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パッション

「行っちゃったね。りっくん、動物好きなの?」

「うん、特に触れ合える系の動物園が結構好きかな」

それから一緒に街を望んだ時、何となく真剣そうなリリコの横顔にふと目が留まると、自分の目線に気が付いたように自分を見てきたリリコはすぐに笑顔を浮かべた。

「私、やりたい事、見つけた」

「おお、良かったね、それって?」

「神王会は街を守る団体だよね?」

「うん」

「じゃあ動物だって守る対象でしょ」

「そうだね。問題は能力のデザインだけど」

「そう、だから、ちょっと一緒に考えてよ」

「うん」

あれかな、キツネの醸し出してた、哀愁っぽいもの、リリコも感じたのかな。

「りっくん、寒くないの?」

「んー、普通かな。確かに標高的には普通より冷えてるけど」

「一旦戻っていい?上着取りに行く」

パーカーを脱ぎ、ワンピースの上に見るからに暖かそうなコーディガンを着直したリリコと屋上に戻り、お菓子をつまむ。それから地上に下りて上野動物園、サンシャイン水族館を回り、お昼になってレストランで食事していた時、スマホが鳴ったので画面を見るとそれはキョウスケからの着信だった。

「はいはい」

「まずいぞ」

「何食べたの?」

「戦況がだっ。あのドラゴンが、つうか、こっちのチームもほぼ全滅っていうか、お前紅蓮会を追って箱根に行った後、言ったよな?まったく歯が立たないヌシが居たって」

ん・・・。

「全滅って誰か死んだの?」

「いや、全滅ではあるが歯が立たなかっただけで、こっちは死人は出てない。戦況的に死んだのは、デュナンズ・ナイツのドラゴンだけだ」

「えっ」

自分の記憶を読んでたのか、自分と同時にリリコも声を上げて驚く。

あのドラゴン、死んだ?・・・。

「誰にやられたの?ドラゴン。まさか黒いキツネ?」

「何だそれ、いや違う。やったのは、何つうか、般若の面のグリフォンだ」

般若・・・グリフォン・・・。

「聞いた事ないけど。自分が会ったのキツネだし」

「そうなのか」

キツネの知り合いかな。

「どんな感じだった?神秘的なオーラとか」

「あー、まあ、オーラは確かにすげえよ。ちょっとお前の方でも調べてくれないか」

「分かった」

グリフォン、か。

「キツネから、アメーバみたいな感じを見たって言ったでしょ?多分キツネみたいなの、沢山居ると思う」

沢山・・・アメーバ?どういう戦況だったか詳しく聞かないと。

「般若って何?」

「怖い女の人の顔。ってのをモチーフにしてるやつ」

「じゃあちょっとまたネットをマナライズしようかな」

2人でつついていたお鍋も無くなった頃、リリコはよくある2人掛けの固定された椅子に深く背もたれてスマホを見ながら、テーブルの下で自分の足を両足で挟んでくる。

自分もネットニュースくらい見てみるかな。・・・・・お、淡路島のニュースあるじゃん。これが、般若のグリフォンか、すごいな、何だろ、どこかのゲームに出てきそうだ。神王会に所属している能力者とデュナンズ・ナイツに所属している能力者が交戦中、般若の面のようなものを着けたグリフォンを模したような巨大生物が乱入。・・・巨大生物が人間達の争いを鎮圧。・・・般若のグリフォンが淡路島を救った。・・・何か、すごい事になってる。

「りっくん、般若のグリフォン、称賛されてる」

「うん」

「ネットじゃその生物の事、『イザナギの使い』って呼ばれてるみたい」

「イザナギ、神様の使い、か」

「ヌシって結構ネットじゃ有名だよ?絶対に倒せない最強生物だって」

「あ、紅蓮会の人も言ってたな、ヌシってあのヌシか」

ヌシ、どこのヌシかな。日本の?地球の?絶対に倒せない・・・。神様の使いだから?



