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サイキックダンジョン探索  作者: サンバルカン
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 六月の月末ゼミは散々だった。どうやら自身の到達階層は役所で証明書みたいのを持ってこないといけなかったようで、それを知らなかったので口頭で告げようとしたらこんこんと説明されてしまった。


 今後忘れないようにしてね、と注意されたが声を大にして知らなかっただけだと叫びたかった。しかしそれはできない。知らないことは悪なのだ。知らなかった、が免罪符になるのはせいぜい中学までだろう。大人なら知らなかったでは済まされないのだ。


 そしてゼミの中での階層到達数が優秀な者には授業を受けさせて、優秀じゃない者はその時間からダンジョンに行くように言われる。俺は当然ダンジョンに行くように言われた。こうなると授業をむかつくとかなんとか言っていた割に悔しいものがある。


 今は七月も終わりに近く、ゼミに到達階層の証明書を置いてきた帰りだ。前期の授業は今日で全部終わりで、もう俺は夏休みだ。七月のゼミは夏休み中に行われる合宿(これも優秀者のみが参加を許される。俺は当然除外されている)の打合せとのことで証明書だけ提出して解散だった。


 そういった事情があって本来ならゼミの時間なのだがダンジョンの中にいる。ここで、この数か月で変化したことを教えよう。ズバリ椅子である。


 何のことかわからないだろうから説明を加えると、俺はホームセンターで売っているアウトドア用の折りたたみ式チェアーに座りながらダンジョン探索をしているのだ。座ったままどうやるんだと思うかもしれないがそれを可能にするのが念動力である。


 ある時思ったのだ。殴ったり拘束したりするためにしか使っていない第三の手であるが何か他に使い道はないものかと。

最初は買ってから全く使っていないナイフを持たせて振り回したのだが殴ったほうが早いという結論に至った。

次に思いついたのは俺自身を持って運べばいいじゃないかという案である。空中浮遊して空が飛べるという喜びがあるのだが、長時間飛んでいると持たれているところが痛くなってくるので別の方法を考えた。それが椅子である。


 椅子についても試行錯誤した。中学や高校で教師が使っているようなローラー付きの椅子にしようかと考えたがローラースケートがダンジョンに適さない理由を思い出し、二千円くらいの今使っている椅子を買ったのだ。

実際の運用方法は、四脚の間に空気の球を作り椅子をその上に乗せる。

そして浮いている椅子を第三の手で押す。

球も椅子に合わせて移動させる。

というお手軽な方法だ。これによってダンジョンの踏破速度が段違いに上がった。殲滅速度はもともと狼を倒した時点で問題ないレベルまで上昇しているので結果として金稼ぎが楽になっている。モンスターが落したエネルギーも椅子から降りないで第三の手で拾えるし、念動力様々だ。


 あのお面も地味に便利だ。椅子の速度が結構速いので風圧などもかなり強いのだがお面があることで風が目に入るということもない。


 移動速度と殲滅速度が上昇したことにより稼ぎも加速度的に上昇している。この調子なら夏休み中に金を返し終わることも不可能ではないんじゃないか?


 そんな陽気な思考を挟みつつもダンジョンを進む椅子を止めない。そうしてついにボス階層に到達した。


 ここは5072階層。さすがにボスエリアでは椅子から降りる。椅子を折りたたんでからボスエリアに侵入する。


 薄暗い天井から滑空しながら地面に降り立ったのは最初のボスと同じフクロウだ。しかしその強さはまるで比較にならない。


 橙色の瞳が輝く青い羽根を生やしたこのフクロウは様々な能力がある。このボスの鳴き声はかなり大きいらしく、まともに聞いてしまえばしばらく耳がバカになるだろうし、フクロウの吐くブレスは粘性が高いうえに謎の菌だらけで傷口に触れればたちまち激痛とともに爛れ落ちるという。


