ガルジャンテイマー・アンド・ホーリー
「良いじゃん、レッドライトニング。私は賛成」
凉蘭がそう言うと、すぐに究が意見を求めるようにアマカゼを見る。
「俺も、ええよ、それで」
「じゃ、決まりな」
ま、いっか。名前自体はカッコイイし。
「で、どうする?今日。ていうか僕もさ、アマカゼ君のガルジャン達と特訓したいんだよね」
そう言うと、アマカゼは冷静に目を丸くしてから小さく頷く。
「まぁとりあえずの目標はセンゴクと、あの銀色の奴だしな。先ずは特訓だよな。俺もしたいな。・・・あ」
すると究がプロメテウスを見て、何やら期待を寄せるような表情を浮かべると、そんな目線を感じたのかプロメテウスはふとした表情で究に顔を向ける。
「プロメさん、最強カードなんでしょ?特訓の相手してくれない?」
「んー・・・めんどくさいから嫌」
「何だぁ」
「ねぇ究、だったら私、スランバー達を相手に特訓したい」
「お?そっかオッケー、じゃ行こうぜ」
アマカゼと闘技場に行くと何故かプロメテウスも付いてきたが、アマカゼは気にする素振りだけ見せるとカードを2枚取り出し、青いオオカミと黄色いペリカンを召喚した。
「ぺ、ペリカン?」
「雷属性の、カミナリペリカン。こっちが氷属性の、グラスウルフ」
「おー・・・」
直後、グラスウルフはあくびをし、カミナリペリカンはキョロキョロしながら嘴を鳴らした。
すごいな、本当に、普通の動物みたい・・・。
黒炎の怪鳥を発動し、小さく深呼吸した時、ふと何となくアマカゼの不安そうな表情が目に留まったが、すぐにグラスウルフが野太い一声と共に地面を凍らせるほどの冷気を吐き出してきたので、とりあえず黒炎を撒き散らして冷気を抑え込んだ。
正に動物らしい行動力・・・。
すると白い冷気と黒い熱気、そしてそれらが織り成す水蒸気の壁を上空から飛び越えてカミナリペリカンが、同時に横から回り込んでグラスウルフがそれぞれ姿を見せたので、それぞれが口から放った電撃のビームと冷気のビームをかわしながら、速度を意識した細くまとめた黒炎でカミナリペリカンを撃ち落とし、続けて吹き上がる強風が如く黒炎を突き上げ、グラスウルフを真上に吹き飛ばす。それでもカミナリペリカンとグラスウルフは向かって来て、冷気は抑えたものの電撃にやられて思わず倒れ込んでしまう。ふと顔を向けると、着地したカミナリペリカンは翼を広げ、嘴を鳴らした。
くぅ、ペリカンのくせに・・・。
立ち上がりながらワシゴリラを発動させると、ふと感じたのはシロロンやオッシーを重ねた時に見舞われた変な症状がやってこない体の軽さで、グラスウルフが吐いてきた冷気を抑えようと黒炎を振り払うと、それは思ったよりも勢いよく風を切った。
うわ、筋力が増したから?・・・。
実質的に体重は増しているはずなのに、何となく体が軽くなったような気がしながら掌に集めた黒炎をその場で爆発させ、小さな黒炎を辺り一面に放っていく。
まるで本物のガルジャンを相手にしているかのように、自在に黒炎を操るショウの俊敏さと力強さに不安は募り、テレパシーを送ってカミナリペリカンとグラスウルフを後退させて守りに入らせる。
「ガルジャン追加していい?」
「・・・うんいいよ」
「カーバンクル」
しかしカーバンクルが原寸大になった直後、意図せずカードは溢れ落ち、立派な角が常に燃えている「バーニングムフロン」、そして真っ黒い毛並みの「ダークカンガルー」が勝手に原寸大となった。
「全部!?」
「あいや、勝手に出てきた」
どうなってんだよ・・・。レアカードはコントロール出来るのに。
「うふっ」
そんな微かな笑い声が妙に耳に入り、ふとプロメテウスを見ると、俺と目が合った瞬間、プロメテウスはわざとらしく目を逸らした。
何だよ・・・。まいっか。
「別に僕は良いけど」
「ああ・・・」
いや、1度に5体同時は、さすがに、無理が・・・。
目を向けるとグラスウルフはボーッとしていて、カミナリペリカンは翼に毛繕いしていて、カーバンクルは座り込み、バーニングムフロンは今にもどこかに走り出そうとキョロキョロしていて、ダークカンガルーははしゃぐように跳ねていた。
「みんなっ」
その瞬間、当然だが一斉にガルジャン達が俺を見てくる。