「ぬおっ。聖、ニュースだよ」

お昼休みはヒーロー部の部室に行くという事にも慣れてきて、柳菜も来るからか究も部室に居る事に何の不満もなく、そしてお弁当も食べ終わって普通に過ごしていた中、何かニュースはないかとスマホを見た究はそう言ってテンションを上げた。スマホを見せて貰うと、画像に映っていたのは正にあの般若のグリフォンだった。

「まじか・・・」

淡路島を救った?・・・人間の争いを鎮圧・・・。動物にはフレンドリー、でも人間には厳しい。タツヒロ君の言ってた事そのままだな・・・。なら、最初にお台場で見た時も、乱入の理由は、鎮圧・・・。

「何かすごいな、神の使いか。そういえば俺が柳菜をみんなに紹介する前に話したんだよな?どんな感じだったの?神オーラ」

「いや神オーラっていうか、まあ威圧感はすごいけど。でも僕は直接話してないよ。タツヒロ君とレベッカは話したけど。自分は人間じゃないって言ってたってレベッカが言ってた」

「うわ、じゃあやっぱり、何だっけ、絶対倒せないモンスター?本物なんだな」

本物の、ヌシ・・・。

「しかもそれだけじゃないみたい。神王会とデュナンズ・ナイツの戦いに般若のグリフォンが乱入した時、デュナンズ・ナイツの人が死んだって」

今さっき、淡路島にデュナンズ・ナイツが。

「ガブリエルは?」

「どうかな、現場の画像を見る限り、ガブリエルは居ないっぽい。後でYouTube出るんじゃない?」

デュナンズ・ナイツの中にもチームがあるのかな。世界的に活動してるし、そりゃそうか。



拠点に戻るとキョウスケが居て、治療役の人に治して貰ったのか見た目はぴんぴんしていたが、自分を見た時の表情にはどこか不安が伺えた。

「おう」

「結局、ドラゴンのナイツナンバーは分かんなかったの?」

「ふっ、そこかよ。ガブリエルみたいに名乗りはしたよ。ルールなんだか、礼儀正しさのアピールなんだか。ドイツ語が出来る本部の奴から聞いたら、ナンバーは3だと」

「えっ・・・」

「幾つかの部隊に分かれてるんだと。活動領域が世界全体じゃ不思議じゃない、むしろ効率的だ」

「そうだね。乱入ってどんな感じだったの?何か、ヌシを怒らせるような事したとか」

「怒らせるって・・・まぁ、確かにまるで怒ってるような感じだったけど。つうか周囲への被害を何も考えないのはデュナンズ・ナイツの方だ、怒るならそっちだろ。だから見せしめに殺された。全滅はさせられたけど、こっちにはまるで手加減してるようだったしな」

見せしめ・・・。

「さすがヌシだね」

「何でヌシの味方だよ。お前も気を付けろよ?」

「また来るのかな、デュナンズ・ナイツが来た時」

「さあな。つうか、問題はデュナンズ・ナイツの動向だ。あっちもドラゴンを殺したのはオレ達じゃないって分かってるだろうが」

リビングの窓際のソファーにリリコと共に座り、何となくリラックスしている時に髪がボサボサのままルイがリビングに入ってくる。

「ルイちゃん」

いつも昼に起きてくるルイに、マミがいつものように面倒見のいいような声色で話しかけると、ルイはどこかムシャクシャしているように髪を掻きながらキッチンカウンター前に座る。

「何かあった?」

そう言ってマミはキッチンから手を伸ばしてルイの前に牛乳を入れたコップを置く。

「邪魔されたんだよ、知らないおじさんにさ。何してるって聞かれたから、治安を守ってるって言ったらさ、何の為にとか、それからお前にとって神王会とは何だとか・・・ウザかった」

