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2人のナイト

マナライズの練習をさせたいと、お昼ご飯を食べながらもさっきから喋らなくなったリリコと見つめ合っていた時、スマホが鳴ったのでポケットから取り出す。

「ムッカでしょ」

「うん、何だろね。・・・はいはい」

「見たか?ネット。渋谷のテロ予告」

「見てない」

「そうか。まぁまだ40分くらいあるからな、時間が来たら行くぞ、渋谷」

「うん、分かった」

電話を切るとすでにリリコは面倒臭そうな顔をしながらもスマホを見ていて、ソーセージをかじってポテトサラダを食べ、カフェラテを飲んだところでリリコはふっと笑みを浮かべ、達成感を見せた。

「テロ予告した人のスマホ乗っ取った」

「さすがリリコ」

「俺は最強の能力者だ。1時にスクランブル交差点でテロを起こす。デュナンズ・ナイツも来るなら来い。ヒーロー共、俺を攻略してみろ。だって」

「最強・・・。ジャンルによると思うけど。ダメージを無効化するとか?純粋に攻撃力が高いとか」

「実際に見た時にマナライズすればいいよ」

「すごいね、マナライズ。リリコの世界じゃマナライズ出来る人、みんな何かしら偉い立場にいるんじゃない?」

「そんな事ないよ。特殊能力、マナライズだけじゃないし。マナライザーは全世界人口の1割って言ったでしょ?他には常人より皮膚が硬いとか筋力が高いとか、そういう生まれつき身体能力が高い人達が居たり、後は遺伝子的にこの世界のライオンと人間のハーフの人類が居たり、色々居るからマナライズは別に特別じゃないの」

ライオンと人間のハーフ・・・。

「学術的に言うとヒトじゃなくてネコ目なの。サルがヒトになった霊長目ヒト科に対して、『ナウレト』さん達はネコ目霊長ネコ科なの。ナウレトは生物学的な名前ね」

「ただライオンが二足歩行してるだけ?喋るの?」

「勿論喋るよ。霊長ネコは正確にはヒトじゃないけど、知能も言語能力も普通に人間と同じ。ていうかそもそも人類は2種族。ヒトとナウレト、っていう感じ。そもそもサルしかヒトになっちゃいけないなんてルール無いから」

「確かに。ライオンだけなの?他のネコ科は」

「ライオンだけ。ヒトだって、何で他のサルはヒトにならなかったのなんて言っても、偶然としか言えないでしょ」

「確かに」

会ってみたい気もするけど。

レストランを出ると、遠くからでも割りと目立つ色合いのハイミは通行人にスマホを向けられていたが大人しくしていて、リリコが歩み寄る前にテレパシーでも感じたのか、リリコに顔を向けるとちゃんとこの状況を理解しているようにハイミから近付いてきた。

可愛いな。あれ、何かちょっと大きくなってる?・・・。

そしてハイミはリリコの肩に乗ると、ハイミからはまるで親と一緒に居るような安心感が見て取れた。

もうすっかり打ち解けてるな。

「おう」

ムッカと待ち合わせしていた渋谷のカフェでムッカと落ち合い、とりあえず1時まで待機しようとコーヒーを買い、デパートの屋上からスクランブル交差点を見張っていく。

「そろそろだな」

「結構警察集まってるね」

スクランブル交差点なのに、人が居ない・・・。大きな交差点だけど、封鎖されても大きな問題は無いしな。

「リリコ、その鳥は?」

「ハイミ。スカウトしたの。私、強い動物作ってチーム作って、街も人も動物も守るから」

「強い動物って、どういう力だよ」

「遺伝子を改変させるの。後は動物にも鉱石使わせたり」

「ああ。あれか?動物にもホワイトアーマー着せるのか?」

「んー、そうなる、かな。やっぱりチームカラーは必要だし」

「動物でもホワイトアーマーがありゃ神王会だろうしな」

動物の能力者、動物の神王会、んー、別にいいよな。

コーヒーを口に運びながらふと目線を空に向けた時、ムッカが自分を呼んだのでムッカを見ると、その雰囲気はすぐに目線をスクランブル交差点に落とさせた。

おや、真ん中に男の人が1人、いつの間に。

「ワープしてきたぞ。まぁそういう自信が無きゃ自分で警察呼ばないよな。行くぞ、目的がテロなら様子見する必要無いだろ」

「そうだね。待ってる?」

「2人が行くなら私は援軍要員でしょ」

頷いたムッカと共にホワイトアーマーを纏い、2人でスクランブル交差点に降り立つと、カジュアルな服装で、今のところ丸腰のその男性は周りの雰囲気の動きを感じるように振り返ってきた。

