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世界が回った方へ

くそ・・・俺の力が、通用しない・・・。

それでもクリストファーが“翼のような形をした黄色い大鎌”で斬りかかり、大斧の男性と闘志という名の紫色と黄色をぶつけ合っていく。せめてもの思いでリングを飛ばし、大斧の男性の気を逸らそうとするが、大斧の男性は俺の力など効かないと分かったからかまったく見向きもせず大斧で大鎌を弾き、クリストファーを蹴り飛ばす。

まずい・・・。

そして直後に大斧は振り下ろされたのでリングを飛ばし、大斧を受け止めるが、力敵わず弾き飛ばされてしまう。それでもその一瞬の間でクリストファーは大鎌を飛ばし、大斧の男性の胸元に大鎌を突き刺した。

危なかったな。

1人倒したものの今度は“背中から生えた、6本の機械の鞭”を自在に操る男性が近付いてきて、機械の鞭を素早く伸ばして来たのでリングで応戦する。しかしその機械の鞭は正に宙を縫うように的確に俺の首に巻き付いてきて、俺を投げ飛ばした。

くっ・・・。

「ウルフっ」

5つのリングから同時に光の弾を連射していき、機械の鞭の男性を硬直させていく中、そこにクリストファーが斬りかかるが1歩遅く、クリストファーは機械の鞭で数ヶ所を貫かれてしまう。大鎌が力無く地面に転がり、クリストファーも倒れたがそこにテレサが駆け寄っていく。それから光の弾で牽制しながら真正面から飛び込み、機械の鞭の男性の顔を殴り付ける。しかし6本の機械の鞭が同時に反撃してきて、体を貫かれる事はないが、気が付けば俺は地面に倒れていた。

負けて、たまるか・・・。

「ウルフ」

テレサ・・・。

テレサが俺の下にやって来た時にはクリストファーは立ち上がっていて、大鎌から羽根をミサイルのように撃ち出していく攻撃で機械の鞭の男性を追い詰めていく。しかし機械の鞭の男性は倒れながらも鞭の先端から銃撃し、再びクリストファーの体を貫いていく。機械の鞭の男性もクリストファーも立ち上がれない中、テレサが再びクリストファーの下に向かうも、そこに6本の機械の鞭が牙を向いていく。

「テレサ、下がれ」

厄介だな、どこまでも自在か。

3つのリングを通して光の弾を撃ち出し、強力な爆撃で機械の鞭の男性を吹き飛ばすとその男性は気を失ったので、ようやくテレサはクリストファーの下に駆け寄り、癒しの光で傷を治していく。その直後に指定自警団の男性の雷光の音が耳を突き、目を向けてみると、豪快な水飛沫のように振りかかる雷光は一気に数人の人間を戦闘不能にさせた。

俺は、まだまだだな・・・。

それからまた別の方から銃声が響き、視界の隅に倒れ込んできた1人の男性にふと目を向けるとその方にはヨハンが居て、目にも留まらぬ高速移動の中で更に目にも留まらぬ光速の銃弾を放ち、瞬く間にまたディゼルダの仲間を倒していく。

ようやくヨハンも本気出したか。・・・な、何だあれ。

“10メートル級の戦車風ロボット”に変身したディゼルダの仲間が直後に両腕から砲撃してくると、本当に砲弾が飛んできてそして砲弾は建物に直撃し、初めてこの戦いには関係ない被害が生まれていく。

あいつを止めないと。

「テレサ、あいつを止める」

「うん」

しかし別の場所では“掌に魔方陣のようなものを据え、そこから止めどなく無数の鉄球を噴射してくる”男性が居て、その鉄球の雨が一度こちらの方に飛んでくるとそれは動けなくなるほどの鈍圧があった。

くそ・・・。

「ウルフ・・・」

バスケットボールほどの本物の鉄球の直撃を受けてしまったのか、生身のテレサは倒れ込み、そして苦しむように表情を歪めた。

「テレサ!」

「ちょっと、待って・・・」

青ざめているテレサが消え入りそうな声でそう言った数秒後、テレサはまるで何事もなかったようにゆっくりと立ち上がり始めた。

「ふぅ、死ぬかと思った」

「リング、1つ持ってろ」

「うん」

更に噴射されていく鉄球は銃弾のように建物、地面、人間へと無差別に降り注がれていて、直後に戦車風のロボットが撃ち出した数発のミサイルはまるで意図的かのようにまた建物を破壊した。

何なんだ、これも自棄になったディゼルダの指示なのか?

