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【ガチ内政・科学無双】水の聖女と転生王女の異世界改革録~科学知識と政治力で、滅亡する王国の未来を変えてみせます~  作者: GOM


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第40話 想定外の強敵

「ガストン! 我らは神殿騎士団である! 警備員殺害容疑で逮捕する」


 一の鐘(午前四時)が鳴ると同時に、スラムに騎士の高らかな叫びが響く。

 

「な、なんだ! まだ日の出まえじゃねぇかぁ! ど、どうして、俺の居場所が分かった!? っていうか、殺しまでバレたのかよぉ」


「アンタ。文句言っている前に逃げるよ! 早く準備しな」


 薄汚れた毛布の中から、無精ひげの男と褐色肌の美女が裸で飛び出す。

 周囲から沢山の声が聞こえる事に気が付き、急ぎ衣服を身に着ける。


「ど、どうするんだよ、モルウェン。このままじゃ!」


 男は褐色肌の長耳(エルフ)族女性、モルウェンに泣きつく。

 元より下へ下へと流されがちな彼は、決断力にも欠け荒事にも向いていなかった。


「しょうがないね。この場でアイツ。魔王さまから拝領したアイアンゴーレムを起動する。ゴーレムが暴れる間に、とっとと逃げるよ」


 魔族帝国の間者として、王都での情報収集と破壊活動を担っていたモルウェン。

 遊びと情報収集のつもりでむつみ合った男と、情を交わし過ぎてしまっていた。


「ちきしょぉ。アタイも地に落ちたもんだ。こんなダメ男を斬り捨てられず、『草(スパイ)』失格だよ」


 自分に泣きつく情けない男を見ながら、モルウェンはため息を吐いた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「ティア、いよいよですわね。わたくしが、『余の顔を見忘れたか!?』を言えるタイミングあるのかしら?」


「あると良いですね、エッタ。うふふ。追い詰めましたよ、犯人さん。わたし、容赦しませんですわ」


「王女殿下、フォンティーアさま。くれぐれも指揮所から出ませぬようにしてくださいませ。ただの側仕えのワタシでは、どうにもならないですので」


 犯人宅らしき崩壊寸前の廃屋を沢山の騎士や兵士らが取り囲む。

 更には廃屋を見下ろせる場所には、火縄から煙を上げるマスケット銃やクロスボウを構えた狙撃兵が待ち構える。


 ……リッカは怖がりながらも、ついてきてくれたわ。セリーヌさんも、もちろん一緒。いつもとは違って完全武装。兜代わりのサークレットの他は金属鎧に身を固めているわ。緊張しているのか、剣の柄に手を置いたまま、無言なの。


「流石に冗談ですわよ、リッカ。王女たる自分の立場くらい分かっていますのよ。ティアも同じよね」


「も、もちろんです。ま、間違っても突撃なんてしません」


 ……エッタ、半分本気に見えたんだけど? わたしだって、自分がか弱い存在だってくらいは理解しているもん。遠距離魔術戦ならいざ知らず、接近戦は無理だよ。


 ということで、エッタとわたしは後方。

 廃屋がぎりぎり見える場所にある、スラム内の井戸がある広場に設置された指揮所に待機している。


 ……この場所は、ガルダさんの管理場所。今回はガルダさん経由で『盗賊ギルド』にも筋を通しているの。


 スラムや王都の下町で力を持つ盗賊ギルド。

 今回の主犯ガストンはギルドとは距離を置く者だったこともあり、彼の逮捕にギルドは協力的だった。

 もちろん、狙撃場所の家を借りる際に住民、家主やギルドには相応の金額を支払った。


 ……問題は、もう一人の魔法を使う女。褐色肌で緋色の眼を持つ珍しい風貌の美女だったらしいの。まさか、他国の工作員って線は無いよね?


「フォンティーアさま。司祭長さまの動きが変ですね。普通なら先陣切って突撃しそうなのに?」


 リッカの呟きに、彼女の視線の先を凝視する。


「あんな遠くなのに、よく見えるのね、リッカ。……確かに動かないわね。他の騎士たちもそう。最初の人たちが突入してから、結構時間がかかっているんだけど?」


「あの白くて金の彫刻(エングレービング)が彫られた鎧の人ですわよね、司祭長さま。確かに何か変だわ」


 王国最強とも呼ばれる英雄、「深紅の(クリムゾン・)戦巫女(メイデン)」。

 白く塗装された鎧が振り下ろしたメイスからの鮮血で真っ赤に染まるほどの激戦を戦い抜いた司祭長が、まったく動かない。

 明らかになんらかの異常事態が発生しているに違いない。


「さ、下がれ! 一旦、退避!!」


 廃屋から騎士らしき男性の大声が響く。

 それと同時に、廃屋を取り囲んだ者たちが急ぎ散開した。


「ふははは! 俺にはコイツ、アイアンゴーレムがいる。王国のクソ共、死ねぇ!」


 また別の男性の叫びがスラムに響く。

 それと同時に、廃屋が爆発するように吹き飛ぶ。


「嘘……。どうして、あんなモノがスラムにあるの?」

「殿下、ワ、ワタクシが命に代えて御身をお守りします」


 エッタが恐怖で、後ずさりをしながら呟く。

 セリーヌはエッタを背に庇うようにし、腰の剣を抜くが、その剣先は酷く震える。


「ティアちゃん……、怖い」

「リッカお姉ちゃん、大丈夫。わたしがお姉ちゃんを守るから」


 わたしはガタガタ震えるリッカの手を握り、視線は敵から目を離さない。


 昇る朝日を浴びて、キラキラと輝く銀色の巨人。

 廃屋から這い出したソレは剛腕を振り回し、周囲にいた兵士や騎士を小石のように吹き飛ばす。


「く!」


 司祭長は、金属巨人(ゴーレム)の剛腕を両手持ちのメイスで受け止めるが、勢いを殺しきれず地面を転がる。


「銃も効かないの? あ、ゴーレムって」

「あれは、タダの鉄の固まりですもの、エッタ。他の手を考えないとダメです」


 ……魔術書に書いてあったけど、金属ゴーレムって金属の塊に術をかけて動かすもの。黒色火薬の銃くらいじゃ、どうにもならないよ。


 狙撃隊からの銃撃も矢も、まったく効果がない。

 それどころか、ゴーレムが投げる瓦礫を受けて屋上から転げ落ちる姿も見える。


 わたしは自分の足がひどく震えるのを感じながら、対抗策を必死に考えた。

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さーてこのピンチをどう切り抜けますことやら。
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