「神王会か。弱いな」

「何だぁ?」

「だってお前らの目的は街を守る事だろ。テロ鎮圧じゃない」

「ケースバイケースだ、相手してやるよ」

「そうか、じゃあ来い」

「ムッカストップっ」

飛び出した矢先にムッカを止めると、ふと気になったのは自分を見た男性の驚きと疑いに染まった表情だった。

「半径3メートル以内の物の時間を止める力だよ」

「チッ・・・サーチ系か、じゃあこっちから行くぞ」

うわ来るどうしよ──。

気が付けば自分の体は吹き飛んでいて、お腹から全身にかけて響いてくる衝撃に目が回りそうになりながらムッカを探すと、幸いムッカも近くに倒れ込んできていて、直後に男性は勝ち誇ったように笑い出した。

「分かっててもお前らに勝ち目なんか無いぞ。考え抜いたこの力に弱点なんか無いからな」

時間を止めるか、ベタだけど、やっぱりそれが1番最強か。ん・・・あの人。・・・あ。

スクランブル交差点を広く囲む遠くのやじ馬が何となく歓声を湧かすようにざわめき出すと、男性は神王会なんかもう相手にしないかのように、やって来たジョアンに体を向けていった。

「来たなデュナンズ・ナイツ」

「ジョアン、3メートル以内の時間止める力だから」

ぐへっ・・・。

「うるせえ」

軽く殴られてしまったが男性はすでに離れていて、日本刀を出現させたジョアンが居合いの姿勢で全方位に淡い紫の衝撃波を放つと、一瞬だけ男性は居なくなったもののまるで壁にでもぶつかるように後ずさりした。

おお、あの全方位の衝撃波、時間を止めても止めなくても逃げ場が無いし、これならイケるかも。

「ムッカ、自分達も。衝撃波系の攻撃なら時間を止めても逃げられないよ」

「ワープされたら意味無いんじゃないのか」

「ううん。ワープの力じゃないよ。時間を止めて移動してるだけみたい」

「なるほどな」

ジョアンが紫の光で覆って刀を強化した時に再び男性が居なくなるが、時間を無視した速度でも直後に見えた男性はジョアンを守る黒い腕に攻撃が受け止められているという姿勢で、振られた刀から逃げるように男性が一瞬居なくなって現れたところで、男性の背後から光を放つ。自分とムッカの光の衝撃波がまるで膜でも張ったように男性を覆い隠したものの、直後に衝撃波は動き出すと背後から衝撃に襲われてまた倒れ込んでしまう。

いてて・・・。逃げられたか。

「ファントムストライク」

そこでジョアンが刀の間合いの外から刀を振り下ろすと、実際に斬られてもないのに男性は斬られて大きく後ずさりして、倒れてはないがその右肩から右胸にかけてが赤く染まった。

「何でだ、く、俺の体は鋼鉄以上なのに」

「俺のファントムは、相手の能力を無視出来る。とは言え傷が浅いって事は、俺のファントムのレベルと、お前の能力のレベルは同等だという事だな」

んー、攻撃力の争いというより、特性の争いだな。・・・能力を無視・・・さすがデュナンズ・ナイツ。

「くそ・・・ははっ」

「何を笑ってる」

「ファントムとやらが強くても、お前はどうだ」

「ん?何だ・・・」

え?どうしたんだろ、ジョアン、動かなくなった。銅像みたい・・・。

「お前が人の能力を無視するなら、俺はお前の動きを封じてやったんだ、ふう」

「時間止められるのに、動き止める必要あるかな」

「あ?範囲が違う。時間を止められんのは近距離だけなんだ」

血は出ているが男性は直後に勝ち誇ったような笑みを浮かべてジョアンに歩み寄る。しかし直後、黒い腕はジョアンの手から刀を取り、ジョアンを守るように刀を構えた。そんな状況に固まっているジョアンは鼻で笑い、男性は歩みを止める。

ファントム、どんな顔なんだろう。ほんとに腕だけかな。ん・・・あ、おじさんだ。

「ジョアン、あのおじさん来たよ?ナイツナンバーワンの人」

「見て分かるだろ、動けない」

あそっか。

あのおじさんが余裕なのか何なのか、悠々と歩いてやってくると男性も体を向け、また戦いの風が静かに吹いてきた中、おじさんはジョアンを見た後に何故か自分にも顔を向けた。

