歪みの始まり
戦況は一転する。
昨日の敵は今日の友と言うのは、まさにこの状況の事を言うのだろう。
「いやぁ随分やられたねぇ。」
フルガナは傷だらけで立つ拓斗に嫌味感の一切ない言葉で言う。
「うるせぇ・・・。」
「文句が言えるぐらいなら大丈夫か。」
フルガナは一切の隙を見せないネルディハの方を向く。
「君、随分強いみたいだけど僕ほどじゃないね。撤退するなら追わないけどどうする?」
挑発するような言葉。
「何を根拠に言っているがわからんが、撤退する気など毛頭ない。」
「じゃあ、さよなら。」
アヴェリガとそっと唱えネルディハと拓斗の視界から一瞬で消え、ネルディハの真後ろへと現れる。
首を狙った一閃はネルディハが体制を低くすることによって簡単に避けられるが、フルガナは無理な体制をとったネルディハに追い打ちをかけるが槍で弾かれる。
「次元が違いすぎる・・・。」
二人の動きは目で追えぬほどの速度でぶつかり合っている。
「へぇ、やっぱ見た目だけで決めるもんじゃないね。」
ぶつかりう中呑気にフルガナは言う。
「そういう貴様は期待外れだ。奇術師と呼ばれている貴様がこんな面倒なことをするとはな。」
「あら?バレた?」
二人の攻撃の手は止まる。
「手の内を探る、これが貴様の狙いだろ?」
鋭い眼光がフルガナを射抜く。
「貴様が自国に情報を回されると面倒なんでな、ここで消えてもらう。」
槍を片手に持ち替え逆手で持つ。投擲の構えだ。
「古代魔導兵器解放。」
周りの空気が熱を帯びる。
「天地を焼き尽くせ、太陽の神槍。」
解放された槍が黄金色に輝く。槍は劫火を纏い全てを溶かしつくしてしまいそうだ。
「さぁ古代魔導兵器の真髄を貴様らに見せてやろう。」
投擲された槍は一直線に拓斗とフルガナへ向かっていく。
しかしそんな投擲を見てフルガナは表情一つ変えずに拓斗を掴み瞬間移動をする。
「君はバカなの?瞬間移動ができる相手に大技が当たるわけないでしょ。」
「ほざけ、貴様が瞬間移動することは計算済みだ。」
投擲された槍は先程まで拓斗たちが立っていた地面に突き刺さると、地面から抜けネルディハの手の許へと戻っていく。
「貴様の瞬間移動、荷物を抱えたままだとあと何回使えるのだろうな。」
フルガナの立つ方向に槍を横薙ぎに払うと、フルガナの足元から炎が燃え盛る。
「太陽の神槍の真骨頂は投擲による破壊力ではなく、距離を無視した攻撃だ。」
その言葉を聞き拓斗はネルディハとの最初の戦闘で何もない場所から攻撃を受けたことを思い出す。
「こりゃ本格的に死ぬかもなぁ。」
拓斗を抱えるフルガナは小さく呟くのであった。
風を司る二人と仕込み刃の男はお互い出方を伺っている。
「エル、早くタクト様の許へと行きたいのですが。」
怒りを抑えきれないのかセレシアの周りは魔力が漏れていた。
「そうだね。さっさと片付けるのが良さそうだ。」
セレシアが何故拓斗にそこまで固執するかの理由を知るエルはセレシアの為に一撃で仕留めることを決意する。
「随分と余裕そうだな。」
腕以外に仕込まれた刃を全て地面に落とすという奇怪な行動をしながら言う。
「足元には気を付けろよ、まぁ気づくころには死んでいるだろうけどな。」
地面に落とされた仕込み刃は全て地面に沈んでいく、そしてその刃はセレシアの足元から現れる。
「セレシアッ!!」
エルが声を掛けたころにはもう遅かった。
無数の刃はセレシアの足元から上空に向かって飛んでいく。
「さらばだ哀れな精霊族よ。」
不敵な笑みを浮かべる。
「その言葉そっくりそのままお返しします。」
その言葉と共に鋭い風の渦が男の腹を大きく抉る。
「風で出来た分身を倒した程度で調子に乗らないでください。」
セレシアは不機嫌そうな顔で言う。
「漸くタクト様と話せる機会が、共に居れる機会が出来たのです。貴方如きに負けて邪魔されるわけにはいかないのです。」
竜巻を起こし男に止めを刺すのであった。
「そんなにタクトに会いたかったなら言えばよかったのに。」
エルは油断して、たった一撃で殺された男の居たところから目を逸らし言う。
「いえ、エルには感謝していますしこれ以上迷惑をかけるわけにもいきません。」
セレシアの顔には先程までの不機嫌そうな感じ一切なかった。
「それに、これは人間と精霊族の関係ですから。」
頬を赤く染めるセレシアを見て、エルは静かに溜息をつくのであった。
組織の頭と魔法学園の第二位が向かい合う空気は自然と重苦しいものであった。
ニヤニヤと戦うことを楽しみにしているシュトルの目は血に飢えていた。
「まるで血に飢えた狂犬だな。」
アリエッタは皮肉っぽく言う。
「飢えてて結構、古代魔導兵器の性質上これは仕方ないんでね。」
シュトルは剣を鞘にしまう。
「まぁお前をここで殺すわけにもいかないんでねぇ、攻撃するなら攻撃してきな、全部捌いてやるよ。」
挑発をするがアリエッタはそんな安い挑発には乗らない。
「貴様に敵意がないなら攻撃しても無駄なだけだ。」
拳を収め拓斗の許へ加勢しようとするがシュトルに呼び止められる。
「いいのか、ここで逃がしても?今俺を殺せば計画は止まるぜ?」
アリエッタは足を止める。
「分かってんだろ、アリエッタ・メニム?俺らの計画が分かっていて何もしないのは愚策じゃないのか?」
腕を組むシュトル。
「お前らの中で唯一俺らの計画に気づいてのはお前だけだ。まぁ仲間に言えるような話でもないしな。」
「何が言いたい?」
アリエッタは睨みを利かす。
「俺らの計画がバレた瞬間お前の仲間はサリア・ルシュレを殺そうとするだろうな、そんな状況の中一人きりで何ができる?仲間にサリア・ルシュレを殺されるより俺らがサリア・ルシュレを計画に使うことで少しでも長生きさせた方がいいんじゃないか?」
まるで組織に勧誘するかのような言葉を言う。
「貴様らを殺してサリア・ルシュレを助ける。簡単な話だ。」
そう言ってシュトルの前から立ち去るのであった。