「ディゼルダぁ!!」

ジャックの怒鳴り声でさえ抑えられてしまうほどの爆発音、建物の崩壊音の中、振り返ったディゼルダとジャックとの間にだけふとした静寂が訪れる。

「・・・やはりお前はただの破壊者か!」

「それを決めるのは、世界だ」

直後にディゼルダは大爆発し、ジャックは勿論、俺のところまでやって来るくらいの、数十メートルの周囲をすべて覆うほどの炎風を放ってきて、とっさにテレサを守るように覆い被さるがその炎風は強く、俺もテレサごと吹き飛んでしまう。

何て強さだ。これがディゼルダの本気か。

気が付けば公園の木々はロウソクのように火を灯し、周囲の建物も家事が起こっていたりと、その光景にふと言葉を失ってしまう。

「テレサ大丈夫か」

「もう平気」

公園が、建物が燃えていく・・・。

するとそんな時、突如空からまるで放水されるように局所的な雨が降り、公園と建物にまとわりつく炎が圧し消されていく。そしてすぐにも炎が鎮火し始めた時、戦場となっている川沿いの公園に立つ戦車風のロボットに2人の神王会と思われる男女が飛びかかった。男性が空を切った拳から光のビームを放ち、通常より3倍ほど大きな両腕の女性が直接殴り、そして戦車風のロボットという変身を解かせる一方、鉄球の男性を相手に指定自警団の仲間と思われる女性が放たれた鉄球のすべての動きを一斉に止め、その男性の戦力を奪う。そして指定自警団の男性が水飛沫のような雷光を細くまとめて放つと、鉄球の男性も倒された。直後にディゼルダは再び大爆発し、更にまるでバリアを張るように2、3メートルの周囲を燃やし続けるが、気が付けば残りはディゼルダ1人になっていて、更にそこではデュナンズ・ナイツだけではなく、神王会や指定自警団までもがディゼルダを囲んでいた。

「ディゼルダ」

そんな時にヨハンがディゼルダに歩み寄った。見るからにディゼルダ1人では絶対に敵わない状況を悟ったからか、ディゼルダは自分と周囲を燃やしながらも立ち尽くしている。

「君は一体、何を望んでいる。復讐か、勝利か。本気で世界を支配出来ると思っているのかい?・・・・・これは、何の為の戦いなんだ」

「何の為?そんなものは重要じゃない。・・・オレが勝てばそう歴史に刻まれる、それだけだ。だがオレは負けた、ただそれだけだ。勝てば勝った世界を生きるだけ。世界は、回った方に転がるだけだろ」

悪あがきなのかディゼルダは火力を上げ、炎と熱風でもって容易に近付けないようにするが、そこに空からの局所的な豪雨が放たれ、そこには水蒸気が充満し始めた。常に燃えているディゼルダに止めどなく水がかけられるという状況に、やがてそこは煙幕でも張られたように何も見えなくなり、否応なしに静寂がやって来る。

「テレサ、俺の後ろに」

「うん」

いつ大爆発が来てもおかしくない。・・・いや、何だ、熱気が止んだ?

それから雨も止み、水蒸気も風に靡かれて消えていくと、そこにはすでにディゼルダの姿はなかった。

・・・どこに行った。逃げたのか・・・。



「続いてのニュースは、広島県広島市、中区銀山町で起こった大規模な能力者闘争の件で、事態が収束してから2時間経った今では破壊されてしまった建物は能力者の能力によって修復されましたが、激しい炎で燃えてしまった公園の悲惨な焼け跡に悲しみの声が上がっています」

またデュナンズ・ナイツが・・・。

「広島だし、俺らの管轄外だけどさ、何かこのままってのもさ」

「じゃあちょっと行ってみる?」

今日は土曜日なのでそう言うと、究はどことなくミント達を気にするような雰囲気を匂わせながらニヤついた。

「そう、するか。へへ」

ミントさんならじゃあ行こうってどうせ言うしな。

ミントと凉蘭が特訓している闘技場に入り、すっかり首から下の全部を鎧で覆えるようになった凉蘭の動きを見ながら、2人に近付いていく。

「ミントさーん。ちょっと広島の指定自警団の人に会ってくる」

「え、うん。どうかしたの?」

「また広島でデュナンズ・ナイツが暴れたみたいで、戦いは終わったみたいですけど、どういう状況だったのか広島の指定自警団の人に聞いてみようかなって」

「そっか、分かった」

とりあえず究と柳菜の3人でオーナーの部屋に入り、オーナーの部屋から広島の組織に入っていく。そこはまるでカフェのような雰囲気の空間で、すると案の定、指定自警団とは言え初めて見る顔触れにお互い沈黙を流してしまう。

