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暁の薔薇の伝説~ゲームの始まる前に滅亡した国の王女に転生したので回避したいと思います~  作者: えとう蜜夏
第一章 覚醒編

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三十三 アラス様が皇太子、皇帝位へ

「どうやらフェンリルは見つからなかったらしい」


 晩餐の席でお父様が仰いました。何度目かの調査隊の結果は捗々しくなかったみたい。私は魔力が戻らないので大人しく城でお勉強をしている。


 お兄様は現場で状況説明に何度か行かれたようだった。


「ええ、父上。あれだけのモンスターがいたのですが静かなものでした。時間も経ったのでフェンリルも元に戻ったのではないかと思われます。そもそもあの樹海には生息していなかったはずなのです」


 ――そうよね。元冒険者のグレイヤードの手記にもそう書かれていたもの。それに『薔薇伝』の公式設定だってもっと北の山脈にいたはずなのよ。



 アラス様からも詳しく調査結果を知りたいとのことで何度かお手紙をいただいた。直接聞きにいらっしゃるかと思っているとどうも第一皇子の病状が悪化し、エードラム帝国から離れるのは難しいとのことだった。




 それから程なく第一皇子はお亡くなりになってしまった。


 そして、アラス様が正式に皇太子の地位に就くと発表された。エイリー・グレーネ王国からもお悔やみと祝いの使者を送ることになり、私からも細やかな贈り物を一緒に送った。


 本当なら婚約者として式に出席すべきなのだろうけどまだ幼いとのことでお許しを貰っている。だって、式典になんて出席すればどうなるか。そのまま婚約など無かったことにしてフェードアウトをするつもりですからね。





 そして、更に一年後の喪が明けるとともに皇太子、それから一年後に皇帝位へと就くことも帰ってきた使者から知らされた。まだ正式な発表はされていないから内密にということだろう。


 となるとアラス様は二十歳のときに皇帝位に就かれるということね。『薔薇伝』の公式設定とは四年の差が出来ている。今から二年後にはどうなっているのだろう。流石に皇帝位に就くのだから妃が必要よね。それまでに私達の婚約解消があるかもしれない。




 それからアラス様からはお忙しい中でもお手紙や贈り物は届いていた。私からもお返しと何度か婚約の解消を匂わすような文面を書いてみようとしたれど……。怒られそうなので止めておいた。


 私も体を鍛えたり、ファルク様の魔力回復薬を飲んで魔術の事を習ったりいろいろと忙しくていた。




 それから、一年はあっと言う間に過ぎて、アラス様は皇太子へとなり、その後半年は祝賀行事で多忙を極めていたようだった。


 そろそろ、何かのリアクションがあるかと期待したけれど逆に飛んでもなく高価なネックレスが贈られてきた。これも魔道具のようだと思う。


「でも実は婚約解消の手切れの品かしら?」


「姫様! 何ということを仰るのです。姫様は古き歴史のある並びなきエイリー・グレーネ王国の王女なのですよ。エードラム帝国のお妃には相応しい身分です。いい加減、正妃として立つ自覚をお持ちください」


 贈られた宝石の数々を眺めていた私に侍女のアナベルが仁王立ちになっていた。


「せ、はい?」 


「はい? ではございません。お覚悟をお決めください。時期が来ればお妃教育も始まりますよ」


 ――ちょっと待って! 私はエイリー・グレーネ王国の滅亡を阻止するために、闇の神々との最終決戦をする予定なの。エードラム帝国の妃になることはありえないと思うの。


 アナベルにそんなことは言えないのでぐっと我慢する羽目になった。




 そして、アラス様と最後にお会いしてから二年が過ぎようとしていた。


 私は今度十二歳になる。フォルティスお兄様は十四歳となられてますます公務でお忙しそうだった。部屋も王太子としての部屋に移ってしまったのでゆっくりとお話する機会は少なくなってしまった。


 来年、お兄様も十五歳になられると王立学園に通うようになる。そうなるとますます会う機会さえ無くなりそうだった。


 この二年で私も身長も伸びそれなりに成長していた。魔術の仕組みもしっかり学んだ。魔力回路の方は少し良くなったけれど全回復まではまだ治らない状態。





 そんなある日の晩餐の席で、


「新皇帝の戴冠式にはリルアの出席を要望されている」


 お父様が苦々し気な表情で仰った。


「普通はもっと早く伝えられますよね。私も予定がありますから調整をしなくてはいけませんわ。とても今は」


「……ずっと要請はあったが断っていた。断り続けるつもりだった」


「お父様。それは……」


「あなたはリルアを政略の駒にはさせないと仰っていたものね」


 お母様がため息をつかれていた。


「今でもそのつもりだ。だから、リルアはいつでも断って良いのだぞ」


「ええと良いのですか?」


 だけどアラス様とは気まずくなりますよね。だから向うから断ってくるのを待っているのです。


「――それは困るのだが」


 気がつけば、部屋の扉が開いてそこにはアラス様が立っていた。

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