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ゴーストタッチ

ホットドッグも食べ終えたので、出現させたリングに乗り、サーフィンするように、同時にパトロールも兼ねてゆっくり街を飛んでいく。数日前にあった爆破テロの跡形など、能力者の能力で何も無くなった建物を見下ろしたり、川沿いで佇んでいる成人した人間よりかは小さい巨大生物を撮影している人達を見下ろしたりしていると、ペガサスに乗って近付いて来ながら手を振ってくるテレサが見えた。

「あの少年は」

「ペガサスに乗せたら元気になったよ」

「そうか」

最早ペガサスが街を歩く事などそんなに大事にならない中、ペガサスを引き連れて歩くテレサと何となく街を歩いていく。

「先生から聞いたんだけど、大学辞めるんだって?」

「引き留めに来たのか?」

「んー、別に辞める事ないのに」

「そもそもワールド・クロスに就職したと思えばいい。そして独立した者達が立ち上げた新しい会社であるデュナンズ・ナイツに俺も入った。だから大学を辞めても、将来どうするなんて疑問は無いだろ」

「そういう事じゃなくて」

「何だよ」

「大学っていうのは、やりたい事の為により高度な知識を学ぶところ。ウルフ、心理学諦めるの?」

「先生に言われたんだ。勉学が疎かになってるって。実際、出席日数も落とさざるを得ない。それでもその気になればやりたい事の2つや3つ、同時にやっていける。でもそれが出来ないのは、俺自身、心理学よりもデュナンズ・ナイツの活動にやりがいを感じてるからだ」

「疎かでいいじゃない」

「え」

「2、3年留年しようとやりたい事なら続けるべき。そんなのデュナンズ・ナイツのせいにしてるだけだよ。時間がかかっても、やり続けてたらそれは疎かじゃないよ」

「何をそんなに熱くなってる」

「熱くなってる訳じゃないよ。やめなきゃいけない訳じゃないって言ってるの」

「・・・分かったよ」

それからテレサとバーで夕食を取っている中、ふと窓を見れば外では駐車した車のようにペガサスが佇んでいるが、しかし何とも言えない具合に街に馴染んでるのか、通行人達は特に振り返ったりはしない。

「ウルフ、ワールド・クロスに戻る気無いの?」

「何だよ急に」

「テレサっ」

隣のテーブルにテレサの友人であるキャサリンが、ワールド・クロスに属しているカルロスと共にやって来ると、席に着くなりカルロスは勝手に何かを納得したような笑みを浮かべて俺の肩を叩いてきた。

「ペガサス居たから来ちゃった」

「ウルフ、ワールド・クロスに戻る気になったのか?それならまたチームに入れてやるよ?」

「まだ考えてない」

「何でよ」

するとすぐさまテレサがそう問いかけてくる。

何でって・・・。

「戻る気があるならそもそも出ていかない」

「何言ってんだよ。今だってそうやってコンビのまま飯食ってるだろ」

カルロスの言葉に念を押すように、テレサは押しつけるような笑みを見せてくる。

「幼馴染みだから一緒に飲んでるだけだ。それより、彼女か?」

「まあな。1週間前から。ってオレの話はいいんだ。で、今デュナンズ・ナイツは真っ二つなんだろ?実際アメリカじゃドレイク派の奴がワールド・クロスに戻ってきた話がある」

「ドレイク派ならそうだろ。俺はデュナンズ・ナイツの原点を重んじるヨハン派だ。裏切りなんて考えない」

「でもヨハンだってそもそもワールド・クロスだったんだ。戻るかどうかは自由なんじゃないのか?」

「それはそれとして、デュナンズ・ナイツはキレイに真っ二つな訳じゃない。各チームのナンバーワンはそれぞれ自分の考えがある。それこそ支部ごとにな」

「それはそうだろうけど」

「ただ、フィクサーのディゼルダに1番心酔してるのがドレイクなんだ。ドレイク派の実行力はアメリカの奴等も動かす力がある。そしてアメリカ勢を連れて日本へ押し寄せる計画もある。今デュナンズ・ナイツを離れる訳にはいかない」



自宅で朝ごはんを食べてから組織の指定自警団のホールに向かうと早々にシンジに闘技場に誘われ、そして何十分か経った頃、闘技場にはノブが現れた。

まさかノブさんも特訓かな・・・。

「戻ってくれ、重要な情報が入ってきた」

・・・ふう。重要な情報?

