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拳は常に一線を画す

せっかく高層マンションに来たのでその屋上に上がり、そこから街を望んでいた時、スマホが鳴ったのでポケットから取り出して画面を見ると、その着信は何やらリリコからだった。

「はいはい」

「りっくん、スイーツ作ったから食べてよ」

スイーツって。

「何作ったの?」

「見れば分かるよ」

えー・・・。

仕方ないので今度はインターホンを押さずに玄関の扉を開けて拠点に帰ると、キッチンカウンターの上には何やらガラスのカップに盛り付けたスイーツがあった。

これは・・・。バニラのアイスクリームの周りにコーヒーゼリー、そこに、麦チョコかな。このソースは?

「感想聞かせてよ」

カウンターの前に座っているリリコは、大学生の年齢の割りにはどこかのOLなんじゃないかというぐらい凛とした大人っぽい微笑みを見せながらそう言うと、リリコも同じスイーツを一口食べて見せてきたのでリリコの隣に座り、名前の無いスイーツにスプーンを入れる。

「よく混ぜてね」

「うん」

一口食べてみると、それは素材ごとの味がすると共に、何だか甘ったるさとスッキリさの間のような風味が口に広がった。

「どう?」

「普通に美味しい。というより不味くしようがないやつじゃん。でもこのソースが何か分からないけど」

「砂糖を入れずにイチゴとメロンを煮詰めて、白ワインを入れて、バルサミコ酢で仕上げた。でも分からなくても美味しいって思ったならもうそれが答えだよね」

「け、結構手間かけたんだ・・・。ソースはいい感じだけどさ、素材は3つも要らないんじゃないかな」

「そっか」

名前の無いスイーツを食べながらふとリリコを見ると、どこか満足そうな顔でそのスイーツを一口食べたリリコは何かを考えるようにキッチンを見る。

「ありがとう」

「うん」

食べ終わってとりあえずお礼を言ってから拠点を出ていき、その高層マンションの屋上で何となく座り込む。

あ、スズメが電線に並んでる、可愛いなぁ。・・・あ、ネコだ、歩いてる、どこ行くのかな。・・・何か変わった事ないかなぁ。ほんと街の観察だけじゃ退屈だよ。

視界のズームを一旦戻し、建物は半透明ではあるものの普通の視力で街を望んでいる中、視力的には見えてなくても感覚的に人の動きを感知し、だいたい3キロ先の日比谷公園手前の交差点にズームする。

知ってる人だな、テロリストだ。確か、センゴクだ。ヒーローキラーとしてちょっと有名なテロリストの仲間。でもあの戦いを見た限りじゃ、何となくクーデターっぽかったけど。3人か。・・・ん、また1人合流、じゃない。あいつ、あれだ。

公園の緑も映える長閑な街中で、センゴク達3人に対峙するように1人の男性が立ちはだかるような構図になった直後、1人の男性はマジシャンのように日本刀を出現させ、そしてその刀を抜くと、センゴク達は条件反射のように変身していき、その場には他でもない緊迫感が吹き荒れた。

見えるだけだしな、何を言ってるかは分からないけど。

最初に動いたのは全身銀色の所謂リザードマンで、残像を見せる高速移動で日本刀の男性を殴りつけるが、同時にそこには黒い毛皮にくるまれたゴリラっぽいような腕だけが出現し、銀色の拳はその筋肉質な黒い腕だけに受け止められた。

うほっ・・・まるで、守護霊的なあれだな。

間髪入れずに銀色のテロリストは怒濤の攻撃を仕掛けていき、同時に金色の鎧を全身に纏うセンゴクが金色の塊を手から撃ち放っていくが、銀色のテロリストの攻撃はすべて黒い腕に阻まれ、金色の塊も男性が振り上げた刀によって真っ二つに切り裂かれる。

うわぁ、やりあってるなぁ。観客ユーチューバーも集まってきてる。あの刀の人、指定自警団がカツシマと戦ってるところに乱入した人だよな。つまりこの戦いも、“テロリスト狩り”・・・。



オーナーの部屋から行ける、一般人用ホールとは特に何も変わらない、指定自警団専用ホールに行ってみると、ホテルのラウンジのような緊張とリラックスが混ざった雰囲気の中、誰よりも速く遠くから手を振ってきたライムにミントが向かっていったので、とりあえずついていく。

