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ガルジャンテイマー・アンド・ウエスタン・ウィンド

それから平和塔を見上げたり、お金は無いので博物館は素通りしたりして、そして池に沿って何となく歩いていたその時、ふと妙なざわめきが聞こえてきて、何となく近付いてみるとそのちょっとした人だかりの眼差しの先には池から上がってきたと思われる、びしょびしょの大きなネコっぽい動物が居た。ライオンくらいの大きさで、水掻きもあり、いかにも水生動物っぽい感じという奇妙なネコに目線とスマホのレンズが向けられる中、奇妙なネコはそんな人間達に目もくれず、座り込み、あくびをする。

・・・平和やな。

組織の部屋に戻る前に最後にこの公園で1番大きな古墳の周りを歩いていた時、自然溢れる静かな公園だからこそ妙に誰かの話し声が耳に入ってくる。

「ウイングネイル?」

ふと振り返ってみると、2人の男性の内1人はスマホを見ていた。

「一昨日舞浜に出たのに、しかもフルフェイスじゃなくてフルアーマーって・・・ちょっと行ってみようぜ?すぐそっちに出たみたいだぜ?ウイングネイル」

「でもテロなんだよな?ヤバくね?」

「見るくらい平気だって。それにアカバネシキが居るってよ」

シキさん・・・。

その時ふと脳裏に浮かんだのはキュウの顔で、その陽気で好戦的な笑みを思い出していると自然と足は向いていき、気が付くと周りには同じような方向へ向かう人達が見えるようになってきた。そして博物館の近く、公道と公園のちょうど間辺りにそいつは居た。機械の翼からビームソードのような羽を光らせながら、全身は“ダイヤモンドで作られた悪魔キャラ風西洋甲冑”で覆い尽くしたそいつはやじ馬からざわめきを連れて飛び上がり、シキが両手に持つ変わった形の剣から放った風の刃を受け流していく。

シキさん・・・ユイさんも。

「ユイさん」

「あ、天風、どうしたん、東京やないの?」

「ショウ達学校やから、何となく散歩してた」

「そうなんや」

ふと見上げると、シキは見た目には足に風を纏っているだけで空を飛んでいて、シキが戦っているその真下の地面にはまるで誰かの忘れ物かのように円状の蛍光灯っぽい発光体が刺さっている。

「ノブから聞いたよ?友達出来て良かったやん」

友達・・・。

「まあね」

「ほんで、東京に居るっていう捜してる人はおったの?」

「まだ見つかってない。その前に仲間のテロリストが強くて、特訓中」

「そうなんやね。あらカーバンクルやん、おーよしよし」

ユイがカーバンクルを抱き上げ、何となく嬉しそうなカーバンクルと目が合う中、やじ馬からざわめきが沸く。

イヌかよ、カーバンクル。

「て、それ、言うてた最強カード?使えるようになったん?」

「あたしはあたしの意思でここに居るだけよ」

「そ、そうなんや」

「ユイさん、見なくていいの?」

「ええよ、シキやもん。それにあれあるし」

そう言って、ユイは地面に刺さった発光体を指差す。

「あれ、何なの?」

「私の能力、『キュアフィールド』。あれの近くに居ると、自動的に怪我や疲労が回復するんや」

「え、敵も?」

「まぁ、その方がテロ被害者が大勢だと使えるし。でもほら、敵は私の能力なんか知らへんし」

「それはそうやけど」

まるで凄腕の万渉術士かのように風を操り、ビームソードの羽をかわして懐に飛び込み、そしてシキが剣を振るうと、ダイヤモンドの鎧は音を立てて傷を付けられ、その散っていくダイヤモンドの破片に再びやじ馬からざわめきが沸く。

おおっダイヤモンドが・・・。

「どや、俺の剣は」

するとそいつが自身の胸元の大きな傷を見下ろすという一瞬の後、素早くシキに背中を向けると、そいつは翼なのにロケットのような速度で飛んで去っていった。

「えらい速いやないか」

シキが着地すると円状の発光体は消え、変わった形の剣が普通の短剣へと変わるとシキはその2本の短剣をベルトに付いてある鞘に納める。

カッコイイなぁ、いかにも、剣士キャラって感じ。

「おう天風、東京やなかったんか」

「ショウ達が学校行ってる間、暇やから」

「ほんなら、これから教会行くけど、来るか?」

「うん。シキさん、教会通ってるの?」

「通ってるっちゅうか、仕事や。言うても俺は付き添いやけどな」

付き添い・・・。

シキのシールキーで作った扉を抜けると目の前には赤レンガの外見が目を見張らせるキリスト教の教会があり、普通に教会に入っていくシキ達についていくと、そのテレビでよく見る木製の長椅子が並んだ、内装の1つ1つからして清らかな雰囲気が漂う空間に、心は妙に落ち着いてしまう。

