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幻の世、人の現2

コンビニで買った缶コーヒーをちびちびと飲みながら相変わらず街を望んでいた時、スマホが鳴ったのでポケットから取り出して画面を見る。

おや、ジンイチロウからだ。

「はいはい?」

「今どこだ」

「上だよ。マンションの屋上」

「じゃあ見えるか。エマージェンシーだ。新宿駅の近くでムッカ達が戦闘してるから向かってくれってさ。ちょうど退屈してただろ?」

「それはそうだけど、自分じゃなくたって」

「言ったろ、エマージェンシーだ、つまり『紅蓮会』って事。オレだって行くんだ。隊長命令だぞ?」

「分かったよ」

新宿駅の近く?・・・。あ、確かに騒がしい。

シールキーを使って現場の近くに出て、半透明な街並みの中で、しかし視界はズームさせずに“ホワイトアーマー”を身に纏う。そして背中から光を噴射させて飛んでいき、同じように仲間の証である“白い鎧”を纏ったムッカ、ニコと合流する。

「あれ?珍しいね、六事(りくじ)君が来るなんて」

「まぁ隊長命令だし」

「じゃあ私避難誘導に回るから」

えー・・・まいいか。

「リク、前」

ムッカに言われて振り返ると紅蓮会の能力者が3人、自分達に向かってゆっくりと追い詰めるように歩み寄ってきて、ムッカが得意な空手を見せつけるような構えを取る中、逃げる人達が醸す切迫感や観客ユーチューバーの眼差しという雰囲気に、忘れていた緊張感が心を擦った。

久しぶりだな、実戦。ていうか、何で紅蓮会、動き出したんだろ。

「余所見し過ぎるなよ?」

「分かってるよ」

1本向こうの道ではジンイチロウとナギサがまた別の紅蓮会の能力者達と戦っていて、そんな時に両手に海賊のような剣を持った男性が自分に向かって走り込んできたので、とりあえず相手の一太刀をかわし、相手の腹にパンチを叩き込む。海賊の剣の男性が盛大に転がると直後、両手にゴツい籠手を纏い頭上に大剣を浮かせた男性がやって来て、最初に宙に浮かせた大剣を振り下ろしてきたのでとりあえずかわす。それから直接殴りかかってきた男性の拳も素早くかわしてパンチを叩き込むが、腹に直撃してもまったく手応えが無く、しかもその瞬間1ミリも仰け反らないその男性は勝ち誇った笑みを浮かべる。直後に男性は再び殴りかかってきたのでそれをかわして一旦飛び退くと、男性は自然に浮かぶような苛立った表情を垣間見せる。

「すばしっこい野郎だな」

バリアでも張ってるのかな。けど体には触れてたしな。どういう理屈なんだろ。

男性を見ていたら頭上から剣が振られてきたのでとりあえずかわし、それから大剣と籠手による怒濤のコンビネーション攻撃もすべてかわすと、最後に男性は苛立ちを爆発させるように地団駄を踏む。

「だぁもう!何だお前は!」

「だって、そういう能力なもんで。君こそ自分のパンチ効いてないみたいだけど」

「格闘派のお前にはオレは倒せない。何故なら、オレの体はすべての打撃を無効化するからだ」

「え、えへ。体は、するからだって、ダジャレかよ」

すると勝ち誇ったような笑みを浮かべて説明してくれた男性は途端に表情を凍らせ、そこには妙な沈黙が流れる。

変な事言ったかな。

その瞬間、大剣と籠手の男性の向こうに居る海賊の剣の男性が、2本の剣の底を合わせて弓にして、自分に向かって赤く光る矢を放った。

お・・・。

そのままで居れば自分の肩にでも刺さっていたであろう赤く光る矢を掴む。

「せいっ」

そして赤く光る矢を掴んだ手を下ろすその勢いで赤く光る矢を投げ返すと、それは大剣と籠手の男性の太ももに刺さった。

「あっつ!」

その男性はもがくようにひっくり返り、直後に赤く光る矢は消えたものの、次第に男性の太ももは血に染まり出す。

「君も教えてくれたし、自分も教えるよ。自分が君を倒せないのは分かった。でも自分は5メートル以内の物に対して動体視力が10倍になるから、君は自分に攻撃を当てる事すら出来ないんだよ」

「つう・・・。動体視力だと?物が止まって見えるってやつか、くそ」

そんな時にムッカの一撃が決まったのか、ハテナマークみたいな刀を持った男性が飛んでいって転がり、その3人には分かりやすく劣勢感が漂う。

「観念しろ紅蓮会。毎度毎度相手すんのも疲れてきたぜ」

「ふんっ今回はこれで終わらねえ。助っ人を呼んだんでな、少しでも戦力を潰せればと思ったがまぁいい」

大剣と籠手の男性が片足で立ち、ハテナマークの刀の男性に肩を貸して貰ったところで、さっきからずっと近くのビルの上に居た人がようやく降りてきた。フェンシングの剣で空中をサーフィンして自分達の前に舞い降りてきた、雷光のマントを羽織った姿が特徴的なテロリスト、ウシクの登場にムッカは小さく首を傾げる。

