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バーニング・フィスト

「ミントさん」

怪我は無いか、そりゃあそうか。

「聖、大丈夫?」

あは、逆に心配されちゃった。

「はい」

ウシクも居なくなり、そして去っていく春隆とセンゴクを一瞬だけ見てから、ミントが相手をしていた拳銃のテロリストが倒れているのを見た時、オオモリユキトのガルジャンが左手の剣を振り、燃え盛るような光を撒き散らした。

危な──。

腕を出して庇おうとした時にはすでに体には熱と衝撃が襲っていて、しかし巻き添えを食らってひっくり返った僕になど気にも留めず、オオモリユキトのガルジャンはシキの剣を捌き、アイリとショウリに右手の銃で銃撃していく。

「聖、大丈夫?」

「大丈夫です」

ふう、ダメージは全然だけど、何か違う意味で精神的なダメージが。

アイリの手の動きにリンクするように、水蒸気を尾に引きながら燃え盛る氷塊がまるで隕石のように飛んでいくと、その着弾と爆発の衝撃にオオモリユキトのガルジャンは大きく仰け反っていく。

このまま、指定自警団に任せていいのかな。

するとそこにシキとショウリが飛び掛かり、2人の斬撃にオオモリユキトのガルジャンは勢いよく地面に倒れ込むが、そこに隙は見せずにガルジャンは剣を振りながら立ち上がり、素早く燃え盛る光の弾幕を張る。

これからも、最終的にはミントさんやシンジ君達に助けて貰うのかな。・・・なんだかな。

振り返ると究もアマカゼも、ダークカンガルーもグラスウルフも傍観するように立ち尽くしていて、そんな姿に妙に気持ちが込み上げてくると、僕の右手には無意識に黒炎が灯った。

何か・・・。多分、こんなんじゃ、だめな気がする。

そして撒き散らされた光に対して3人が受け身の体勢を取り、端から見ればそこに隙が伺えたと思った瞬間、気が付けば飛び出していて、オオモリユキトのガルジャンが剣を振り下ろそうといったところに拳を振り、その顔をぶん殴った。しかし間髪入れずに繰り出した2発目のパンチは剣で受け止められ、直後に銃から放たれた光は視界を覆った。

くっ・・・。

足を踏ん張り、その熱を思いっきり振り払ったその時、真っ先に理解したのは“ストックの空き”だった。それでも考えるより先に拳を振り出し、追い打ちを受ける前に再びオオモリユキトのガルジャンの顔をぶん殴った。

「おうおう、無理せんでええんやで?」

「でも、やっぱり、これは僕達のチームの戦いだと思うので」

やっぱり、見てるだけなんて・・・。

「ああ・・・せやったな。アマカゼ、ええんか?突っ立ってて。お前がその気なら俺らは援護に回るで?」

シキが声をかけたので目を向けた時、最初に動いたのはアマカゼではなく、究だった。

「行こうぜ?俺達の戦いなんだから」

明るくそう言った究に対し、意を決したように頷いたアマカゼの表情にふと目を留めていた時、眩さを感じたので目線を戻すとオオモリユキトのガルジャンは剣を天にかざし、光を集めていた。

うわ、いかにも何か出そうな雰囲気・・・。

その直後、オオモリユキトのガルジャンはその光ごと、まるでリモコンで停止ボタンでも押したかのように不自然に動きを止めた。

え・・・。

しかしそれは一瞬で、再び動き出したオオモリユキトのガルジャンは剣を振り下ろし、燃え盛るような光を撒き散らした。

くっ・・・。

そこにスランバーが突撃していくと、まるでロケットのようなその勢いになんとオオモリユキトのガルジャンの剣はガラスのように気持ちよく砕け散った。

うおっ。

「何でやっ。俺の剣でも砕けんかったのに」

「万渉術でオルタ・デルタの内部を脆くしたんだよ」

脆く?・・・。オルタ・デルタ?・・・。

「それって・・・」

「えっとつまり、守備力をゼロにしたんだよ」

「おほっ、アマカゼ、やっぱすごいな。だったら一気に畳み掛けてやる。ミニマム・バーン!」

究の号令に戦闘魔晶たちが集まり、そして3角形に沿うように戦闘魔晶たちだけでくっついた直後、戦闘魔晶たちが赤、青、黄ときれいに光を帯びる。すると同時に何やらオオモリユキトのガルジャンの目の前を中心点にして、まるで渦巻いて集まっていく星雲のように、彼方から吹き込んできた赤、青、黄の淡い光輪が一点に集中した途端、そこには凄まじい反発力と共に3色の大爆発が引き起こされた。

