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デュナンズ・ナイツ・フォー・フーム2

カミーユと共に前に出ていき、カーボンでコーティングしたリングを1つ、高速で飛ばしていくが不審者はそれを押されながらも受け止める。それでも不審者の敵意を俺達に向けられたようなので更にリングを飛ばしながら、3つのリングを縦に列べる。不審者が俺に向かって飛びかかってきた途端に2つのリングを通した光の弾を着弾させ、跳ね返すように吹き飛ばしてやったが不審者はすぐに立ち上がり、向かっていったモスクワ支部の人間を放った光で払いのけた。そんな時にセシルが魔法で衝撃波を放ち、不審者の動きを一瞬だけ止めたので再びリングから光の弾を撃ち出して不審者を追い詰めていく。しかしそれでもしぶとく立ち上がった直後、不審者はまた更にパワーアップするように変身を遂げ、火の粉のような光を周囲に舞い上がらせた。

「ウルフ、カミーユ、今クリスティーナから連絡来たんだけどね、デュナンズ・ナイツの全支部が不審者と戦闘中みたいよ」

「何だって、ディゼルダの仕業なのか?」

「それは分からないわ。けどこんな状況でこんな事するなんてやっぱりディゼルダじゃないかしら。私、一旦ロスに戻るから」

デュナンズ・ナイツの全支部を攻撃?一体どうしたというんだディゼルダは。

「どうかしてるぞディゼルダ」

「カミーユ、セシル、一先ずあいつを止めよう」

「あぁ

 うん」

特に色などの個性が付いてない不審者の光だが、威力は格段に上がったようで、モスクワ支部の人間達も戦闘不能者が増えていく中、5つのリングを縦に列べ、不審者がカミーユの盾剣に気を向かせている隙に背後に回っていく。そしてモスクワ支部の人間達、カミーユの盾剣の連続攻撃に不審者が動きを止めた瞬間、列べたリングを真っ直ぐ不審者に向け、“リングを5つ列べた時にしか出せない特大のビーム”を発射する。一瞬ではあるが順々にリングが光っていき、最後の5つ目のリングに達した光の弾の凄まじい爆発がビームとなって放たれたものに不審者が呑まれ、建物の壁ごと飛ばされていくと、追い討ちをかけるようにモスクワ支部の数人が駆け出していく。

・・・これでも、まだ立ち上がるのか・・・。

再びモスクワ支部の人間達に囲まれても動じる事なく、そして立ち上がった不審者は直後に全方位に光を放ち、モスクワ支部の人間達を一様に吹き飛ばしながら更にパワーアップするように変身した。

まだ強くなるのか・・・。何て奴だ。

戦闘スーツはそのままで、ゴリラとグリズリーが合わさったような3メートルほどの人獣へと変貌を遂げた不審者はゆっくりと深呼吸し、余裕と強気をその場に見せつける。しかしモスクワ支部の1人も負けじと“3メートルほどの騎士の銅像”を作り出して対抗し、そして不審者と銅像が向かい合う。

ヤロスラフはまだなのか、ヨハンも。

「セシル、ヨハン呼んできてくれ」

「うん」

鈍く重たい衝撃音が響いたので振り返ると、タックルを仕掛けたのは騎士の銅像だったが、力の差があるのか不審者は銅像を軽々と投げ飛ばす。

「ワールド・クロスに救援要請しとくか」

そう呟いてカミーユが携帯電話を取り出した時、ふと脳裏にテレサの顔が浮かんだ。

・・・大学はまだ講義中か。いや、メールしておくか。

それから騎士の銅像を作る能力者が倒され、銅像が空気に溶けていくと雄叫びを上げた不審者はその場で拳を勢いよく振り出し、拳の形をした光を放ってモスクワ支部の建物を攻撃してきた。まるで鉄球でも飛んできたかのようにコンクリートは容易く砕け、その瞬間、戦闘不能になって動けない人達が目に留まる。

まずい!・・・。

5つのリングを飛ばし、崩落してきた天井を受け止めようとしたものの範囲が広く、しかも再び拳の形をした光が飛んできてまた建物の一部が破壊されてしまう。

建物が、崩れる・・・。その前に何とか・・・。

「ウルフ!」

しかし天井は崩落し、分断されるようにカミーユの姿は見えなくなり、とりあえず倒れている人達の頭上にリングを浮かせる形でそのまま何も出来ず、そして体は押し潰された。



「りっくん、モスクワ支部の建物、潰れちゃったよ?」

モスクワ支部の近くの建物の防犯カメラをハッキングしているパソコンの前に座っているリリコに歩み寄ると、マスコミの人達ややじ馬達があたふたしている中で3メートルの人獣はまるで仕事を終えたかのような深呼吸をした。