それってただのインタビューじゃないかな。変わり者同士だな、夜限定で活動するルイも、夜中にインタビューするその変なおじさんも。

「神王会に興味あるのかな」

「そうなんじゃない?そのせいでミッション1つ出来なかったし」

それからいつものようにマミがルイのご飯を作ってる最中、ジンイチロウが拠点に帰ってきてルイとマミと軽く挨拶を交わす。

「ジンイチロウ、変なおじさん、会った事ある?」

「分かるかよ、何だそのヒント」

パトロールでもしてきたのかな。

「パトロール?」

コーヒーメーカーで作られたコーヒーを持ち、ソファーにやって来たジンイチロウに声をかける。

「いや、本部にな。オレなりの情報収集だ」

「もしかして、『レオパルド』?」

すると少しだけ表情を引き締め、ジンイチロウはコーヒーを啜る。

「レオパルドって?」

「ジンイチロウの因縁だよ。豹柄じゃないけど、黄色い鎧と鉤爪が特徴的なテロリストでね」

「神王会に入る前の話だ。そいつを捜す為にオレは神王会に入ったんだ」

「神王会に入る理由も人それぞれだしね」

そう言うとリリコはただ小さく頷き、何か言いたそうな顔を見せてくる。

「で、何か分かったのか?」

そう言ってムッカがやって来るが、ジンイチロウは背もたれに深く寄りかかると黙って首を傾げる。

「さっぱりだな。すでに死んでんのか、海外にでもいるのか」

神王会、海外支部なんてないしな。



放課後になって組織の指定自警団のホールに入り、柳菜のタブレットで淡路島での戦いの模様の動画をみんなで観ていく。ファッションからして攻撃的な男性が青い鱗のドラゴンに変身し、ドラゴンの仲間の男性達も各々力を発動していく中、神王会の人達がみんな同じように白い鎧で揃えている事にふと宗教団体としての威圧感を感じる。それから青いドラゴンが、明らかに周りの被害を考えないように火の玉を吐き散らし、画面で観ても苛立ちが心をくすぐる中、突如として空に般若のグリフォンが現れる。すると最初に般若のグリフォンはデュナンズ・ナイツにも神王会にも攻撃し、そして神王会が全員戦闘不能になったところで般若のグリフォンは空に槍のような氷塊を作り出し、空の彼方から落ちてきたかのようなスピードでドラゴンを串刺しにした。

うわ・・・。

地面に刺さった氷塊、氷塊に胸元を貫通させられていてぐったりと動かないドラゴンという、映画やドラマでもバイオレンスな構図が少し続いた後、カメラは般若のグリフォンを探し始めるがすでにその姿は無く、程無くして動画は終わった。

「でも何か悪くないよな、動物の世界でもテロ鎮圧したいって思う奴が居るって」

究の明るい口調での言葉にすぐに緊張感も薄れる中、いきなり柳菜からもう1人の柳菜が出てくると、もう1人の柳菜は柳菜の隣に座ってタブレットをいじくり始める。ふとミントとライムを見ると、ミントは隣のテーブルの椅子に座り、ライムはミントの隣に座ってテレビを見た。



リリコが作ってくれたミートソーススパゲッティーを2皿テーブルに置き、それらしくワイングラスにブドウジュースを注ぎ、そして乾杯してからスパゲッティーをフォークで巻き取る。

「何それ」

「こうやって巻くと食べやすいから」

「へえ」

「・・・・・んっ、美味い」

「良かった」

するとリリコもフォークに巻いたスパゲッティーを口に入れ、笑顔でモグモグしていく。

それにしてもマナライズ、すごいな。

「・・・ネットでシェフの料理動画観たの。ネットってほんとすごいよね。まるで宙に浮いてる見えないノートみたい」

「確かに。リリコの世界は、ネット無いの?」

「ネットは無いけど、こっちの世界のDVDプレーヤーはあるよ。国家機密とか、歴史とか、そういうのは全部『テオス』っていう、こっちの世界のDVDみたいな円盤に記録されてるの。ネットなんかあったら、マナライズが使える人種に世界は支配されるから」

確かにそうか。

「その円盤はマナライズ出来ないの?」

「ケースから取り出せば出来るよ。普段は電磁波の通らない素材で出来たケースに入って保管されてる」

電磁波・・・。

「まさかマナライズって、人体から発する電磁波でやってるの?」

「うん」

だからスマホ、触らずに操作出来るのか。

お互いモグモグしているので、ふとリリコと目が合った時に沈黙が流れるが、自分の目を真っ直ぐ見てきたリリコは急に笑顔を深めた。

「向こうの世界から追っかけて来たりしないかな」

「分かんない。来れたら来るかもね。王子との結婚を拒否したら死刑だし」

げっ・・・ヤバイ世界だな。

「来れたらって?」

「これから初めて異次元へのホールを開いてみようっていう段階だったから、ワープ中の安全面とか、ホール自体の安定化とか多分まだ時間はかかると思うけど」

「何でそんな詳しいの?」

「だって、その異次元のホールの研究員だったから」

リケジョだったのか。

「・・・星が好きなの、私。だから最初は天文学を勉強してて、それで何となく多元宇宙論に興味を持って、異次元の研究員に」

「すごいね。やりたい事に熱中出来るって。でもこっちに来たら、異次元の研究は出来ないね」

「りっくん、研究ってのはね、想像力があればどこでも出来る。それにこの世界にも星はあるから」

すごいな。世界そのものから逃げ出すのも、研究に没頭するのも、人としてすごいからだな。何て言うか、情熱が。

「りっくんの事ずっと放さない情熱もね」

・・・・・うわ。でも、可愛いな。

王子との結婚を拒否したら死刑とか、マナライズとか色々ヤバイ世界です。でもだからこそという事に、いつかなります。


ありがとうございました

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