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ディスミスゲーム

「現地調達?へへ、でも確実っちゃ確実か。神王会ってみんな白い鎧だし、すぐ分かるよな。じゃ俺、デュナンズ・ナイツ来るまで特訓してるから」

「究、やけにやる気だね」

「だって見るからに聖の方が強いからさ。俺だって普通にシンジ君と戦えるくらいにならなきゃだし」

究が闘技場に向かい始めた時に何となく柳菜を見た時、究を見る柳菜は珍しく思い悩むような表情を浮かべていて、声をかけようか迷ったものの直後に立ち上がった柳菜は究についていった。

2人で行っちゃった。まさか究と柳菜、戦うのかな。

それからドリンクサーバーからコーヒーを持ってきて椅子に戻り、闘技場のモニターを見ると、究はゼロニアと共に戦闘魔晶たちを相手にしていた。

おお、自分の能力で特訓出来るって、いいな。でも柳菜は見てるだけか。

「ねぇアマカゼ、デュナンズ・ナイツの偵察とか出来る?」

「やり方に依るかな。特定の誰かを追いかけるなら簡単だよ。サーチングっていって、サイコメトリーと、幽体離脱的な事を駆使して捜したい人が居なくなった経緯を道順通りに追いかけるんだ」

サーチング・・・すごすぎる・・・。

「へえ。追いかけるって、ガブリエル達ワープで居なくなったけど」

あー、さすがにそれじゃあ。

「それやったら、意識を過去に飛ばすセンストラベリングっていうのをして、ワープする直前のガブリエルからどこにワープするか心を読めばいいんだよ」

さも当たり前かのようにそう応えるアマカゼにさすがに凉蘭は言葉を失いながらも、しかし感心するようにニヤけて何故か僕を見る。

センストラベリング・・・なんじゃそら。

「タイムトラベルって事?」

「まあね。でも何万年とか無理だよ?人間の想像力なんて、言うほどやないし」

んー、まあ確かに。

「今のとこ、体を眠らせて脳波を安定させる、センストラベリングする時の専用カプセルに入って、最高で300年くらいやな、過去を見れるの」

おおー。

「でも実は外から見てたらその人は12年間カプセルで眠ったままだったんやけどね」

「えっ」

そう言ってアマカゼはオチ付きの鉄板トークを決めたように最後に笑った。

すごいな、色々すごい世界だな。

「何か、アマカゼの世界、行ってみたくなっちゃった」



「ねえ見て見てりっくん」

自分の部屋で過ごしていると、そう言って洗面所から出てきたリリコは何やらソファーに座る自分の下にやって来て、髪の毛をさらっとしながら自分に見せつけてきた。

「え?」

すると直後に肩には届かない程度の長さの髪は一瞬で腰まで伸び、更にまるでコンピューターで色を設定する時にカーソルが動くと同時にサンプルとして色が変わっていくような速度で、リリコの黒髪は黄色になった。

「うえっ」

どういう、理屈・・・。

「鏡を見て、自分自身の遺伝子を改変したの。綺麗でしょ」

「うん。CGみたい。ていうかそういうやり方もあるんだ」

自分自身も、変えられるのか。

「ハイミみたーい」

ハイミがやって来るとリリコはハイミの首元を優しく撫でる。

「私ね・・・神になる」

「ん、どこの?」

「え?・・・どこ・・・だから、神」

「うん、どこの?」

「え・・・女神?」

「何の?」

すると自分と見つめ合っていたリリコは笑いを吹き出した。

「何のって何よー。私、これから神みたいに自分の遺伝子変えてく。そしたらりっくん、男神ね」

「神、か。遺伝子的に、人知を越えた存在になるの?」

「それそれ」

ほほう。

「ハイミも神にしてよ」

「うん、勿論」

・・・・・神って、何だ。

「ねえねえリリコ、そろそろハイミ、鉱石欲しい」

「そう?じゃあマサハルから貰ってくるから待っててね」

「うん」

それから自分に笑顔を見せてからリリコが部屋を出ていった後、ハイミは甘えるように膝の上に乗っかってきたので首元を撫でようとして指を伸ばした時、片翼を動かしたハイミはなんと自分の指を翼から生えていた3本の指で掴んだ。

