トゥー・アイディアル2
「聖、あれ」
「うん」
究と僕の短い会話などガブリエル達は誰1人として気にも留めず、ただ突然やって来たオオモリユキトのガルジャンという巨体を前に誰の仕業か勘ぐるような静寂を作り出す。直後にガルジャンから少し離れた場所に刺々しい卵みたいなものが出現すると、そこからなんとオオモリユキトとアマカゼが現れた。
アマカゼ君はいいけど、何で、オオモリユキト。何で一緒に?
しかもそれからオオモリユキトはウシクの方に、アマカゼは僕達の方に歩み寄ってきた。
「おうアマカゼ、何で一緒に?」
「たまたまだよ。ユキトがウシクをサーチングしてたらみんなも一緒に居るっていうから、テレポート・デバイスに相乗りしたんだ」
サーチング?・・・テレ──。
「お、おう、そっか」
「いや究、分かってないでしょ」
キョウスケやられちゃったな。行った方が良さそうだな。ていうかあれ、すごいな。カッコイイ。
「リリコ」
「行くの?」
「ちょっとあのカッコイイやつ、間近で見たくて」
「ああいうの好きなんだ、ていうかりっくんに間近なんてもの無いでしょ、もう見てるじゃん間近で」
「ついでにキョウスケの様子も」
「ちょっとだけだよ?」
ホワイトアーマーを纏い、手を振るリリコに応えながら空を飛んでいき、そして指定自警団の眼差しをちょっと気にしながらキョウスケの下に降り立つ。
「やられてんじゃん」
「まだだ、1人なら勝てないけどな。お前も戦うのか?」
「自分は、ちょっと様子を見に来ただけだよ、あのカッコイイやつ」
「そこかよ。なら巻き込まれないように下がってろ」
「うん」
ふと騎士風の巨人をマナライズしてみると、巨人から感じたのは壁や囮として動こうとするような感情だったが、気に留まったのはそれは巨人の感情だけではないという事だった。
何だこりゃ、まるで、んー・・・自分とリリコ、みたいな・・・。
まるで匂いに誘われる動物のように、巨人からウシクの前に居る1人の男性の“中に触れてしまう”と、直後に何メートルも離れていて声など聞こえない距離なのにその男性は振り返ってきた。
おっと、危ない。
すぐに男性から意識を放したが、一瞬でも触れてしまった為か、知らない人に肩を叩かれたようにその男性は自分を見ながらこっちの方に歩き出した。その直後、何メートルも離れているのに男性は手を伸ばし、自分の体は胸ぐらでも掴まれているように浮き上がった。
何だこりゃ、ちょっと。
男性から一般人に絡む不良のような苛立ちを感じた瞬間、体は前方に投げ出され、自分は戦場の真ん中に転がってしまう。
どういう能力だ。マナライズ、いや、やったらもっと怒りそう。逃げようかな。分かんないけど、逃げられなさそう。
「お前は何だ、そいつらの仲間か?」
自分に向かって歩いてきた男性に、4つの武器の女性が問いかける。
「そいつら?いや、まあ、ウシクの仲間やけど、こいつらは知らん」
ていうか、あの男の人、ヒーローキラーじゃん。げっ、ヒーローキラーに絡まれちゃう。
「ならお前もここで抹殺してやる」
「は?」
「我々はテロリストを殺す為に存在する組織、デュナンズ・ナイツ」
うわぁ、オオモリユキト、目を付けられちゃった。
「大層な組織やな。ま、中途半端なヒーロー気取りよりかマシやけど」
4つの武器の女性が動き出した直後にガルジャンも動き出して右手の銃で銃撃し、光の銃弾の爆発でもって女性を吹き飛ばした。するとジョアンもガブリエルもガルジャンに向かっていくが、オオモリユキトはその戦いを他人事のように見ながら、1人で飛んで転がってきた神王会の人に近付いた。
「何やお前、勝手に人の中入りやがって」
「・・・だ、だってあれ、カッコイイから、つい」
そんな子供みたいな言い訳に、オオモリユキトも高校生らしく戸惑うように言葉を詰まらせる。
「ていうかあれ何なの」
「オルタ・デルタや」
「オオモリ君ここ異世界やから」
「あそうか」
あれ、距離感、ちょっと無くなってる?
