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暁の薔薇の伝説~ゲームの始まる前に滅亡した国の王女に転生したので回避したいと思います~  作者: えとう蜜夏
第一章 覚醒編

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二十一 公式設定とのズレ

 正直、私の年齢から考えて、真面目に受け止めないと思っていたけれど、やはり世界を制覇するエードラム帝国の意向は無視できないようだった。


「まあ、これで、リルアの意に染まない相手の政略結婚は逃れられるだろう」


「一部の者達からは苦情がでそうですけどね」


 お父様とお母様が苦笑されていた。


 私は何となく自分の指にある指輪を眺めた。流石、エードラム魔道帝国の指輪。何と指に合うサイズに変わったのよ。だから今は私の左手の薬指にアラス様から貰った指輪がはめられている。


 私の婚約は内々で広められた。主に誰に対してとは言わないけれど。

 



 あれから直ぐ、マドラに会うと目聡く指輪まで確認された。


「王女様! 私という者がありながら、エードラムの皇子など!」


 そう叫んで指輪を奪おうとしたけれど、指輪にマドラが触れるや否や、


「ふんギャ!」


 バチッと火花が飛んでマドラが慌てて離れた。勿論私には別に何も痛みは無い。


「な、なな、何ですか? 今のは!」


 マドラは忌々し気に指輪を睨みつけるだけだった。


 ――へえ。便利な指輪ね。流石エードラム帝国の物だわ。これでマドラも迂闊に私に近寄ってこられないわね。アラス様には感謝しかない。名を使えと言いつつこうして物理的にも使えるなんて。




 それから、一年ほどエードラム帝国も政情を安定させるため、アラス様が訪問されることはなく、丁寧な求婚の正式な書状と贈り物が届いただけだった。結局第二王子と第三皇子は粛清され、第一王子は病床ながら生き長らえていた。


 それから一年が過ぎ、落ち着いたのか、早速アラス様が直接エイリー・グレーネ王国に挨拶に訪れると盛大な歓迎会とまではいかないけれど歓迎パーティや婚約を祝う席を設けられた。それから何ヶ月かに一度アラス様が訪れるようになった。


 私はというと十歳になろうとしていた。アラス様は十八歳に。でも彼はまだエードラム帝国の皇帝位には就いていない。今は第一皇子の補佐との立場で、実質、第一皇子は病床であるので内情はアラス様がほぼ皇太子として皇帝の執務の補佐を執り行っていた。帝国ではアラス様が次の皇太子、皇帝へと目されているようだった。それがどういうことなのか、世界にどう影響を与えるのか私にはまだ分からない。


 エードラム帝国では争いを起こした第二皇子と第三皇子は今上陛下に粛清された。陛下は御存命だが、この政変で子どもたちを処刑したため気落ちして早めにアラス様に帝位を譲りたいとのこと。そんな重要なことまで私が聞かせていただいているのは――、


「どうだ、リルア、そなたの夢の予言はどうなっている?」


「ええとですね。アラス様が十六歳で皇帝になるということでしたので、違ってきましたわね」


「なあに皇帝になるとこうしてそなたに気安く会うことが出来ぬのでな。もう少し父上や兄上に頑張ってもらうつもりだ。魔道船の試作も取り掛かっているので出来上がればもっと会うことが叶うようになる」


「まあ! 魔道船が、そうでしたのね。それは素晴らしいことですわ」


 ――だって、闇の神との最終決戦では天空城に魔道船で乗り込まないといけないもの。アラス様には魔道船を製作していただかないとなりません。まだこの世界には空を飛ぶ物はありませんから。


「しかし、あのようなところに黒流剣があったとは」


「そうでしょう? 目の前にあるのに気が付かない。そのミスリードが……」


 何度目かにいらしたときにアラス様が黒流剣がまだ見つからないと仰っていたので、私は攻略で得ていた知識からヒントを出してみた。それが当たっているかどうか不安だったけれどこうして本物の黒流剣を見せられると『薔薇伝』の設定と同じこともあるのだと安心していた。


 アラス様も順調に黒流剣を使いこなせているみたい。そのうち大剣の秘儀の大地の怒りとか出るようになれば……。

 



 それから私は十歳になったので、大神殿で司祭長とも話し合った。そもそもファルク様が話してくれた光の使い手というものが何なのか。


「光の使い手とは光の魔術の頂点にある存在といった方が早いじゃろう。息をするように光の魔術を使えるはずじゃ。そして光の魔術ならほとんど魔力を使わず行使できるといわれておる。王女様が……」


「まだファルク様がそう言っただけで」


「いえいえ。ファルクがそう申したなら間違いないじゃろう。ただ……」


「ただ?」


「光の使い手は男性なら勇者、女性なら……、聖女と呼ばれますのじゃ」


 ……聖女。確か『薔薇伝』では二周目以降に選べるキャラの中に聖女がいたわよね。


「しかし、今聖地で聖女が降臨したと言われておるのじゃ。当代に勇者は一人、聖女もまた然り。王女様がもしそうなればあちらが偽物ということになりかねない」


「私はその光の使い手とかではありませんわ。大神殿でおられる方が聖女に間違いありませんわ。それに光の勇者は……」


 ――フォルティスお兄様に決まっています。


「……そうですかのう。でもまあ、今代の光の勇者候補は我がエイリー・グレーネ王国のフォルティス王子に間違いないじゃろう。幼い頃にあれだけの光の量は近年稀にしかみられなかったからのう」


「フォルティスお兄様が光の勇者様なのは間違いありません」


 私は自分事のように自慢げに無い胸を張ってみせた。

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