三十四 アラス様のお迎え
「これはようこそ、いらっしゃいました。着いたばかりなのでお疲れだと思っていたのですが」
お父様はそう言うと席を立ちアラス様を迎えた。
「なあに、新型の魔道船ができたので造作もないことだ」
「まあ、魔道船ですの!」
私は晩餐のマナーもそっちのけでアラス様の話に声を上げてしまった。
「そうだ。そなたの提案で随分開発が進んで今回試作した船の処女航海でもあったのだ」
そう、驚いたことにこちらの船は馬車のように箱型だったのよ。見た目とか中の快適さを重視していたみたい。だからとても遅い。だから抵抗を少なくするため流線型のを提案してみたの。詳しい仕組みは分からないのけどね。でも、それで大分というか速度が上がって、更に帆船のことも話してみたのだ。
本来ならエイリー・グレーネ王国とエードラム帝国の片道は船旅も入れて尤に二月以上はかかる。
「リルアの拙いお話をさほどまで」
お父様はアラス様の話に感心していた。
お父様もお母様も私の話は理解できていない。昔、話そうとしたけれど子どもの戯言にように思われてしまった。そりゃそうよね。あと数年でエイリー・グレーネ王国は滅ぼされて、無くなってしまうなんて信じられないだろうし。まだ、古代ギリシャのカサンドラ王女のように殺されなかっただけでもましだと思わないとね。
お兄様は私のことを理解しようと努力してくれているのは感じていた。
「リルアは本当に凄いね」
「あら、今更ですか?」
私が無い胸を張って自慢げにするとフォルティスお兄様はにこりと笑って私の頭を撫でてくれた。まだまだ子ども扱いよね。お兄様は来年王立学園に入学するので上流社会へと認められることになる。だから周囲からはもう大人のような扱いをされるようになっているのよね。
使用人達が慌ててアラス様の席を用意したので再び晩餐は始まった。
「――それでは魔道船を使えば片道一週間ほどで着くのですか? それならここからアマゾナス国だって着けるかどうか。本当に素晴らしいですわね」
「海上の方が障害物はないので速度が出せるからだ。そなたの話した通りだった。それに今回は聖地の有る海洋諸国を通らない航路を開拓する目的もあったのだ」
アラス様はそう仰ると私に微笑んで見せた。
だって、大航海時代そうだったものよね。いろんな人が世界一周を目指して進歩していったのよ。ゲームの『薔薇伝』には転移門とか〇ーラとの呪文という便利なものは無かった。船や馬車はあったけど。
だから移動時間が掛かるのが地味に辛かった。移動時間が本当に曲者でイベントによっては同時にできないものもあったのだ。だから一周ではやりきれないものがあって何度もやり込むことになる。ただイベントをこなしているとそう戻る必要はない。それでもエードラム帝国や湿原の小国家はストーリーの進行上、行き来をせざるおえない。
「直接、エードラム帝国とエイリー・グレーネ王国が行き来するだと? それは大変なことになる。海洋諸国が黙ってはいまい」
お父様が驚きのあまり声を上げた。アラス様はそんなお父様に、
「そのようなこと。黙らせればよいのだ」
アラス様はまだ帝位に就いてはいないけれどもう風格とかそんなものが滲み出ていた。お父様、エイリー・グレーネ王国の国王を黙らせるほどのものが。
「……それにリルアはまだ幼い。体もまだ魔力が戻っておらず、エードラム帝国へ参ることなど」
「私の戴冠式にはリルア王女に側にいて欲しい。この戴冠式では正式にリルア王女が私の婚約者であることを発表するつもりである。それに王女には魔道船の開発状況も確認して欲しいのだ」
魔道船はとても気になりますが、エードラム帝国の皇帝の正式な婚約者になるのはちょっと困ります。だけどそんなことを言うと帝国と離反ということになるのはもっと困るし。




