中間地点
街に出た四人はオスタ行きの馬車を探し出し、絶賛移動中であった。
馬車から見える外の景色は、街を離れるにつれ田舎になっていく。そんな景色を四人は何の会話もすることなく眺めている。
(サリア・・・。)
自分の実力不足でサリアを攫われた拓斗は窓に映る自分を睨みつけていた。
拓斗の持ち得る最強魔法の永久凍土の世界をいとも簡単に攻略されたあの戦いを思い出すと自然に奥歯へと力が入る。
最強の魔法を使ったうえでの敗北をしておいて自分は次に会ったときに勝てるのだろうか?数日程度で実力が変わると思えない拓斗はネルディハとの再戦に恐怖を覚えていた。
そんな中エルが何かに感づいたのか拓斗に声を掛ける。
「そんなに心配することはないよ。僕とセレシアとアリエッタがいるんだ。簡単に負けるわけないよ。」
二位と三位とその使い魔が今回は味方に居る。他の者が見れば、何を倒しに行くんだと口をそろえて言うだろうが、拓斗には未だに不安しかなかった。
「そろそろ街にも着くし、降りる支度でもしようか。」
オスタに行く時に多くの者が使う中継地点である街が馬車の中からも見えてきた。
その街で一泊して朝早いオスタの城下町行きの馬車に乗れば昼前には着くのである。
「明日は決戦だし直ぐに宿を取ろうか。」
それぞれの想いを胸に街へと入って行くのであった。
街に着いた頃には既に日は落ち始めていた。辺りは茜色に染まり、神秘的な空間を生み出していた。
四人は宿を数軒回り、ようやく一軒四人で泊まれる宿を見つけたのであった。
そんな四人が夕飯を食べようと宿を出た瞬間、エルとセレシアが飛び上がる。
エルとセレシアが数秒前まで立っていた地面は抉れていた。
「避けられてんじゃねぇかよ旦那ぁ。」
宿から五軒ほど離れた建物の屋根の上から黒いローブを羽織り、青い髪をツンツンに立たせた青年は言う。
「簡単にはとれぬということだな。」
同じく黒いローブを羽織った口髭と顎髭を綺麗に纏めた男が言う。その手には黒く禍々しい弓が握られていた。
「あの格好はッ!?」
ネルディハと同じ格好をする二人を見て拓斗は構える。
「一発で取れなかったか、だがお前たちの命はここまでだ。」
黒いローブを着た細身の身体の男が建物の陰から現れる。
「誰からやってもいいんだよな!?」
興奮を隠しきれない青髪の青年は細身で後ろ髪を縛った男に詰め寄って聞く。
「ああ、潰せ。」
その指令と共に青髪の青年は一瞬で手に二本の短剣を握り、拓斗たちとの距離を詰める。
「ヒャッハーッ!!狩りの時間の始まりだぁッッ!!!」
迫りくる青髪の青年に拓斗は迎撃の姿勢をとるが、エルが拓斗の前に立ちそれを止める。
「馬車の中ではまだ不服そうだったからね。ここでじっくり僕たちの実力を見ていくといいよ。」
エル、セレシア、アリエッタが拓斗よりも前にたち完全に戦闘の態勢に入る。
「ふん、三位とその使い魔は青髪と弓使いを何とかしろ。私はあの細身を倒す。」
アリエッタはそう言い残し地面を蹴る。蹴られた地面はクレーターが出来ていた。
「勝手に決めるなんてアリエッタも困ったもんだ。セレシア、君は弓使いを頼むよ。」
無言でセレシアは頷き、放たれる矢を避けながら弓使いの男との距離を縮めだす。
二人がエルの許を離れると青髪の青年はもう目の前へと来ていた。
「貰ったぁぁぁぁああッッ!!!」
二本の短剣で完全に首を捕らえた青髪の青年は何の躊躇もなく短剣を振るう。
「ヴィジェリア。」
突風がエルを中心に吹き荒れる。
その突風は振るわれた短剣が首に届く前に青髪の青年ごと吹き飛ばす。
「ラマデビド。」
吹き荒れた突風から風の刃が青髪の青年に放たれる。
「ヒヒッ!!」
青髪の青年は風の刃を全て間一髪で避けエルへ再び接近する。
その顔は狂気に満ち、獲物の事しか眼中にないようであった。
「全部避けきるのは意外だな。でも今の魔法は挨拶みたいなものさ。」
突風、いや、もはや暴風のレベルに達している風が吹き荒れる。
「今から情けを掛けるつもりはないよ。」
細い竜巻が青髪の青年の両側から現れ、挟むように接近する。
「ゲヒヒッ!!」
自分を挟み込もうとする竜巻を間一髪で避け、両手に握られた短剣をエルに向けて投げつける。
その短剣は風に飲まれ飛んでいくと思われたが、短剣は風の中を突っ切りエルの両側から襲い掛かる。
エルは驚きを見せるが、至って冷静である。
「ラマデビド。」
先程とは比べ物にならない程の風の刃は全て短剣に向けて放たれる。
短剣と風の刃が甲高い金属音を鳴らしながらぶつかり合う。
しかし短剣が風の刃で止まることはない。そしてそのままその短剣は二本ともエルを切り裂いた。
「ハッハぁぁ!!致命傷だぜぇ!!」
青髪の青年は大声で笑い出す。
「喜ぶのは早いよ。」
生きているはずのないエルの声に青髪の青年は咄嗟に振り返る。
しかし振り返った瞬間、脇腹が撃ち抜かれる。
「ラマデビドは刃だけじゃなくて弾丸にもなるんだ。」
余裕の笑みを浮かべた無傷のエルがそこには立っていた。
「あぁぁぁぁッッ!!!!お前!お前何で生きてんだよ!!!俺の短剣は必中の筈なのにッ!!」
痛みに悲鳴を上げる青髪の青年。
「残念ながら君が切り裂いたのは風分身だよ。ラマデビド。」
エルはそう言うと風の弾丸で両足と両腕を撃ち抜く。
青髪の青年は先程よりも大きく言葉にならない悲鳴を上げる。
「動きは止めさせてもらう。話を聞くためにここで殺すわけにはいかないからね。」
相手が痛みのあまり気を失うのを見届けたエルは吹き荒れる風を収めるのであった。
「ぐあああああッッ!!!」
瀕死の身体を動かし、エルの首に噛みつきにかかる。
「そんなことだろうとは思ったよ。」
余分に一発分取っておいた風の弾丸を青髪の青年の眉間に直撃させる。
「気絶する程度だから、そのままおやすみ。」
今までの身体を貫いていた弾丸とは違い、威力の落とした風の弾丸を眉間に直撃させることによって気絶させるのであった。
「二人は心配ないかな。」
戦闘の終了したアリエッタと押しているセレシアを見てエルは呟くのであった。