「ていうか、何でオオモリユキト、この世界に?帰ったって聞いたけど」
「は?そんなのオレの勝手やろ」
明らかに不良っぽい荒々しい口調に究も言葉を返さない中、オオモリユキトのガルジャンが左手の剣から燃え盛るような光を撒き散らし、その風圧が僕達の方にも届いてきた。
「文化祭が終わったから、ちょっと遊びに」
「へー」
異世界に遊びで、何か、いいな。いやそれより・・・。
「あのぉ、神王会の人、ここは一旦退いてくれないかな?神王会だって、戦う理由無いでしょ?」
「そうとは言い切れない感じだけど、自分は対デュナンズ・ナイツチームじゃないから。おーい!」
火の玉の男性が、ガルジャンやガブリエル達に目を配りながら僕達の方に歩み寄って来たと同時にオオモリユキトはガルジャンが心配なのか、少しだけガルジャンの方に近付いていく。
「指定自警団がここは退いてだって」
「指定自警団に従う理由は無い。デュナンズ・ナイツは神王会を敵として見なすと宣戦布告してきたんだ。それにグレンカイはテロリストを庇ってる。デュナンズ・ナイツの肩を持つ訳じゃないが、デュナンズ・ナイツがグレンカイに力を行使する理由はある」
ただのケンカじゃないんだ・・・。ど、どうしよう。
「どうしてあなた達はデュナンズ・ナイツと戦うの?」
「指定自警団には関係ない」
「でもまぁ多分、原因は自分かなぁ」
ミントの問いに火の玉の男性は冷たい態度だが、勝手に転がってきた方の男性がそう言うと、鎧を着てるので表情は分からないが火の玉の男性はどことなく冷静に驚くようにその男性に顔を向ける。
「どういう事だ」
「最初、グレンカイと戦ってた時、あの女の人が乱入してきてさ、それで女の人がウシクにトドメを刺そうとしたから、邪魔したんだ。だって別に、神王会はウシクを殺す理由無いじゃん」
「まあな」
「そしたら、今日みたいに、邪魔するなら敵として見なすって」
「それなら、デュナンズ・ナイツの人達を説得すればいいですね」
それでもそう言ってパッと笑みを溢したミントを前に、本部の人さえもふと言葉を詰まらせるように自分を見る。
ミントさんって、ほんとに世間のイメージ通りの感じだな。
「指定自警団が勝手にやるなら、こちらも何も言わない」
いつしか騎士風の巨人とガブリエルの一騎討ちになっていて、その間に別の事をしようといったようにジョアンがヒーローキラーに目を付け、近付いてくる。直後にヒーローキラーはウイングネイルを発動し、ダイヤモンドっぽい鎧で全身を覆った。
「オオモリ君」
「ええやろ、オレに売られたケンカを、オレがどうしようと」
「ちょっと待って、これから説得するの」
「それなら、オレが戦闘不能にしてからの方がええやろ。ああいう奴等は、ある程度力を示さないと話なんて聞こうとしない」
「そんな事・・・」
「その男の言う通りだ。俺達は生半可な理念で動いてる訳じゃない」
まさかのジョアンの便乗にさすがのミントもむすっとしながら黙り込むと、それからジョアンは紫の光で強化した刀を振り上げ、淡い紫の光線を放つ。ヒーローキラーは1歩だけ後ずさって踏ん張ったが正にダイヤモンドらしく、光線は鎧に傷も付けられずに砕け散る。すぐさま機械の翼からビームを噴き出して殴りかかると、ジョアンを守る黒い腕が拳を振り、ダイヤモンド色の拳と黒い拳が空気を鳴らす。その瞬間にジョアンは刀を振るも、金属音が鳴ると刀はヒーローキラーの脇腹で止まり、ヒーローキラーが体からダイヤモンド色の爆発を起こすとジョアンは吹き飛び、転がった。
随分とキレイな爆発だな・・・。
何となく自分の足元に転がってきたダイヤモンドっぽい破片を拾い、マナライズしてみる。
・・・これ、まさか。
「本物のダイヤモンド?」
「うん」
応えたのはヒーローキラーと一緒に来た男性で、しかも男性もにやけながらダイヤモンドを拾い、ポケットに忍ばせた。
「ディアベリアルは義賊なんだ。その鎧は本物のダイヤで、ディアベリアルは戦いながら街にダイヤをばらまくんだよ」
「それ、ダイヤモンドがインフレになっちゃうけど」
「そんなすぐにはならないと思うけど」
んー、ダイヤモンドをばらまく義賊。聞いた事ない。いや。
「君達の世界の話?」
「うん」
何だそっか。ていうか、まだダイヤモンド落ちてる。うひょー。
もう1つくらい拾おうと歩き出すと話を聞いていたのか、高校生くらいに見える指定自警団の人達もダイヤモンドを拾い始める。
「すげえな聖、本物だぞ。いくらするんだろ」
