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【ガチ内政・科学無双】水の聖女と転生王女の異世界改革録~科学知識と政治力で、滅亡する王国の未来を変えてみせます~  作者: GOM


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第20話 地下水は想定外

「ティアちゃん。工事初日、お疲れ様でした。警備の方から聞きましたが、中々に好評だったみたいですわね」


「はい、司祭長さま。今回は、子どもたちが手伝ってくれましたので、上手く仕事が出来ましたわ」


 夕日が王都を照らす頃、掘った穴の周辺に立ち入り禁止のバリケードを設置。

 道具類を全部回収して、わたしは神殿に帰った。

 そしてお風呂に入って夕食後、司祭長さまの居室にて報告をしている。


「子どもが手伝って良かったとは、どういう事ですか?」


「はい、義母(かあ)さま。スラムの人々ですが、大人たちはわたし達に思うところがあるようです。勝手に自分たちが住む場所を荒らしに来たのだと。工事を見る目も、厳しい物でした。ですが、無邪気で好奇心いっぱいの子どもたちが来てくれましたので、道路を作る意味と、働けば食事がもらえる『飴と鞭』を上手く説明できましたわ」


 スラムの大人は、どうしても警戒しがちになる。

 自分たちの縄張りで何をしているのかは気になるが、聖女やら騎士団やらが綺麗ごとを訴えるのは、気に入らない。

 毎日、生きる為に食べ物やお金を必死に求めている自分たちを馬鹿にしているのかと。

 この辺りの事は、スラム出身のリッカに聞いて、どの世界でも同じだなと思った次第だ。


 ……少々ひねくれていても、子どもは興味の方が強いものね。ご飯あげたら、すっかりわたしに懐いて、一緒に仕事のお手伝いをしてくれたわ。リッカもニコニコね。


「……。なるほど、子どもの無邪気さが聖女さまの本心。誰が幸せになれるよう祈っている事をスラムの人々に知らせた、という感じかしら?」


「ま、まあ、そんな感じです。警戒しながら、お昼ご飯を食べに来た大人たちも、午後から穴掘りを手伝ってくださいました。明日以降も、お手伝いしてくれると嬉しいですね。あ、誰が働いたかは、割符を渡して個人確認に使っています」


 ……港湾ギルドでは日雇いだったので、誰が何日働いているかの確認は口頭だけだったんだけど、今回は他の商業ギルトのアイデアで割符を個人認証にしたの。


「それなら、良いわ。じゃあ、今日は早く寝て、明日も頑張ってね」


「はい、義母さま。では、おやすみなさいませ」


 満面の笑みのリッカを連れ、わたしは寝室に向かう。


「ティアちゃん、ありがとう……」


 背後から、小声で。

 でも、はっきりと感謝の言葉が聞こえてきた。


「いえいえ、リッカお姉ちゃんが嬉しそうだと、わたしも嬉しいんだもん」


 背中で手を組んで振り返り、わたしも答える。

 人の笑顔が増えるのが大好きだから。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「こ、これ、どうしますか、聖女さま」


「わたしも想定外ですわ。昨晩は、雨なんて降っていませんでしたよね。まさか、一晩で穴の上まで水でいっぱいになるなんて」


 二の鐘(午前七時)の音を聞いてから、神殿を出たわたし。

 工事現場であるスラムに向かうと、昨日掘っていた穴が底が見えない池になっていた。

 王都では雨など、夏前の今は殆ど降らない。

 となれば、この水は地下から湧いてきたとしか考えられない。


 ……崩れないように矢板を打っていたけど、二メートルも掘っていないのに、どうして?


「……あ! そういえば、昨日の工事が終わる前。掘った土が湿った砂になっていたってお話がありませんでしたか?」


「は、はい。スラムの作業員が、そんな事を申してました」


 工事での土壌状況のチェックが甘かった様だ。

 この世界では土壌ボーリングなど行わないから、地下の状況は実際に掘ってみないと分からない。


「あ! 聖女の姉ちゃん。ここ、井戸を掘ったらすぐに水が出るのを知らなかったのかよ? なんでも、元は川の中州だったって、父(とう)ちゃんから聞いたぜ」


 わたしが困惑していた時、昨日懐いてくれた男の子が、この地の地下水位が高い事を教えてくれた。


「あ、そうなんですか、リュカくん? 教えて頂き、ありがとう存じます。そうなら、工事手法も少しは考えないといけないですね。軟弱地盤の上に地下水位が高いとは……。土木ギルドでは、こんな時。どんな方法で工事を行いますか?」


「俺らでも、ここまで酷いのはあまりないなぁ。建物を建てるんなら木の杭を何本も埋め込んで地盤を固くするんだが……」


 ……向こう(前世)でも、確かビル工事の時は、鉄骨を地面に打ち込んでたよね。でも、道路に杭打ち込んでも効果は薄いし、工事が大変なだけだよね。


 池の周囲には、昨日の工事で見なかった獣人族の人々も多く集まる。

 昨日は警戒をしていたようだが、同じ獣人族のリッカがわたしの側仕えとして働いていたのを知り、差別されないと気が付いたのだろう。


「聖女の姉ちゃん。この水、汲みだしていいかい? 俺ら、飲み水にも困ってるんだ。井戸を掘るなってスラムの顔役がうるさいし、道具もねえんだよ」


 男の子、リュカくんは家から洗面器くらいのたらいを持ってきて、水を汲んで生活用水に使いたいと言い出す。

 確かに、スラム内には井戸は数個しかなく、そこでは顔役という人物が管理していると聞く。


 ……生意気坊主のリュカくん。わたしの三歳年下の可愛い子。身なりが薄汚れているけど、綺麗にしたら将来は美少年になりそうなね。


「そ、そうですねぇ。ただ、酷く濁ってますので、煮沸。お湯にしてから飲んでくださいね」


「もちろんさ。俺だって、生水を飲んだら病気になるってくらいは知っているし」


 ……顔役さんには工事前にお話を通したけど、中々にややこしそうな人なの。たぶん、ヤクザさんっぽいお仕事の方なんだろうね、


 水汲みの許可を出したので、嬉しそうにいそいそと「池」に向かうリュカ。

 周囲の大人たちも、リュカの行動を見て水汲みを始めた。


「今日は水があって、工事になりません。汲み上げた水は貴方がたが自由に使って良いとしますが、水を汲むのは仕事扱いにします。皆さま、宜しくお願いします」


 わたしは、好都合と水の汲みだしを仕事とした。

 元より排水しないと工事が進まないのだから。


「今後の対策かぁ。排水『ポンプ』なんて常時動かすのは出来ないし、溜まる水を何とかしないと工事も出来ないし……」


 早速ぶつかった問題。

 わたしは、異界現代知識のあるエッタと相談することに決めた。

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