 何よりも注意すべきなのが爆破である。橙の瞳の向く先に中規模の爆破を巻き起こす攻撃があるらしい。


 このボスの名は、ジーバーンオウル。現在確認されている中では一番低い階層にいるフクロウだ。


「クヮァアアァァァァ!!!」


 さっそく叫び声を上げるフクロウであるが耳は塞いでいるので致命的ではない。いや、両手を頭の横に持ってくるという行動は普通なら致命的な隙になるのだろうが、能力があるなら別だ。手がふさがっていても能力で攻撃したらいい。


「うるせぇ!」


 耳をふさいだといってもうるさくないわけではない。耳をふさいだにも拘らずかなりのうるささがあったのだ。このフクロウは何となくむかつく顔をしている。なんだか目がにやついているようにも見えるし口元も笑っているように見えるのだ。数々の行動がウザったいこともあってかなりの人物に嫌われているといっても過言ではないだろう。フクロウアンチスレで誰一人としてかばうことのない存在といえば嫌われ具合がわかるだろうか。


 鳥系モンスターの共通点がある。基本的に耐久力が高いというわけではない鳥系モンスターは動きが三次元的な事と素早いことが厄介なのだ。つまり飛ばなきゃ弱いのである。


 フクロウが鳴いている間に伸ばした第三の手で翼を掴んで拘束する。不可視の第三の手に対してフクロウはやたらめったら暴れ回ったが振りほどくことができない。


 現状一番厄介なのは視線による爆破だ。後ろに回ったとしてもフクロウは首を回して後ろを向くことができる。それさえ封じれば後は固定砲台していれば終わる。


 ジタバタと地面で這いずるフクロウの頭を第三の手で掴んで地面にたたきつけるが未だに暴れることをやめない。土で作った網を投擲して余計動きづらくさせるが、フクロウの頭のほうに覆いかぶさった網は爆破で破壊される。


 しかし至近距離での爆破はフクロウ自身もダメージを受けたようで、抵抗が弱まっている。網を投げて破壊されるたびにフクロウがダメージを受けるのであれば効率がいいだろう。


 そのあとは網を投げ続け、フクロウが抵抗しなくなったのを見てから炎を投げつけているとフクロウが一際大きく鳴いた。


「ンゥアアァアァァァ!」


 そのまま体全体が点滅して三秒ほど後に周囲に酸性の液体をまき散らしながら自爆した。


 このフクロウが嫌われるのはこの液体も原因だ。これはブレスの時に吐き出すものと同じ菌がある上に酸性なので当たれば皮膚が爛れる。しかも装備品に当たろうものなら一気に腐食する。


 その上エネルギーを落とさない。探索者の嫌なことをこれでもかとやってくるクソみたいな敵だ。なんのためにこいつは存在しているんだ。でも探索者の足止めを考えるとこういうやつが多くあるべきなんだよなと考えて、こんなのがたくさん出てくるなんて地獄か何かかよと考えながら地上に戻る。


 フクロウは完全にうま味ゼロのモンスターだが倒さなきゃ下の階層に進めない。こいつにかかった時間は完全に稼ぎゼロだし、最後にまき散らす液体がローブにかかったら買い換えなくてはならないのでむしろ戦うだけ損だ。


 そういうこともあって、池袋ダンジョンでは一先ずジーバーンオウルが出る階層まで到達したら違うダンジョンに行くというのが定番らしい。戦ってせっかく買った装備が破損したらショックが大きいとかそういうレベルではないので戦わないことを選ぶのだとか。


 お金がほしい俺としてはまた一からダンジョンを降りていくのはこのダンジョンでの稼ぎより悪くなるだろうと予想がつくので、このまま池袋ダンジョンの探索を続けたいという理由からジーバーンオウルを倒した。今探索している階層より下の階層の情報はほとんどないが、それでも一体一体のエネルギー量は多いはずだ。浅い階層のモンスターを一から倒すよりは稼げると考えての行動だがはたして当たっているだろうか。


 明日池袋ダンジョンを探索をして、明後日は少し遠くのダンジョンに行ってみて稼ぎを比較しよう。


 換金額を眺めてにやにやしながらそんなことを考えた。

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