「何でお前──」

「紅蓮会なんかとつるんでんだ

 最初から降りて来なかったの」

ムッカと発言が被ってしまい思わずムッカと顔を見合わせると、ムッカは笑いを吹き出す。

「リクお前、気になるとこそこかよ」

「そりゃあそうさ、ウシクってばずっとそのビルの上に居たんだ。助っ人なら最初から来ればいいのに」

ふと顔を向けると、剣から降りて地面に降り立ったウシクは自分に妙な眼差しを向けていて、紅蓮会の人達は自分の言葉に不本意ながらも同意するような暗い表情を浮かべた。

「まぁでも、ムッカの言う通りだよね。君達ってさ、解散したの?ヒーローキラーは芝公園の戦いからパッタリだし、センゴク達は違うグループ作ってるし」

「・・・元々、仲間じゃねえよ」

「ふーん」

「何故紅蓮会とつるんでんだ」

しかしムッカの問いには応えず、ウシクは自身の頭上に3頭の雷光ヘビを召喚する。

「関係ねえだろ」

直後に雷光ヘビは全方位に雷光を吐き散らしたので仕方なく距離を取る中、海賊の剣の男性を残して他の2人が離れていき、ふとジンイチロウ達を見るとそっちの戦場では紅蓮会の人達と互角に渡り合っていた。

「ニコっそっちの通りにジンイチロウ達居るから加勢してあげてよ」

「うん、分かった」

息継ぎなど必要無いのか、雷光ヘビは更に雷光を吐き散らし、不用意に近付けない恐怖もまた散らされる中、海賊の剣の男性が自分に向かって剣を1本投げ付けてきて、とりあえずかわしたものの、その剣は途端にピタッと宙に浮き留まった。

おや・・・。

男性は逆手に剣を持ち替えていて、何となく手に持たれた剣と宙に浮く剣の底同士が見えない線で繋がっているように見えた直後、男性が手に持った剣を振れば宙の剣も振られた。

おっと・・・。まるで薙刀だな。

しかも宙の剣をかわした直後に見えない線は伸び、宙の剣はまるで目の前で男性を相手にしているかのような立体的な斬り筋を繰り出してくる。その中で斬りかかってきた宙の剣の柄を掴んでみると宙の剣は止まり、まるで男性との見えない綱引きのような空気が流れる。

「放せバカ」

「そういえば君達のリーダー、今日は欠席なのかな」

すると途端に糸が切れたかのように宙の剣の張りが無くなり、剣を順手に持ち直した男性は直接走り出し、斬りかかってくる。

「お前が気にする事じゃない」

「ていっ」

かわす前にホワイトアーマーから光を吹き出し、その勢いでもって胸元にパンチを叩き込むと男性は盛大に飛んでいったが、その瞬間に自分の足元に雷光が喚き、とっさに飛び上がる。

あぶなっ。

しかし目の前には見計らったように雷光ヘビの1頭が首を伸ばしてきていて、直後にその1頭は雷光を吐き出してきたが素早く下に潜り込み、1頭の顎にアッパーを叩き込む。吐かれる雷光が空へ打ち上げられたところで距離を取るが、その1頭は動物のように頭を振ると歯を剥き出して喉を鳴らし、タフさを見せつけてくる。

・・・これは強敵だな。どうしたもんか。・・・ん?

ふととあるビルの上を見上げれば1人の女性がそのビルの屋上から飛び降りてきて、空を飛んだり、変身していたりする事もなく落ちてきた事に悪寒が走ったがその直後、その女性はポニーテールを激しく揺らし、自分やムッカ、そしてウシクの3人のちょうど目の前に、まるで忍者みたいに音も無く片膝を着いて着地した。

・・・あら、この人。

明らかにヨーロッパっぽい顔立ちの、動きやすそうだけどカジュアルな服装で、右脇に脇差し、左脇に拳銃を挿し込んでいる何とも物騒な女性が真っ先に目を向けたのはウシクで、雷光ヘビの頭たちが自分とムッカと女性に対してキョロキョロすると、直後に女性は右手に3本の鉄爪が付いた籠手、左手には1本の砲身が付いた籠手を出現させた。