ウルフさん達大丈夫かなぁ。あ、ワールド・クロスの人達かな、ぞろぞろ来たな。

「またやられちゃったか、デュナンズ・ナイツの支部。もうあれかな、ディゼルダって人、もうデュナンズ・ナイツの事どうでもいいのかな」

「気持ちの変化があったんじゃない?」

ディゼルダも人間だしな。あ、おじさんだ。どっから来たのかな。建物潰れてるのに。

ワールド・クロスの人達が建物の瓦礫を浮かせたり、軽々と持ち上げたりしていく中、ヨハンは“通常の10倍の速度で高速移動をしながら光速の銃弾を撃ち放つ”という攻撃で一瞬の内に数発もの銃弾を3メートルの人獣に撃ち込み、正に一瞬の内に人獣を地に伏させた。

カメラじゃ全然追えない・・・。

それでも人獣は立ち上がるが、そこに通常の3倍くらい上半身がムキムキに膨れ上がった男性がヨハンの隣に立つ。

強そう・・・。



とりあえず自力で瓦礫を退けながら、同じく崩れた支部に埋もれてしまった人達の安否を確認していく。

「ウルフ!」

ん?テレサ?

誰かが宙に浮かせた無数の瓦礫をまるで風船を押し退けるように掻き分けてきたテレサはするとカーボンアーマーに覆われた俺の顔を見ながら、安心したように深呼吸する。

「俺は建物が崩れても潰されたりはしない」

「そうだよね」

“他人の目には見えない癒しの光”を放ってテレサが怪我人を癒している最中、ヨハンを捜して瓦礫を掻き分けていくとその向こうにはヨハンとヤロスラフが居たが、すでに不審者は倒された後だった。

もう終わったのか、さすがナンバーワンだ。

「カミーユ」

「おうウルフ生きてたか」

「当然だ。カミーユの方こそ」

「オレの盾はでかいからな」

他の支部の被害はどうなったんだ。ブリュンヒルデに連絡してみるか。

「ウルフ、どうしたの?」

「どうしたのって何だ。全支部が襲撃されたんだぞ。モスクワ支部の敵は排除した。そっちはどうだ」

「今私、クリスティーナと一緒にキャンベラなのよ。全支部の被害状況を確認してる」

「ロサンゼルス支部はどうなった」

「問題があるほどの損害は受けてないわ。もうちょっと待ってよ。これからヨハンのところ行くから」

「あぁ」



「あ、ネットニュースでやってるよ。デュナンズ・ナイツ壊滅だって」

テーブルに置いていた自分のスマホをマナライズしてハイミがそう言うと、コロネもテーブルに飛び乗り、揃ってスマホを見下ろす。

「でも建物とか簡単に直せるし、壊滅なんてしないのに」

「(そりゃあマスコミがオーバーに報道してるんだよ)」

「どうなっちゃうのかな」

「(リーダーがデュナンズ・ナイツを壊そうとしてるんだから、解体なんじゃない?)」

「コロネ、そういえば大守幸与の世界に行った仲間帰ってきたんでしょ?どうだったか聞いたの?」

「(ううん。別に情報共有しなくちゃとか決まってないよ。それぞれで動いてるし)」

「コロネも気になるって言ってたじゃん」

「(気にはなるけど、自分はこの世界の動物たちを守りたいから。でも聞いてみようかなぁ)」

「りっくん、そろそろ寝る支度しよ」

「うん」

デュナンズ・ナイツ、解体か。しょうがないのかな。



今ディゼルダはどうしてるんだ。

「倒したのはモスクワ支部、ロサンゼルス支部、キャンベラ支部、ロンドン支部、後の支部は壊滅的被害を受けて逃げられたわ」

「分かった。ディゼルダの姿は」

「確認出来てないわ」

「彼なりの主張があるだろうし、いずれ私達の前に現れるだろう。支部を攻撃したら、次は本部、そして私だろう」

ブリュンヒルデの報告が終わって能力者達がモスクワ支部を直している時、救助活動も一段落ついてテレサが歩み寄ってきた。

「ウルフ、他の支部ってどれくらいあるの?」

「シンガポール、トロント、リオデジャネイロ、ホンコン、アテネだ」

「そんなにあったんだ。なのに全部壊滅だなんて」

「デュナンズ・ナイツには常駐チームと遊撃チームがある。だから、すべての支部にナンバーワンが常駐している訳じゃない。そもそもこういう時の為の砦や要塞ではないからな、今回みたいにすべての支部が襲われてしまったらさすがに対処しきれない」

