未知の世界への扉を開いてみるのが、あたしのやり方なんだって!
「キリュウ=クナシダ、只今現地実習より戻ってきた次第であります!」
学生帽ではなく軍帽を被り、腰元に軍刀を挿げた少女が生徒会室のドアの横で凛々しい立ち姿を見せつけている。パッと見は凛々しい男にも思えるけど、明らかに胸の部分が膨らんでいるから女の子であっているよね?
「キリュウちゃんおつかれー。現地実習どうだった?」
「クロウン殿! 今回の現地実習、例のゲリラ軍団との三度の接敵をいたしました! 迎撃の結果一人を捕虜としてとらえることに成功! こちらの被害は生徒一名が負傷、現在軍の医務科に預けているところであります!」
敬礼姿がカッコいい! ……って、一応女の子なんだよね?
「こっちも謎の軍服を着た集団と会ったんだけど……キリュウちゃん、この服に見覚えないかしら?」
そう言ってクロウンはボロ切れ同然となった焦げた軍服を、キリュウの手に引き渡す。キリュウはその服を見るなり神妙な顔つきとなってジロジロと服の細部まで細かく見つめ、そして一つの結論を導き出した。
「これは、我々が接敵したゲリラ軍団の上層部でありましょうか……このエンブレムを見ていただきたい」
キリュウ先輩がそう言って見せた写真には金色の右手に絡みつく蛇のエンブレムが写っており、そして先ほどクロウン先輩がキリュウ先輩に渡した軍服の右肩には――
「――アラ、これは」
「全く同じでありますよね、クロウン殿」
「そうねぇ、確かに一緒だわ」
「ヴィンセント殿も、確認してもらえるであろうか」
「アァ? 俺がか……まあ、確かに酷似しているな」
どうやら生徒会の間で、午前中の襲撃と現地実習でのゲリラ集団とやらの関連性を見つけることが出来たようだ。
あたしとアリスは何のことか分からないから完全に蚊帳の外状態なんだけどねー。
「これは最近マギカでも問題視されている《悪魔の右手》と呼ばれる集団のシンボルで、目的は不明であるもののいたるところでの奇襲行為により指名手配を受けている集団であります。まさかこの学園にも来ていたとは……」
「ウチに来ていたのは、七曜の魔法家狙いだったみたいだけどねぇ。まあ、アタシが焼いておいたから大丈夫だとは思うけど」
「クロウン殿、生け捕りにはできなかったでありましょうか?」
「ゴメンなさーい、全部綺麗に焼いちゃったわ」
がっくりとうなだれるキリュウ先輩とは対照的に、クロウン先輩はケラケラと笑ってごまかしている。
「でも、七曜の魔法家を狙っているってことである程度の目的は掴めないのかしら?」
「難しいです。なにぶん軍でも口を割らないくらいですから」
そこでようやくキリュウ先輩はあたし達の存在に気がついたようで、ヴィンセント先輩に向かってあたし達二人のことを問い始めた。
「そこのお二方は?」
「今年入った一年だ。片方は人狼で、もう片方は……十二階層の魔導方程式を解ける期待の星とでも言っておくか」
「なんと、それは凄い!」
キリュウ先輩はあたし達の目の前まで近寄ると、右手を心臓の部分に掲げ、軍人らしい敬意を持った自己紹介を行う。
「私はこの七曜魔導学院生徒会において庶務を務めている、キリュウ=クナシダだ。この学校で何かあれば、生徒会に行く前に私に話しを通してもらえると助かる」
「ぼ、ぼくの名前はアリス=ブラッドストームです」
「あたし、東条薫っていいます」
「ブラッドストームに、トウジョーか……覚えておこう」
「ちなみに十二階層を解けるのは薫ちゃんの方よー」
「生徒会の外には漏らすなよ。もし漏らしやがったらてめぇがそいつから【電磁】=【直行】 を喰らうだけだからな」
「それは、恐ろしいであります……」
「大丈夫ですよキリュウ先輩! ようは喋らなかったら大丈夫ですから!」
「うむ、心得た」
よっし、これで何とか内緒にしてくれそう。ヴィンセント先輩の後押しもあったし!
「早速なんだけどキリュウちゃん、この子を実地演習に連れて行く気はない?」
「おいクロウン! その話は終わったはずだ!」
「でもやっぱり勿体無いじゃないの。アタシは是非とも一回だけでも言ってみる価値はあると思うけど? それに――」
クロウン先輩はあたしの方を向いて、にっこりと笑ってこう言った。
「お友達の件についても色々と事件解決の役に立ちそうじゃない? この《悪魔の右手》が学校に来たことについてとかも解決するかも」
あたしはそれを聞いて少し納得してしまった。確かにルヴィを狙っている他の集団をとっちめることができるのはいいかもしれない。それにこのまま学校にいても解決するとは思えないし。
「おいトウジョー、断って当然の案件だからな」
ヴィンセント先輩はあたしを案じてそう言ってくれているんだろうけど、あたしの考えは決まった。
「……いいですよ、実地演習にいっても」
「先に言っておくがこれは遊びじゃねぇ。軍が関わる本格的な実習だ。生半可な気持ちで――」
「分かっていますよ、ヴィンセント先輩」
丁度いい、これで世界の姿を少しでも知る事ができるのなら。
「ただし、一つだけ条件があります」
「なにを?」
「この実習の引率はキリュウ先輩がしてくれるんですよね?」
「……まあ、一年生となると私がすることになるだろう」
「だったらついでに後二人も呼んでいいですか?」
「他の一年生を二人もだと?」
キリュウ先輩は険しい表情を浮かべているけど、大丈夫なメンバーを連れていくつもり。
「そうです! それならあたし、外に行きたいです!」
男女一人ずつ連れていく予定です。そのキャラについて次回から少し深めに掘り下げようと思っています。




