第33話 事件捜査は想定外
「お忙しい中、お二人を神殿にお呼びして申し訳ありません。今日は王女殿下も加えてのお願いがありまして……」
「俺はいつでも、聖女の嬢ちゃんの頼みなら聞くぜ! 今回は何だい?」
「私を呼ぶという事は、物流か。それとも人手の確保かな、王女殿下、フォンティーアさま。かつての魔族大戦の英雄さままで御同席とは、実にただ事ではございませんね」
パジャマパーティという名の秘密会議を行った二日後。
神殿にエッタの他、スラムの事情に詳しいガルダと人手集めに定評がある港湾ギルド長のルナールを呼んだ。
……もちろん、エッタの警護はセリーヌさん。給仕はリッカお姉ちゃんに頼んだのだけど、何故か司祭長さままで同席しているの。
「詳しい事はティアから説明しますが、今回のお願いは最近多発しています工事現場での妨害工作に関する事ですの」
エッタが話し始めるが、工事現場でのアレコレをいきなり妨害工作と言い切る。
「殿下。貴女さまが言い切るという事は、明確な証拠があるのでしょうか? ただの偶然ではないですか? それに殿下が、危ない事に近づくことも無いと思いますが……」
「おい、ルナールの旦那。いつも慎重だが賢けぇアンタらしくもないな。殿下も嬢ちゃんも、見た目通りのガキじゃねぇ。これまでの本気を見りゃ確かさ。俺は信じるぜ」
エッタの言葉に、ルナールは疑いの目を見せ、逆にガルダは全面的に信じるという。
……ルナールさんってば、前から大胆だったり慎重だったり、妙な感じなのよねぇ。エッタを見る目が心配性のお爺ちゃんって感じなの。
「そこに関しましてはティアからの報告をお聞きくださいませ。ティア、頭の固いおじさまに手加減なしに説明してあげてくださいな」
「はい。了解致しました、殿下。うふふ。全力で説明なんて久しぶりなのぉ」
わたしは、準備していた書類を出し、ワクワクしながら説明を開始しようとした。
「ちょ! し、司祭長さま。すまんが、聖女さまを止めてくれぬか。また、あの詰め込みを食らうと私でも耐えられぬ!」
すると、ルナールが助けてと同席していた司祭長さまに泣きつくので、わたしは少々憤慨する。
「あら、うちのティアちゃんが化け物みたいにおっしゃるのは、さすがにわたくしでも怒りますわよ、ルナールさま。今回は素直に聞きましょう。そんなに長くならないでしょうし」
「こりゃぁ、面白れぇ。ルナールの旦那が悲鳴をあげるなんて、見ものだぜ!」
「司祭長さま、わたくしを支持して頂き、ありがとう存じます。ガルダさん、わたくしの本気を見ていてくださいませ!」
支持してくれた二人に感謝の言葉を告げ、わたしは本気モードで事件について解説を始めた。
「まず、最初の事件。工事現場の崩落ですが、現場には人為的破壊であった証拠が残っていました。それは矢板で、……」
◆ ◇ ◆ ◇
「あー、気持ちよかったわぁ」
「わ、私が悪うございましたぁ。た、確かにこれは意図的な破壊工作ですぅ」
「お、俺も悪かったぁ。ルナールの旦那、すまねぇ」
ルナール、わたしの説明で納得をしてくれたのだが、何故か半泣き。
更にガルダもすっかり腰を抜かしている。
わたしが本気とはいえ説明したくらいで、こうなるとは少々情けないのではないか?
「ティアちゃん、今回は少しやり過ぎと思いますよ。もう少しお手柔らかにです」
へとへとになったルナールにお茶を入れながら、わたしに苦言を呈するリッカ。
しかし、説明に手加減が必要というのが分からないので、残りの人に聞いてみた。
「そうなの、リッカお姉ちゃん? エッタ、セリーヌさん。それに司祭長さま、どう思いますか? わたし、やり過ぎちゃいましたか?」
「貴女。自覚が無いのが本当に怖いわ。ティア、恐るべし」
「ワタクシ、ノーコメントです。聖女さまにはお、恐れ多くて……」
「わたくし、少し甘く見ていました。今後、ティアちゃんには、本気の説明をさせないようにしないとですわ」
しかし、誰もがわたしから目をそらして困った顔なのに、わたしは首を傾げた。
「むむむ。何が悪かったんだろう?」
「ま、まあ。ルナールさまたちにはご納得いただいたので、ティアは一旦置いておいて。わたくしが話を先に進めますの」
わたしが納得する前に、エッタが話を纏め始めた。
時間が無駄になってもしょうがないので、彼女に話を任せる。
……むぅぅ。後でたっぷりエッタを問い詰めるの!
「ルナールさま、ガルダさまにお願いしたいのは、警備の人を準備して欲しいんです。工事現場を夜間見守るために」
「殿下の頼みでしたら、喜んでお受けします。聖女さまの『説明』で状況は理解しましたので」
「俺の方も了解だ。うちの若いもんで信用できる奴を配置しよう」
わたしの説明のおかげか、警備人員の配置を快諾してくれる二人。
わたしから視線を外すこと以外は、良かったと思う。
「ティア、いつまでふくれっ面なの? 可愛い顔が台無しよ。そんなに説明でケチつけられたのが嫌だったかしら?」
「むぅ! ふん、次こそは誰もが感動する説明を致しますわ!」
憤りが誰にも理解されない事に怒り、わたしは茶菓子を一気に口に放り込んだ。




