

部屋に戻るとリリコは経過を観察するように寝ているプラーハに歩み寄り、優しく撫でる。同じカラスからリリコがアレンジしたものだが、ハイミと違うのは茶色い毛並みに赤い差し色という事。なのでハイミは仲間が出来たと嬉しそうに常にプラーハに寄り添うように座り込む。



「究!こいつら熱に弱いよ」

「そうか、それなら」

すると究はゼロニアの頭にベーグを装着させ、口から火炎放射をさせた。打撃ではまったく効果の無いキューブ状のものでも、ゼロニアの火炎放射を受ければドロドロになって動かなくなり、それを見ていた柳菜は手をかざしてトリケラトプスっぽいやつを内部からの爆発でバラバラに砕いた。

すごいな、柳菜も万渉術使いだもんな。

ふと空を見上げると、メタリックグリーンの恐竜たちが再び歪みから大量に降ってきた。

くっ・・・・・これじゃキリがない。

「異世界からの侵略か・・・・・」

そう呟いた人に目を向けると、青い剣を持ったその男性は気配に振り返るように僕を見た。しかし見た感じ指定自警団ではなさそうなその男性は一瞬僕を見ただけで去っていき、中型の二足歩行タイプを一刀両断した。

教えてあげなきゃ。

真っ二つになっただけではすぐに元通りになってしまうはずだが、僕が男性の下に駆け寄っても真っ二つになったそれはそのまま転がった。

あれ。

すると再び気配に振り返るように男性は僕を見た。

「何か用?」

「高温に弱いから、教えよう思って」

「高温・・・」

その瞬間、ゆっくりとバラついて砕けたそれはゆっくりと気持ち悪く蠢きながらも何故か固まっていった。

「多分、衝撃に対して強いだけなんだと思う。見た目細胞っぽいし、細胞膜さえ壊せれば動きを止められるんじゃないかな」

細胞・・・確かに。なるほど。

「そっか。ありがとう」

「別に」

細胞膜か。だから溶けたら倒せたし、斬っても倒せたんだ。

究の下に戻るとそこにはミントとライム、凉蘭が居た。

「究、細胞膜さえ壊せれば動き止められるって」

「細胞膜、熱以外にも効くのか」

「そうみたい」

「対処法は分かったけど、あの歪みがあったらずっと恐竜出てくるよな。柳菜、何とか出来ない?」

「やってみる」

ふと歪みを見上げてみると、歪みからはもう1機の先程と同じような飛行物体が出てきて、しかもその後方から無数の小さい何かがうじゃうじゃと出てきた。

あれは・・・・・人間?うわ、水上バイクっぽいもので、飛んでる。

「何だよ、あれ」

「まるで、軍隊」

究の呟きに柳菜がそう応えると、その言葉はこんな状況に相まって何となくこれ以上ない納得を感じさせた。

本当に、侵略、されちゃったのか・・・。まさか。

「もしかしたら、恐竜たちを追いかけてきたとか、一緒に戦って欲しいとか言われるんじゃない?」

振り返った究が何やら微笑んできた後、柳菜が歪みの下へ行き、それ以外が単独で散らばり、そしてまた1体の中型恐竜を倒した時、ふと目に留まったのは遠くにいるティラノサウルス、そして今にも襲われそうな1人の女性だった。

うわっまずい。

すぐさま黒炎をぶつけ、一先ずティラノサウルスの気を僕に逸らす。それから突撃してティラノサウルスをバラバラにし、再生する前に手から黒炎を放射してキューブ状のものを溶かしていく。

ふう。ん?

ふと目が合った女性は何やら思わず魅入ってしまうほど美しい容姿で、しかも着物の上にドレスを羽織ったような、見たことのない民族衣装っぽい服装にこれまた見とれてしまう。

「あの、お怪我は──」

「おお」

その瞬間にその女性は何やら僕の両脇に手を置き、僕の体を眺め、まるで美術品に見とれるかのように表情を綻ばせる。

ちょ、何だよ。

「あの」

「そなた、名を何と言う」

そな・・・何だ?

「聖、です」

「聖か、素晴らしい体をしておるのう」

素晴ら・・・何だこの人。うっ、あれ?体が勝手に戻った。

すると直後、その女性は僕にキスをしてきた。

んーっ・・・・・んーっ。

20代後半くらいに見える女性にしては凄まじい力で、ファーストキスというより、いきなり唇を塞がれた事にとっさにもがき、ようやく優しく体を放させた時、何となく周りをキョロキョロしてしまうと、なんと少し遠くに飛んでいた凉蘭と目が合ってしまった。

第三章の始まりです。さすがリリコですね。いきなり六事の能力が最高レベルまで強くなっちゃいました。

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