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トゥー・アイディアル

だいぶ疲れたところでシンジと共に闘技場を出ていくが、ふと気になったのはシンジの全然疲れてないように見える表情だった。

「聖、暴走が終わった途端弱くなったけど、何で?」

「やっぱりそもそもの能力のレベルがあるから、少しは制限されちゃうのかも」

「ふーん」

「聖」

聞いてきたのにリアクションの薄い返事をするとシンジはドリンクバーの下へ向かったので、僕を呼んでいるヒカルコの居るテーブルに向かいながら、ふと見覚えのある知らない女性に目を留める。

「聖君、疲れた?」

何だ?いきなり。

ヒカルコとはまた違ったフレンドリーさを醸す、何となく同世代っぽいその知らない女性はそう言っておっとり感のある人懐っこそうな笑みを見せる。

「うん、結構疲れた」

「じゃあ癒してあげるよ」

え、あそういう能力か。僕とシンジ君の戦いを見て来てくれたのかな。

「うん、あ、ありがとう。でも怪我はしてないけど」

「私の力は怪我を治すものじゃないの」

するとそう言いながら、その女性は学生カバンから何やら手の平サイズの平べったい鉄の容器を取り出しテーブルの真ん中に置いた。

「あ、私ミナミモトユウコ、よろしくね」

「うん、よろしく。どういう力なの?」

「フレイムセラピー、だよ」

何やら照れ臭そうにそう言うと、ユウコはヒカルコと微笑み合う。

セラピー?・・・。

「シンジ」

「あぁ」

ユウコが呼び、シンジが僕の隣に座ったところでユウコはおもむろにその容器の蓋を取ると、その中にある同じく平べったい蝋燭に、なんと指先から灯した炎で直接火を点けた。

「炎を操るの?」

「うん、でも戦いとか興味ないからね、2つ目の力で、炎を“見るだけで疲労が回復する”ようにしたの」

「え、すごいね」

うわ、何だ、確かに炎を見ているだけなのに、全身が温かい・・・。しかも疲れが取れていく・・・。

「ていうかシノダさん、何でこっちのホールに来たの?」

「指定自警団専用でも、来ちゃいけない訳じゃないから」

「へぇ」



「神王会・・・」

静かにそう呟いた女性に雷光ヘビが襲いかかるが、女性は忍者のように軽やかに跳んでかわし、そして緑の斬撃を飛ばして応戦していく。そんな中、ふとこの戦場に向かってくる1人の男性に目を向ける。

あ、あの人、え、まさか・・・。

「リクどした」

「君の仲間?」

雷光ヘビに砲撃したところの女性に向けて、向かってくる男性を指差しながら聞いてみると、女性はその男性を一瞥すると雷光ヘビから距離を取り、何やら自分に迷惑そうな眼差しをぶつけてきた。

「ムッカ、あの男の人ね、さっきセンゴク達を襲ってたんだ。多分その女の人の仲間じゃないかな」

「仲間呼んだか、賢明だな」

「でもたった2人だし、それでも劣勢じゃないかな」

男性が立ち止まり、特に周りに誰かが居る訳でもないそこで、まるで居合いでもするように刀に手を添えた直後、男性から全方位に向けて淡い紫に色付いた衝撃波が発せられると瞬間的にそれは1番近くに居たハテナマークの刀の男性を吹き飛ばし、更には広範囲に渡って建物や観客など、周りのすべてを襲った。

何だよ、あれ・・・。まるでテロリスト。

ウシクやデュナンズ・ナイツの女性も、そしてムッカまでその強い圧力に体を硬直させる中、男性は刀を素早く抜き上げ、ウシクにレーザービームを撃ち放った。瞬時に雷光のマントを広げ、雷光そのものでもってウシクがレーザービームを防いだところで男性は刀を紫の光で一回り大きくさせながら走り出したがそこにムッカが割り込み、光を纏った拳で男性を殴り付けた。

「何だお前」

「俺達は神王会、街や人を巻き添えにする奴は容赦しない」

「邪魔するな!」

男性が斬りかかるもムッカは刀を拳で弾き、更には男性を守る黒い腕も弾くと再び男性を殴り、男性は大きく仰け反る。

「ジョアン!」

女性がそう呼ぶと、日本刀の男性は一瞬顔を向けてからムッカから飛び退き、女性の下に駆け寄った。すると女性は何となくドイツ語っぽい雰囲気の言葉をジョアンにかけ、ジョアンも自分達に会話の内容を知られたくないのか女性と同じような語調の言葉を一言話す。

