いざ、外へと出る時が来た!
「――で、何で俺なんだ?」
「私も状況がよく分からないのですが……」
まっ、いきなり生徒会室に呼ばれた挙句、実地演習に行くなんて言われてもピンとこないよねー。
ルヴィとフューリーがいまだに状況を呑み込めない最中、あたしは照れ笑いでごまかしながらも二人に二人に実習について来てほしいとお願いをする。
「お願い! あたし一人じゃ流石にさびしいもん!」
キリュウ先輩にはすでに伝えておいたお蔭で、二人を見ても特に反論する様子はなかった。
ヴィンセント先輩はというと、まだ不満があるような表情を浮かべているけど。
「しっかし、軍の実地演習だろ? トウジョーはともかく、俺やルヴィみたいな奴がついて行っても足手まといだと思うんだが」
って、ルヴィは一応七曜の魔法家なんだけど……そこんとこフューリーに教えられないとはいえ、地味にルヴィのプライドに傷がついていると思うけどー?
「……こほん、私は構いませんよ」
「えぇっ!?」
ほらね、案の定ルヴィはムキになってオッケー出してくれたし。
それはそうと、今回二人を選んだのはちゃんとした理由があるのだ。
ルヴィはいわずもがな、七曜の魔法家に狙われているからにはあたしがついていないと。
フューリーはというと、平民出身ということで地方の情報とか持っていそうだから、さりげない情報収集に役に立つと思うし。
「フューリーもお願い……ね?」
「……あーもう、分かった! 分かりましたよ! ついて行けばいいんでしょ!?」
「ありがと!」
よしっ! 二人ともついて来てくれるみたい!
「キリュウ先輩、いつから出発ですか?」
「うむ。出発は明日の明朝五時、校門前に集合だ。各自で衣服やその他必要な日用品は用意しておくように。荷物は……そうだ、軍支給の分を渡しておく。これにまとめておくように、以上だ」
キリュウ先輩はそう言って両肩にかけられるタイプの大きめのリュックをあたし達一人一人に渡してくれた。
「他に何か質問は?」
「あ、はい!」
「なんだ?」
フューリーが質問したのは、実地演習でどの地方へ向かうのかだった。
「今回は東のリオール地方にある比較的規模の大きな街、シュラスタへと汽車で向かう。到着するのは夕方の予定だ。恐らく二泊程度の実習となる。他にあるか?」
「私は特に……」
それにしてもルヴィは追っ手とかその辺の心配をしているようだけど――
「――大丈夫だって、あたしが守るから」
ルヴィは追っ手のこととか心配しているけど、あたしがいるからだいじょーぶ!
「じゃあ明日朝五時に、学校の門の前ってことで!」
「よし、分かった」
「本当に大丈夫かよ……」
ヴィンセント先輩の心配をよそに、あたしの気持ちはすでに明日の演習に向けられている。
「では、本日は解散となる! 実習とはいえ軍の世話になるのだ、気を引き締めてくるように!」
キリュウ先輩の声で解散となり、今日のところはこれでおしまいとなった。
◆◆◆
「――遅い! 一分二十七秒の遅刻だ!!」
「フューリーってば遅すぎ! まさか女の子三人と行くことになるからって眠れなかったとか!?」
「違ぇよ!」
フューリーの言い分からすれば、単純な寝過ごしだったらしい。その割には、あたしのツッコミに対して顔が真っ赤な様子だったけどー?
「またまたーウソをついちゃってこのこのー」
「っ、ああそうだよウソだよ! 本当は必死な形相のマコトを振り切るのに必死だったんだよ!」
「あっ……それはどんまいです」
キリュウ先輩の態度は緩むことはなかったが、あたしとルヴィはマコトを知っているためにため息をつかざるを得なかった。
「……それと、アリスが昨日はありがとうってよ」
「そんなの気にしなくてもいいのに―」
「でも、あいつも結構気にしていたみたいだしよ」
「だったら、帰って来てからまたモフモフしてあげるしかないかにゃー」
「薫さん、その不気味な手の動かし方を止めませんか……?」
っとと、これ以上喋っていたら汽車に乗り遅れちゃう。
「予定より五分以上の遅れが出ている。【風速】=【疾走】の魔導方程式で移動を早くするぞ!」
その魔導方程式はちょっと分からないかなー。
「薫さん、この式です」
「おっ、ありがとう」
ルヴィがさりげなくメモ帳に魔導方程式を掻いて渡してくれたおかげで、即席であたしも解けるようになった。
「では、急いで向かうぞ! 【風速】=【疾走】!!」
キリュウ先輩が先に魔導方程式を解き、遥か彼方にまで走り出す。
「ちょっと、待ってくださいよー!」
続いてあたし達も後を追うように、足に風を纏わせて走り出す。
「お前ら速すぎだろ!?」
「へっへーん、駅まで競争してドベだったら向こうでご飯でも奢ってもらおっかなー!」
「それはねぇだろ! だったら俺も本気で走るぞ!」