ホールに戻るとそこには何となく緊張感が漂っていて、1つのテレビの前に指定自警団が集まってる事に、ここが会議室とかではなく見慣れたホールだからこそふと勝手に“秘密基地感”を抱いてしまう。

わぁ、何かすごい会議っぽさ。

「前に、アメリカの指定自警団のような組織が真っ二つになった話をしたが、アメリカに残った方のグループが、デュナンズ・ナイツのアメリカ支部の傘下に入った。アメリカに残った方のグループ所属の能力者本人から聞いた事だから間違いない。つっても情報をくれた奴は傘下に入る事に多少なりとも不満があるんだと。表向きには連合だが、要は吸収合併みたいもんだってな。問題は、元々アメリカの指定自警団のような組織は、日本の指定自警団とも連係してた。オレらもデュナンズ・ナイツと連係するかはまだ未定だ。何でかっつうと、デュナンズ・ナイツはそのアメリカの奴等を日本に向かわせて、テロリスト殲滅に力を入れようとしてるからだ。まぁ、監視ばっかりだと世の中もオレらをよく思わないからなぁ。基本的には、オレら指定自警団はデュナンズ・ナイツには協力せず、積極的にテロリスト殲滅を阻止するって事で行こうと思うんだが、意見はあるか」

「別にデュナンズ・ナイツを倒そうって訳じゃないんでしょ?あくまでも日本のテロリストは指定自警団が何とかするって言えばいいの?」

「おいおい、そんな簡単に引き下がるかよ。デュナンズ・ナイツの縄張り意識は地球なんだろ?そういうのは聞く耳持たないだろ」

「でも戦えば戦うほど、本来戦わなくていい者達の溝が深まる」

「宗教団体なんだ。ああいうのは理屈じゃ動かんよね」

「宗教だっけ?違うんじゃない?赤十字だよ」

ここにも、戦わなくていい人同士か。でも戦える力があったら、それを使わないでいられるかって言ったら、やっぱり、戦うのかな。



自分の部屋の扉がノックされたが、自分よりも早く扉に向かったのはリリコで、扉の向こうに居たのはマサハルだったが、マサハルは特に驚く事もなく冷静に自分達をリビングに呼び出してきた。

「おいおい、鳥、でかいな」

「ハイミだよ」

リビングにはすでにみんな集まっていて、目を向けるなりソファーで寛いでいるムッカがそう言うと、リリコの腕に乗っているハイミがすぐさま応える。すると可愛いその円らな瞳になのか、ムッカはにやけ顔でハイミを見つめたまま何故か固まった。

「デュナンズ・ナイツから本部に通告が来た。アメリカから能力者を引き連れてアリサカ達の殲滅を行うから、邪魔はするなって事だ」

「あ?バカかよ、従うかよ」

すぐさまキョウスケがそう言うと、マサハルも持ち前の冷静な顔でキョウスケの強気に同意するように頷く。

「簡単な話が、気にするな、だな。アメリカでも何でも大人数ならそれだけ周囲の被害は大きくなる」

「通告って、誰から?ガブリエル?あのおじさん?」

「おじさん?乱入してきた奴か。ていうか名前知らないぞ」

何だっけ?

「ヨハン」

リリコがそう言うと、リリコはマサハルと目を合わせた後に黙って自分を見た。

「いや、そもそも個人的な名前は書いてない」

何だ。あのおじさん、賛成なのかな。聞いてみたいけど。方法なんて・・・。

「ま、いつも通りって事だよな?」

「あぁ」

「じゃちょっくら本部でレベル上げしてくるかな」

マサハルが隊長の部屋に戻っていき、キョウスケもそう言ってリビングを去って行った後、そのままリリコとリビングのソファーに座る。

「可愛い・・・」

おや、今日は早起きだな。

ハイミがテーブルに降りるとやって来たルイがそう言ってハイミを撫でる中、リリコは何やらスマホを取り出し、画面を見つめた。リリコの頭の中にちょっとだけ入ってみると、間もなくしてリリコはヨハンのスマホにメールを送信した。