デュナンズ・ナイツはスイスの組織だし、ドイツ語はむしろデュナンズ・ナイツである証拠みたいな?スイスの公用語って確かドイツ語とフランス語と・・・。

それから何となく燃え上がる復讐心を伺わせるような怖い表情を見せると2人は去っていき、その場には嵐でも過ぎ去ったかのようなちょっとした安堵感が漂った。

「何構ってんだよ。目的は俺だったみてえだし。ヒーロー気取りかよ」

「そんなの関係ないよ。自分達は自分達の目的で動いただけだし。君こそ、紅蓮会と関係なんかないじゃん。まさかセンゴク達に狙われてるとか」

「違えよ。ただのバイトだ。それより、まだやんのか?」

自分達と戦っていた3人はもう見当たらず、向こうの通りから逃げるようにやって来た、ジンイチロウ達と戦っていた紅蓮会の2人にウシクが声をかける。

「3人は」

「逃げたぞ」

「じゃあオレらも」

「そうか」



「えー、ミントさんミントさん、ワールド・クロスからミントさん宛にメールが来たのでこちらまでお願いします」

「えっ」

ミントは独りで声を上げると、驚いたままの顔で何故か僕を見た。

「ミントさんまたメールしたんですか?」

「ううん、してないけど、何だろ。ちょっと行ってみよっか」

「あ、はい」

僕も?・・・まいいか。

ミントと2人でオーナーの部屋へ入り、オーナーが表示したメールを見る。

何故デュナンズ・ナイツの事を聞いたんですか、か。確かにあれからメールが来なくなったら気になるもんなのかな。

「んー、じゃあ、直接お話したいから行ってもいい?ってメールして」

「はい」

「行くんですか」

今度は僕の方が驚いた顔のままでミントを見てしまうが、ミントは自信とか勝ち気とかではなく、ただ警戒心とか人見知り感とかのない優しい笑顔を見せた。

「教えてくれる気になったのかな」

「どうなんですかね。でも指定自警団はヒーローだし、指定自警団と敵対する理由はないですよね」

「うん、そうだよね」

でもさすがに直接会うのは許してくれないんじゃないかな。

「・・・返信来ましたよ」

早い、うわ、何かすごいリアルタイムでコミュニケーション取ってるみたい・・・。え、しかも良いのかよ。急に怖いな。

「じゃあこのまま2人で行こっか」

「このままって、行ってくるって言いに行かなくていいんですか」

「大丈夫だよ、話すだけだし」

「あ、はい」

んー、まいいか。

オーナーの部屋の奥の扉から行けるというので、ミントの後ろについていってそして扉を抜けると、真っ先に目に飛び込んだのは天井から壁にかけて斜めに掛けられた、巨大なモニターよりも大きな赤十字の旗だった。

おー、それらしい。巨大なモニターがあるんだからここはオーナーの部屋だよな。でも広すぎるし、まるでホールに直接モニターがあるみたい。

すごく開放的なオーナーの部屋で僕とミントを待ち構えていたのは5人の男女で、警戒心というより、図々しさを疎ましく思うような何とも微妙な雰囲気を醸し出していたが、ふと目に留まったのは1番前に立つ、能力者には珍しいいかにも厳格そうな中年の男性だった。

「私、指定自警団をやってます、ミントです。こっちは聖」

「あ、初めまして」

このおじさん、能力者なのかな。

「先ず最初に言わせて貰う。私達はワールド・クロス。ご存知だろうが赤十字は完全なる独立組織で、いかなる場合でも他の組織との協力や連携はしない。そういう類いの話なら受け入れられない」

すごいプレッシャー・・・。

「えっと、私達、デュナンズ・ナイツの事を調べたくて、デュナンズ・ナイツはワールド・クロスの別動隊って話を聞いたので、てっきりそれが本当かどうか教えてくれる気になったのかなって思って来たんですけど」

「調べてるというのは、何故かな」

「知り合いの子が困ってるんです。知り合いの子の仲間がデュナンズ・ナイツと戦って、戦いは知り合いの子の仲間が勝ったんですけど、デュナンズ・ナイツは世界で活動してるから、沢山の援軍が来たら困るって。でもワールド・クロスは人を助ける為に動いてるのに、その別動隊が人を襲うなんてって思って、聞きたいと思って」

すると中年男性は頷きながら一瞬ミントから目線を上に外す。

「なるほど。知り合いの仲間は、どういった者かな」

「アリサカのグループです」

・・・ミントさん、兄ちゃんみたいだな、天然過ぎる。

しかし思ったより変な空気は流れず、中年男性の背後に居る若い男女は顔を見合わせるが、中年男性はまた小さく頷いた。

その沈黙が、逆に怖い・・・。

「仮にデュナンズ・ナイツが私達の別動隊なら、今君達は敵対する組織に乗り込んできたという事になるが、そういう事は考えなかったのかな」

「んー、考えなかったというか、分かってましたから、ワールド・クロスの人達は戦わないって。空母戦争の戦いの時に話した事あるんです、ここの人と。だから来てもいいかなって」

