ウェーブ・コンダクター
ヤマダ側の不良男子の狼男が倒れ、そのまま光になって消えたが、不良男子はギブアップする事はなく、直後に狼男の光に手をかざした。するとその光は両腕が異様に筋肉質な深緑の竜人となり、また雄叫びを上げる。
大きさは同じだけど何となく、狼男よりかは強そうだな。どんな能力だろうな。でも茂田君の能力も面白いし、楽しみだ。
やっぱりまるで本当の動物かのように竜人が走っていくと、そこにかまいたちが行く手を阻み、竜人はガードの構えを取る。
お、立ち堪えるのか。やっぱり狼男より強いんだ。
体中が傷だらけにはなったが、竜人は腕を振り払いながら茂田に詰め寄り始めると、ようやく茂田も動き出し、そして近付いた茂田に向かって竜人は殴りかかった。内心では不安が募るものの、茂田がしっかりと竜人の拳を両腕で受け止めた姿を見るとようやく安堵を感じた。それから茂田が竜人の攻撃を受け止め、その隙にかまいたちが竜人を攻撃するという攻防が続いた後、今までガードしていた茂田が遂に拳を振るった。
スターモードしてたんだな。竜人、すごい吹っ飛んだ。
しかし体力が狼男よりも高いのか、竜人は消える事なく、ただ苦しそうに起き上がり始める。
「もう戦えそうにないんじゃないか?」
茂田が勝ち誇ったようにそう声を上げるが、不良男子は冷たい目線で竜人を見つめる。
「完全にやられるまでだ」
ちょっと可哀想だけどな。本当に痛そうだし。
不良男子の自信が伺えるような態度が少し気になるが、竜人は立ち上がるとまた走り出し、また茂田とかまいたちとの攻防を繰り広げる。しかしやっぱり先程と同じ展開になり、竜人は茂田に激しく殴り飛ばされて光になって消え始めた。すると不良男子は再び光に手をかざし、今度は全体的に赤くなった、翼のあるほぼ動物よりの竜人を作り出した。
まさか、倒せば倒すほど強くなる、みたいな能力なのか?
大きさは3メートルほどになり、1つ前よりも更に恐竜感が増したその獰猛さに、茂田の表情にも不安が伺えた。すると赤いドラゴンは飛び上がって火球を吐き出し、茂田の足元を爆撃した。
「茂田っち!」
吹き飛んで転がったものの茂田は素早く立ち上がり、走り出して再びの火球をかわしていく。かまいたちが運んでいるのか、茂田は尋常じゃない高さにジャンプすると、赤いドラゴンに飛びかかり、そのまま地面に落っことした。立ち上がり様に赤いドラゴンは尻尾を振り出し、茂田はそれをガードするが、やはり強くなってるのか、茂田は飛ばされて転がってしまう。
大丈夫かな。
茂田はすぐに立ち上がり、赤いドラゴンに向かっていくも、今度は茂田の方が何度も倒される戦況になり、そしてやがて、茂田は立てなくなった。
「茂田!」
そんな、負けちゃったのか。行けそうだったのに。
「5人対5人だけど、先に3勝したら勝ちだからな?」
ヤマダがそう言ってくる間にも、茂田は神田に運ばれていき、茂田を倒した不良男子は代わりに前に出ていく不良女子とハイタッチする。
次は、源さんか。
「急に怖くなってきた」
「頑張れー」
柳菜が声をかけると源は頷き、深呼吸しながら前に出ていく。直後に不良女子は全身に蒼白い光を纏い、神秘的に佇んだ。
ん、格闘系かな。でもまだどんな能力か分からないな。
すると源も戦闘態勢を見せつけるように、光を微かに帯びる黄色いストールを出現させる。
首に巻かれてるけど、両端がまるで生きてるように浮いて、不良女子の方に向いてる。んー、戦わせる為の召喚系でも、装備する系で、無機物系か。
お互いが近接系だと分かったからか、自然と2人は歩き出し、そして不良女子と黄色いストールとの戦闘が始まった。
「セシル!」
もう戻ってきたんだ。何してたんだろう。
どことなく自信の伺えるような表情になって戻ってきたセシルの下に向かい、ペガサスから降りる。
「鉱石使ってきた。私、まだ2つしか能力持ってなかったから」
「そうなんだ。でも無理はしないでね」
「うん。分かってる」
ペガサスに乗り、今までで1番真剣な表情のセシルを注意深く見ながらゆっくり飛び上がる。遠い眼差しのセシルに不安になってしまう中、タクトを出したセシルはいつものように、オーケストラの指揮者のようにタクトを振る。
ここからじゃさすがに遠すぎて、攻撃が届かないんじゃないかな?