「指取った」

んなっ!・・・。

そしてハイミは自分の指を可愛らしく上下に揺らした。

「ゆ~び~」

か・・・・・可愛い。

「いつ指生えたの?」

「今朝だよ。手って、ホントに便利だよね。あとね、聞こえてくる声と話すのも楽しいし」

「ん、どこから?」

「頭の中かな。あとは他の動物を介したり」

・・・何だそりゃ。

「ハイミ、持ってきたよ」

「わーい」

自分の膝からテーブルに飛び移る様はまるで駆けていく子供みたいでまた可愛らしい中、リリコはテーブルに3つの鉱石を転がした。

「先ずはホワイトアーマーにすればいいんでしょ?」

そう言いながらハイミは鉱石をつまみ上げる。

「うん」

目を瞑ったハイミが程無くしてほんのりとした光を帯びたところで、リリコは隣に座ってきて自分を見てきた。

「欲しい遺伝子あったら作ってあげる、何がいい?」

「え、急に?んー」

「やっぱり不老じゃない?」

そう言ってハイミはまるで着た服を見せるようにホワイトアーマーを纏った。

お、これでハイミも立派な神王会。

「カッコイイよ」

「ホント?わーい」

「そういえばハイミ、頭の中の声って、どういうの?」

「んー、何かね、変な感じが、すーって体の中に入ってきて、話しかけてきたの」

変な感じが、すー・・・。

「いつ?」

リリコを見るとその横顔は珍しく驚いていて、まるで自分の子供が知らない人から話しかけられたかのような警戒心を伺わせた。

「昨日、1人で散歩してた時だよ」

「まさかリリコ、潜るの?」

「気になる」

うわ、言葉数が少ない、もう集中しちゃってる。それより他の動物も介してって、どういう事かな。

「そうか、あ、また・・・・・ふう」

「何見たの?」

「ほら、あの黒いキツネだよ」

「黒いキツネ。そういえば最近見てないな」

そんな時に窓がノックされて、とっさに振り返る。するとなんとそこには黒いキツネが居て、何となく立ち上がったが直後にリリコが腕を掴んできた。

「ハイミの記憶から黒いキツネの事見たらまたすぐにブロックされた。怒ってるんじゃない?」

え、んー。

「でも、ずっとベランダじゃあさ」

閉め出されてしまったかのように窓の向こうに座ってる黒いキツネが自分を見上げた時、リリコの警戒が頭に過るものの、やっぱり寒そうなので窓を開ける。

「肉球キレイにしないと入っちゃだめだよ?」

リリコの言葉に、前足を上げたまま黒いキツネは動きを止める。

「(え。大丈夫だよ?この体はまだ外歩いてないし)」

「そう、じゃあいいよ」

ふう、もうすっかり冬だなぁ。

すぐに窓を閉め、まるで友達みたいに黒いキツネにハイミが寄っていくのを見ながらソファーに座る。

「何か用なの?私別に呼んでないけど」

「(友達に会いに来ただけだし)」

「ふーん」

何でここに。ハイミの頭の中に直接コンタクトを取れるから、現在地も分かるとか?

