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金髪美少女のヒモと化した男

拓斗の意識が戻ったのは夕方ごろであった。

オレンジ色の光がベッドに寝ている拓斗とベッドの横の椅子に座っているサリアを照らしている。

そんな幻想的でもあるこの空間のなかで拓斗は目をゆっくりと開ける。

(あれ?何で俺は寝てんだ?)

保健室のような場所で寝ている拓斗は辺りを見回す。

そんな拓斗は横に椅子に座りながら寝ているサリアを見つける。

(ああそうだ。倒れたんだっけ俺?)

サリアを見たことによって倒れる前の記憶が戻って来る。そして思い出すにつれてだんだん拓斗の顔色が悪くなっていく。

(何で俺はあんなこと言ったんだぁぁぁぁぁッッ!!!!!)

片腕を突き出し「お前は下がっていろ。ここは俺が何とかする。」とサリアに言ったことを思い出しベッドの上で頭を抱えて悶える。

(恥ずかしッ!!顔合わせられねぇ!!)

拓斗が苦悩しているとサリアが目を覚ます。

頭を抱えている拓斗を見てサリアはすぐさま立ち上がり拓斗に駆け寄る。

「貴方大丈夫なの!?痛むなら先生を呼びに行かなきゃ・・・。」

保健室の先生を呼びに行こうとするサリア。しかしそうはさせまいとサリアの手をとっさに掴む。

サリアは驚いてビクッとなるが心配そうに拓斗の方を向く。

「大丈夫なの?」

「大丈夫だ。もう痛みは引いた。」

拓斗の言葉にサリアはホッと息を吐き椅子に座り直す。

(言えない・・・。痛いセリフを言ったことに悶絶していたなんて口が裂けても言えない・・・。)

心配してくれたサリアの気持ちを裏切りたくない拓斗はこのことは絶対にサリアに言わないことを密かに誓うのであった。

サリアが椅子に座ってからというものお互い何も話さず気まずい空気が続く。

そんな気まずい空気に耐えかねたサリアは拓斗に質問をする。

「ねぇ凄く聞くのが遅くなっちゃったんだけど貴方って何て名前なの?」

「え?あぁ俺は拓斗。坂上拓斗だ。」

「サカガミ・タクト?サカガミって名前なの?」

「いや、自己紹介のしかたが悪かったな。タクト・サカガミって言えばわかるか?」

「タクトって言うのね。私はサリア・ルシュレ。ルズニカ魔法学園の二年生よ。」

手を拓斗に差し出す。拓斗はその手を握り握手をする。

「それで、私は聞きたいことが山ほどあるんだけどいいかしら?」

「おう。それはお互い様だ。」

そして拓斗は自分の素性や本使えるようになった魔法のことを話した。

うんうんと頷いたり、よく分からないと言った表情になりながらもサリアは全て真剣に聞いていたのであった。

「なるほどね。タクトのことは大体わかったわ。次はタクトが私に質問しなさい。何でも答えてあげるわ。」

「それじゃあお言葉に甘えて聞かせてもらおうかな。先ずはこの世界について教えてくれ。」

「分かったわ。少し長くなるけどいいわね。」

「問題ない。」

これからサリアが語るのはこの世界、異世界で起きた歴史の話しであった。

「この世界、オリバルドは四つの国に分かれているの。北の国ノール、東の国オスタ、西の国ヴァリスト、そして私たちが今いるのが南の国スウェル。私は元々オスタ産まれで魔法学園に入る為にスウェルに来たの。魔法学園があるのはスウェルだけだったから大変だったわ。」

