ことの始まり
五人の亜人はそれぞれが席に座っている。その後ろに仕えている使い魔もいれば使い魔同士で話している者もいる。
「先生は?」
サリアは教室に教師がいない事を確認すると五人に聞く。
するとサラサラした金髪に甘いマスクを付けた高身長のイケメンの代名詞と言える男が返答をする。
「先生なら先程教員室に戻りましたよ。今日は一日中自習らしいです。」
「そう。ありがと。」
男は何人もの女が堕ちそうな爽やかな笑顔を浮かべるが、サリアは興味なさそうな礼だけ言うと空いている席に座る。
一方モテない男の拓斗はイケメンの男を妬みの篭った目で見ていると思いきや、教室内にいる使い魔達を見ていた。
(亜人は五人いるのに使い魔は四人。誰か訳ありの奴がいるのか?)
イケメンの横に立つ純白の翼が生えた少女。
獣のような男の横に座る小人。
竜人族のメロナ。
メロナと話す腰まで麻色の髪を伸ばした拓斗と同い年ほどの少女。
明らかに使い魔である四人はそれぞれ特徴があった。
「おーい人間くーん!こっちおいでよー!」
教室の端で少女と話していたメロナはこちらに手を振る。
戦闘の時の真剣な表情からは想像できないような笑顔を浮かべていた。
拓斗は少し周りの視線が気になるがメロナの元へ移動する。
「昨日ぶりだね。昨日はいい戦いができて良かったよ。まぁ一方的に負けただけか。」
笑う姿はとても愛らしいものであった。
「竜人族のメロナさんで一方的に負けたら妖精族である私はどうなって・・・。」
拓斗と戦ったことを想像したのか妖精族の少女の顔はだんだんと青ざめていく。
「そういえば君なんて名前?いい機会だし自己紹介しようよ。」
メロナが拓斗に名前を聞くと教室いる者が耳をこちらに傾ける。
「タクト・サカガミ。人間族だ。よろしく。」
「へぇタクトって言うんだ。私はメロナ!よろしくね!」
メロナから差し出された手を握り返す拓斗。
メロナとの握手が終わると妖精族の少女が自己紹介をする。
「私はリリアです。妖精族です。よろしくお願いします。」
メロナと同じように手を差し出して来たので拓斗は握手をする。
(短時間で巨乳美少女二人の手を握れるとはな・・・。前の世界の男が泣いて俺を呪いそうだ。)
チラッと握手をするリリアの胸とメロナの胸を見る。
三人で自己紹介を終えると席に座っていた獣のような男と小人が立ち上がって扉の方まで移動する。
「ヘルガ、どちらへ?」
イケメンの男が聞く。
「部屋に帰るんだよ。ここに用はもうねぇ。」
ヘルガと呼ばれた男は機嫌が悪そうに答える。
ポケットに突っ込んでいた手を出し扉を開けると教室から出て行くのであった。
「では、私も失礼する。」
使い魔を連れていない金髪を肩で切り揃えたモデルのような女性はヘルガの後から出て行く。
使い魔を連れていないことが気がかりな拓斗はリリアに質問することにした。
「リリア。あの女の人の使い魔ってどこにいるんだ?」
「アリエッタさんは使い魔を召喚してませんよ。」
リリアから衝撃の回答がくる。
「使い魔がいないって?」
「そのままの意味です。アリエッタ・メニムさんは自らの実力だけで二位まで上り詰めた人です。」
またまた衝撃的な回答がきた。その回答に拓斗は当然驚きを隠せないでいる。
「アリエッタさんは魔力が底無しなんです。それこそ強力な魔法でも何発でも放ってきます。アリエッタさんはたくさんの魔法を使いこなしますし身体能力も抜群に良いんです。」
これまた厄介なのが出てきたと思う拓斗。一応この世界での目標は、サリアの最優秀生徒を目指すということだ。しかしアリエッタはその目標の障害にしかならないのだ。
「なるほどな。ちなみにリリアは何位なんだ?」
「私は8位です。私の実力はそこまでないんですがイヴ様がとても優秀な方のおかげで今この順位にいれてます。」
「ほう。そのイヴってどの子なんだ?」
「あそこにいるのがイヴ様です。」
リリアが顔を向けた方には人形のような少女が座っていた。
流れるよな銀髪は肩より少し下まで伸び、翡翠色の目は吸い込まれそうになるほど美しかった。頭には小さな白いリボンのついたカチューシャを付けていた。
(ボンキュボンなリリアとは大違いだな)
拓斗が邪な考えをしているとイケメンの男が立ち上がる。
「みんなが名乗ったことだし僕も名乗るとしよう。僕はエル・ファクト。こっちはセレシア。無口だけどよろしく頼む。」
自己紹介をするという空気に流されたのか自己紹介を始めるエルであった。
そしてその流れで用事があると告げ教室を去っていった。
教室に残ったのはサリアとバルターとイヴ。そしてその使い魔達だ。
「俺も戻らせてもらう。」
バルターが出て行くと慌ててメロナはその後を追う。
最後まで愉快な奴だなとメロナに対して思う拓斗であった。
「さぁ私たちも行くわよ。授業がないならもうここにいる意味はないわ。」
自己紹介が終わるのを待っていてくれたのかサリアはこのタイミングで帰ることを拓斗に告げる。
サリアと共に教室を出ると真っ先に質問する。
「使い魔の方は仲良さそうなのにそっちはあんまりって感じだな。」
「当たり前でしょ。あそこにいるのはみんな最優秀生徒を狙っているんだから全員敵みたいなものよ。」
スタスタと寮へ向けて足を進めるサリア。
「随分物騒だな。まぁ仕方ないか。」
今日知り合ったリリアともいずれ戦うことになると思うと憂鬱であるが、渋々割り切るのであった。
魔法使いの道は過酷だと実感する拓斗であった。
一方最後まで教室に残ったイヴは相変わらず席に座っていた。
リリアが横までやって来ると立ち上がり拓斗たちが出て行った扉を見据える。
(貴方たちは救えるかしらね・・・。)
事件の匂いが拓斗たちに届く日はそう遠くなかった。