うおっ・・・。

風圧もさる事ながら、その衝撃波は正に一瞬にして公園中の木々を打ち鳴らし、やじ馬達の悲鳴ですら押し退けていってそれから、ようやく目を開けて見てみると、オオモリユキトのガルジャンは全身ひび割れてボロボロで、1ミリでも動けばすぐにでも崩れそうな雰囲気だった。

ふう、ハードモードの魔王の必殺技、リアルでやったらこうなるのか・・・・・。

「聖っ」

え・・・。僕か。

最後の一撃を委ねるような究の眼差しに自然と黒炎は拳に灯り、体は飛び出し、そして渾身の力でオオモリユキトのガルジャンの顔をぶん殴ると、その体は岩が砕けるように重々しく砕け散り、ゆっくりと空気に溶け始めた。

ふう、やっとやっつけた。あれ、ていうか僕、覚醒したよな。やっぱりレベルが上がったからかな、体が変身してない時くらい軽い。

人ではなく、壊れた物を直せる能力者が公園の本来の姿を甦らせたのをテレビで見ながら、いつものように夕食を取っていた時、スマホが短く鳴ったので、グループメールをしている画面を覗く。

「結局凉蘭何で来なかったんだよ」

「指定自警団も居たし、ライムさんと特訓してた方がいいと思って、私まだ覚醒してないから」

「まぁ良いけどね。覚醒出来たの?」

そしてまた着信音が短く鳴ると、凉蘭から送られてきたのは小型犬のキャラクターが首を横に振っているスタンプだった。すると究はヒーローキャラクターが「頑張れ」と親指を立てているスタンプを返したので、僕もペンギンの親子が特訓しているスタンプを送ってみる。



ウエイトレスが部屋にやって来ると、俺の席の前と、その向かいにパンとスープ付きのステーキを置き、そして俺の隣とその向かいにはサイコロステーキが盛られたお皿をそれぞれ置いたので、俺が席に座ると向かいにはプロメテウスが座り、俺の隣の丸椅子にはカーバンクルがお座りし、その向かいにはグラスウルフがお座りした。

「わぁ美味しそうね」

俺と同じように、フォークを刺してナイフで切り、ステーキを食べるプロメテウス。その横でカーバンクルとグラスウルフはサイコロステーキを、まるで普通に犬ように食べていく。

あれ、何か・・・楽しい。

「ねぇ坊や、この部屋、大きくしてよ。他の子達が出たがってるわ」

「う、うん」

みんなが出れる広さって言ったら・・・。

夕食を終え、全員の食器をシンクに置いてから部屋を出ていき、それからオーナーの部屋に入ると、相も変わらずオーナーは巨大なモニターの前に座っていた。

「オーナー」

声をかけると椅子を回して体を向けてきた、バーテンダー風女性オーナーはやっぱり相も変わらず、違和感は無いが無機質な笑みを見せる。

「何でしょう」

「部屋、大きくして欲しいんやけど」

「良いですよ、どれくらい大きくしますか?」

即答・・・。

「9匹の動物が過ごせるくらいっていうか、1番大きいのは4メートルの動物が居るんやけど──」

カードキーを差し込み口に入れ、鍵が開いた事を示す緑のランプを見てから扉を開ける。

ん・・・・・お。

キッチンとダイニングテーブル、ベッドにソファー、テレビは何も変わらないが、そのむしろ変わらない景色が逆に不自然に見えるほど、まるで無理やりくっつけたかのような“広大な芝生”にただ目を留めた時、勝手にガルジャンカードは飛び出していき、5体のレアカードは各々芝生に降りていった。ふと天井を見上げると、その高さはまるで2階まで吹き抜けているんじゃないかという感覚を覚えるほどのもので、とりあえず芝生を歩き、ソファーから何メートルも距離が空いた窓際に立つと、その景色はこれまでと変わらないものだった。

すごいな、土は無いから人工芝やのに、まるでカーペットみたい。こんなに気持ちいい人工芝・・・。

すでに寛ぐように窓際に座り込み、バーニングムフロンは外を眺めているので、歩み寄り背中を撫でていた時、カーバンクルが鳴いたので振り返ると、カーバンクルとカミナリペリカンの前にはラストエンペラーペンギンとプロメテウスが居た。ガルジャンたちの、賑やかさに嬉しがるような感情が伝わってくる中、プロメテウスはガルジャンカードを優しく放り、光ってはないのに眩ささえ感じるほど純白のペガサス「ソニックペガサス」を原寸大にした。

