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デュナンズ・ナイツ・フォー・フーム3

紅蓮会の拠点であるマンションの入口前には分かりやすくドレイク達が立っていて、まるでこれから戦うのかと思わせるような緊張感を醸していた。

ディゼルダはまだか、あと、3分くらいか。けど時間通りに来るかは分からないか。

「やあドレイク」

ヨハン、何だその緊張感のない挨拶は。

元から無愛想なのか緊張しているのか、ドレイクは言葉を返すどころか頷く事すらせず、ただヨハンを見つめる。

「君は何故、私達を招いたんだい?」

確かに、ドレイクはディゼルダ派なのに。

「何故、か」

「迷ってるんだろ?さすがにお前だって、これ以上ディゼルダに心酔出来ないって思ったんじゃないのか?」

しかし言いたくないのか、そんなカミーユの言葉にドレイクは自分独りで考えを巡らせているような表情ともどかしい沈黙を見せてくる。

見るからに迷いが見える。こんなドレイクは初めてだな。

「でも私達を呼んだって事は、ドレイクがデュナンズ・ナイツとしてディゼルダと戦うつもりだからよね?単純に戦うから応援を呼んだって事よね?」

しかしブリュンヒルデの言葉にも、ドレイクはまるで黙秘している犯人のように黙って眉間を寄せる。

「何とか言いなさいよ!」

「落ち着きなさい」

何なんだドレイク。ディゼルダが来るまでそうしてるつもりか。

「ディゼルダはまだなのか?」

待ちきれなかったのかジャックがやって来ると、驚いているかは分からないがドレイクはヨハンが来た時のように黙って顔を向ける。

「ちょっとジャック」

「いいだろ別に。ディゼルダにサプライズしてやる気分じゃない。皆もそうだろ?」

ブリュンヒルデが腰に手を当て、台無しだと不満を漏らす態度など誰も気にせず、それからヤロスラフ、クリスティーナと、遊撃チームのナンバーワンであるクリストファー、ユリウス、サンドラもすぐ近くの公園から出てくると、ドレイクはヨハンの思惑を理解したように表情をしかめた。

「どういうつもりだ、ナンバーワンを全員集めるとは」

ん、ディゼルダ・・・。

しかしやって来たディゼルダは10人の仲間を連れていて、もうそれだけでデュナンズ・ナイツ対ディゼルダという構図が否応なしに出来上がった。

「私はヨハンにディゼルダと落ち合う事を言ったんだ。たまたま話が広がったんだろう」

たまたま?何だその冗談。

「ディゼルダ、何なんだ?そいつら。お前は独りで戦う事も出来ないガキだったのか?」

そう言いながらジャックは“鎖のような形をした、身長ほどの剣身がある漆黒の大剣”を出現させる。

「先に手を出したのはお前だからな?ディゼルダ。今更何を言っても無駄だ」

「待てジャック」

「何だよドレイク。こっちは支部を襲われたんだ。もうその時から戦いは始まってる」

それでもディゼルダを見ながらジャックに手を見せて制止し、ドレイクは少し前に出る。

「ディゼルダ、真意を聞かせろ!何をしてるんだ」

「何をだと?・・・強いて言うなら、浄化だ」

「浄化?」

「どんな組織にも綻びがある。ワールド・クロスという組織に身を置きながらも、理念を全う出来ずに新しい道を模索する貴様らのような人間が居るように。しかし貴様らは、やはりワールド・クロスの人間だったんだ。ならば、1度リセットする必要があると思った」

「リセット?」

するとドレイクはディゼルダにまた近付き始め、その瞬間にディゼルダの仲間達が警戒するように緊張感を張り詰めさせる。

「分かっているのか?デュナンズ・ナイツを攻撃したという事は、お前はもう、デュナンズ・ナイツではないという事だ!」

2メートル半ほどに巨大化し、鉱物のように全身を変化させて皮膚を尖らせたドレイクの態度に無言で応えるようにディゼルダも全身を燃え上がらせると、ディゼルダの仲間達も変身したりして、誰か1人でも動いたら戦いが始まってしまうような緊迫感が流れる。そして数秒間静寂が続いた時。

「動くな!」

ん・・・。

ドレイクとディゼルダでさえ顔を向けた公園の方には、右手に剣と左手に盾を持った男性が居た。

「指定自警団だ。見るからに乱闘を起こしそうな雰囲気じゃないか。ここではないどこかでやれ。街に迷惑が──」

ディゼルダの仲間の1人が飛び出し、“光の筋で作られた巨大な右手”で殴りかかるが、その指定自警団の男性は素早く剣を振り上げて“水飛沫のような黄色い雷光”を放ち、ディゼルダの仲間の1人を吹き飛ばす。しかも雷光は水飛沫のように広範囲に飛び散り、そのままディゼルダ達にも降りかかり、するとそれが引き金になったのかディゼルダの仲間の数人が動き出したがその瞬間──。