「一旦集まろうか」
わぁ、実際にこうなると、みんな可愛いな。
バーニングムフロンの顎を擦りながらカミナリペリカンの頭を撫で、そしていつか見たテレビを思い出す。
ガルジャンが複数居る場合は、個々に命令を出す必要はない、ガルジャンはそもそも人の思念だから、召喚者自身がターゲットに意識を向ければ、ガルジャンはその意思を汲み取る、って言ってたな。・・・よし。
「ショウ、行くよ?」
「うん」
俺がショウに意識を向けるとガルジャン達も各々顔、体、そして闘志を向けていったが直後、ボディービルダーのような凄まじい体型に黒い毛皮と翼を携えている鳥顔のショウは、更に体を大きくし、毛皮に灰色を混ぜ、イノシシっぽいような前に突き出る牙を生やした。
うわ、まるでガルジャンの強化だな。
「・・・フゥー」
走り出そうと腰を落としながら、動物らしい鼻息を吹いたショウに微かな恐怖を覚える中、カミナリペリカンとグラスウルフがそれぞれビームを吐き、ショウは冷気と電撃に見舞われる。しかし黒炎が振り払われると冷気と電気は軽々と弾き飛ばされ、そこに角から炎を燃え上がらせながらバーニングムフロンが突撃していくも、バーニングムフロンは角を掴まれて投げ飛ばされた。
えぇっ・・・。
「ウアァッ」
ショウがそう声を上げ、地面を殴り付けた瞬間、まるで隕石の余波の如く黒炎は地面を這ってきて、カミナリペリカンとグラスウルフは抵抗する事も出来ずに吹き飛ばされてしまう。
何だあの強さ・・・。
自らを闇で包み、攻撃を無効化してからダークカンガルーが闇の球を撃ち放つも、ショウが放った黒炎は津波の如く闇の球を呑み込み、そのままダークカンガルーを襲った。
そんな・・・。
カーバンクルが倒れているガルジャン達に回復の光をかけている最中、ショウは何故か肩を上下させるほどに荒く呼吸しながら俺を見つめ、直後に黒炎を出さずにただ地面を殴り付けた。
「フゥー・・・」
どうしたんだ?
しかしそうかと思えば急に顔を上げ、動物みたいにキョロキョロして俺を見てからショウはゆっくり走り出した。そこにグラスウルフが立ちはだかるとショウは立ち止まり、グラスウルフと威嚇するように見つめ合う。
何か、おかしい気がしないでもない・・・。
直後にカミナリペリカン、ダークカンガルー、バーニングムフロンも起き上がり、ショウはガルジャン達に囲まれるが、ショウが掌を上げ、大きな黒炎の球を作り出し、それを爆発させると、その爆風は瞬時にガルジャン達を呑み込んだ。
うわ!・・・。
ただ顔を背ける事しか出来ず、明らかに爆風に呑み込まれたと思った直後、ふと気が付くと体は何ともなく、爆風はまるで吸い込まれるようにどこかに流れていっていて、ただ流れていく爆風を見ていると、爆風をすべて吸い込んだのはプロメテウスだった。
「あらあら」
更にプロメテウスはまるで俺かのように、ガルジャンカードを取り出し、ガルジャンを召喚した。
・・・何で?・・・。
直後、スマートな体型で鎧を着込み、6角形の盾で武装した「ラストエンペラーペンギン」が強烈な冷気を放ち、ショウの下半身を氷漬けにした。
スーパーレア・・・。ガルジャンが、ガルジャンを使うなんて。
「坊や、その子、思念に意識が呑まれかけてるみたいね」
「え?」
「ガルジャンの暴走はつまり、ガルジャンの自我が創造者の思念に呑まれるという事。その子、ガルジャンの遺伝子をラーニングしたのよね?つまり、『ジョイニング』よね?」
ジョイニング!?・・・つまり、ガルジャンとの合体。そうか、そういう見方もあるか。でも、ショウは暴走しかけてる・・・。だから動物っぽくなってるのか。
「どうするの?暴走を止めるには、意識を失わせるくらいしか・・・」
でも、レアカードじゃ、ショウに勝てない・・・。
「プロメテウス」
「何よ、そうやってすぐに投げ出すの?」
え・・・。
気が付くとプロメテウスは冷たい表情をしていて、それはいつもの面倒臭そうなものではない、初めて見る表情だった。
「でも、今の実力じゃ」
「ウアァ」
直後、ショウは黒炎に包まれ、今にも氷を弾け飛ばそうと力を溜め始めた。
うわまじか、スーパーレアのレベルと同等?
