急襲
学園内にある客人を招き入れる部屋の中で学園側の三人と王様側三人で向き合っている。
「それで、今回は何用で我が学園に?」
面子が面子なので重圧の空間の中、学園長がダーゲルトに問いを投げかける。
「そんなこと言うまでもないだろう。神族と魔族は今までに数えるほどではあるが事例があった、しかし人間がこの世界に召喚されたのは初めてだ。」
ダーゲルトは判り切ったことを聞くなとさっさと本題に入ろうとする。
しかし学園側も中立の立場であり、何より自分の学園の生徒が使役する使い魔を易々と出すわけにもいかないのである。
「あなた方が珍しい人間を見に行く分にはこちら側としては問題ありません。」
ダーゲルト側を脅すように学園側の三人は殺気を漏らす。
「しかし我が学園の生徒に手を出した場合はそれなりの処置をとります。」
溢れ出す殺気にダーゲルトは情けない声を挙げて怯え、後ろに立つ二人は冷や汗をかく。常人であったら失神してもおかしくない程の殺気に冷や汗だけで済んでいるフルガナとキリュハはなかなかの実力者であろう。
「ひー怖い怖い。」
どんな状況でもどんな場所でもへらへらとしているフルガナ。
あまりにも場違いなその態度にフルガナをキリュハが睨みつける。
「それでは我々も予定があるので、くれぐれも騒ぎを起こさずにお願いします。」
学園長は立ち上がり部屋から出ていくのであった。
「後をつけるように。」
部屋を出て直ぐ、学園長はデルベに耳打ちをする。デルベは小さく頷くと無言で学園長とは別の方へと歩き始めた。
学園長たちが部屋を出て行った直後、部屋に残された三人は部屋から出ていく。
「ここからは二組に分かれる。私とキリュハ、フルガナは別行動。人間に会ったら分かっているな?」
ダーゲルトがこの学園に来た理由それは・・・
「「人間との戦闘を始める。」」
フルガナとキリュハの回答が見事に被る。
「よし、行くぞ。」
二人組と一人による別行動を始めるのであった。
しかしそんな三人をデルベが見逃すわけもなくダーゲルトとキリュハの後を追う。
(二手に分かれて何をするつもりだ?)
柱を巧みに使い姿を隠しつつ移動するデルベは、軍人時代に戻ったようであった。
フルガナは二人と別れると最初は学園の庭に出ることにした。
「あっれーおかしいなー。さっきはここに誰か居たのになぁ。」
フルガナが現在来ている場所は、先程まで拓斗たちがダーゲルトを覗いていた場所であった。
「どこ行ったのかなぁ・・・。早く見つけないとダーゲルト様に怒られちゃうしなぁ。」
ぶらぶらと独り言を呟きながら拓斗たちを探し始める。
現在生徒たちは授業中で付近に生徒がいない為、周りに声が良く響く。
「カフェテリアかな?」
フルガナの唐突な直観は見事なまでに的中していた。
ダーゲルトたちを観察し終えた拓斗たちは自分たちが狙われていることに気付くことはなく、悠々と雑談をしているのであった。
「楽しみだなぁー、人間。」
軽やかなステップを踏むような足取りでカフェテリアに足を運ぶ。
校内の階段を上り、徐々にカフェテリアに近づいていく。
「もうすぐかな。」
角を曲がりカフェテリアの入り口に立つ。
フルガナの視線の先には拓斗たちがいる。
「見つけた。」
その瞬間拓斗は不敵な笑みを浮かべるフルガナに気づく。
嫌な予感が拓斗の中を駆け巡る。
「避けろ!!」
拓斗が座っている全員に声を掛けると、全員はフルガナの存在に気づき席を咄嗟に離れる。
すると先程まで拓斗たちが座っていた席の上からカフェテリアに常備されている椅子と机が落ちてくる。
「あー流石に避けれれるかー。」
片手で頭を掻きながら呑気に言うフルガナ。
そんなフルガナに対して戦闘態勢に入る拓斗たち。
「いきなり何すんだ!!」
いきなり攻撃を仕掛けてきたフルガナに向け敵意を向ける拓斗。
「おーおーそんな怒んなって、挨拶みたいなもんだろ?」
敵意を向けてくる拓斗に対して宥めるように言うフルガナ。
「そんなことよりも人間ってどいつ?そこの女の子?」
イヴに向けて視線を向ける。
「アヴェリガ。」
拓斗たちの視界からフルガナが消える。そして次の瞬間イヴの前に現れたフルガナが右手に剣を握り、イヴめがけて縦一文字に振り下ろす。
「イヴ様!!」
突然の行動に対応しきれないイヴを押す。
イヴを押したリリアは当然避けられる訳もなく剣による攻撃を直撃で受けた。
「え、リリア・・・?」
イヴが気づいたときには目の前に鮮血が舞っていた。
リリアはイヴの前に倒れる。
「ねぇ・・・返事を、返事をしてくださいよリリア。」
身体を震わせてリリアの倒れる横に近寄る。
拓斗とサリアはあまりにも突然の出来事に頭が追い付かない。
「あっちゃーどっちもハズレかー。残念だな。」
剣についた血を払いながら言う。
あまりにも呑気すぎるその姿には狂気すら感じる。
「リハリング!」
イヴが魔法を唱えると魔法陣から現れた水がリリアの傷を包む。
「死なないで、死なないでリリアぁ・・・。」
涙を流しながらリリアを治療しはじめる。
するとフルガナ目掛けて氷の槍が放たれ直撃する。
「サリア、イヴの傍を離れるなよ。」
氷の槍を放った張本人は目に見えるほど怒りを溢れ出させていた。
「こいつは俺が倒す!!」
リリアを傷つけられ、怒りを滲ませる拓斗は氷の槍が放たれた先を見る。そこには何事もなかったかのように立って不敵な笑みを浮かべるフルガナの姿があった。
「この感じだと君が人間ってことでいいのかな?」
剣を拓斗に向けて質問する。
「ああ、そうだ。」
拓斗も魔法を唱える準備をする。
「じゃあ始めよっか。」
そう言うと先程と同じようにフルガナは姿を消し、拓斗の背後に現れる。
「ッ!!?」
突然背後に現れたフルガナは剣を拓斗に向けて振るうが、咄嗟に氷を生成することによって何とか防ぎきる。
「流石にこの程度じゃ傷一つつけられないかー。」
フルガナは呑気に剣を弄りながら言う。
そんな剣を弄るフルガナなど拓斗は眼中になく、今拓斗は負傷しているリリアがいるこの場からどう移るかを考えていた。
「よそ見はいけないよ。」
一瞬にしてフルガナが拓斗の目の前に現れる。
(マズイッ!!)
先程よりも威力の上がった攻撃を何とか氷を生成して防ぎきるが、そのままカフェテリアの窓から外に突き落とされる。
芝生に落ちた拓斗は体制を立て直すと当たりを見渡すと、突然自分の三メートルほど先にフルガナが現れる。
「今のも防いじゃうかー。割と本気でやったんだけど防ぐ当たり流石人間ってところかな。」
へらへらとした態度で言う。
「それじゃあ周りに邪魔者もいないし本気で戦おうか。」
フルガナの狂気じみた笑みに拓斗は恐怖を覚えるのであった。