「止めろ!我々の敵は指定自警団じゃない!」

「賢明だな」

「指定自警団、関わるな。これはデュナンズ・ナイツの問題だ」

「デュナンズ・ナイツ?壊滅したってニュースでやってたが」

「貴様には関係ない」

「今はな。だが街に被害を及ぶような事をすればテロリストとして排除する。戦いの場なんて他にあるだろ。わざわざ市街地で戦うな」

どこかまた違う緊張感に、対峙したままだったドレイクは緊張の糸が切れたのかディゼルダから体の向きを逸らす。

確かに雰囲気は壊れたが、このままぞろぞろ場所を変えるって訳にもな・・・。

「もし何だったら、指定自警団がケンカの仲裁をしてやってもいいぞ?」

ケンカ・・・。

「そんな小さな話じゃないわよっ」

「デュナンズ・ナイツはあくまでもヒーローなんだろ?戦いでしか解決出来ないようじゃ、ヒーローとして失格だぞ」

ヒーロー、か。ワールド・クロスの人間には響くだろうが。

「デュナンズ・ナイツはヒーローではない」

するとなんとドレイクがそう言って、その場はまた少し戦いの緊張感が薄れる。

「デュナンズ・ナイツは、利己的な思想で個人によって作られたものだ。元よりヒーローなどではない」

「どういう事だ」

「デュナンズ・ナイツを作ったディゼルダは異世界から来た人間だ──」

ディゼルダもドレイクも変身は解かないままだが、ドレイクが喋り出したその雰囲気はまるで演劇での会話シーンかのような冷静さを感じさせてくる。

「ディゼルダはただ自分の怒りと憎しみの為にデュナンズ・ナイツを利用し、そしてデュナンズ・ナイツを裏切った。例え個人的な怒りや憎しみでも人間は共感し、群れを作る。しかしディゼルダは私達が共感した自分自身の怒りでさえ切り捨てたんだ」

「オレは冷静だ。そもそも能力者などただの駒だぞ。使えない駒を切り捨てるのは当然だろ」

「だったらこの世界から出ていきなさいよ!もう関係ないんでしょ!」

「・・・デュナンズ・ナイツなど、ただの群れに過ぎない。能力者という存在に、元より理念など無い。貴様らも、そこのヒーロー気取りも、所詮はただ利己的な主張をしているに過ぎない。そもそも、能力者にヒーローなんてものは居ない!能力者が戦う事自体、最早意味など無い!」

ディゼルダ、自棄になったのか?

「聞き捨てならんな。意味が無いなら作ればいい。オレだって最初からヒーローな訳じゃない。だが、だからこそ意味を求めなければならない。意味が無いなどと言うなら、お前は戦場から退場しろ」

「分かってるさ。だからオレはこうして──」

指定自警団の男性に応えたその瞬間ディゼルダは体を激しく燃やし、まるで感情をぶつけてくるように熱波という名の微風を吹きかけてくる。

「デュナンズ・ナイツに、愚かという意味を知らしめに来たんだ!」

来るか・・・。

「愚かなのはお前だな」

ん、あいつは。

「スギウチ」

何故ここに来たといったようなニュアンスでドレイクがそう呼ぶ中、砲身の付いた赤い盾を両腕に装着している姿のスギウチの登場に、またもや戦いの緊迫感を削ぐ違う緊張感が混ざり込んでくる。

「ここは紅蓮会の拠点でもあるからな、ここで暴れられちゃ困る」

「紅蓮会、貴様もドレイクの側か?オレの指示で貴様らを手助けさせてやった事を忘れるのか」

「お前がディゼルダか。お前、何の為に能力者になったんだ」

「何だと?」

「理由も無く能力者になる奴はただのバカだ。けど、能力者になった理由を見失う奴はもっとバカだ。お前はレジスタンスなんだろ?能力者を作った異世界と戦う為に能力者になったんじゃないのかよ」

