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エンデバー・フォー・フーム4

「昨日はディゼルダを捜して欲しいと言ったが、今はドレイクを捜して欲しい。分かっているのは日本に居るという事だけだからね」

んー、まぁ日本に居るんじゃ、神王会としても無視出来ないかも知れないけど。

リリコを見ると、リリコは心配を喜んでくれるように笑みを見せてくる。

「ドレイク達のスマホの情報、何か無い?それがあればGPSですぐに分かるから」

「そうか」

「ヨハン、それくらいならキャンベラで出来るぞ?」

「せっかくだ。それにドレイク達が日本での活動を諦めてないなら、いづれ神王会と関わる事になる」

キャンベラ?そこの人達に頼んだのかな。自分のスマホのハッキング。

「セシル、ブリュンヒルデからドレイクのアドレスを教えて貰ってくれるかい?」

「うん」

「2人だけデュナンズ・ナイツじゃないんだね」

歩いてちょっとだけ前に出てそう口を開いたハイミに、当然の如くヨハン達はハイミを見下ろし、面白いように固まる。

「何で、分かるの?」

まるで子供でも相手にするように、テレサが少し屈んでハイミを見下ろす中、ハイミを通してふとテレサの記憶が見えてしまい、とっさに目を逸らす。

「ハイミにはね、鉱石の能力じゃない超能力があるんだよ」

「そうなんだ」

「(超能力に関しては自分の方が先輩だけどね)」

りっくん。

・・・え?顔、見てないのに。

リリコを見ると、マナライズの詳細は秘密にしておきたいのか、笑顔と一緒にテレサから目を逸らした事を優しく責めるような気持ちを送ってきた。

テレパシー。それより、マナライザーは観察者なの。観察する事自体を後ろめたくなっちゃだめ。

・・・はい。

「メール返って来たよ」

「ちょっと貸して貰っていい?」

「うん」

セシルからスマホを受け取るリリコをふと見ると、まるでゴッドスコープを使う時みたいに無意識にリリコの頭の中を見ていて、それから何となく目線を移すとそのままテレサやウルフの頭の中も見てしまう。

何だか、最近、意識しなくても出来るように、いや、出来ちゃうようになったな。

「分かったよ、ドレイク達の居場所」

ん、スマホ鳴った。電話か。キョウスケ。

「はいはい」

「朝からどこ行ってんだよ。紅蓮会が動き出したってよ。新しい広島支部の奴らが応援要請出してる」

「広島でしょ?行くの?」

「増員した広島支部だけじゃ手に負えないらしいし、マサハルがさ、最近東京は大したこと起こってないから、行くだけでも行ってみてくれってよ」

「ふーん。紅蓮会の傭兵達って、まだ素性分からないんだっけ」

「あぁ、暇だったら来てくれよ、相手の能力分かるんだろ?」

「うん。じゃあマンション戻るよ」

「りっくん、ドレイク達、今広島」

「え?」

「ていうか、紅蓮会の傭兵、デュナンズ・ナイツみたい。それでドレイク達、奪われた広島支部に居たみたい。つまり、広島支部を奪う手助けをする代わりに、潜伏場所として使わせて貰ってるって感じ」

んー、そもそも、ドレイク達と、紅蓮会の接点は。

「とりあえず行こう」

「うん」



リリコから紅蓮会の広島拠点の場所を教えて貰い、リリコ達は仲間を連れていくからと一先ず俺のシールキーで広島へと向かうと、そこでは派手な能力だったり、人だかりだったりと分かりやすく緊張感が伝わってきて、とりあえずドレイクを捜そうと歩き出していく。

神王会に所属しているなら白い鎧、紅蓮会なら赤い色、分かりやすい。

「カルロス」

テレサの呼び掛けに、カルロスはそれだけで何をするのか理解したかのように頷く。

「オレ達はワールド・クロスとして動くからな」

「あぁ」

テレサと顔を見合わせた時、テレサも引き締まった表情で頷き、大学で見た寂しさと決意の眼差しをふと脳裏に過らせるが何も言えずにいると、そしてテレサはカルロスと共に離れていった。それから大して歩く事もせず、遠くに目に留まったのは悪魔風の人獣、紫の雷炎だった。

エミリアン、ガブリエル、分かりやすいな。

「ヨハン、ガブリエル」

「あぁ」

誰かと誰かが戦ってるのを通り過ぎたところで、俺達のそんなぞろぞろとした歩みに気が付いたのか、神王会の人達を紫の雷炎で牽制した後でガブリエルは俺達に顔を向けた。正に幽霊でも見たように固まったガブリエルの表情に、少しだけ優越感が込み上がってくる中、5連の大斧が倒れたその金属音が妙に響いた。