「どうなんだろうね、所謂原石ってやつだよね」
「ファントムストライク」
ん・・・。
ふと顔を向けた時にジョアンは刀を振り下ろし、かわそうと横にずれたヒーローキラーの機械の翼を傷付ける。更に立て続けに刀が振り上げられるとダイヤモンドの鎧は大きく切り裂かれ、ダイヤモンドはまた散りばめられた。
わぁっ、ダイヤモンドが。
「おらあっ」
しかし怯む事なく同時にヒーローキラーは手を振り下ろし、まるで風が吹き下ろすようにダイヤモンド色の爆炎をジョアンに浴びせかける。ダイヤモンドが激しく散らばる事よりも、黒い腕が爆炎を突き抜けてヒーローキラーを殴った事の方に目を奪われる中、よろめいたヒーローキラーは直後にダイヤモンド色ではない普通の炎を、衝撃波のように瞬間的に放った。
「ぐっ・・・」
えっ。
人の能力を無視出来るはずの黒い腕も一緒に吹き飛び、転がったジョアンのボロボロさ加減からも相当なダメージが伺えると、刀を杖代わりにして片膝を着いたジョアンの姿勢を前にヒーローキラーも息を整えるようなため息を吐く。
「言っとくが、お前じゃオレには勝てないぞ。文字通り、次元が違うんや」
「次元だと?」
「恐らくお前の力は能力を無視するような系統なんやろ。けどな、オレの力はそういう類いの能力も関係ない」
「たかがレベルの問題だろ」
「ふっ。世界は広いんだよ」
ヒーローキラー、やっぱり強いな。あ、ダイヤモンド、これはリリコにあげよう。ん・・・あっ。
「おじさんっ」
何となく声をかけてしまい、ジョアンやヒーローキラーでさえ、悠々と歩いて球場にやって来たヨハンに顔を向ける中、ヨハンはそしてジョアンの前で立ち止まった。
「おじさんもダイヤモンド拾いに来たの?」
「ん、何の話だい?ジョアン、ここは退いた方がいい」
「何や、お前もデュナンズ・ナイツか?」
「そうだ。ジョアンも分かってるだろ、ドレイクの方針は荒々しい。それなのに傷付くのは常に君達だ」
「正しいかどうかは問題じゃない。ドレイクの方針は、この世界に必要だ」
「おじさん、チームが違うって言っても同じデュナンズ・ナイツなんじゃないんですか」
「どんな組織にも派閥というものが生まれるのは仕方がない事だ。私達は、ジョアン達のようにすぐさま力を行使するような事はしない」
「だから甘いって言われるんだ。それじゃテロリストが蔓延るままだ」
「何もしないなんて言ってない」
そうジョアンに応えるとヨハンはガブリエルの方へと歩き出す。
「あのっあなた達の方針は何ですか?」
そんな時にミントが声をかけ、ヨハンは振り返る。
「テロリストは殺す。それはジョアン達と変わらない。しかし私はドレイクほど力というものを過信したくない。とは言え、ドレイクの方針が必要だという事は、私も理解はしているがね」
力を過信か。確かにジョアン達は、誰彼構わずテロリストを襲ってるけど。
オオモリユキトのガルジャンの胸元から放たれた強烈な光、そして強烈な爆発の直撃を受けてもガブリエルはすぐに立ち上がる中、そこにダンディーな服装が印象的なデュナンズ・ナイツの中年男性が歩み寄る。ガルジャンを目の前にしているのにダンディーな男性からは余裕が滲み出ていて、それから4つの武器を持つ女性、コウモリみたいな翼を生やした男性が2人に近付いて来ると、ガブリエルは変身を解いた。
・・・説得しちゃった。また、行きそびれた・・・。
組織の指定自警団のホールに戻るとヒカルコの居るテーブルには何故かすでにプロメテウスが居て、しかも露出を抑えたファッションに変わっているという事に一瞬だけ“終わった感”を忘れてしまう。
「また活躍出来なかったなぁ」
「究、あの場所を包囲した時点で、指定自警団の活躍になってるよ?」
「あ、はい」
さすがミントさん、全然落ち込んでない。でもウシクもオオモリユキトと逃げたし、他のテロリストも結局グレンカイが連れて行っちゃったし。
「お帰り坊や」
「うん」
「あそうだ、アマカゼちょっと待っててね?」
「え、はい」
ん、ミントさん、あ、アマカゼ君の指定自警団のワッペン。
「この前芝公園にも出た騎士風の巨人、ネットじゃヒーロー扱いされてるみたいよ?しかも巨人を作ったウイングネイルも評判がちょっと上がったみたい」
「え」
スマホ片手にヒカルコがそう言うと、アマカゼと一緒に思わず声を上げてしまう。
結局、活躍したの、オオモリユキトって事になっちゃった感じ?
マナライズの六事対万渉術のユキト、今回の勝ちはユキトでしょうか。
ありがとうございました




