圧倒的戦力
熱が出てインフルかと思えばただの疲労による熱でした。
年末年始の疲労がここにきて爆発したって感じですね・・・。
皆さんもインフルや風邪が流行っているので、体調管理に気をつけてお過ごしください。
「まだ幼さの残る少女が相手とは俺も舐められたものだな。」
弓を構えた男は魔力で矢を生成する。
「さぁ獲物を出せ。加減はできんがそれぐらいは待ってやろう。」
この瞬間男は戦士としてセレシアを認識するのであった。
しかし武器どころか魔法を唱える素振りすら見せないセレシア。
「そこまで俺を舐めるかッ!!」
音速を超えた速さで放たれた矢は真っ直ぐセレシアに向かっていく。
微動だにしないセレシアに矢が今にも刺さりそうになった瞬間、セレシアの周りを暴風が吹き荒れる。
暴風は矢を全て弾き返し、セレシアは無傷で相変わらず微動だにしない。
「ようやく力を見せたか。風がお前の能力なら、お前が俺に勝つことは不可能だ。」
弦をギリギリと音が出るほど引き、勢いよく矢を放つ。
その矢はセレシアの纏う暴風を突き抜けセレシアの頬を掠める。
「次は頭を狙う。」
再び矢を生成する男は言う。
しかしセレシアはそんな男の言葉を聞くことはなく、頬から垂れる血をそっと拭い、血の付いた手の甲をじっと見る。
「・・・久しぶり。」
そんなセレシアの呟きなど男にとってはどうでもよく、矢は無慈悲に放たれた。
放たれた矢がセレシアの額を貫くかと思った瞬間、風によってセレシアの立つ前の地面が盛り上がり、セレシアの正面に壁を作る。
「器用なことをする小娘だな、風で防げぬとわかったら壁を作って防ぐか。」
壁は崩れ落ち、男とセレシアは再び向かい合う状態になる。
そんな中この戦いが始まってから初めてセレシアが口を開いた。
「これ以上やっても貴方に勝ち目はない。大人しく降参して。」
幼さの残る声は、セレシアの大人しく気品のある姿とはややギャップがあった。
「何を言うかと思えばそんな下らぬことか、調子に乗るなよ小娘。」
男が矢を放ち、セレシアが地面を抉り壁を作る。再び壁が矢を防ぐのかと思ったが、矢は壁を容赦なく貫通する。
音速を超えている矢をセレシアは咄嗟の判断で暴風により弾き飛ばす。
「貴方の能力は、何かを干渉させない能力を矢に付与させること。」
セレシアの言葉に男は反応を示す。
「この短時間で当てられるとはな、しかし少し間違っているぞ小娘。矢に能力を付与させるのは俺の能力じゃなくてこの弓の能力だ。俺たちは全員能力を持つ武器、古代魔導兵器の使い手だ。」
弓に矢を装填し、セレシアに向ける。
「能力を聞いたからには生かすわけにはいかない。ここで死んでい・・・」
男は言い切る前に身体に衝撃が走る。
男の身体には大きな十字の傷が出来ている。セレシアが放った風の刃が一瞬にして男を切り裂いたのだ。
「良い情報ありがとう。エルに教えなきゃ。」
前のめりに倒れる男は最後の力でセレシアに聞く。
「お、前・・・最初から・・・・手加減・・・を・・?」
溢れる血は男の絶命までの時間を現しているようであった。
「手加減?そんなの当たり前でしょ。いい事教えてくれたから私もいい事教えてあげる。」
セレシアの無表情な顔には凄みがあった。
「私は精霊族の始祖直属の血族、古代精霊族のセレシア。冥土の土産に覚えておいて。」
最後の言葉を聞き取るころには男の命は既に散っていた。
時は遡り、三人がそれぞれの相手と相対していた頃。
アリエッタは細身の男と会話をすることなく突っ込んでいった。
しかしそんな分かりやすい力任せの攻撃は、細身の男の身長を優に超える斧で防がれる。