しかしセシルは常に気を張っているように、キョロキョロしながらゆっくり飛行巨人に向かって歩き出す。飛行巨人はウルフ達を相手にしているとは言えその攻撃は広範囲で、後方支援の能力者達も簡単に巻き添えになる中、セシルがタクトを振ると同時に飛行巨人がセシルの居る方に両肩の砲身を向ける。
またあのレーザービーム!・・・。
しかし飛行巨人は極太レーザービームを放つ事はなく、偶然向かっていったジウに気を逸らしていった。
ふう・・・。
見る限り攻撃にはなってないが、セシルは本当にオーケストラの指揮者みたいにただタクトを振る中、ウルフのリングが飛行巨人の砲身の1つを破壊した。
やった!・・・。
「お、セシル、もう戻ってきたのか?どうかしたのか?ああトイレか」
「いや違うけど。鉱石使ってきただけ」
「そうだったのか。ちょっと持っててくれ」
すると剣の1つをセシルに渡すと、今度はカミーユが戦線を離れ始める。
「え!?ちょっと」
「トイレ」
「あ」
後ろ姿で手を振り、陽気に去っていくカミーユから、ふとセシルは私に目線を向けてくると、迷惑そうな表情から笑みを吹き出した。
「ていうかこれ、普通に持ったらこんなに重かったんだ。さすがにこの世で1番硬い素材」
「カミーユだってセシルが心配なんだよ」
「うん。でももう、さっきまでの私じゃないから。しょうがないから使ってあげるけど」
波動を物に纏わせれば、波動を操る事で物も操れるようになるという特性で、セシルがカミーユの剣を浮かせて操るが、セシルはその場から動かず、再びただタクトを振る。
「テレサ!そっちの能力者達のサポート」
え?・・・。
「うん」
セシルが急にそう言うが、特に何も起こっておらず、とりあえず向かい始めた時、飛行巨人の放った衝撃波が流れ弾のように後方支援の能力者を襲った。
あっ・・・。
危険な状態だがすぐに治療出来たのでホッとする中、セシルの下に戻るとセシルは満足げに頷いた。
「未来予知の力?」
「私は波動を操る以外の力は無いよ。でも、それも出来るようになった」
そう応えながらセシルがタクトを振ると同時に、飛行巨人が翼から10本のレーザービームを放つ素振りを見せるが、レーザービームを放たずに近くに跳ぶジウに殴りかかった。
すごい、未来予知か・・・。あれ、何か、動きが、何だろう。
「セシル。何か、動きが、何ていうか」
「シンプル?」
「あ、そう。どういう事?セシルが何かしたの?」
「波動は、万物を通過するし、干渉する。私は、今まで波動を操る事で表面的に万物に干渉する事しか出来なかったけど、これからは波動での万物への干渉までコントロール出来るようになった」
「干渉までコントロール?うーん、それで未来予知?」
「3つ目の力はね、波動を読む力だよ」
タクトを振りながら、セシルはヒントを言って楽しむような笑みを見せる。
読む・・・。頭に波動を・・・あっ。
「相手の行動を先読みしたの?」
「そう。2つ目の力は波動の硬化って言ったでしょ?相手の思考に干渉出来るなら、それは先読みするだけじゃない。思考を硬化させる事も出来る」
「思考を、硬化・・・。だから、攻撃がシンプルに?」
「レーザーを撃つ前に、その先のレーザーを撃つという思考を動かなくしたって事」
「すごい、そこまで出来るなんて」
先程とは動きがまるで違う、ただ殴るだけになった飛行巨人の拳をウルフのリングが止め、別のリングをディエゴが操って飛ばしていき、飛行巨人の左翼が破壊されたところで、カミーユの剣が飛んでいき、その脇腹を貫通した。
もう、勝てる・・・。
攻撃はするが所々ボロボロの飛行巨人の動きは鈍く、ウルフがリングを5つ使って放つ特大のビームが顔に直撃すると、その巨体は轟音を響かせて倒れ、ギャラリーからは歓声が上がる。
やった!・・・あ。
ゆっくりだが飛行巨人が立ち上がり始めた直後、ジウが跳び上がり、ピンクに輝く斬撃でその首を落とした。首が落ちるその音はむしろ呆気なく、でも一瞬の静寂の後、ギャラリーの歓声は最高潮に達した。
ふう、やっと、倒した。
戦いが終わったにも拘わらず、ふとタクトを振ったセシルに目を向けると、タクトの先にはディエゴの姿があった。波動が放たれたから、それは風のように空気を靡かせ、ディエゴも見えない波動を感じてセシルを見る。
「足元、ディエゴ離れて」
足元?・・・ん、何あれ、何か落ちてる。
マイセルだっ。
レオンがそう言った瞬間、スライムみたいな外見の白いマイセルがディエゴの顔に飛びかかった。
あ!ディエゴ!