「そうなんだ」

「おーいウルフ、本部に戻るぞ」

「あぁ、テレサ、戻ろう」

ジュネーブに戻ってくるとテレサはドイツに行くかと思いきや本部の教会にも一緒に入ってきて、何でついて来たんだと聞こうと思ったものの、1階の礼拝堂にはドレイクが居てそんな空気ではなくなってしまう。

「いつ来たんだい?」

「デュナンズ・ナイツが壊滅したというニュースを見て、状況を聞きに来た」

「まるでドレイクもデュナンズ・ナイツに関心が無いみたいだな」

カミーユが突っかかるように口を挟むが、相手にしてないのか思うところがあるからか、ドレイクはただ落ち着いた眼差しをカミーユに返す。

「建物は直せるとは言え、全支部が襲われ、文字通り壊滅だ。ドレイクは今まで何してたんだ」

「デュナンズ・ナイツとしてのテロ鎮圧だ」

するとそう応えるとドレイクは背中を向け、十字架を見上げた。

「・・・ディゼルダの居場所を知りたいか」

え・・・。

「当たり前じゃん」

セシルが即答すると、一瞬振り返ったドレイクは何故かニヤついた。

「ドレイクは、こうなる事が分かってたのかい?」

「さあな。しかし私なりに推測した。何故ディゼルダは日本支部を作る為に私達だけを日本に留まらせたのか。それは恐らく、日本支部を新しいデュナンズ・ナイツの拠点にする為だったのではないかと思う」

「新しいデュナンズ・ナイツ?」

「既存のデュナンズ・ナイツをリセットし、ディゼルダに従う者だけで構成されたデュナンズ・ナイツだ」

「だから全支部を破壊したのか。暴走というより、計画的だ。しかしドレイクは全支部の襲撃計画は知らなかったと」

「そんな都合の良い話があるかよ」

再びカミーユが突っかかるも、ヨハンでさえ宥めるような眼差しを向けた事にカミーユは不服そうながらも黙り込む。

「計画的というほど計画的ではないのだろう。つまり日本支部の足掛かりを利用して、突発的に計画の方針を転換した」

「それで、ディゼルダはどこなのよ。日本なの?」

「ディゼルダはそもそも現在地を私達に言わない。それはやはり、心の底では信用してないからなのだろう」

「何よ、分からないの?何で呼んだのよ!」

「落ち着きなさい」

「だからこちらから呼んだ。日本時間午後10時に私の下へ来いと。私は知りたいんだ、ディゼルダの真意を」

そう言うとドレイクはヨハン達に顔を向ける事なくシールキーの扉へと去っていった。

ディゼルダは、ドレイクさえ信用してないのか。

「罠って事はないよな?」

「ドレイクを使ってディゼルダが私達を誘ってると?」

「だって、あとディゼルダが狙うのはヨハンなんだろ?」

確かにカミーユの言う事は否定出来ないな。しかしそれなら・・・。

「だったら、こっちだって考えがあるわよ」

テレサとバーで夕食と取りながらも、ブリュンヒルデの提案やディゼルダの事、そしてこれからの事を考えるとぼーっとしてしまい、テレサに呼ばれて我に返るとふと目を合わせたテレサは微笑んだ。

「何か大変な事になっちゃったね」

「あぁ」

そもそも利己的でデュナンズ・ナイツを作った異世界の人間、デュナンズ・ナイツを監視するヨハン。どうあっても、こうなる事は避けられなかったのか。

「この戦いが終わったら、私もデュナンズ・ナイツの監視チームに入るから」

「戦えないだろ?」

「回復役だって必要でしょ?戦いの場で関係ない人が傷付いたらどうするの」

「・・・分かったよ」

それから仮眠を取ってからテレサと共に本部の教会の礼拝堂に向かうと、セシルが長椅子に座っていたので歩み寄る。

「まだ1人か」

「ううん、そっちでカミーユ寝てるよ」

「え?ここで仮眠取ってたのかよ」

「ん?おお来たか。あれ、彼女連れて来たのか」

「おいっ。そんなんじゃない」

「私、この戦いが終わったらこのチームに入るから」

「いや、もう来てるだろ。オレはいいよ。ヨハンが良いって言えば」

「私も」

セシルもそう言うとテレサはセシルと微笑み合い、もうすでにチームに入ったかのような空気を醸し出していく。

「皆揃ってるようだね」

2階からヨハンとブリュンヒルデが下りてくると、当然ヨハンはふとした表情でテレサを見る。

「君は確かウルフが居たチームのテレサ」

「私の事知ってるの?」

「そりゃあウルフ達を引き抜く前にそのチームの事は確認するさ。それで、君もここに入りたいのかい?」

「うん」

「分かった、よろしく」

こんなに簡単に・・・。

「それじゃ、行こうか、日本へ」

いよいよウルフ達は決戦の地、日本へ。


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