嫌な思い出を思い返したのか引きつった表情になるサリア。

「話しがズレたわね。次は歴史について話すわ。実はこの世界、一回滅亡しかけているのよ。」

サリアは真顔になる。どこか悲しそうな雰囲気を出しながらサリアは続けた。

「四匹の魔獣。その魔獣たちがこの世界を滅亡に追い込もうとしたわ。その魔獣相手にどんなに強い戦士も魔法使いも奴らの前では敗北したわ。誰一人として勝てなかった。だからその魔獣を封印することになったの。古来より封印に長けた一族の体に封印するということで話が纏まったわ。その一族はもう封印の力なんて使えなかったけど一族の血が封印する触媒となれた為、体に封印したの。封印された四人の兄弟は救世主と崇められたけど、それは一時の話だった。時間が経つにつれて兄弟を恨みだす人々が現れたわ。魔獣によって大切な人たちを奪われた人々は兄弟を恨み始めたの。そんな兄弟は始めの内は何も気にしていなかったのだけれどやがて追い詰められ、四人兄弟全員バラバラになった。これがこの世界で起きた最も有名で最も規模の大災害よ。」

語り終えたサリアは深呼吸をする。拓斗はその深呼吸に何の意味があるか分からなかったが、単に語りつかれたのだと受け取る。

「何か質問はある?」

「ある。その話はどれくらいの時期に起きた話なんだ?」

「私が五歳の時に起きた話だから十一年前ね。」

「結構最近だな。じゃあ今兄弟がどうなっているかとかは分かるかのか?」

「さぁね。誰も知らないみたいよ。質問は以上かしら?」

「あぁうん。」

特に聞きたいことも無くなった拓斗は迷いなく返事をする。しかしこの世界の歴史以上にサリアの事が気になる拓斗はサリアについて聞いてみることにした。

「ちなみにサリアは何人兄弟なんだ?」

「何?今の話しに影響されちゃった?残念だけど私は四人兄弟じゃなくて兄と妹が一人ずついる三人兄妹よ。」

話しが終わるとサリアは立ち上がり伸びをする。身体を伸ばし終えると保健室の机から大きな本を持ってくる。

「ほらこれ、タクトのグリモワールでしょ。」

「グリモワール?」

「そうよ。伝説の魔導書であるグリモワールを解読できたのが人間だったら皆納得でしょうね。」

そっとグリモワールを拓斗の膝に置く。

(やっべー・・・。誰のかも分からない伝説の魔導書を俺は勝手に持ち出したってことか・・・。)

「ほらそれ持ったらさっさと行くわよ。」

「行くって何処に?」

「寮よ。もう夕方だしそろそろ戻るわよ。」

そう言うわけで拓斗は怠い体に鞭を打ち身体を起こすのであった。そして保健室から出て行くサリアの後を追うのであった。


保健室から出て暫く歩き、決闘場を出て校舎を横切り数分歩くと校舎より大きな建物が見えてきた。

「あれが学生寮よ。カフェテリアや大浴場なんかもあるから自由に使いなさい。」

「金はかかるのか?」

「当たり前でしょ。でもこの学園は順位が30位以上である者から徐々に毎月貰えるお金が増えるわ。私17位だからそこそこお金はもらえているのよ。だから気にせず施設を使いなさい。」

(ヒモになった気分だな。金髪美少女のヒモになる・・・。なかなか悪くないかもな。)

そんなくだらないことを考えていると寮へ着いた。

階段を上がり部屋まで着くとサリアはカギを取り出し部屋の扉を開ける。

部屋はとても一人で使うには広い部屋であった。入り口のすぐ近くにはキッチンがあり、キッチンの正面にある扉はトイレで、トイレの隣の扉は浴室である。そしてそんなキッチンを抜けるとそこには十二畳程の大きな部屋があった。物は特に置いてなくある物と言えばクローゼットと机とベッドだけであろう。

「私は寝るわ。今日は疲れたし明日は授業もあるしね。寝袋はクローゼットの中にあるから適当に出してそこらへんで寝てね。それじゃお休み。」

ハンガーにブレザーとポンチョを掛けるとそのままベッドに倒れて寝てしまった。

(なんて無防備なんだ。俺が間違いを犯す人間だったらどうするつもりだ?まぁ紳士な俺はそんなことをするつもりは微塵もないがな。)

単に度胸がないだけの名だけ紳士はクローゼットから寝袋を出して横になるのであった。

しかしここで拓斗は重大なことに気づく。

(やべぇ。さっきまで寝てたから寝れねぇ。)

拓斗が眠りにつけたのは数時間後のことであった。

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