うわ・・・すごい。

そこに大学生のシキと同年代くらいの1人の男性がやって来て、シキと親しげに顔を合わせていく。

「シキ、もうテロリスト片付けたんか?さすがやな」

「まぁウイングネイル相手の立ち回り方は分かっとるからな。何や知らん別の力使っとったけど、俺の剣で傷負わせたら逃げよったわ」

知らん力?・・・シキさん知らないんだ・・・あれ。

カーバンクルを膝に乗せながら1番後ろの長椅子に座り、何やら集会を催している教会を眺めていると、ユイがやって来て隣に座ってくる。

「前行ってもええんよ?自由参加やし」

「俺、神様とか、別に信じてないし」

「そういうのは関係ないよ?」

「何か、大勢でっていうの苦手やし」

それでもユイは優しい笑みで頷き、広々とした教会だからこそ見えない壁で隔たれているかのような集会に目を向けていく。

「でも教会って、何か落ち着かへん?」

「うん。ていうか、シキさんの仕事って?」

「教会の護衛よ。この教会、たまに襲われるから。て言うても何も無ければただ遊びに来てるだけになるんやけどね。仲間の1人がここに通ってて、そんで協力してんの」

「そうなんだ」

教会を襲うのか、でも何となく分かる気がする。

「ねぇ、すごく気になるんやけど、天風の世界にしかない食べ物とか無いの?」

「食べ物?んー、ここに来て無いなって思ったのは、紫色のイチゴかな」

あと黒い桃とか・・・。

「えっ、お、美味しいの?それ」

「そりゃ美味いよ。ポリフェノールたっぷりやし」

「あー紫やもんね。じゃあ動物は?」

「んー、イヌとか、喋るけど」

「それ、空耳やなくて?」

「うん。今は法律で禁止やけど昔は万渉術で動物の遺伝子を改良してて、俺の世界のイヌとかネコは中学生くらいの知能があって、言葉も喋れるんだよ」

「へぇー、それ、最高やんな。ていうかその万渉術?ほんま神様みたいやね。あ、人間が神様みたいやったら、そもそも宗教とか無いんかな」

「そんな事もないよ。宇宙とか、人間の進化の歴史とか、人間の想像を越える事はやっぱり神が作ったんやないかって考えられてるし。でも俺は、神は人間の頭の中で作られたものっていう話の方を信じてるけど」

「人間の頭の中かぁ。天風て、えらい哲学的な話が好きなんやね」

「いや、好きっていうか、理論的に納得出来るから」

「理論て?」

「神が人間より優れてるのは、人間の願望である証拠だってテレビで聞いて」

「ああ、なるほどやね。だからこその信仰なのかも知れんね」

教会は襲われる事なくそして集会は終わり、組織に戻ってシキ達と共にオーナーの部屋兼シキ達のグループの縄張りの部屋で昼食を取っていると、壁に掛けてあるテレビではニュースが流れ出した。

「ウイングネイルと呼ばれるテロリストが堺市の大仙公園に出現した件で、その前には千葉県浦安市での戦闘が確認されており、次にどこに現れるのか、動向が注目されています──」

ウイングネイル、ヒーローの力を再現したテロリストか。ヒーローに憧れでもあんのかな。

「天風、特訓中なんやろ?シキの相手してあげたら?」

「言い方おかしいやろ。ええで?俺も別の力強化したいしやな」

「うん。でも剣は止めてよ?」

「そら当たり前や、別の力の修行なんや。・・・てか、普通に食っとるが、姉ちゃん天風の能力やなかったんか?」

露出の多いビジュアルになのか口元を緩ませるシキだが、プロメテウスはそんな表情に嫌そうな顔を見せず、むしろ微笑みを返していく。

「あたしにも意思があるのよ。それにあたしはプロメテウス」

「お、おう」

ふとプロメテウスを見ると、プロメテウスは俺にも微笑みかけてきて、何か問題があるのかと言わんばかりにフォークを刺したフルーツパイを口に運んでみせる。

どんどん人間っぽくなってる・・・。あくまでも人型のガルジャンやのに。

シキと共に闘技場に入り、シキが簡単なストレッチをしているところで5枚のレアカードを広げてみる。

カーバンクルは必須かな。あと1体・・・シキさんは風使いやし、ダークカンガルーやな。

カーバンクルとダークカンガルーを原寸大にすると、直後にまるでかかってこいと言わんばかりにシキは腰に両手を当てたまま全身に風を纏った。

ジョイニングは出来たから、普通にリインフォースだって出来るはず。

「ダークカンガルー、リインフォース行くよ?」

円らな瞳で可愛らしく頷いたダークカンガルーの手を握り、目を瞑る。数秒念じてから目を開けるとダークカンガルーは蛍光塗料を塗ったように群青色っぽく光るメタルブーツを履き、同じ素材のヘッドギアを着け、そして同じ素材のリングを尻尾の先端に着けた姿へと変化していて、嬉しそうにダークカンガルーが跳び始めるとカーバンクルも一緒になってはしゃぎ出した。