「ヨハン、何故だ」

「私は運がいい。それだけだ。こうして死者を蘇らせる力を持った能力者に出会えたんだからね」

「それで、何しに来た。我々は神王会と敵対するデュナンズ・ナイツとして、同じく神王会と敵対する紅蓮会と手を組んだ。お前達が我々を止めるというなら、それはデュナンズ・ナイツの姿勢じゃない。まあ、元々デュナンズ・ナイツじゃない人間に言っても無駄か」

「ガブリエル」

エミリアンが近付いてくると、人獣でも驚いた表情が分かるくらい、エミリアンは目を見開き、ヨハンを凝視する。

「人を蘇生させる能力なんて無いと思っていたが、まさかな」

「2人共、まだディゼルダを支持するの?ディゼルダがヨハンを殺したのに?」

セシルが口を開くと、2人は顔を見合わせる。

「証拠は被害者の証言だよ。そもそもディゼルダは異世界から来た余所者。デュナンズ・ナイツだって、きっと大義なんてなく自分の目的の為に作られたに違いないよ」

「ヨハン、本当にディゼルダは、異世界から来たと言ったのか?」

「あぁ。ディゼルダ自身の目的は話さなかったが、ワールド・クロスから来た監視役である私達を邪魔だと言っていた。ドレイクの言う真実はまだ分からないが、お前達こそ、ディゼルダの真実を分かってるのか?」

「我々にどうしろと?ディゼルダを倒せとでも言うのか?それにしてもブリュンヒルデやクリスティーナならまだしも、何故ここに」

「2人は別のディゼルダ派の下に向かった。ディゼルダ派にディゼルダの真実を伝える為に。だから私達はここに。ドレイクはどこだ」

すると意外にもエミリアンはすっと手を伸ばし、指を差した。

「向こうの道に行ったと思う」

「そうか」

「待て。本当にディゼルダを葬るつもりか」

「今は、ディゼルダという人間を見極めた方がいい。そう思わないかい?」

変身は解かないが、目に見えて迷いが伺えるようになった2人を後にしながらもふと振り返る。



「居た、あそこ」

みんな顔も見えない同じような赤い鎧でもマナライズすれば誰か分かるので、恭助を連れてそして紅蓮会のリーダー、杉内の下にやって来る。

「杉内!何でデュナンズ・ナイツとつるんでる。まさか傘下に入ったのか?」

「傘下じゃない。提携だ」

戦いの最中で闘志が剥き出しだからか、直後に杉内は右腕に装着された赤い盾と一体になっている砲身から炎と光の球を撃ち出してきたので、ホワイトアーマーから光を噴射させてそれをかわす。

「悪いがこの作戦は負ける訳にはいかないんでな」

「そもそも、デュナンズ・ナイツとの接点は?」

「デュナンズ・ナイツは神王会を敵だとしてる。それで神王会を調べてる時、紅蓮会を知ったんだと」

「ふーん。だからドレイク達を匿う代わりに広島拠点を落とす手伝いをしてって?」

「匿う?いや、お互いにお互いの目的を手伝ってる。だから提携なんだ」

そう言うと杉内は再び炎と光の球を撃ってきて、自分はかわしたものの、ガードした恭助は足をもつれさせて尻餅を着く。

「ドレイク達の目的って?」

「・・・デュナンズ・ナイツの日本支部を作る事だ」

「へー」

「はっ余裕だな。デュナンズ・ナイツを相手にしたら、神王会本部も無傷じゃいられない」

「んー、それはどうかな」

「あ?」

「デュナンズ・ナイツが味方するのは紅蓮会だけじゃないよ。自分とリリコだって結構デュナンズ・ナイツと知り合いだし」

「え?」

恭助と杉内が同時に声を上げ、そういえば言ってなかったと思いながら、表情が分からない2人共のキョトンとした感情を感じ取る。

「お前それ、何で言わないんだよ」

「そりゃあだって、一応表向きには敵対してるんだし。あんまり言いふらさない方がいいと思って」

「まあそうか」

「言っとくけどね、ドレイク達と仲良くなったからってデュナンズ・ナイツ全体が味方だなんて思っちゃだめだよ」

すると杉内は黙り、目線を泳がせて戸惑い、神王会も紅蓮会もデュナンズ・ナイツと手を組んでいるのかと考え込む。



「ドレイク」

セシルが声をかけたタイミングがドレイクにとって悪かったのか、ドレイクが振り返ったところで、“両腕を3倍くらいに巨大化させた、ロングコートのような形状が特徴的な白い鎧”の人に素早く飛び掛かられて殴られ、激しく飛んできた。