うわぁ、何か分かんないけど、みんな強そうに見える・・・。

「お、来たな新人」

ライムと一緒に居たノブが気さくにからかうような感じで話しかけてきたが、対応に困ったのでとりあえず微笑みを浮かべてみる。

「聖、闘技場行こうぜ?強くなったんだろ?」

うおっ。

「あ、うん」

顔を合わせた途端にちょっと怖いくらいの笑みで誘ってきたシンジについていく中、テレビでも割りと見た事のある顔触れに改めて指定自警団になった事をふと自覚する。

こっちのホールにも闘技場があるのか。異空間を作るって、オーナー達の技術って一体どんなのだろう。あ、シンジ君が相手だしな、今持ってるDNA情報、全部やっちゃおうかな。

「シンジ君、今持ってるDNA情報、全部出していいかな?多分暴走するかも知れないけど」

闘技場に入って2人きりになってから話を切り出すと、短い通路を抜けたところでシンジが振り返る。

「暴走?」

「うん、何かコクエンが作ったガルジャンをラーニングして使い始めてから、1度に使う力を増やした時に意識がふわーんってしちゃうんだ」

「じゃあ実戦に使うのはリスクが高いって事か」

「いや1度でも暴走が治まれば暴走しなくなるんだ。多分体が慣れる時間が必要なんじゃない?」

「ふーん」

「だからせっかくだし、ちょっと特訓させてよ」

「あぁ」

何となくシンジの表情から最初の頃に見せてきた余裕な雰囲気が感じなくなると、新人の僕に警戒してくれてるのか、直後に真剣な表情を浮かべたシンジはその右腕と両足を赤黒い外殻で固めた。とりあえずワシゴリラ、黒炎の怪鳥、シロロンを発動し、一旦深呼吸する。

「準備運動がてら、行っていいかな?」

「あぁ」

翼と拳に黒炎を灯し、翼から黒炎を吹き出した勢いで飛び出し、真正面から黒炎を纏う拳で殴りつけた瞬間、シンジが張っていた見えないバリアは音を立てて大きな亀裂を見せた。

おっ。

その直後に拳に纏わせた黒炎を爆発させるとなんと見えないバリアは砕け、その爆風はシンジにも手を伸ばした。

や、やった。

しかし強くなった事を噛み締める暇もなく、直後に赤黒い拳は爆風を突き抜け、僕の頬に直撃した。

・・・ぶへぇっ。

回転しながら吹き飛んで更に地面を転がったものの、ふと起き上がってみた時に感じたのは、余裕だった。

うん・・・ダメージ、そうでもない。

再び飛び出した時に垣間見たシンジの微笑みが何となく脳裏に焼き付きながら再び殴りかかるが、今度はバリアに阻まれない代わりに、肉体強化していない左手の手刀で僕の拳は的確に弾かれ、更には見えないバリアではなく見えない拳によって勢いが完全に殺されてしまった。

くっ・・・。

そして衝撃によって動けないそのほんの一瞬を的確に狙い、シンジは再び僕を殴り飛ばした。

強い・・・何だ、判断力、力の抜き方、何もかもが洗練されてる。これが、シンジ君、か。

「結構強めにやったけど、指定自警団として良いタフさだな」

ふう、確かにこれでも、すぐ立てる。

「後は動きだな」

まだまだっ。

今度は遠距離からの連続的な黒炎の球でシンジを追い詰めていくが、砕かれると分かっててもバリアを一時的な盾に使ったりとまったく隙を見せないので、黒炎を放ちながらも近付いていき、そして近距離に近付いた瞬間に目の前で黒炎を大爆発させる。

うわ、僕も見えなくなっちゃった。でもこれだけの爆発なら・・・。

「おい」

え?

真上に顔を上げると数メートル頭上にはシンジが居て、僕がシンジを見上げた時を見計らうようにシンジは拳を振り下ろした。

ぐへっ・・・。

「ありきたりなパターンだな。タフな奴はそうやってすぐ自爆系の攻撃してくるからな」

ありきたり・・・。くぅ~。

「そろそろ力、全部出せよ」

脳天に打ち落とされた衝撃がまだちょっと響く中、近くの地面に降り立ったシンジを見据えながら、オッシーを発動する。

・・・・・うぅ・・・意識が・・・。



日本刀の男性が振り上げた刀から淡い紫のレーザービームを放ち、銀色のテロリストを突き飛ばすと同時にセンゴクが金色の塊を放って抵抗していくというのが少しばかり続いた頃、ふと日本刀の男性の動きに鈍さを感じると、センゴク達はそこに追い打ちをかけ、そして遂に日本刀の男性はセンゴク達から逃亡していった。

まぁ、3対1だし、こんなものかな。この報告は後ででいいや。・・・あ、カラス。カラスもセンゴク達の戦い見てたのかなぁ、可愛いなぁ。結構人も集まってたし、ニュースになるかな。



ふと気が付くと、少し離れた前方にはシンジとノブが居て、まだここが闘技場で2人がすごい真剣な表情で戦闘態勢を取っているという状況に、すぐにそれまでの事が鮮明に脳裏に甦った。