「(暖かい)」

やっぱり寒いんだな、動物も。

「どうしてブロックするの?」

「(だって、そーゆーの、プライバシーの侵害っていうんでしょ)」

「そうだけど」

「(でもね、ちょうど、あなたのそのマナライズの力、ちょっと借りたいんだよね)」

ん、キツネの方からの頼みか。

しかし自分を見てきたリリコは警戒と戸惑いをその表情に伺わせる。

「借りたいって」

「(マナライズして欲しい人がいるの。その人も異世界からの来訪者でね。不安っていうか、好奇心っていうか)」

「じゃありっくんやってあげてよ」

「(え、出来るの?)」

「りっくんも鉱石でマナライズの力持ったからね。いい練習になるし、ね?」

「別に、いいけど・・・」

「(じゃあ頼むね)」

「うん、分かった。どんな人?」

「(何か、あなた達みたいに、自分の中をくすぐってきて、ブロックして、ワープもしたのにヤンキーみたいに追いかけてきた)」

・・・・・全然、分からない。

「記憶、見ていい?」

まるでハイミとのやり取りみたいな感じになり、リリコがそう聞くと、一瞬の間の後に黒いキツネは頷いた。

「(見ていいとこだけブロック解いた)」

「・・・・・えっあ~。へえ、げっ、あ、ちょ・・・んーーーっ・・・ふう」

何だ、最初余裕だったのに、ピンチになって、踏ん張って、溜め息。

「危なかった」

「何して、たの」

「『ディスミスゲーム』だよ。ほらこの前やったでしょ?自分のイメージに引き込んだ方が勝ちの遊び。あれの逆バージョンで、意識をぶつけ合って退場させた方が勝ち」

「え?それじゃあ、相手もマナライズ使ってたの?」

「ううん、多分違う。たまたまマナライズっぽい力を鉱石で持ったんじゃない?」

「そっか」

「でも、困ったね、マナライズしたらこっちの事バレるなんて。下手に出来ないな」

あれ、リリコ結構乗り気だな。

「(今どこに居るかとか分かった?)」

「ううん」

「(まぁ誘き寄せるのは自分の方で出来るけど)」

「何でその人に会いたいの?」

ハイミがそう聞くと、黒いキツネはキレイにお座りしたまま顔を向けていく。

「(会いたい訳じゃないよ。このままじゃまた追いかけられちゃうからね、話をつけたいんだ)」

追いかける、か。またサイゴウかな。でもあのアイマスクは効かなかったし。

「(じゃ、これから誘き寄せるから)」

しかしそう言うと黒いキツネはリラックスするように静かに伏せた。

「どうやって?」

「(簡単だよ。分身を使うんだ。・・・あいた)」

見た目はただ寛いでいるだけ。何か、リリコみたい。

「(でもレストランで何か食べてるな。仕方ないからもうちょっと待つか)」

「え、気遣うんだ」

「そういえばお昼時だね。私達もお昼ご飯食べよっか」

リリコが作ってくれたペペロンチーノを食べながらふと見ると黒いキツネは横たわり、まるで家に居るかのように寛いでいる。

「寝ちゃったみたい」

そんな時にリリコに焼いて貰った小間切れ肉を食べているハイミがそう呟き、黒いキツネを見る。

寝るって事は、キツネもこれからここに住むのかな。

「りっくん、キツネは神王会じゃないんだから」

「それならホワイトアーマー着ればいいし。それに、リリコとキツネ、理念は同じじゃん」

「まぁ。りっくんがいいなら」

「名前、付けようよ」

そう言ってハイミは焼かれた肉を噛みちぎる。

名前か。



「ウルフ、日本は初めてかい?」

「・・・あぁ」

これが、日本語か・・・。

「ウルフ、日本語には敬語があって、こういう場合はあぁじゃなくて、はいだよ」

そう言って同じように“外国語を話せるようにして貰った”同じチームのナイツナンバーフォー、セシルは年下のくせに偉そうに微笑んだ。

「敬う気持ちがあればいいんだろ?」

「それでヨハン、とりあえず日本着いたらスシ食べない?」

・・・無視かよ。セシルこそヨハンに対する態度に敬意が無い。

「旅行に行くんじゃないぞ。俺達はガブリエル達の抑止力だ」

「え?もう朝だよ。向こうじゃランチタイムだし。せっかく日本行くのに」

「朝って、日も出ていないだろ。変な時間に食べると調子狂うんじゃないか?」

「じゃあケーキでも食べれば?甘いもの食べれば良い意味で落ち着けるよ。ケーキくらいなら食べれるでしょ」

「スシ屋にケーキなんかあるか」

「え、知らないの?あるんだよ」

「いいじゃないか。心の余裕は大切だ。では、行こうか」

日本との時差は8時間だったな。まだ暗いし、朝食には早すぎる。いや、けど小腹が空いたと言えば、空いたか。

ヨハンのシールキーで作った扉を抜けるとそこは昼間で、飛行機など使わずにいきなり浴びた日光に、何だか妙な気分になった。

すごいな。初めて来た日本なのに、道路標識、看板、店の名前、そういうものに違和感が無い。

しかし土地勘はまったく無いので、ヨハンについていきながらその街並みは言葉が分かるからこそ違和感の塊だった。

ヨハンは基本的に最初は単独行動で、情報と方針が決まったらこうして仲間を連れて行動する。つまり、ガブリエルの事に関してはヨハンも本気って事だな。

「わあ、回転寿司だ。何年振りかな」

「セシル、日本来た事あるのかよ」

ナイツナンバースリー、カミーユがそう聞いた時に店に入り、ヨハンが整理券を取るのを横目にしながらドイツやスイスにはない雰囲気を感じていく。

「子供の時に旅行で来たの。カミーユは?」

「スシならフランスでも食えるし」

「ウルフ、どうしたの?今更ワサビに緊張してるの?」

「何でだよ。今ガブリエル達が動かないとも言い切れないだろ」

「大丈夫だよ」

「何故言い切れる」

「今頃は誰だってデジュネだよ」

・・・何故フランス語。

「・・・俺だってワサビくらい食える」



「コロネ・・・・・コロネ」

ハイミの言葉を聞いてか、黒いキツネは目を覚まして顔を上げるとすぐにネコみたいに腰を伸ばした。

「コロネ」

「(何?それ)」

「名前だよ。キツネのコロネ」

「(自分の・・・名前?)」

キツネなので表情は無いが、するとまるでコロネは戸惑うように自分とリリコを見上げてきた。

「ハイミが付けてあげようってさ。私のハイミが考えたんだからね?拒否したらくすぐっちゃうよ?」

「(え。そんな、全然拒否なんか、しないよ。名前・・・)」

野生で生きてきたんだろうし、ヌシじゃ味気ないしな。

万渉術を手に入れた柳菜達の一方、リリコも着実に“誰も知らない最強”になりつつありますね


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