空色の戦闘マシーン
「練習したいから散歩しようよ」
ハイミは練習熱心だな。
「え、りっくん」
「あ、いや」
「りっくんだってちゃんと練習してよ」
「・・・うん。外出る前にちょっとマサハルのところ行ってくる」
キツネなのにネコみたいに腰を伸ばすコロネを通り過ぎ、リビングに出ていき、そしてマサハルの部屋に入ると、そこにはマサハルと共にジンイチロウが居た。
「六事、どうした」
「広島支部、どうなったかなって」
「それが、落ちたそうだ。誰も殺されてはいない。紅蓮会の目的は拠点のマンションでな。荷物をまとめさせられて本部に出戻りさせられた広島支部の人達からの報告だと」
「紅蓮会の目的は本部の武器庫だからな、そこら辺は三流テロリストグループとは違うんだな」
「テロリストっていうか、レジスタンスだよ」
「ああ、そうか」
「間もなく本部からの方針が通達されるだろうな──」
そんな時にテーブルに置いてあったマサハルのスマホが鳴り出し、マサハルはイヤホンマイクを耳に着けた。
「もしもし。・・・あぁ。・・・そうか、分かった」
拠点奪還作戦的な?・・・。でもやるなら本部とか周りの人だよな。東京から人を寄越さないとだめなほど神王会は弱ってないし。
「とりあえずリビングで報告だな」
自分の部屋に戻ってリリコとハイミを呼び、そしてぞろぞろとリビングの1つのソファー付近にみんなが集まる中、当然のようにコロネもやって来てハイミの傍にお座りした。
「広島支部の件で本部から通達だ。でもここにとってはただの情報共有の為だけの話だけどな。本部は紅蓮会の拠点奪取については特に対応せず、新たに広島に神王会の拠点を作るんだと。少なくとも紅蓮会のメンバーの戦力は把握出来てるから、増員した拠点を作る事でプレッシャーをかけるのが主な方針だ」
「広島支部の奴らがやられたって、どんな強い傭兵雇ったんだよ」
ムッカがそう聞くと、マサハルは小さく首を横に振る。
「その報告は無かった。気になるなら聞いておく」
「ああ・・・おう、聞いといてくれ」
「報告は以上だが、そのキツネは?」
何だ聞くんだ。気にしてないのかと思った。
「コロネだよ」
「ていうかそれ、前に言ってたヌシ、だよな?黒いキツネ」
「うん」
「・・・うんじゃない、何で居るんだよ」
「友達だからっていうか、成り行きっていうか。もう半分仲間みたいなものだよ」
「・・・そうか」
マサハルが戻っていった時に何となくハイミと目が合う。
「りっくんとマサハルってどういう関係?」
「可愛い」
ハイミがそんな質問をした時にルイが漏らすように口を開いてコロネを撫でる。
「マサハル、りっくんに何も言わない。心でもじゃあコロネもいざとなったら戦力になるかって言って行っちゃったし」
「んー、関係っていうか、マサハルは器が広いんだよ」
「ふーん」
「お前、心読めるのか」
ハイミにジンイチロウがそう言って、ハイミが振り返ると、顔を見合わせたジンイチロウはヤバイものでも見るように表情を固まらせる。
「リリコにね、マナライズ出来るようにして貰った」
「マナライズって、そういう力なのか」
「違うよ、心を読んだり記憶を見たり、後は食べ物の賞味期限とかも分かるよ」
「そ、そうか」
シールキーで拠点のマンションの1階まで降り、そして豊洲のビル群を見渡しながら有明通りの橋を渡り、お台場方面へと何となく歩いていく。
「何で人間ってビルいっぱい建ててるのかな。空とか飛べないくせに」
「(そりゃあ高い所から他人を見下ろしたいからだよ)」
「優越感ってやつか。でもコロネ、人間嫌いなのにルイに抵抗しなかったじゃん」
「(しなかったんじゃないよ、抵抗出来なかったんだよ)」
「何で?」
「(撫で方を知ってる手つきだった、ありゃ)」
「そうなんだぁ。ルイは動物好きだし、触り方が優しいのかな」
まるで友達と話している子供を見守る親のように、手を繋いできたリリコは黙って笑顔を向けてくる。
「全然通行人居ない、リリコ、もっと人が居るところ連れてってよ」
「一応この方向はお台場だけど、りっくん、ワープしよ」
「シールキー貼れそうな壁無いよ?橋の上だし。せめて橋渡らないと」
「(自分がワープさせてもいいけど)」