ふう・・・ダウンロード終わったか。てかノブさん来てたんだ。

「ノブさん、いつ来たんですか?」

「お、おう、さっきだ。思いの外、シンジが苦戦してたもんでな」

えへ、僕に、シンジ君が苦戦?・・・ふう、いい感じだ、安定してる。

「ていうか、お前の力どうなってんだ?第二覚醒の力にシンジが手こずるなんてあり得ないんだが」

「第二覚醒?」

「ああ、最初はレベルで言ってなかったからな。覚醒、第二覚醒、第三覚醒、臨界覚醒ってオーナーも言ってるしな」

「そうだったんですか」

「けど誰が言い出したか、今じゃ何となくレベルで言うのが馴染み始めてるんだ。お前の力、動物からDNAを取り込むんだよな?まさか、そのDNAごとにレベルがあるって事か」

「そうだと思います。オッシーは元々レベル2だし、シロロンとワシゴリラはレベル1で、黒炎の怪鳥は異世界の力なんでレベルは無いですけど、怪鳥を作ったコクエン本人は少なくとも合計レベルが3はあるんじゃないかって南原さんも言ってたし、そしたら合計は7です、かね」

まじか、我ながら、すごいな。シンジ君と、一緒・・・。

その瞬間、ふとシンジの目つきにちょっとした怖さを感じた。

「なるほどな。いやぁ、こんな短期間でここまで力をつけるなんて、すげぇじゃねぇか」

「あ、あは」

「ま、力はあっても動きは素人だからな、後は動きだな、はは」

・・・ぐ、グサッと来た・・・。

「暴走は治ったみたいだしオレは戻るが、まだやるか?」

ノブの問いにシンジは逆にちょっとだけ圧を感じてしまうほど静かに頷いたが、そんなシンジに気を留める事なくノブはさっさと去っていく。そしてノブが闘技場から姿を消したところで、シンジはふと冷静な脱力感をその表情に伺わせた。

「聖、ヒョウガ知ってる?」

「うん。YouTube見た事あるよ」

「オレさ、最初の頃あいつに全然敵わなくてさ、ここまで強くなったのも、ヒョウガっていう目標があったからでさ。だからまぁ、聖も目標作った方がいいぞ」

目標か。

「先生はミントさんだけど、目標なら当面はやっぱりシンジ君かな。あれ、最初の頃って、今は?」

「ああ何かあいつ異世界で力奪われたとかで、もうヒョウガじゃなくなってるから」

奪われた・・・・・え、急に怖いな。

「言っとくが、本気出すからな?」

「・・・うん」

シンジの足元から朱いオーラが立ち込めた瞬間、オーラには赤色と若干の黒が混ざらずに加わり、そして力強さやら重厚感やらを感じさせるそのオーラが体を這って右腕に集中すると、オーラに包まれた右腕は“10メートル級の右腕だけ”となってシンジの背後に出現した。

「これが今の最終形態なんだけど、実戦で使ったのは1回だけなんだ」

右腕が、切り離された・・・。

「右腕、無くなっちゃった?」

「いや、だからこれだって」

まるで肘から先の右腕を無くした障害者のように、シンジは3色の外殻で包まれた肘までの右腕で背後の巨大な右腕を差すと、同時にまるでシンジが動かしているかのように、巨大な右腕は指を動かす。

でか・・・。しかも両足のブーツみたいなのもちょっと派手になって、胴体や左腕にも一部外殻が・・・。

「要は、神経のワイヤレスって感じ」

「でもそういうのって、巨大なほどスピード落ちるんじゃ」

するとシンジは好戦的な笑みを浮かべ、同時に巨大な右腕は拳を握り締め、その角度や拳の向きが正にシンジの右腕そのもののようなシンクロ感を見せる。

ワイヤレスって事は、どういう・・・。

翼から黒炎を吹き出して飛び出したと同時に巨大な右腕は動き出したが、そう思った時には巨大な右腕は所々から3色のオーラを吹き出して猛スピードでシンジの頭上の空を切った。

うぇえっ!・・・。

正に爆音が鳴り響いた瞬間、見えない拳を飛ばしたのだろうと思った時にはすでに僕は衝撃波に呑み込まれていて、翼に灯った黒炎と同時に胸中の闘志までもが吹き飛ばされた事を自覚しながらそして背中は猛烈な勢いで壁に叩きつけられた。

ぐふっ・・・。

その直後、倒れる事なく地面に立ち堪えられた事に、ふと自信と希望が湧いた。

シンジの第三覚醒の初披露はレッドライトニングです。


ありがとうございました

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