この人の目的は、一体何だろう。

そうかと思いきや、その女性は右手首に鉄爪があるのに右手で拳銃を抜き、左手首に砲身があるのに左手で脇差しを抜いた。

「ムッカ気を付けてね、武器から魔法攻撃してくるから」

「お、そうか」

何となくそう言ってしまったのが何かいけなかったのか、直後にその女性はウシクにだけ向けていた敵意と殺気の眼差しを驚くように自分に向けてきた。

「あ、見てたからさ、君がイセヤオトナリと戦ってたとこ。でも、割り込みってズルくないかな」

「テロリストを駆逐するのにそんな事言ってられない」

「無差別なの?てっきりイセヤオトナリにリベンジしに行くかと思ったけど。それより日本語上手いね」

「・・・世間話してる暇はない」

自分の問いに、面倒臭そうに小さく首を振ってそう言うと、女性は直後に鉄爪から緑色の光を発して“光の鉄爪”を作り出し、人間の筋力ではあり得ないジャンプ力でウシクに襲いかかった。雷光ヘビの1頭が素早く迎撃しようと噛みついていき、直後にそこには光と電気の衝突音が鳴るが女性は退かず、今度は砲身から緑色の光を発し、光の砲撃を繰り出す。更には脇差しからも緑色の光を発すると脇差しから光の斬撃を放ち、その衝撃に雷光ヘビは少し吹き飛び、遂にウシクの頭上はがら空きになる。しかしウシクも退かずに雷光が纏うフェンシングの剣を浮かせながら振り回し、そこにはフェンシングの剣と鉄爪の衝突音が鳴るが、女性が拳銃から光の銃撃を繰り出すとそれはウシクの肩を突き、血は出ないものの衝撃が強いのかウシクは尻餅を着く。

あ、やられちゃうかな。

正に忍者みたいに素早い連続攻撃からのトドメといった具合に、そして女性が砲身に緑色の光を溜めてから強力そうな一撃を放った瞬間、自分が両手から光を放ち、その緑色の砲撃を何とか打ち消した。自分の光と緑色の光が打ち消し合う爆音だけが響くその妙な沈黙の中、ウシクが自分に振り返り、女性が鋭い眼差しを向けてくる。

「何故だ」

「まぁ、自分達にはウシクを殺す理由は無いし、ねえムッカ」

「え?おう、まあな」

「殺すのは我々だ、邪魔するなら、敵として見なす」

「んー」

ウシクが素早く距離を取り、雷光ヘビと合流した事には誰も目もくれない中でふとムッカを見ると、ムッカは鎧を纏っているのに頭を掻く。

「ていうかさ、そもそも何で君達デュナンズ・ナイツは日本にまで来て無差別にテロリストを襲ってるの」

「我々の管轄は、国じゃない、この地球。テロリストを駆逐するのは、人として当然」

表情が冷たいなぁ。気が合わなそう。

「なぁお嬢さん、無差別に人を襲う事をテロって言うんじゃないのか?」

「じゃあ、テロリストは裁かれなくていい存在?」

「そうじゃないけどさ」

「我々は共感を求めない。テロリストを裁く、それが使命」

何だろな、間違ってはないけど、何か違和感。顔、冷たいし。

4つの武器を緑色で光らせながら女性は再びウシクに飛びかかり、再び純粋なる敵意が光と電気の衝突音へと化していく中、周りを見渡せば観客ユーチューバーは誰と誰の戦いかなどどうでもいいかのように相変わらずで、それからゆっくりと女性がウシクを押していくという戦況というところで、ハテナマークの刀の男性が刀の曲がった部分の何も無い中央に炎を灯らせ、まるで杖から火を出す魔術師みたいに炎を放った。地面に落ちて燃え上がった炎を女性はかわしたが、2対1となった事に警戒したのか、女性は素早く飛び退き大きく距離を取る。

逃げるのかな。

そうかと思いきや直後、女性は4つの武器から放つ光を瞬間的に増幅させ、そしてウシクとハテナマークの刀の男性を丸ごと襲うくらいの広大な緑色の閃光を放った。

うわ、強烈・・・。

それは一瞬だったが、爆風も剣圧の鋭さも混ざったようなそれに2人は倒れ込んでいて、地面に刀傷が残っていたり2人の向こうのお店の窓が割れていたりという悲惨な状況の中、立ち上がろうとしているウシクに向かって女性は再び光を溜め込んだ砲撃を放ったので、再び両手から光を放ち、トドメを打ち消す。

「それが答えだと、我々は受け取るから」

「だってそれ、明らかに建物が巻き込まれるし。ていうか、表情冷たいよ?君ってヨーロッパの人?」

「建物なんかに気を配ってたら、標的を取り逃がす」

「悪いけどなお嬢さん、街が何かしらの被害に遭うなら俺達は黙っちゃいない。誰の戦いだろうと常に観察し、街や人が巻き込まれるなら介入も辞さない、それが俺達神王会だ」

しかしムッカの警告じみた言葉にも、女性は依然として冷徹な眼差しを自分達に向けてくる。

幻の世は、六事の能力で視ている世界です。その中の、人間達の現実、という意味がタイトルには込められています。


ありがとうございました

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