「じゃあ頼むよ」
浜辺ではなく木々の中だからか、ワープしても人の目に留まる事なく、そして浜辺に出ていくが、冬だからかそこまで人気は無い。
「お、居る居るー」
ハイミは他人の中見るの、気後れしないのか。他人なのに。
「寒いのに人居るんだね」
「寒くなったらあの中に入って温かいもの飲むんだよきっと」
リリコにそう応える中、ハイミがはしゃぐ子供のように独り飛んでいったので歩いて追いかけると、それからハイミは2匹のチワワと散歩している女性の目の前に降り立った。普通なら驚いたり警戒したりするはずだが、言葉が話せるからか女性から伺えた警戒はすぐに解かれ、話し声が分かるところまで歩み寄る頃にはその女性は楽しそうに笑っていた。
「あ、来た。ハイミの家族だよ」
屈んでいた女性が立ち上がると、散歩中の挨拶のように会釈をして来たので思わず会釈を返す。
「キツネも居るんですね」
「(自分はコロネだよ)」
「可愛いね」
「(どうも)」
散歩中に出会った知らない人らしく、そして女性はチワワたちと共にすぐに去っていき、ふと自分達を見上げてきたハイミと見つめ合うとハイミからは楽しさを感じた。
「ミカンとリンゴだって、あのチワワたちの名前。寒いけど散歩は楽しいって」
「そうなんだ」
するとハイミはまた飛んでいったので、また歩いて追いかけていく。
「聖」
ホールでテレビを見ながら、スマホで何となく世界中のニュースを調べていると声をかけられたので振り返る。
お、究達帰ってきた。
「2つ共依頼やったの?」
「まあね、楽勝だったよ」
おー、まあ柳菜とアマカゼ君が居ればね。
「聖何してたんだよ」
「世界中のニュースをさ、ちょっと検索してて。デュナンズ・ナイツの動向とか分かるかなって思ったけど、あんまり」
「ふーん。デュナンズ・ナイツの公式サイトとか無いのかな」
「あるけど、ドイツ語だかフランス語だかで分からないよ」
「あー、そうなんだ」
「みんな、疲れてるなら癒してあげるよ?」
ヒカルコとミントと隣のテーブルで過ごしていたユウコがそう言うとすぐにライムが笑顔で歩み寄り、そしてライム達が近くのテーブルでユウコのフレイムセラピーを受けている中、2杯目のコーヒーを持ってきて席に戻る。
「レッドライトニングのリーダー?」
ん?・・・。
振り返るが、そこに居たのは話した事のない知らない男性だった。
「はい」
「オレも仲間内でチーム組んで指定自警団やってるんだ。デュナンズ・ナイツの戦い見てさ、戦ってみたいと思って。親睦戦ってやつ。暇そうだし」
「え、あ、はい、暇は暇です」
「実質、デュナンズ・ナイツは日本から撤退して、あとは波に乗ってきたアメリカ人を抑えればいいって感じだよな。出来たばっかりのチームなのにすごいよ」
「ノブさん達が助けてくれたお陰ですよ」
その男性についていくとそのテーブルには何やらノートパソコンを開いている女性が1人、携帯ゲーム機で遊んでいる男性が2人、そして飲み物を目の前にしてやって来た僕に顔を向けた1人の女性が居た。
「オレ達のチーム名は『ショウジ班』。リーダーのオレの苗字がショウジだからな。で、ショウジ班のメンバー」
「初めまして、赤荻聖です」
「うん。私クラハシユキノ。パソコン担当のモモちゃん。ゲームばっかりしてるのがシュウヘイとノーマン。アメリカとのハーフね。おい挨拶しろ」
「おう」
「ハロー」
「いやお前“英語出来ない系ハーフ”だろ」
シュウヘイがそう突っ込むが手は止めず、2人で協力プレイでもしているのかすぐに2人はゲームに集中した。
「チームって言っても基本遊撃だし、こうやってチーム同士での親睦は深いに越した事ないからな、じゃ闘技場行こう」
「はい」
個人じゃなく、チーム同士でのチームワーク向上か、確かにそうじゃないとそもそも全国のヒーロー活動する人達を指定自警団で統一出来ないよな。
ショウジと闘技場に入るが、その闘技場ではすでに遊んでいるように能力を出し合っている人達が居て、ふと区民体育館のような空気を感じた。
東京ドームくらいの広さだし、邪魔にはならないんだろうけど。
「レベルは?」