「何しとんねん」

「ほら行くよ?カーバンクルは後方支援ね」

しかしカーバンクルは一瞬固まったように俺に釘付けになると、なんと首を横に振った。

・・・ガルジャンが、従わない?いや確かに自我は作ったけど・・・。今までこんな事・・・。

「カーバンクルもリインフォースしたいの?」

しかし再びカーバンクルは首を横に振り、そして何かを伝えようとしてる眼差しで俺を見上げてきたその瞬間、まるで言葉という名のシャボン玉が弾けたかのように、その感情が直接頭に飛び込んできた。

ジョイニングして、前線に立ちながら回復役っていう特訓、か。

「うん、分かった」

カーバンクルの両手を持って立ち上がらせ、目を瞑って意識してカーバンクルを俺の中に溶け込ませる。

ふう・・・よし。

「シキさん行くよ?」

ってあれ、俺がガルジャンの指示に従っちゃった。いや別にいいけど。

「おう来い来い」

ダークカンガルーは普通のカンガルーのように両足で跳ぶのではなく、まるで人間が走るように交互に足を上げて跳び出していき、そして人間が拳を振るうように振り出した尻尾のリングから闇の球を撃ち出した。しかしシキは特に何もしてないように見えるのに、シキに纏う風は闇の球を受け止めて斬り崩し、そのままダークカンガルーを襲っていく。シキがダークカンガルーに目を向けているそんな時に手から炎の矢を放つが、シキが俺に目を向ける前から風は炎の矢を受け止め、シキが俺を見た時にはすでに炎の矢は風に吹かれて消えてしまっていた。

普通に、風を操る万渉術みたいな事やしな。それなら。

ダークカンガルーに挟み撃ちのイメージをテレパシーで送るが、一瞬俺を見たのにダークカンガルーは思ったように動かず、再び尻尾のリングを前に出し、リングから小さい闇の球をマシンガンのように撃ち出していく。

えぇ・・・。

「ダークカンガルーっ」

再び俺を見るとダークカンガルーはようやく頷いたので、ダークカンガルーがシキの気を引いている隙に背後に回り込み、上からと左右からと3発同時に電気の針を飛ばしていく。しかし直後、明らかに俺に背中を向けているのに、風はシキを守った。

んー、そもそも全方位の風のバリアか?でもさっきバリアがダークカンガルーを攻撃してた。

その時にまるでかまいたちかのような鋭い風音がダークカンガルーを襲い、ダークカンガルーは吹き飛んで倒れてしまう。

あ、ヤバ。

痛そうに立ち上がるダークカンガルーに駆け寄りながら回復の光をかけると、回復したダークカンガルーはまるでお風呂上がりでスッキリしたかのようにはしゃぎ出した。

「まさか、本物の動物やないよな?」

「半分本物、かな。想像で作ったけど自我があるから」

「ほう。けどまだまだや。もっと来いや」

「うん」

相手が風なら、こっちも。

手を振り上げて強く意識し、シキの足元から真上に向けて強風を立ち上らせると、何やら風と風とがぶつかり合うようなすごい音が鳴り、シキは小さく身を屈める。

「何やっ」

行けるか?

そこにダークカンガルーが尻尾のリングから闇の球を放つが、明らかに怯んでいたにも拘わらず、シキに纏う風は闇の球を弾き、ダークカンガルーと俺に強風という名の拳を振るった。

・・・そんな。いてて・・・。

「風も操るんか、何や、その能力」

「これは鉱石の能力やないよ。俺の世界の人間ならみんな使える生まれつきの超能力」

「何やて!?生まれつきの超能力?どういう力や」

シキさんにはまだ異世界から来た事しか言ってなかったっけ。

「どういうて、想像した事は何でも現実に出来るんだよ」

「そんなん、鉱石要らんやないか」

「うんまあね」

でも鉱石も、ある意味特化したチャンネルやしな。

「でも、人間の想像力なんて言うほどやないよ」

「まぁ・・・そらな」

「その風のバリアとか、やろうと思えば出来るけど想像が途切れたら終わりやし」

「まぁそうやなぁ。ちゅうかこれはバリアやないで?」

そう言って得意気な笑みを浮かべると、シキはまるで掌の上に小さく吹き回る風に対してペットでも見るような眼差しを向ける。

「こいつは、“自律機動の風”や。俺の意思に関係なく、俺を守って、敵を攻撃するんや」

「へぇ」

・・・・・まるでガルジャン。

黒い桃は、黒いなりの栄養があるんでしょう(笑)


ありがとうございました

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