すると中年男性は眉を上げて小さく頷き、何となく見くびっていた事を反省するような態度を垣間見せた。

「そうか。確かにワールド・クロスは戦わない。しかし、どんなに崇高な理念があろうと、人間は迷う──」

そこで何やら中年男性は一瞬だけ振り返り、他の男女と目を合わせる。

「そして自分なりの意思や答えを見つけ出せば他と同調させ、また群れを作っては争う。デュナンズ・ナイツもまたそういった類いの群れだ」

「それは、どういう事ですか」

「つまり、デュナンズ・ナイツはワールド・クロスの別動隊ではなく、左翼だ」

「・・・サヨク?」

「ん、いかんな、今の若者は政治に関心が無さすぎる」

聞いた事はあるんだけどな。

ふとミントの横顔を見ると、まるで叱られた子供のように上目遣いで中年男性を見ていて、何だか自分まで叱られているかのような空気を感じた。

「つまり、ワールド・クロスに反旗を翻した者達という事だ。尤も敵対する為ではないが」

「それなら、私達協力出来ますよね?」

「言っただろう、ワールド・クロスは誰とも協力しない。常に中立である事が、ワールド・クロスにとっても理念の1つだからな。君達がデュナンズ・ナイツと戦ってもワールド・クロスは何も言わないし、それをこちらから要請する事もない」

「でももしデュナンズ・ナイツの人が、ワールド・クロスの人達を襲ったらどうするんですか」

「赤十字は、そんなものには動じない。能力者なるものが生まれる前からずっとそうしてきたし、これからもそうだ」

強いなぁ・・・理念、か。

ミントでさえも大人しく帰ってきた事に何となく“負けた感”を感じてしまいながら、そしてホールに戻るとミントの大人しい表情になのか、ふとミントを見るライムの眼差しに目が留まる。

「何かあったの?」

「ワールド・クロスの人達の組織に行って直接お話してきたんだけどね?」

「え!──」

ライムの問いに、まるで学校から帰ってきて母親に出来事を話すかのような雰囲気がふっと匂った直後、割り込むように凉蘭が声を上げる。

「今さっき行ったの?聖と?何で言ってくれなかったの?」

「え、ご、ごめん、行きたかった?」

「聖だけズルいじゃん、私だってミントさんを先生にしてるのに」

「え、そっち?」

思わずそう言うと僕を見た凉蘭は唇を小さく尖らせるが、そんな空気をライムが控えめな笑いで吹き消すとミントもつられるように微笑みを溢す。

「今度はちゃんと言うからね?」

「うん」

「えっと、それでワールド・クロスの人達にデュナンズ・ナイツの事聞いたら、デュナンズ・ナイツは別動隊じゃなくて、違う考えを持った独立組みたいな感じなんだって。仲良しじゃないから指定自警団がデュナンズ・ナイツと戦っても、ワールド・クロスは何も言わないって」

「なら今後、デュナンズ・ナイツに関してはレッドライトニングが中心になって動いて貰っていいか」

急に声のトーンが指定自警団のリーダーっぽくなったノブの言葉にもミントはいつもの笑みで頷くと、ミントはその笑みを凉蘭や究、そして僕に向けてきたのでとっさに頷く。

レッドライトニングが、こんな大口の仕事、大丈夫かな。いや大丈夫か、ミントさん達居るし。

「あ、イセヤ君を襲ったデュナンズ・ナイツの人また誰か襲ったみたい、この動画結構最新だね」

「どれ?」

近くに居た究がヒカルコのスマホを覗くとヒカルコは究に見やすいようにスマホを傾け、そこに凉蘭も加わっていった後、少ししたところで究は声を上げた。

「・・・こいつ、ちょっと聖も見なよ」

え?え?・・・。

「ヒカルコ、ちょっと止めるよ」

「うん」

究が人差し指で優しく触れたその画面を見ると、画面は何やら両手を武装した女性と、日本刀を持った見覚えのある男性が顔見知りのように並んでいるところで止まっていた。

「背中ドクロだよな?こいつ」

「ほんとだ、背中ドクロ、デュナンズ・ナイツだったのか」

主人公プロフィール

山崎 六事 (やまざき りくじ)(20)

神王会、東京防衛チーム所属。好きな事は動物の観察。チーム内では主に街の観察を担っている。神王会を信仰しているというより、衣食住を面倒見て貰えるからという理由で神王会に入った。

身長170センチ。体重58キロ。

持っている能力「ホワイトアーマー」「ゴッドスコープ」

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