「レジスタンス・・・」

リクジの話では、ディゼルダは異世界にある能力者を作った国を陥れる為に動いてるんだよな。しかし、その思いはそもそも正義なのかどうか。

「何の為のデュナンズ・ナイツか、お前自身が見失っちゃあそれこそ意味が無い。それで、この戦いはお前の目的にどう役に立つんだ」

ディゼルダは黙って深呼吸するが、常に燃えていて、常に微風のような熱波を放っている状態に安易に近付く事は出来ず、ただ生暖かい緊張感が流れる。

「ディゼルダ、このままデュナンズ・ナイツを抜けるとしても、デュナンズ・ナイツを破壊した報いは受けて貰う」

痺れを切らしたのかそう言ってジャックが前に出て、大剣を構える。

「これで、デュナンズ・ナイツからお前を断ち切る」

そして剣身を瞬間的に伸ばしながらディゼルダに斬りかかったが、ディゼルダの仲間の1人が素早く立ちはだかり、“チェーンソーのような形をした大剣”で受け止める。するとチェーンソーのような剣身が回転してジャックの大剣を弾き、その金属音は言葉なき怒号のようにジャックを牽制した。

「ジャック。悪いが報いは受け入れない」

「何だと」

「何の為のデュナンズ・ナイツか、オレはここで証明する。何の為に能力者になったか、それを証明する為に先ず、オレは頂点に立ってやる」

「どういう意味だ」

「デュナンズ・ナイツとか関係なく、この世界を支配してやる。そして最強の軍隊を作り、あの国を潰す」

「ディゼルダ!それは、正義か」

俺に顔を向けると、ディゼルダは表情を隠すように全身を炎で覆った。

「そんなもの知るかぁ!」

爆発するようにディゼルダから炎が噴き出すと、素早くクリスティーナが瞬時に地面から氷柱を立ち上らせて壁を作る。炎と氷、熱気と冷気とが激しくぶつかり合う中、ジャックも再び鎖の大剣を振り上げ、チェーンソーの大剣の男性と闘志をぶつけ合うと、そんな緊迫感の高まりに他のディゼルダの仲間も動き出し、そして戦いが始まってしまった。

「仕方ない」

そう呟いた指定自警団の男性が剣を真っ直ぐ天にかかげた直後、光の筋の右腕の男性が再び飛びかかっていったが、足元から吹き上がった水飛沫のような雷光に指定自警団の男性は守られる。そして直後に指定自警団の男性は剣を振り下ろし、操るように水飛沫のような雷光をディゼルダの仲間達全体に降り注がせた。するとディゼルダの熱波、クリスティーナの冷気、指定自警団の男性の雷光が凄まじく化学反応を起こし、その場が爆発に呑まれていったのでテレサを庇いながら5つのリングを盾にする。

「テレサ、大丈夫か」

「うん」

俺はこのまま、何も出来ないのか・・・。

頭上からの津浪のような爆発が収まっても、やはり強者の集まりなだけあってディゼルダもナンバーワン達も、そしてディゼルダの仲間達も際立って壊滅はせず、ただ天災が過ぎ去るのを待つように硬直していた。

「ここは日本だ。つまり指定自警団の管轄だ。勝手な──」

「指定自警団は下がってろ。デュナンズ・ナイツの管轄は世界だ」

ジャックの言葉に指定自警団の男性はケンカを買うような怒りを表情に伺わせる。

「これはデュナンズ・ナイツの戦いなんだ」

「だから島でやれって言っとんじゃろうが!広島にはな、周りに迷惑がかからんように戦える島があるんじゃ!」

ん・・・怒ったら急に訛った・・・。

「お前の力だって十分派手だろ。まあ、そこまで言うなら破壊された建物はデュナンズ・ナイツが責任を持って復元する。それでいいだろ?」

するとジャックのその言葉に不服そうながらも、指定自警団の男性は少し肩の力を抜くように強く息を吐き下ろす。

「約束しろ」

「あぁ」

ジャックと指定自警団の男性との間に小さな関係が生まれたところで、スギウチが両腕の赤い盾の砲身から炎と光の球を連射し、ディゼルダの仲間達全体を攻撃していく。同時にディゼルダの仲間の1人が飛び上がったブリュンヒルデを双剣を携えて追いかけたり、別のディゼルダの仲間の1人が早くもヤロスラフに打ち倒されたりする中、“両刃の大斧を持っただけ”の男性が俺の方にやって来たので、カーボンでコーティングして鋭利にしたリングを飛ばしていくが、その普通の服装の男性は真正面からリングに当てられても傷1つ付かず、ただ少しだけ後ずさった。

何だって・・・。

リングから光の弾を連射しても男性は倒れる事はなく、そして男性が大斧を地面に叩きつけると大斧は紫色の光を全方位に放ち、強烈な圧力でもって周りのすべてを押し退けた。

デュナンズ・ナイツ、ワールド・クロス、指定自警団に紅蓮会。スペシャルな連合軍ですね。


ありがとうございました

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