「あの時の神王会の者です。リクジっていいます。デュナンズ・ナイツがアメリカの能力者を引き連れて来ます。おじさんは賛成ですか」

正にダイレクトなメール・・・。

「まぁあのおじさんなら怒らないだろうけど」

「これ、どこの鳥?」

「カラスだよ。能力でリメイクしたの」

「カラスベースか。でももう、ワシとかだね。ハイミだっけ。あたしルイだよ」

「ルイ。ルイは動物好きなの?」

「まぁ可愛いのは好きだけどさぁ」

「人間は?」

「んー、人間か、そんなに好きじゃないかな」

すると直後にソファーの端に座っていたジンイチロウは笑いを吹き出す。

「一応ヒーローだぞ、神王会」

「ヒーローはヒーローでしょ。人間は人間」

「ええっ全然分かんねえ何だそれ」

「りっくん返信来たよ」

おっあのおじさん、反応してくれた。

「私は賛成しない。その事で話をしよう。落ち合う場所を指定してくれ」

最早、何でメールアドレスを、とか聞いてこない。さすがだ。

「りっくん、どうしよ」

「行くでしょ」

こっちから指定していいのか。てことは日本でいいのかな。

そして待ち合わせに指定した横浜の赤レンガ倉庫で待っていると、程なくしてまるで普通に歩いて来たようにヨハンがやって来た。

「やぁ。六事」

「どうも」

相変わらず決まってる服装だな。

「早速本題に入ろうか。それなりに時間は無いようだしね。何故デュナンズ・ナイツの情報を?」

「直接デュナンズ・ナイツから通告が来たんだよ。アメリカから能力者を引き連れてアリサカ達を殲滅するから邪魔するなって」

「なるほど。念を押したという事だね。しかしそれは逆を返せば、デュナンズ・ナイツは神王会を無闇に敵には回したくないという事ではないかな?」

「そうかなぁ。私は挑発の香りしか感じなかったけどな。念を押したのは、神王会に下手な真似はするなって事なんじゃないの?」

んー、確かに。

「そうか・・・」

「何でおじさん、自分達に会いたかったんですか?まさか追放されたとか」

「はは、追放されるほど私は弱くないよ。何故君達を訪ねたか、それはまぁ、言わば君達は攻められる側で、私は攻める側だ。その中で、同じ側でも仲の良くない者から情報を聞くくらいなら、相反する側から情報を得た方が案外スムーズに話が運ぶんじゃないかと思ったからだ。世界は広い。見えきっているルートだけを選ぶなんて、つまらないと思わないかい?」

無意識に“あえて”を選ぶ、やっぱり変わってるな。

「でも、表面的には敵対しているグループに“ゴーストタッチ”してくる君達の方が、私は侮れないと思うがね」

それでも余裕があるからかヨハンは外国人らしくブラックユーモアでも決めたように微笑むと、変なシンパシーでも感じたのかリリコは自分に笑顔を向けてくる。

「それで、神王会はどう動くんだい?君達は日本で1番大きな独立組織だ。デュナンズ・ナイツに従うようには見えないが」

「うん。神王会はいつも通り、変わらないよ」

「そうか」

「時間が無いってどういう事?」

「待つ理由は無いだろう?すぐにでもデュナンズ・ナイツが来たと世の中が騒いでも不思議じゃない。派閥が違うからと敵対するつもりはないが、私はなるべく一方的な見方はしたくないのでね」

「まさか指定自警団にも話を聞きたいとか思ってますか」

「それが出来たら面白いね。コネクションがあるのかい?」

「あ、いえ。でも指定自警団は有名だし、それは前みたいにおじさんから道端で話しかければいいんじゃないですか?」

「そうだね。検討してみるよ。じゃ私はこれで。話を聞いてくれて感謝する」



「聖君」

タツヒロ君だ・・・。あの事かな。

「もしかしてオトナリ君の事?」

「それはそうなんだけど、助っ人をさ、もしかしたら頼んだら協力してくれるかも知れない人達を見つけたっていうか」

「でも、もう指定自警団全体でデュナンズ・ナイツに対抗するって事になったし、もういいんじゃないか?ガブリエルなんてノブさん達にかかったら楽勝だよきっと」

そう言って究はホールに戻っても何故かさっきからずっと消さずにいるゼロニアを撫でる。

それはそうなんだけどな。

「せっかく見つけてくれたんだし、それってどんな人達?」

すると究に対して何か言う事もなくミントが問いかける。

「神王会だよ」

いやいや・・・。

「神王会がデュナンズ・ナイツと戦ってる動画幾つかあるしさ」

「協力してくれるかなぁ、昨日だって神王会の人すごい冷たかったし」

ていうかあの白い鎧、そもそも顔見えないし。

「大丈夫だよ。戦う相手が同じなら頼めばきっと聞いてくれるよ。少なくともワールド・クロスの時みたいに話は聞いてくれるんじゃないかな」

直接、か。確か宮崎県だっけ、本部。

「でも神王会って独立組織だから、組織のメールとか出来ないよな?道とかで捕まえるとか?」

「捜す必要は無いでしょ」

タツヒロの、答えなんて分かってるでしょみたいなその真顔に究はキョトンとし、ゼロニアもタツヒロを見る。

「戦いの場には神王会の人だって来るだろうし、そこで誘えばいいんじゃないかな」

インターネットの世界を漂い、人の連絡先を勝手に突き止めてくる。正にゴーストですね。


ありがとうございました

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