ドレイクをここまで・・・。

怒りを込めたように喉を鳴らし上げながら、しかし体が重そうに起き上がるドレイクにヨハンが歩み寄る中、ふと神王会の人を見ると、その人は肩を上げるほど素早く深呼吸し、その場でファイティングポーズを見せた。

来ないのか・・・。

「ドレイクが手こずるなんて、さすが日本一の能力者組織だね」

「まさか、あの死体は、偽物だったのか」

「いや、私は確かにディゼルダに殺された。しかし蘇った」

「・・・やはり、ディゼルダなのか」

「やはりって、ディゼルダ派なのに疑ってたの?」

セシルがそう問いかける中、ドレイクは大きく息を吐き、まるでスポーツでもしていたかのように息を整えて片膝を立てる。

「私は知っている。ディゼルダが何故、デュナンズ・ナイツを作ったか。その上で従っている。とは言え、お前は蘇った。ならもうそれでいいだろう。今までと同じように、お前はデュナンズ・ナイツを監視していればいい」

「そうはいかない。デュナンズ・ナイツが、異世界から来た人間の単なる欲の塊だとするなら放っておく訳にはいかない。デュナンズ・ナイツに派閥など要らないし、何より余所者が作った集まりのくせに、でかい顔をするな!」

ヨハン・・・。

ヨハンが珍しく声を上げた直後にドレイクは地面を殴り、怒りを表すように地響きを鳴らす。そして立ち上がったドレイクはその2メートル半の巨体でもってヨハンを黙って見下ろし、そこに睨み合いという緊張感をもたらした。

「このまま、プライドも何も無いデュナンズ・ナイツでいいというなら、到底デュナンズ・ナイツの理想など叶わない」

「黙れ。プライドだと?ただの監視が偉そうな事を。余所者に人を引き抜かれるような脆弱なワールド・クロスじゃ世界をまとめられない」

「何だと?」

カミーユがドレイクに詰め寄ろうとした時、呼び掛けてくる女性の声でその場の緊張感がふと止まる。

「戦いの最中でしょ。遊びでデュナンズ・ナイツやってる訳?」

そう言って両腕の太い神王会の人は拳を付き合わせ、金属音のようなものを掻き鳴らしてみせる。

あいつ、女か。

するとすぐにドレイクは神王会の女性に振り返り、走り出した。それから一定のレベル以下なら能力が通じないドレイク相手にも、その女性は果敢に殴りかかり、ドレイクと拳を交えていくが、ふと気にかかったのは、それは先程の一撃とは威力が格段に低いものだという事だった。

さっきはドレイクを吹き飛ばしたのに・・・。

女性が殴ればドレイクがガードし、ドレイクが殴れば女性がガードするという、まるで互角のような戦いが続いていた時、見兼ねたのかヨハンが俺達の方に振り返った。

「ここはもういい」

「これからどうするの」

セシルが問いかけた時、攻防戦を繰り広げている女性の右腕が突如光を帯びる。

ん・・・。

「他のディゼルダ派がディゼルダから離れれば、ドレイクだってそうするだろう」

直後にドレイクは珍しく素早く後ずさるものの、女性の方が1歩速く、ドレイクは再び激しく殴り飛ばされる。

威力が変わる攻撃・・・いや、チャージ攻撃か。一瞬だけでもレベルが上げられれば、ドレイクとも戦える。そういう戦い方なのか。

「ドレイク、やられちゃうかもよ?」

「頭を冷やすにはちょうどいいだろう」



「ほらあれ、おじさーん」

手を振るとヨハンは自分に気付いて頷き、歩み寄ってくる中、ふとヨハンからは諦めを感じ、ヨハン達に振り返った杉内からは本当にデュナンズ・ナイツの知り合いが来たのかという更なる戸惑いを感じた。

「ドレイク、説得出来なかったの?」

「今はね。しかしブリュンヒルデ達が他のディゼルダ派を説得すれば、ドレイクだっていづれ目が覚める」

「お前も、デュナンズ・ナイツなのか?」

「ん?そうだが」

ぞろぞろと仲間を連れているヨハンの爽やかな威圧感に感化されてか、杉内は自分や恭助に顔を向けながら平静な闘志を甦らせる。

「この作戦は、デュナンズ・ナイツの日本支部を作る為の足掛かりだ。まさか邪魔するのか?」

「今は、デュナンズ・ナイツを浄化するのが先だ。君達こそ、私の邪魔をしないで貰いたいね」

爽やかな態度ではあるが、ヨハンのその笑みに秘められた闘志に杉内は赤い盾を構えた。

神王会に紅蓮会、デュナンズ・ナイツにワールド・クロス。色々混戦してますね。


ありがとうございました

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