最後の作戦
爆炎が辺りを熱気で包み込む。
息を吸うだけで喉まで焼き尽くされてしまいそうなその熱の中二人の男はひたすら逃げ回っていた。
「おい!なんか打開策ないのかよ!?」
数分前まで息切れ一つしていなかっただが、余裕と体力のなくなってきたフルガナの表情を見て拓斗は言う。
「ないことはないけど・・・・・賭けだよ?」
最後の打開策を提案するフルガナに拓斗は強く頷いた。
「可能性があるならそれに賭けるしかないだろ。」
「じゃあ任せるよ人間。」
そう言うとフルガナは最後の力を振り絞り、ネルディハの周りを連続で瞬間移動する。
「ほう?その程度の目くらましでどうにかなるとでも?」
何処から攻撃が来てもいいようにブリューナクを構え直す。
「じゃあ防いでみなよ!!」
瞬間移動でネルディハの頭上に現れたフルガナは剣を振り下ろす。
「甘い!」
ブリューナクを頭上に構えフルガナが振り下ろした剣を防ごうと待ち構える。
「甘いのはそっちじゃない?」
ブリューナクを頭上に構えた瞬間フルガナはネルディハの正面に瞬間移動し、横薙ぎに剣を振るう。
「その程度の技で勝てると思うなッ!」
頭上に向けて構えていたブリューナクを一瞬にして正面に振り下ろす。
あと数センチでフルガナを貫くといったところでネルディハの動きが止まる。
その身体には氷の鎖が幾つも絡みついていた。
「ニヴルヘイムだけが俺の魔法じゃない。」
ネルディハは拓斗の声のする方を睨みつける。
「そしてこれが俺の新しい魔法だ!!」
冷気が拓斗の周りを包み込み始める。
「ウィジェニ!!」
魔法を唱えるとネルディハの周りを冷気が包み込み鳥籠型の氷の牢が現れる。
「随分地味な魔法だねぇ。」
「うるせぇ。」
茶々を入れてくるフルガナ。
「邪魔が入ったけどこれで終わりだ。グラーシア!」
三本現れた氷柱はネルディハ目掛けて真っ直ぐ飛んでいく。
「考えは悪くなかったな、だが詰めが甘い。」
ブリューナクから発生られる炎は氷の鎖と牢を少しずつ溶かし、ある程度溶けたところを力技で氷を砕く。
「本命はこっちだよ。」
フルガナはネルディハの真上を指差す。
そこにはフルガナの先程まで握っていた剣があり、一直線にネルディハに落ちていく。
「子供でも思いつきそうな雑な作戦だ。」
落ちてきた剣を弾く。
「ならこれを避けてみなよ。」
剣に注意が向かっていたネルディハの目の前に瞬間移動し、懐から短剣を取り出しネルディハの腹を貫く。
「ッ!!」
刺された傷口から血が溢れ出す。
「俺たちは策士じゃないからね。何個も裏をかくことぐらいしかできないのさ。」
短剣を腹から抜き、次は胸に向け狙いを定める。
「じゃあね。」
二人が勝ちを確信した瞬間であった。
「そうはいかねぇな。」
フルガナの影からシュトルが現れ短剣を弾く。
その光景に二人は驚きを隠せない。
「ここでネルディハに死んでもらうわけにはいかないんでね。」
倒れるネルディハを担ぎ建物の屋根を走り去っていくのであった。
「逃がしません。」
竜巻を起こしシュトルとネルディハを同時に殺そうとするが簡単に避けられる。
「舞台は整ってるから早く来いよ。」
そう言って走り去っていくのであった。
戦闘終了から数時間、オスタの城下町内では宿が取れない拓斗たちは、騒ぎのなか城下町の外れにある古い民家が幾つかある場所の中廃墟を探し、そこで一夜を過ごすのであった。
そして城下町で受けた襲撃から一日経った朝、五人は一か所に集まっていた。
「タクト様お怪我はいかがでしょうか?」
「お、おう?」
いつもより積極的なセレシアの態度に若干押されながらも拓斗は返事を返す。
そんなセレシアを見て拓斗はエルに耳打ちする。
「俺なんかセレシアにしたか?身に覚えは全くないんだが?」
するとエルはニコニコして答えた。
「セレシアは精霊族の中でも特殊でね。精霊族の始祖直属の血族にあたる古代精霊族って言う種族なんだ。」
エルがセレシアの事を話しているとセレシアは恥ずかしいのか、顔を赤らめてもじもじとしている。
「それが俺となんか関係あるのか?」
話の繋がりが見えないため質問する。
「そりゃ大アリだよ。古代精霊族を含める全精霊族は人間に仕えていたんだ。なんでも、始祖である精霊族が何度も人間に救われ、その後の精霊族も何度も人間に世話になったのが始まりらしいよ。」
そんな繋がりがあったのかと驚く拓斗。
「今となってはその伝説を知っているのは古代精霊族と極僅かな精霊族だけなんです。」
セレシアは補足を加える。
「それで人間がまた見つかったからそれに仕えようとしていると?」
「そういうわけ。」
エルは肯定する。
「あの、その・・・・ご迷惑でしょうか?」
涙を一杯目に溜め上目使いで拓斗を見上げるセレシア。
「え・・あ・・・そ、そんなことは・・・・ないかな。」
拓斗に対してそれは効果抜群だったようで、否定するという言葉は一切思いつかなかった。
「それでは今後お手伝いしてもよろしいでしょうか?」
「う、うん。」
拓斗は気恥ずかしさから消えそうな声で言う。
「タクトに仕えるのはいいけど君と契約しているのは誰なのか忘れないで欲しいな。」
意地悪な言い方をするエルにセレシアはジト目を向ける。
「なんなら今契約を破棄してもいいんですよ。」
「それだけは止めてください。」
綺麗な謝罪であった。
そんな茶番を見かねたアリエッタが大きな溜息をつき口を開いた。
「そこまでにしろ、時間は有限だからな。」
アリエッタのその言葉に先程までの空気は消え、引き締まったものへと変わる。
「残っている敵は二人に対しこちらは援軍を含め五人。しかもあちらは一人が負傷しているため攻めに出ることができない。」
「攻め時は今と。」
エルがそう言うとアリエッタは無言で頷いた。
「オスタの兵たちも敵に回ると勝ち目は相当薄くなる。」
「じゃあ二手に分かれるのが一番だね。」
フルガナはそう言ってエルの肩に手を乗せる。
「俺とこいつとその使い魔がオスタ軍を相手にして、君と人間があの二人を倒すって形がいいと思うよ。」
「そうだな。こちらにもう一人戦力が欲しいところではあるが、一国の軍相手に二人で時間稼ぎをするのは難しいか・・・。」
「正直三人でも逃げながらでもどれくらい稼げるかわかんないしね。」
不安要素のある作戦ではあるが全員がこの作戦に対し異論はなかった。
「決行は明日の夜だ充分に休息をとり各自明日に備えること。これで解散だ。」
明日の夜、サリアを救出する為の最後の作戦が始まる。