「あんたら、確か、東京の?」

「あ、はい。広島でデュナンズ・ナイツが暴れたってニュースで見たので、何となく状況が知りたくなって。赤荻聖です。こっちは究で、こっちが柳菜です」



「もうこの世界に戻ってくる事はない。ディゼルダのメールが嘘じゃないなら、我々デュナンズ・ナイツはようやく浄化されたという事だ。それで、新しいリーダーなんだが、立候補したいものは居るかい?」

「ヨハンは?」

ブリュンヒルデの問いに、本部の教会で1人演説のように全ナンバーワンの前に立つヨハンは微笑んで首を横に振る。

「私達のチームは、最初からワールド・クロスの人間だ。デュナンズ・ナイツの監視役がリーダーではおかしいだろう」

「監視役、そうだったのか」

「じゃあ、ドレイクかな、本部の担当だし」

1人のそんな言葉にヨハンはまるで最初からドレイクを推していたかのようにドレイクを招き、皆の前に立たせた。

「異論があるなら今の内だよ?」

するとすぐにブリュンヒルデが手を挙げ、ドレイクの隣に立った。

「ドレイクはディゼルダに心酔してたのよ?ディゼルダの意思を継ぐなんて言ったら浄化の意味がないじゃない」

「私はもうディゼルダに心酔などしていない。しかしデュナンズ・ナイツの存在意義はテロリストの殲滅だ。それはディゼルダが居なくなろうが変わらない。それにリーダーが作られたからといって配置や方針が変わる訳でもないだろう」

「ヨハンもドレイクでいいの?」

「あぁ。ドレイクの言う通り、リーダーはあくまで形だけだ」

「ヨハンがそう言うなら私もそれでいいけど。でもドレイク、そういう事務作業出来るの?」

「何を言う。仕事だと思えばやる」

「ふーん」

「ヨハン、日本支部はどうするんだ?」

「それはまた改めて」

「ヨハン、なら私が日本支部作るわ。ロスならジャックが居るし」

アメリカは国土が広いからナンバーワンを2人配置してるんだよな。

「ジャック、だそうだ。どう思う」

「問題無い」

中身は何も変わらないが、浄化か。

それからナンバーワン達が本部を去っていき、外に出てみれば朝日がジュネーブの街を爽やかに照らしていた。振り返ると教会も光の筋を浴びていて、それはまるで黒ずんだ水溜まりを蒸発させる浄化の夜明けのようだった。



「とまあ、そんな感じでディゼルダってのが姿を消したって訳。で、デュナンズ・ナイツの人を捕まえて聞いたら、もうデュナンズ・ナイツは仲間割れなんかしてないって、ディゼルダは異世界から来た、この世界そのものの敵だって」

「そうなんですか」

「確かに最初デュナンズ・ナイツは東京で暴れてたし、動向が気になるんなら次に出てきた時に連絡してあげようか?」

「あ、はいお願いします」

自分達の組織に戻ると凉蘭とミントが居る闘技場のすぐ前のテーブルにはライム、ヒカルコが居て、手を振るヒカルコとライムを無視するのも何なので照れてしまいながらもちょっとだけ手を挙げて応えていく。

「3人で遊んできたの?」

何も知らないヒカルコの問いに、ライムも何故かヒカルコと同じような笑みを見せる。

「広島の指定自警団の人から、さっきまで広島で起こってた能力者の戦いの事聞いてたんだよ」

「そうなんだ」

しばらくして凉蘭とミントが闘技場から出てきた時、スマホを見ていたヒカルコが「あっ」と声を出した。

「デュナンズ・ナイツがSNSでコメント出してる。わあ、何ヵ国語もある。デュナンズ・ナイツは壊滅などしていない。これからもテロリストの殲滅を全うする。だって」

「色々ニュースで言われてたし、それに応えたのかな。じゃあまた広島の戦いみたいなのは続くのかな」

「でも今回だって神王会と指定自警団が来て戦いが終わったし、きっとまたそうなるよ」

「どんな話をしてきたの?」

究と柳菜がそう話し合いながら椅子に座った時にミントが聞いてきたので、広島の人に聞いた事をそのまま伝えていく。

「へえ、デュナンズ・ナイツって仲間内で戦ってるんじゃなかったんだ。あれから事情が変わったんだね」

「そうみたいです。だからもしかしたら、これからは敵じゃなくなるのかも知れません」

するとミントは真に受けるように頷き、微笑んだ。

第二章、終わりです。結構濃い内容になったと思いますが、次章はもっと濃いです。


ありがとうございました

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