「考えなさい。万渉術は万能なのよね?」
そんな事言っても・・・。意識を失わせる、そうテレパシーでも送れば・・・。
しかしその瞬間氷は弾け飛び、荒々しく息を吐きながらもショウは自由の身となってしまう。
「ふう・・・・・あれ?」
あれ?・・・。
「ショウ?」
「あ、ダウンロード、終わったみたい」
「あら、安定しちゃったのね。残念」
・・・プロメテウス。
「だ、大丈夫、なの?」
するとモンスターな外見だが、まるで正気かのようにショウは背筋を伸ばし、自身の手を見下ろしたりし始める。
「うん。怪鳥とシロロンだけより、何でかこっちの方が安定してるみたい」
「それはきっと、ヒトだけじゃなくて、ヒトとワシとゴリラの3つが器になってるからかしらね」
何で応えられるんだろうと言わんばかりの沈黙でショウがプロメテウスに顔を向けると、プロメテウスは俺を見てからわざとらしく目を逸らしていった。
ワシとゴリラは能力者じゃないし、きっと人間の遺伝子と抵抗なく混ざれるって事なのかな。そしたら最早、3つで1つって事か。暴走しちゃったけどダウンロードが終わればむしろ安定力が強くなるって事か。でもそしたら僕、最早、人間じゃない?・・・。
「でも良かったんやない?その力なら、センゴク倒せるかも」
「うん。そうかも」
もしかしてダウンロード出来たのは覚醒したから?
「ねぇ、僕、覚醒する時みたいに光った?」
「んー・・・いや、光ってないと思うけど」
「そっか」
まぁいいか。
そんな時、ふとアマカゼは妙に真剣な表情で黙り込み、ガルジャン達を見渡した。
「どうかした?」
「ああ、ううん」
でも実質的に1段階強くなれたし、そろそろ帰るか。
「坊や、修業、つけてあげてもいいわよ?」
「えぇ!?急に、どうしたの」
「どうしたのって何よ。坊や見てたら、あたしもガルジャン使いたくなっちゃったのよね。それに修業をつけるのはあたしじゃなくて、この子よ」
そう言ってプロメテウスは武装したペンギンの背中を押すと、押されて1歩前に出たそのペンギンはプロメテウスに振り返りながらも、言うことを聞く子供のように大人しくアマカゼを見た。
ヨーロッパ調の鎧を着て盾だけ持ったペンギンかぁ。強いのかな。
「まぁ坊やだけじゃ敵わないから、2人で来たらいいわ」
「え、強いの?このペンギン」
「そりゃそうだよ。ラストエンペラーペンギンはスーパーレアやから」
「え、へぇ」
ラストエンペラーペンギン・・・。何か急に強そうに見えてきた。確かに普通の皇帝ペンギンよりかは大きくて、しかもスマートだし。ていうか・・・。
ふとガルジャン達を見ると、その動物感溢れる群れは何となく和やかさが拭えなくて、ガルジャン達を見るアマカゼの満足げな横顔を見ると、その佇まいには微かに孤独感が伺えた気がした。
プロメさんも、友達居ないって言ってたしな。きっとガルジャンカードを作ったのは友達が欲しかったからなんだろうな。
「ダークカンガルー」
ん・・・。
アマカゼがそう呼んだ真っ黒いカンガルーが可愛らしく跳ね、アマカゼに近寄ると、まるで普通にペットに触るかのようにアマカゼはダークカンガルーの顔を掴み、ダークカンガルーの額に自身の額を優しく重ねた。
何だろ。
すると直後、ダークカンガルーは光の粉になってアマカゼの体に溶け込んでいったが、よく見てもアマカゼの体には特に変化らしい変化は伺えない。
「あら、良いじゃない。そうよね、普通にやったらこの子には勝てないものね」
「何したの?」
「ジョイニングっていって、ガルジャンとの合体だよ」
「何か変わった?」
「見た目が変わる人も居るけど、本来の意味は“装備”やから」
「それって、合体したら特別な魔法が使えるとか?」
「そういうのは全然無いけど」
「え・・・じゃあ合体って、何の為?」
「万渉術って、要は想像力なんだ。黒い炎なら黒い炎で、そう想像すれば誰でも出来るんやけど、やっぱりそもそも人の想像力には限界があって、現実味の無いものは安定が難しくて途切れちゃったりするんだ。で、ガルジャンってのは、要は特化したチャンネルなんだ」
カミナリペリカンの首筋を擦りながら話し始めたアマカゼの生き生きとした横顔に、ふと恐竜映画に出てくる博士かのような大人っぽさを感じた。
「人間そのものやないからガルジャンには想像力とか無いけど、チャンネルを狭めて特化する事で、むしろ想像しなくても力を出せるって事になる。そこでジョイニングをすると、要は特化したチャンネルのスイッチを持つって事になるんだ。そうすれば特殊効果のある複雑なチャンネルでも、スイッチの切り替えみたいに安定して出し続けられるって事なんだよ」
「万渉術って、理論的なんだね」
「そりゃあね。先ず頭で理解出来ないと万渉術は何も出来ないからね」
「へぇ」
究、大丈夫かな・・・。
ムフロンは羊の先祖の一種です。
ありがとうございました