「ぐあぁ!くそ!やめろ!」
どうすれば・・・。
どうしようもなく瞬く間に白いマイセルはディエゴの全身を包み、そして白いマイセルは人型となった。
「みんな、離れて!」
セシルが叫んでもウルフとジウだけは離れず、私が呼びかけてようやくウルフはジウを制止するように少しだけ後ずさる。
アメリカに出た白いマイセル。能力者のコピーじゃなかったんだ。
「どうすりゃいいんだ?ウルフ!」
カミーユが問いかけてもウルフも応える事は出来ず、直後に白いマイセルは手を天に掲げる。
うわ!体が!・・・。
白いマイセルの周囲何十メートルの全ての人間や召喚獣、生き物が一瞬で浮き上がり、そして白いマイセルが手を前に突き出すと同時に操られたもの全てが一斉に吹き飛ばされた。
きゃあああ!・・・。
それは強烈な重力に見舞われたような感覚で、何も出来ずに地面を転がってしまってから起き上がる頃には、白いマイセルは遠くで1人立ち尽くしていた。
そんな・・・ディエゴが、マイセルに操られちゃった。やっぱりマイセルの巨人を倒したから。
ふう、吹き飛ばされただけで、痛くはないや。
それはバームが雲だからでしょっ。あれ、でもぼくも痛くないっ。
だってレオン、体は硬いじゃん。
「みんな、早くペガサスに」
ウルフの下に飛んでいくと、ディエゴが白いマイセルに取り込まれてしまったのを目の当たりにしたからか、戸惑うように立ち尽くしていた。
「ウルフ」
「アメリカの方はどうなってる。白い奴には能力者が取り込まれてるという事は情報共有されてるのか。能力者を助ける術は分かってるのか。テレサ、ヨハンに調べるように頼んでくれないか?」
「分かった」
ここを離れる訳にはいかないし、電話しよう。
「・・・何かあったのかい?」
「ヨハン、お願いがあるの。白いマイセルには能力者が取り込まれてるって、アメリカには情報共有されてるか調べて欲しいの。それから──」
「それに関しては問題ないよ」
「え?みんな知ってるの?」
「白いマイセルに取り込まれた本人が先程、私達の拠点に来た。忠告しに来てくれたんだ、体が取り込まれてしまうから気を付けろと。そして取り込まれたら、力を乗っ取られると」
「その人、どうやって戻って来れたの?」
「それは本人にも分かっていないようだ。ただ白いマイセルから助けてくれたのは、日本の指定自警団だ。今からノブカツに連絡をして詳細を聞こうとしていたところだ」
「そうだったんだ。アメリカの白いマイセル達は今もまだ戦ってるの?」
「あぁ。まだ能力者が解放されたような動きはない」
「ノブカツに連絡したら、私にも教えて?」
「あぁ」
ディエゴを取り込んだ白いマイセルにウルフもジウも戸惑う中、新しい飛行巨人が現れ、戦場は再び緊張に包まれる。別のグループの能力者達が飛行巨人に向かっていくが、そこで白いマイセルが広範囲に空気を押し出し、能力者達は思うように戦えなくなってしまう。そこに飛行巨人がミサイルを放ち、能力者の何人かが倒れてしまう。
白いマイセル、何とかしないと。
「おかしい、ディエゴにここまでの力があるのか?」
呟くカミーユに誰も応える間もなく、白いマイセルが操って飛ばしてきた帯電する黄色い炎がこっちの方に流れてくる。
きゃあっ。
「あぶねえ!ていうか、ディエゴの力、ある意味最強だよな」
全てを操るテレキネシス・・・。
アチチ。ぼくの体、火に弱いから。
花だもんねっ。
「セシル、どうにか出来ない?」
「やってるけど、全然効かない。元々私の力は能力者の能力以外の全てには効果的で、あのロボットには効くけど、能力者相手には相手の能力によっては効かない事もある」
「それって、ディエゴの力のレベルが関係してるのかな」
「そうだと思う。でもそれならロボットの方を変える」
・・・変える?
セシルが何回かタクトを振った後、飛行巨人は能力者達への攻撃を止め、白いマイセルにミサイルを撃った。
「えっまさか、操れるの?」
「むしろただの機械だから、思考回路に干渉するのは難しくない」
・・・・・すごい。
パワーアップしたセシルが活躍してますが、ある意味最強のディエゴが乗っ取られてしまい、再び戦況が劣勢になりつつありますね。どう立ち向かうのでしょうか。
ありがとうございました