「勢いは認めるが、それじゃあ俺には勝てないぞ。」
細身の身体からはあり得ない力で斧を振りアリエッタとの距離をとる。
「楽しませてく・・・・がッ!!?」
細身の男は血反吐を吐き出す。力なく斧を手放し崩れ落ちそうになるが、腹を貫通するアリエッタの手がそれをさせない。
「き、さま・・・いつ・・のまに・・・ッッ!!?」
徐々に視界が暗くなっていく細身の男が最後に見たのは純粋な憎悪と殺意の籠ったアリエッタの目であった。
「通過点如きが私の前に立つな。」
アリエッタの言葉と共に細身の男はアリエッタの手から放たれた衝撃波で街の奥へと吹き飛ばされるのであった。
三人の圧倒的な戦力の前に拓斗は開いた口が塞がらない。
そして同時に今まで持っていた不安は掻き消え、サリア救出が本当に成功するのではないかという自信が僅かなものから大きなものへと変化していくのであった。
その日の夜。街は騒がしくなったが、拓斗たちは宿にさっさと戻り戦闘で得た情報を共有するのであった。
「古代魔導兵器か・・・。聞いたことない言葉だな。」
エルはセレシアが持ってきた最重要情報に興味を持つ。
「残念だが私も聞き覚えはない。」
アリエッタもお手上げといった状態である。
「俺も聞いたことないな。」
当然ながら拓斗が知るわけもない。
そして四人全員が分からないとなると、消去法で四人の目はエルが確保してきた捕虜である青髪の青年へと向けられるのであった。
「おいお前、知っていることを全部話せ、そうしたら今なら半殺しで済ませてやる。」
縄で縛られている青髪の青年の胸倉を掴み上げ脅す。
「話さないって言ったら?」
青髪の青年はアリエッタを挑発する。
「吐き出すまで半殺しにしてやる。」
どっちにしろ半殺しにされる青髪の青年に未来はないも同然であった。
「・・・・しゃーねぇ。俺も組織に思い入れはねぇからな。俺が知ってることだけ教えてやるよ。」
青髪の青年はニヤリと口元を歪めた。
「俺の背中を見な。」
言われた通りにエルが服とローブを捲り背中を見る。
そこには背中を埋め尽くすほど大きなローマ数字で七と書いてあった。
「これは俺たち組織のメンバーの強さを表す数字になってる。俺は最下位に七番って訳だ。ちなみに弓を使ってたやつは六番、斧を使ってたやつは五番だ。」
そのとき拓斗の脳にネルディハが横切った。
「ネルディハは、ネルディハは何番目なんだ!?」
拓斗の質問に青髪の青年は思い出したかのように言う。
「ネルディハぁ?あの槍使いは確か三番だぜ。何だお前ネルディハが戦ったって言う人間か?」
拓斗は頷く。
「ネルディハ如きに人間が負けるとはねぇ。今のお前じゃあの嬢ちゃんを救えねぇな。」
拓斗は血の気が引いていくのを感じた。
「いやぁあの嬢ちゃんは、なかなか好みだったぜぇ。切り裂いたらいい声で鳴いただろうなぁ。」
不敵な笑みを浮かべる青髪の青年。
拓斗は怒りに身体を震わせ、今にも殴り掛かりそうであったが拓斗よりも先にアリエッタが動いた。
「これ以上口を開くな。半殺しにしている途中に話されちゃ煩くて本気で殺してしまいそうだ。」
そこからはアリエッタの一方的な暴行であった。ただ半殺しにするというよりは、何かを貶されたことへの怒りをぶつけるようであった。
次の日の早朝。早朝にも関わらず外出していたアリエッタが宿に帰ってきた。
「何しに行ってたんだ?」
拓斗が朝早くから宿を出て行ったアリエッタに聞く。
「なに、ゴミを街の外まで捨てに行っていただけだ。」
その言葉にアリエッタを除く三人は察しがつき、あえて何も言わずに馬車に乗り込むのであった。