「君が最強の能力者かい?拍子抜けだね」

「あ?だったら来いよ」

「行かないよ、私は」

「は?誰だお前」

「私はデュナンズ・ナイツ、ナイツナンバーワン、ヨハン」

「ナンバーワンかよ、相手に不足はねえ。俺の方が強い事証明してやる」

「悪いね、私には不足だ」

「んだと」

何しに来たんだ。

「手負いの者を負かしても面白くないと思わないかい?」

「だったら、く、何だ、動けない」

おや?・・・。

男性がジョアンみたいに動けなくなるとヨハンは腕を組み、丸腰で持ち前の余裕さを男性に見せつける。

「デュナンズ・ナイツはチームで動いているんだ。こういう場で私にしか敵意を向けないなんて愚かだ。透明人間、スナイパー、精々想像力を働かせるがいい」

「く──」

その瞬間、ジョアンを守る黒い腕は刀を振り、誰もが注目していないその“見えない斬撃”は無防備な男性の首筋を斬りつけ、そしてまるで明るい空の下で暗殺されたように男性は意識を失った。

「ジョアン」

何故か驚くようにヨハンはジョアンに声をかけると、鞘を持ったジョアンは黒い腕に刀を納めさせながら、ドイツ語っぽい言葉で応えていく。戦いの風は凪いで警察が集まってきて、ジョアンが歩いてその場から去っていく中、ふと印象に残ったのはヨハンから垣間見えたジョアンへの怒り、そして落胆だった。

「ねえ、何でびっくりしたの?おじさんもテロ鎮圧しに来たんでしょ?」

「彼は何をした?」

「え」

「テロ予告して、ここに現れた。すぐに君達が来て、ジョアンが来て、私が来た。彼は、テロをしていない」

そう言われると・・・。

「殺すほどの者ではないと思ったのだが、ジョアンは今日以前にテロなんていくらでも行ってたと。今日何をしたかではなく、そもそもテロリストだから殺したと」

んー、なるほど。

「ジョアンは、未然にテロを防いだって称賛されるかな」

「それは、国に依って違うと思うが、私はジョアンのした事は間違ってないと思うがね」

それからムッカとリリコと拠点に戻り、ふとリビングで点いてたテレビを見ると、情報番組の中継先として映っているレポーターはスクランブル交差点に居た。

「所持していた財布に入った免許証から殺害された男の身元が判明しました。名前はタケダカツノリ23歳。警察のブラックリストに登録されているテロリストではなく、テロリストとしての活動履歴は捜査中との事です」

「はい、ありがとうございました。えーどうなんでしょう。まぁまだ捜査中ではあるんですが、テロリストかどうか分からない人を、テロ予告の現場に現れたところで、殺してしまったと」

「うーん、まぁデュナンズ・ナイツは日本の組織じゃないとは言え、ちょっとやり過ぎだと私は思いますけどねぇ。やっぱり日本は法治国家ですから」

「でもテリトリーは地球全体っていうのがデュナンズ・ナイツの特徴みたいだし、日本だからとか関係無いんじゃないですか?」

若めの女性タレントがそう言うと、司会者の中年男性と、タレントの前に喋ってた中年男性は揃って唸り出す。

「りっくん」

ん?・・・。

顔を向けると、すでに扉を開けて見せながらリリコは自分の部屋に行こうと心を読ませてきたので自分の部屋に戻るが、そのままリリコはベランダに出ていった。

「意外と呆気なかったね」

「やっぱりシンプルにガブリエルみたいな方が案外長生きするんじゃないかな。ていうかハイミ、またちょっとおっきくなってる」

「うん、インナーマッスル強くさせたいから、その分大きくしないと」

もうカラスっていうか、ワシだな。

何となくハイミと真っ直ぐ見つめ合った時、感じたのはまるで子供が親を見るような態度だった。

「(リリコのパートナーなの?)」

「え、テレパシー」

「そうだよ?」

使えるようになったんだ。時間をかけてゆっくり変わってく感じか。

「(ふーん)」

「その内もっと家族増えるからね?」

家族か・・・。

「(お腹空いた)」

「あ、じゃあ、冷蔵庫に小間切れ肉あるから、おいで」

もう扱いは猛禽類と同じか。これから小間切れ肉、冷蔵庫にストックしておかないとな。

肉食系らしく可愛くハイミが小間切れ肉を食べるのを見ながらソファーに座り、テレビを点ける。

また渋谷の事やってる。情報番組はどっちかというとデュナンズ・ナイツに否定的か。でも、じゃあ何が正解だなんて問われたら結局迷うんだろうな、こういう人達。

やっぱり時間停止系の能力が最強と思いきや、能力を無視する能力もまた最強でしょうね。


ありがとうございました

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