うわぁ。

挨拶するようにカーバンクルたちと顔を合わせた後、ふとソニックペガサスは真っ直ぐ俺を見た。

「(馬にとっては狭い部屋だな)」

「え、すいません」

聡明な眼差しでそう語りかけてきたソニックペガサスは部屋を見渡すと、ゆっくり歩き回り始める。

過ごせるくらい、で、走り回れない、か。でも、散歩ならむしろ外に出た方がいいか。

「次はこの子ね」

続けてプロメテウスが放ったガルジャンカードは4メートルの巨体と、まるで斧のように猛々しいカブトムシのような角が正に力強さの象徴と言える「グランエラスモテリウム」だったが、グランエラスモテリウムは少しだけキョロキョロするとその場に座り込み、正に岩石の如く鎮座した。すると直後にまるで人気者かのようにグランエラスモテリウムの下にレアカードたちが集まり、その大きな背中に登ったりし始めるが、グランエラスモテリウムはそんな仲間たちの事など気にも留めず、本当に信頼し合っているようにただ目を瞑る。

「(あれ?)」

振り返るとそこには体中に銃器を装備したサイボーグのラプトル「ヘビータンクラプトル」が居て、何やら臭いを嗅ぐように鼻をヒクつかせていた。

「(草原なのに草の臭いがしないね)」

「人工芝やから」

「(ふーん。それよりさアマカゼ、オレ早く戦いたいな)」

「・・・うん」

「(大丈夫だよ?アマカゼ、普通にオレたち使えるし)」

「え、そうなの?」

「(ていうか、プロメテウスがだめって言ってるだけで、本当は最初から出せるけどね)」

・・・な。

プロメテウスを見ると、歩み寄ってきたプロメテウスは無邪気な微笑みを浮かべながらヘビータンクラプトルの首筋に手を置いた。

「もうヘビーったら、お喋りな子ね」

「(あ、言っちゃった)」

「どういう事?ていうか」

「何よ、坊やだってあたしをリーダーに設定したじゃない」

「そうやけど、そうやなくて」

「あら?坊やあたしに逆らえるの?」

「え・・・・・そんな」

しかし言葉とは裏腹にその無邪気な笑みは、何故か俺の方がおかしいのかとすら思わせるほどに、まるで母親のような優しさを感じさせた。

「ガルジャンは創造者の意思と同調するのよ?坊やがたくましくなくっちゃ、あたし達も不安だもん」

俺の、為を思って・・・・・。

「でもま、そろそろスーパーレアの子達も出たがってるし、良いわよ?使って」

「う、うん」

プロメテウスって、何やろな。何でこんな、ガルジャンっぽくないんだろう。やっぱり、そもそも人の意思やから?

「じゃあ、ちょっと、散歩しよっか」

すると頭を少し上げ目を見開き、その態度から嬉しさを感じさせたヘビータンクラプトルははしゃぐようにグランエラスモテリウムに駆け寄った。

「(グラン、散歩行くよ)」

「(ボクは、岩だよぉ)」

「(え、違うよ?お前はグランエラスモテリウムだよ?)」

ヘビータンクラプトルがそう言ってようやく、グランエラスモテリウムは巨体には似合わない円らな瞳をパッチリと開けた。

「(あ、そうだった)」

夜とあってか全然人の居ない大浜公園の中にある、ひょうたん池を目の前にしながらふと大守幸与の姿を思い出していると、隣に立ったプロメテウスはその横顔からまるで心を撫でるような穏やかさを見せた。

「そんなに気になるなら『サーチング』したら?」

「え、でも、何話したらいいのか」

「そうねぇ。友達でもないものねぇ。でも、同じように異世界に逃げてきたもの同士、話してみたら何か通じ合えるかもね」

逃げてきた・・・。大守君は指名手配されてるからやけど、俺は・・・。

「(ねー、とりあえず会ってみたら?)」

振り向いて目線を落とすとそこにはお座りしたカーバンクルが居て、蛍光色のように夜空の下で映えるその黄金の毛並みは、まるで本当に明かりでも照らされたかのような暖かさを感じさせた。

「(心配で気になるんだから、悪いことじゃないし)」

「うん」

サーチングか。サイコメトリーを使った追跡術。先ずは、最後に見た場所である芝公園から。

目を瞑り、幸与が逃げていったその時間を出来る限り鮮明に思い出し、同時に“その時間軸に意識を飛ばす”「センストラベリング」を行う。

幸与が逃げていくの、当然だけど目撃者多いな。逃げた方向は・・・。

幸与が発生させたソニックブームばりの衝撃が高層ホテルの窓ガラスを割ったみたいなので、その現象に共鳴した思念の1つを覗くと、その現象の目撃者である男性が抱いたそれは“「富士山の方角?」という思念”だった。

・・・こっちの日本だと、東京から富士山の向こうって、まさか関西?・・・。

天風、本当はスーパーレアを最初から使えたんですね。でもそこに介入していた意思とは・・・。


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