「数字的には3です。でも僕の場合は異世界の力も入ってるので正確には分かりませんけど。多分実質、7くらいだと思います」
「なっ!まじか、ああでもデュナンズ・ナイツと対等にやれるんじゃそうか。格闘派じゃシンジといい勝負ってとこか」
直後にショウジは足から這うように頭にかけて全身に、“ボディービルダーのようにムキムキな体がそのまま機械化したような青い鎧”を纏った。
うわ、ムキムキなのにロボットって、筋肉の意味無いんじゃ・・・。
「オレもシンジとはいい線いくんだ」
すべてのDNA情報を発動すると、ファイティングポーズを取るもショウジはすぐに飛び掛かって来ずに深呼吸した。
「行くぞ」
「はい」
何となく自分自身に言い聞かせるような、緊張した声色でそう言った直後、ショウジは緊張とはまるで逆だと思わせるような動きで殴りかかってきた。武術にこなれたように払って拳を弾くも、ショウジもそれこそ凄腕の武道家のように間髪入れずに殴ってきたり蹴ってきたりと、怒濤な攻撃を仕掛けてくる。
格闘派か、ヤバイっ。
1つの蹴りによろめいてしまうと、ショウジはその隙に直感的に飛びつくように殴ってきて僕は尻餅を着いてしまうが、それでもショウジは高く飛び上がったのでちょっとした恐怖を感じながら黒炎を放ち、辛うじてショウジを吹き飛ばす。
えっ・・・。
立ち上がる前にもうすでにショウジは殴りかかってきて、凄まじい殺気なのか、はたまた心までロボットになっちゃったのか、そんな恐怖を感じさせる俊敏さに再び黒炎を放って牽制するが、転がっても起き上がりながらショウジは掌から青白い光球を放ってきて、しかもその衝撃に体は身構えたまま硬直してしまう。
くっ・・・。
更にまるで拳銃を撃ちまくってくる刑事か悪者みたいに光球は連射され、その衝撃の重たさに立ち堪えている事しか出来ずに居る中、光球を撃ちまくりながら歩み寄ってきたショウジは背中から青白い光を吹き出させてそして飛び蹴りしてきた。
強いっていうか、速い。スピードじゃなくて、何だろう・・・。
後ずさりはしたが飛び蹴りを立ち堪えると、再び背中から青白い光を吹き出させて宙を飛びながらショウジは光球を連射してきたので、僕も負けじと黒炎の球で応戦していく。
こんな強い人、指定自警団にどれくらい居るんだろ。ていうかショウジさん、無言だな、ずっと。
更にスピードを上げてショウジは離れていき、強い攻撃が来るのかという緊張を膨れ上がらせる。
ふうっ!・・・。
そして空気を鳴らしながら戦闘機のように戻ってきて恐怖を連れてきた時にリインフォースを使って力を強化させ、突撃してきたショウジに真っ向から全力でタックルをぶつける。
・・・・・つう・・・やった。
転がったショウジは今度こそ減速するが、ゆっくりでもすぐに立ち上がり始める。
まさか、僕みたいな暴走とか。
「ふう、やるじゃん」
喋った・・・。
「体が重たいって事は、相当な衝撃を受けたんだな」
「あの、もしかして暴走して意識無かったとか」
「そういうんじゃない。1つ目と2つ目を合わせた主戦力は見ての通りだけど、3つ目の力は、アドレナリンの強制分泌だ」
「アドレナリン・・・」
「つまり、痛みも疲労も、恐怖も感じずに、常に最高速度の判断力で戦えるって事だ」
そういう系・・・何系だ?
「でも意識はちゃんとあるぞ?普通に手加減だって、やろうと思えば出来る。しないだけで。んで、強烈なダメージを食らうと防衛本能が勝ってアドレナリン分泌が抑えられる」
「すごいですね。本当にロボットみたい」
「はっはは、まあな。じゃ、第2ラウンドと行こうか」
「あ、はい」
うん、これもいい特訓になる。
しばらくしてホールに戻ると、まるで待っていたかのように扉の前にはミントが居た。
「ソラ、聖の仲間に自己紹介してないんでしょ?みんな行ったよ?」
「え、ああ」
大分疲れた中、究達の下に向かったユキノ達を見ていると、ふと目に留まったのはスランバーを出した究にテンションを上げるシュウヘイとノーマンだった。
ゲームのものが現実に出るんだもんな、僕だってそうなったし。気が合いそうだ。
ショウジ班のような人達はきっと沢山居るんでしょうね。この世界にとって、主人公とはただの視点ですから。
ありがとうございました




